日本の難民認定の問題に関する資料

◇ 全般的な問題

 □ 難民調査官、難民審査参与員の資質等 

 □ 法務大臣等による独自判断 

国会質疑等(2021年4月21日)井野俊郎議員(自由民主党)@衆・法務委  
井野議員 抜粋 ▽
     …私も、実は、法務大臣政務官という役職をやらせていただきまして、その当時、実は一件、難民認定申請は何件かあったんでしょうけれども、私自身どうしても納得いかなくてサインを拒否した難民認定、下から上がってきた、法務省の役人から上がってきた段階では、この方を難民認定したいと思いますということで事務方から上がってきたんですけれども、説明を聞いても、この方がなぜ難民なのかというのが理解できない。というのも、客観的証拠がないんですよね、難民認定に当たっては。はっきり言って、先ほど柳瀬先生がおっしゃったとおり、ほぼ何か供述の迫真性のみに依拠している。かつ、あと客観的に、外務省から問い合わせて、この国に対してはそういう政治的な事情があるというような状況があるというぐらいで、じゃ、実際問題として、確かにその国でそういう政治的な事情がある、もしくは迫害を受ける可能性もあるかもしれない。だけれども、じゃ、この人が実際にそういう政治活動をしていたとか、この人がそういう事情をお持ちなのかどうなのかというのは、はっきり言って客観的証拠はないんですよね。そういう状況で、かつ、その供述にしか頼らざるを得ない中で、かつ、通訳も入れなきゃならない、そういう中で、どうしてこの人が難民認定の対象になり得る人なのかどうなのか。私も弁護士をやっていたものですから、証拠がないものを認定しろというのは難しいと思うんですね。何でそれによって基準が違うのかどうなのかという、そこら辺をもうちょっと詳しく教えていただけませんか。
・2013年9月10日難民審査参与員協議会議事概要メモ  抜粋 ▽
    【難民異議申立ての処理状況等について・丸山審判課長説明概略】 … (難民審査参与員の認定意見の取扱い)  難民審査参与員から全員一致で難民認定すべきとの意見又は難民認定すべきとの多数意見があったものの、法務大臣の判断において難民認定しなかった事例が2例あった。これらは、他の同種の事例と比較検討した結果などに加え、本国情勢の変化も考慮せざるを得ず、難民認定しなかったものである。  難民審査参与員の多数意見と法務大臣の判断結果が異なることは、難民審査参与員制度の趣旨から決して望ましいこととは考えていないが、法務省として、同種事例の処分との均衡を図る必要はあり、また、本国情勢に変化が生じることもあるため、法務大臣の判断結果が難民審査参与員の多数意見と異なる場合が有り得ることを御理解いただきたい。
    【難民異議申立ての処理状況等について・丸山審判課長説明概略】 … 5 法務大臣が難民審査参与員の多数意見と異なる判断をした事例について  参与員から全員一致又は多数意見として難民認定すべきとの意見があったものの、法務大臣の判断において難民認定しなかった事例についてご報告させて頂く。そのような事例があったことは、前回の協議会でご報告させて頂いたところ、その後、昨年12月にそのような事案があったということが新聞報道されたこともあり、昨年12月17日の法務大臣の記者会見において取り上げられている。  この記者会見の時点では、当該事例を3件と述べているが、その後、1つの事例が加わり、平成25年にいおいては、最終的には4事例となった。4事例7人について先生方の意見と異なる判断をしている。他方、このうち3事例6人については、諸般の事情を考慮して在留配慮をしている。  在留しなかった1例については、異議申立人が本国政府の保護を受けているものと考えられたため、在留配慮はしていない。〔不開示〕  なお、難民認定しなかった在留配慮とした3事例の6人については、現在まで、難民認定を求める再申請は確認されていない。  もとより、参与員制度が導入された経緯から言えば、参与員の多数意見と法務大臣の判断の結果が異なることについて、決して好ましいことではないことは重々承知している。今後とも、参与員の先生方から提出された意見を踏まえつつ、他の類似事案と比較検討しながら、法務大臣として判断させて頂きたいと考えているところである。
    ・2014年9月12日難民審査参与員協議会議事概要メモ 抜粋 ▽
    【質疑応答】 (参与員) ① 平成26年における異議申立手続での難民認定者数及び国籍の内訳について伺い たい。 ② 平成26年における難民審査参与員の認定多数意見と異なる決定をした者の数及 び国籍の内訳について伺いたい。 (丸山審判課長コメント) ①について:  3人。国籍は,ミャンマーが2人,アンゴラが1人である。 ②について:  3人。なお,3人のうち2人については,在留配慮が付されている。 国籍の内訳は,ミャンマーが2人,スリランカが1人である。
    ・2015年3月12日難民審査参与員協議会議事概要メモ 抜粋 ▽
    【丸山審判課長による難民異議申立ての処理状況等に関する説明】  3 異議申立てに係る処理について  …  なお、平成26年に参与員の多数意見が「理由あり」でありながら、法務大臣において「理由なし」として決定したものが5件5人いるが、このうち4件4人については在留配慮を行うという決定をしている。
    (質問) 2 前記三の1の「理由なし」とされた事案中で、複数の難民審査参与員から難民として認定する旨の意見が提出されたにも関わらず、法務大臣が不認定とした事案の件数、そのすべての事案の国籍と理由を明らかにされたい。 (回答)  平成17年5月16日以降、法務大臣は、異議申立てに対する決定をするに当たって、1件の異議申立てについて3人の難民審査参与員の意見を聴くこととされている。同日以降、異議申立てに理由がないとして棄却した事案のうち、法務大臣が意見を聴いた3人の難民審査参与員のうち2人以上が異議申立てに理由があり難民の認定をすべきである旨の意見を提出したものの数は、平成25年が7件、平成26年が5件、平成27年が1件の計13件であり、これらの異議申立てを行った者の国籍は、スリランカ、トルコ、ミャンマー及び中華人民共和国である。また、これらの異議申立てを棄却した理由は、本国政府から自己名義の旅券の発給を受けて本国に一時帰国した事実が認められたこと、本国政府から反政府活動家として殊更注視され、迫害される蓋然性が高いとは認められないことなどから、難民の地位に関する条約(昭和56年条約第21号。以下「難民条約」という。)第1条の規定又は難民の地位に関する議定書(昭和57年条約第1号)第1条の規定により難民条約の適用を受ける難民の要件を満たすと認められなかったことである。

