国際社会(2020年10月5日)国連恣意的拘禁作業部会意見

恣意的拘禁作業部会意見[A/HRC/WGAD/2020/58][PDF]/原文英語[PDF](外部リンク:OHCHR)

発信者:国連恣意的拘禁作業部会

日付:2020年9月25日

A/HRC/WGAD/2020/58
A/HRC/WGAD/2020/58
先行編集版 地域…一般
2020年9月25日
原文:英語
人権理事会
恣意的拘禁に関する作業部会
2020年8月24日~28日の第88回会期において
恣意的拘禁作業部会で採択された意見
Deniz YenginとHeydar Safari Diman(日本)に関する意見58/2020* **

1. 恣意的拘禁に関する作業部会は、人権委員会の決議 1991/42 で設立された。同委員会は1997/50 の決議において、同作業部会のマンデートを延長し、明確化した。総会決議 60/251および人権理事会決定 1/102 に基づき、同理事会が委員会のマンデートを引き継いだ。同理事会は、近時、決議 42/22 で同作業部会のマンデートを 3 年間延長した。

2. 作業部会は、作業方法(A/HRC/36/38)に従い、2020 年 4 月 9 日、Deniz Yengin 及び Heydar Safari Diman に関する通報を日本政府に送付した。政府は、2020 年 7 月 8 日、この通報に対して回答した。同国は、市民的及び政治的権利に関する国際規約の締約国である。

3. 作業部会は、以下の場合には、身体の自由の剥奪を恣意的なものとみなす。
(a) 身体の自由の剥奪を正当化する法的根拠を見い出すことが明らかに不可能な場合(刑期の終了後に拘禁されている場合や、恩赦法が適用されるにもかかわらず拘禁されている場合など)(カテゴリーⅠ)。
(b) 身体の自由の剥奪が、世界人権宣言第 7 条、13 条、14 条、18 条、19 条、20 条及び 21条、並びに締約国が関係する限りにおいては、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)第 12 条、18 条、19 条、21 条、22 条、25 条、26 条及び 27 条によって保障されている権利又は自由の行使に起因する場合(カテゴリー II)。
(c) 世界人権宣言及び関係国によって受け入れられた関連国際文書に定められた公正な裁判を受ける権利に関する国際規範の全部又は一部の不遵守が、身体の自由の剥奪に恣意的な性質を与えるほどの重大性を有する場合(カテゴリーⅢ)。
(d) 庇護申請者、移民または難民が、行政的あるいは司法的な審査、または救済の可能性がないまま、長期間の行政収容を受けている場合(カテゴリーⅣ)。
(e) 身体の自由の剥奪が、出生、国籍、民族若しくは社会的出身、言語、宗教、経済状況、政治的若しくはその他の意見、性別、性的指向、障害、その他の地位に基づく差別を理由とする国際法違反を構成するものであって、その目的が、又はその結果として人間の平等を無視することになる場合(カテゴリーV)。

* Seong-Pill Hong は本件の審議には参加していない。
** (訳者注)原文は以下。

提出されたもの

情報源からの通報

4. Deniz Yengin は、1979 年生まれでトルコ国籍を有し、日本での難民申請者で、東京に在住している。情報源によると、Yengin 氏は、クルド系民族であること、アレビズム(イスラム教の少数派)を信仰していること、及び、彼の政治的意見を理由とするトルコでの脅迫、暴力、差別、嫌がらせから逃れてきたという。彼は、2007 年 5 月 15 日に大阪市に到着した。

5. 提供された情報によると、2007 年 12 月 27 日に初めて日本で難民申請をした。しかし、その回とその後 2 回にわたり申請は認められなかった。同氏は現在、再度の難民申請を行っている。情報源によると、知りうる限りにおいて日本ではクルド人が難民として認められたことはないという。情報源は、日本では 2018 年の難民認定率が 0.25%だったと指摘している。

6. 情報源によると、Yengin 氏の妻は日本人である。二人は 2011 年から結婚している。情報源によると、二人の結婚は当局が Yengin 氏に日本での居住許可を与えるべき理由であったものの、それは与えられていない。

7. 情報源によると、2008 年 6 月 16 日、主任審査官は Yengin 氏に対して退去強制令書を発付し、これは現在も効力を有する。2008 年 6 月 16 日から 2009 年 1 月 19 日まで、2009 年 12月 1 日から 2010 年 8 月 18 日まで、2016 年 5 月 15 日から 2019 年 8 月 2 日まで、2019 年 8月 16 日から 10 月 25 日までを含む複数回、Yengin 氏は同令書にしたがって東日本入国管理センターに収容された。

