難民該当性判断の手引に関する質問主意書(外部リンク:参議院ウェブ)
提出者:福島みずほ議員(社民党)
番号:第217回国会 質問153号
提出日:2025年6月6日
答弁書受領日:2025年6月17日
合体版(質問&答弁)[PDF・245KB]
質問&回答テキスト 難民該当性判断の手引に関する質問主意書&答弁書
2023年3月に出入国在留管理庁が発表した「難民該当性判断の手引」(以下「本手引」という。)は、難民該当性の判断に際して考慮すべき規範的要素を整理し、同庁における難民認定業務に活用すること等を意図して作成されたものとされる。その運用には多くの難民申請者の生死がかかっており、記載内容について精査が必要であることを踏まえて、以下質問する。
一 本手引の13ページから14ページには、「政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるというためには、通常、申請者が政治的意見を有していることを迫害主体によって認知され、又は申請者が実際には政治的意見を有していないにもかかわらず迫害主体によって何らかの政治的意見を有しているとみなされている必要があり」、「迫害主体から、政治的意見を有しているとみなされているか否かを判断するに当たっては、自身の政治的意見やそれに基づいた行動や活動についての申請者の供述のみならず、その裏付けとなる客観的な証拠、出身国情報等と照らし合わせながら、申請者を取り巻く客観的事情も踏まえて判断する必要がある」と記載されている。「客観的な証拠」は出身国情報等と明確に区別されているところ、「迫害主体から、政治的意見を有しているとみなされている」ことを示す「客観的な証拠」とは具体的にはどのようなものか。特に、申請者の出身国当局が発給した逮捕状や判決文等の公的文書は、供述を裏付ける「客観的な証拠」として扱われるか示されたい。
一について
お尋ねの「客観的な証拠」は、「申請者」の「供述」及び「出身国情報等」以外の資料であるが、いかなるものが「客観的な証拠」に該当するかは、個別の事案における具体的な事情を踏まえて判断されるベきものであり、「申請者の出身国当局が発給した逮捕状や判決文等の公的文書は、供述を裏付ける「客観的な証拠」として扱われるか」について、一概にお答えすることは困難である。
二 難民調査官及び難民審査参与員に対して、「客観的な証拠」とは具体的にどのようなものであると説明しているか。説明に使用している資料・教材又は講演等を記録したものがある場合、当該資料・教材名又は講演等の記録を示されたい。また、難民調査官及び難民審査参与員に対して資料・教材等により「客観的な証拠」の具体的な内容を説明していない場合、「客観的な証拠」がどのようなものであるかは難民調査官及び難民審査参与員のそれぞれの判断に委ねられているのか示されたい。
二について
難民調査官及び難民審査参与員に対しては、必要に応じて、お尋ねの「客観的な証拠」は、一でお尋ねの「申請者」の「供述」及び「出身国情報等」以外の資料であるが、いかなるものが「客観的な証拠」に該当するかは、個別の事案における具体的な事情を踏まえて、審査を行う者において判断されるべきものである旨を説明することとしているところ、当該説明の内容については、記録を作成していない。
三 本手引の作成に当たり国連難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」という。)から助言を得た旨が特記されているが、申請者の供述を裏付けるために「客観的な証拠」を求めることについて、UNHCRからどのような助言を得たか内容を示されたい。また、当該助言内容が記載されているUNHCRから提供された文書又は当該助言内容を記録した行政文書を示されたい。申請者の供述を裏付ける「客観的な証拠」の扱いについて助言を求めていない場合、助言を求めなかった理由を示すとともに、改めて助言を求めた上で、本質問主意書への答弁として助言の内容を示されたい。
三について
「難民該当性判断の手引」(令和5年3月23日付け入管庁入第654号出入国在留管理庁長官通知別添) における「迫害主体から、政治的意見を有しているとみなされているか否かを判断するに当たっては、自身の政治的意見やそれに基づいた行動や活動についての申請者の供述のみならず、その裏付けとなる客観的な証拠、出身国情報等と照らし合わせながら、申請者を取り巻く客観的事情も踏まえて判断する必要がある」との記載は、お尋ねのよぅに「申請者の供述を裏付けるために「客観的な証拠」を求め」ているわけではなく、これを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。
四 国際的保護の付与・撤回のための共通手続きに関する2013年6月26日付けの欧州議会・理事会指令2013/32/EU(改)第30条には、「個別事例に関する情報の収集」に際して各国が控えなければならない行為が規定されている。当該規定を政府は承知しているか示されたい。また、当該規定の趣旨は日本の難民認定業務にも反映されているか示されたい。
四について
前段のお尋ねについては、御指摘の「2013年6月26日付けの欧州議会. 理事会指令2013/32/EU(改)第30条」の存在は承知している。
後段のお尋ねについては、「2013年6月26日付けの欧州議会. 理事会指令2013/32/EU(改)は欧州連合の加盟国に係る法制度であり、また、お尋ねの「当該規定の趣旨は日本の難民認定業務にも反映されているか」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは'困難である。
五 大阪出入国在留管理局の収容所に収容されていた難民申請者が、出身国に居る家族に対し当該申請者に発出された裁判文書を送付するよう依頼したところ、家族が送付を試みたことが出身国の官憲の知るところとなった。当該申請者は家族が拘束されたことを知り、2016年3月28日、自責の念から首つり自殺を行おうとしたと聞き及んでいる。政府は当該事実・事情を把握しているか示されたい。
五について
お尋ねについては、個別具体的な事案に関する事柄であるため、お答えすることは差し控えたい。
六 本手引には申請者の供述の信ぴょう性に対する評価についての指針等が示されていないが、出入国在留管理庁は、審査請求を含む難民認定業務全般において活用されることを意図し、信ぴょう性に対する評価に必要な事項及び要素を示した文書を別途作成しているか示されたい。作成している場合、その文書の名称を示されたい。また、当該文書の存否にかかわらず、難民調査官及び難民審査参与員に対し、供述の信ぴょう性に対する評価の方法に焦点を当てた実務研修等を実施しているか示されたい。
六について
お尋ねの「信ぴょう性に対する評価に必要な事項及び要素を示した文書」としては、「難民認定等事務取扱要領」(平成17年5月13日付け法務省管総第823号法務省入国管理局長通知別添)が存在する。
また、「供述の信ぴょう性に対する評価の方法に焦点を当てた実務研修等」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、出入国在留管理庁においては、難民調査官及び難民審査参与員が受講する難民及び補完的保護対象者の認定手続に係る事実認定等に関する研修において、「供述の信ぴょう性に対する評価の方法」についても説明している。