 □ 外交的な配慮 

・法務総合研究所「(研修教材)出入国管理及び難民認定法 1983年版」・抜粋(1988年版と1993年版にも同様の記載)  抜粋 ▽
    第2節 法務大臣の認定 1 認定の権限  …  このように、法務大臣の難民認定は裁量行為ではなく、法務大臣は、申請者が難民の要件に該当する事実を具備すると認めたときは、難民の認定をしなければならないのである。法第61条の2第1項の規定の意味はいちおうこのように解するとして、その場合でも若干の問題点に留意する必要があろう。ひとつは、申請者が難民の要件に該当する事実を具備すると認めるか認めないかということは、かならずしも純粋な事実のあてはめ行為とは言えないのではないか、という点である。前章で既に見たとおり、ヨーロッパにおける難民問題には、その基本的な性格のひとつとして、いわゆる東西対立のなかでの西側による東側向けの政治的な姿勢のあらわしかたにこれが使われているという面があり、難民問題のこうした政治的性格というものは、我が国の場合でも例外ではなく、純粋に人道的な立場からのみこの問題に対応するのは難しいのではなかろうか。すなわち、同じような客観的条件を具備する外国人A及びBがあり、双方から難民認定の申請があった場合に、Aは我が国にとって友好的な国の国民であり、Bは非友好国の国民であるとすれば、我が国としては、Bの難民認定は比較的自由に行えるとしても、Aの難民認定にはやや慎重にならざるを得ないということがありえよう。こうした場合の現実的な対応としては、Aについては難民の要件に該当する事実を具備するとは認められないとして認定は拒否、Bについてはそうした事実があると認めて難民認定を行う、といった処理の仕方になってあらわれる可能性が否定できないように思われる。こう考えてみれば、難民の要件に該当する事実を具備すると認めるか否かは、それほど単純な事実のあてはめ行為というわけではなく、若干微妙な要素を伴った問題のようである。こうした問題点をふまえたうえで、法務大臣の難民認定という行為は事実のあてはめ行為であって裁量行為ではない、との立場を把握しておくことが必要である。裁量の余地がほとんでないという表現が用いられるのも、こうした意味合いが含まれたものと理解してよいであろう。  …

◇ 庇護希望者の収容・送還 

政府方針、現行の運用等
平成30年3月5日付け法務省管警第47号法務省入国管理局審判課長及び警備課長通知「濫用・誤用的難民認定申請対策としての在留制限措置が執られた者に係る退去強制手続について」[PDF](全難連開示行政文書)

平成30年2月28日付け法務省管警第43号法務省入国管理局長指示「被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の更なる徹底について」 [PDF](全難連開示行政文書)
平成30年1月15日付け法務省管総第145号法務省入国管理局長通知「「難民認定制度の濫用・誤用的な再申請者の帰国促進に係る措置の試行について(指示) 」の廃止について」[PDF](全難連開示行政文書)

平成29年3月1日付け法務省管総第882号法務省入国管理局長発出文書「難民認定制度の濫用・誤用的な再申請者の帰国促進に係る措置の試行について(指示)」[PDF](全難連開示行政文書)
平成27年9月18日付け法務省管警第263号法務省入国管理局長通達「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について」
2011年12月「日本政府誓約」

(データ)
国会質疑等(2021年6月15日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2020年6月12日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2019年6月7日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2019年4月19日)糸数慶子議員(無所属・参)質問主意書[未成年者の収容]
国会質疑等(2018年6月26日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2017年6月27日)石橋通宏議員(民進・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2016年4月1日)石橋通宏議員(民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2015年8月18日)石橋通宏議員(民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2001年11月30日)北川れん子議員(社民・衆)質問主意書[入管収容・仮放免]
収容・送還専門部会(第8回会合(延期)・2020年3月5日) 資料3 参考資料(難民認定手続中の者及び訴訟係属中の者に関する集計値)[PDF]
収容・送還専門部会(第3回会合・2019年11月25日) 資料4 被退令仮放免者に関する統計[PDF];資料5 参考資料(論点1関係)[PDF]
収容・送還専門部会(第2回会合・2019年11月11日) 資料3 送還に関する現状[PDF];資料4 6月以上の被収容者に関する統計[PDF]

国際社会
国連等(2020年10月5日)国連恣意的拘禁作業部会意見
国際社会(2018年9月26日)人種差別撤廃委員会の総括所見(第10・11回)[CERD/C/JPN/CO/10-11]
国際社会(2018年9月)拷問等禁止委員会 一般的意見4
国際社会(2014年9月25日)人種差別撤廃委員会の総括所見(第7~9回)[CERD/C/JPN/CO/7-9]

国際社会(2014年7月24日)自由権規約委員会の総括所見(第6回)[CCPR/C/JPN/CO/6]
国際社会(2013年6月28日)拷問等禁止委員会の総括所見(第2回)[CAT/C/JPN/CO/2]
国際社会(2007年8月7日)拷問等禁止委員会の総括所見(第1回)[CAT/C/JPN/CO/1]

◇ 難民申請中の生活保障 

政府方針、現行の運用等
法相会見(2021年2月2日)非正規滞在外国人への対応等に関する質疑について
法相会見(2021年1月8日)仮放免等に関する質疑について
法相会見(2020年12月4日)難民認定に関する質疑について;仮放免に関する質疑について

(データ)
国会質疑等(2020年6月12日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2020年5月13日)山添拓議員(日本共産)@参・決算委員会[住民基本台帳に載っていない難民認定申請者等への給付]
国会質疑等(2019年6月7日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2018年6月26日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2017年6月27日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2016年4月1日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]
国会質疑等(2015年8月18日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]

声明等

声明・提言等(2021年4月1日)全難連「入管庁発表「令和2年における難民認定数等について」を受けての声明」
声明・提言等(2020年3月31日 )全難連「収容・送還に関する専門部会におけるこれまでの議論に対する意見」
声明・提言等(2020年3月31日 )全難連「法務省発表「令和元年における難民認定数等について」を受けての声明〜「濫用防止対策」のもと、庇護希望者にとって極めて厳しい状態が続く〜 」
声明・提言等(2019年3月27日)全難連「法務省発表「平成30年における難民認定数等について」を受けての声明〜濫用防止の名のもとに真に庇護を必要とする者の保護をないがしろにしてはならない〜」
声明・提言等(2018年10月10日)全難連「法務省発表「難民認定制度の運用の更なる見直し後の状況について」に対する抗議声明」
声明・提言等(2018年1月12日)全難連「法務省発表「難民認定制度の適正化のための更なる運用の見直し」に対する声明」

関連記事
2021年4月27日・毎日新聞「死後に届いた在留カード(その1) 2度入管収容、病状悪化のカメルーン女性」
2021年4月9日・毎日新聞「(偽りの共生)死の直前「漢字勉強したい」カメルーン出身者は救えなかったのか」
2021年2月17日・弁護士 小田川綾音「【特別転載】入管法改悪反対②-逆転勝訴判決 難民である無国籍者が「地球上で行き場を失うことは明白であった」(Mネット2020年6月号より)」
2020年12月23日・産経新聞「「仮放免者の就労可能に」 埼玉・川口市長、法相に制度創設要望」
2020年12月23日・朝日新聞「所持金2千円…クルド人の生活逼迫 市長、国に改善要望」
2020年10月21日・上毛新聞「「仮放免」ロヒンギャが苦境 就労や健康保険加入できず 館林で在日協会が訴え」
2020年5月8日・東京新聞「<牛久入管で何が… 長期収容される外国人> (4)難民、7年越しの認定」
2018年2月27日・産経新聞「摘発外国人の3割弱は難民認定申請中 法務省が入管法違反集中摘発」
2018年1月17日・日本経済新聞(社説)「「真の難民」保護に一層の改革を」
2018年1月16日・北海道新聞(社説)「難民審査の変更 救済への道狭めないか」
2018年1月13日・信濃毎日新聞(社説)「難民認定 締め出しにならぬよう」

◇ 複数回申請

 □ 複数回申請者に関する現行の運用と問題 

<難民申請>
 申請回数について法律上の制限はない。ただし、申請受付窓口でさまざまな理由をつけて受理を躊躇されたとの事例がたびたび報告されている。
<申請中の法的地位/ノンルフールマン原則>
 
 難民申請時に在留資格がない場合は、(初回か複数回かの申請に関わらず、)申請中に在留資格は与えられない。複数回申請者は、仮滞在の要件を満たさない。
 難民申請時に在留資格があった場合でも、一部の例外(A案件)を除き、たとえ再申請に理由があると見なされた場合(D案件)であっても、
在留資格がなくなり、原則的に収容される(難民申請は仮放免の積極判断要素になっていない)。
 手続中は一律に送還されないが、不服審棄却の告知直後に送還された事例がある。
<社会保障>
 収容されなかった場合でも、在留資格がなく就労ができず、国民健康保険にも加入できない上、難民保護費の受給対象外となっている。
<一次手続の審査>
 過去の記録や難民申請書等から判断できる場合はインタビューを省略され、迅速処理で不認定とされる。
<不服審での審査>
 口頭意見陳述を希望した場合でも、ほとんどの場合に難民審査参与員の判断で口頭意見陳述が開催されず、「臨時班」による書面審査で迅速処理で不認定とされる。
 臨時班に配転されない場合、前回不認定にされた際と同じ難民審査参与員の班により審査される。

〔問題点〕
・2015年から複数回申請に対する迅速処理等がすすめられて以降、複数回申請者の難民認定が激減した(表)

・入管収容の恐怖や困窮から、迫害を受けるおそれのある国への帰国を選択する場合がある(間接的なノン・ルフールマン原則違反のおそれ)

 □ 3回目の難民申請中に難民認定された事例 

2001年難民認定・中国出身男性:2回目の異議手続と併行して、3回目の難民申請をしたところ、2001年12月に難民認定を受けた。2回目の異議手続での難民認定か、3回目の難民申請での難民認定かは明らかにされなかった。

参考:関聡介「趙南事件:60日ルール」渡邉彰悟・大橋毅・関聡介・児玉晃一編『日本における難民訴訟の発展と現在』現代人文社、2010年、51-62頁。
2020年難民認定・イラン出身男性:2018年5月の2回目の異議棄却後、3回目の難民申請と併行して、2回目の難民不認定処分に対する取消訴訟を提起。2020年3月に東京高裁で難民側の勝訴が確定したのち、難民認定を受けた。

参考:東京地判令和元年9月17日(外部リンク:裁判所ウェブ

◇ 未整理