8. 情報源によると、Yengin 氏の最長収容期間は 3 年 2 ヶ月以上に及んだ。その間、彼の代理人弁護士は 10 回の仮放免申請書を提出し、最初の提出は 2017 年 3 月 7 日だった。東日本入国管理センターの権限を有する者は、これらの申請をすべて拒否した。情報源は、仮放免は外国人を入管収容所から解放する唯一の有効な手段であると説明している。

9. 情報源の報告によると、2019 年 1 月、長期収容中に蓄積されたストレスを緩和するため、Yengin 氏は入管収容所の職員に投薬を要求した。彼らはこれを拒否し、最終的には、10 人以上の入管収容所の職員が Yengin 氏の手首を暴力的に捻ったほか、他の過度の有形力をYengin 氏に対して用いた。Yengin 氏が暴行を受けた後、彼の弁護士は政府に賠償を求める訴訟を提起した。現在も審理は継続中である。

10. 2019 年 5 月、Yengin 氏をはじめとする入管収容所の収容者たちが、収容に抗議するために長期のハンガーストライキを開始した。ハンガーストライキ中、Yengin 氏はかなりの量の体重を落とした。また、情報源によると、同氏は少なくとも 4 回、自殺を試みた。

11. 2019 年 8 月、2 週間の一時釈放を受けた Yengin 氏は、被拘禁者に多い精神疾患と診断された。その原因の一つは、残酷な扱いを含む長期の拘禁期間中に蓄積された極度のストレス反応と考えられている。

12. 2019 年 11 月 7 日、Yengin 氏は再び拘束され、東日本入国管理センターに収容された。彼は2020 年 3 月 23 日に釈放された。これが彼の直近の収容であった。収容を繰り返す運用が再開することが懸念されている。

13. 情報源によると、最近の収容では、収容中に耐えてきたストレスのため、Yengin 氏は強い幻覚を見て、再び自殺しようとしたという。情報源は、無期限の入国管理局への収容が繰り返されていなければ、Yengin 氏はこのような病状に苦しむことはなかっただろうと指摘している。

14. Heydar Safari Diman は、1968 年生まれのイラン国籍者である。2012 年 5 月 15 日にイラン当局が東京で発行したパスポートを所持しており、2017 年 5 月 16 日に有効期限が切れた。日本における難民申請者であり、東京にある教会で生活していた。

15. 情報源によると、Safari Diman氏は1991年11月から30年近く日本で過ごしてきた。1992年2月に在留資格がなくなり、その後に難民申請を行ったが、何度も拒否された。迫害を恐れて母国に帰ることができないため、難民申請をし続けた。情報源は、2018年の日本の難民認定率は0.25%だったと改めて指摘している。

16. 情報源の報告によると、Safari Diman氏は、退去強制令書が発付されたため、2010年1月14日に最初に収容された。彼は2010年12月6日まで収容された。2016年6月8日、Safari Diman氏の仮放免が拒否され、当局からの説明もなく、また、彼が申請した難民認定が認められなかったことに対する不服申立手続が進行中であるにもかかわらず、再び収容されることになった。

17. 情報源によると、2019年6月7日、東日本入国管理センターに3年間収容された後、Safari Diman氏はハンガーストライキを開始した。情報源の報告によると、ハンガーストライキ中に健康状態が著しく悪化し、かなりの量の体重を失い、失神し、血を吐いた。

18. 情報源によると、2019年7月31日、3年1ヶ月の収容期間を経て、Safari Diman氏は2週間の仮放免を受けた。短い仮放免期間は、うつ状態と他のいくつかの関連症状と診断されたSafari Diman氏に、深刻な心理的影響を与えた。

19. 情報源によると、相当なストレスに苦しんでいるにもかかわらず、Safari Diman氏は逃亡しようと考えたことはないという。2019年8月14日、当局の指示に従い、仮放免の延長が認められることを期待して、彼は東京入管に出頭した。しかし、再び収容された。情報源によると、入管は健康診断が行われる前に彼を収容し、繰り返し収容する理由を何も提示しなかったという。

20. 情報源の報告によると、Safari Diman氏は、二度目のハンガーストライキを開始し、一定期間水を飲むことも拒否したという。その結果、彼はかなりの量の体重を失い、何度か意識を失った。彼は抗うつ剤と睡眠薬を飲まなければならず、固形物を摂取することができなかった。情報源は、Safari Diman氏の状態を、生命を脅かすものと表現している。

21. 情報源によると、それ以来、Safari Diman氏は、仮放免後に重ねて2回拘束されており、直近の拘束期間は2020年1月21日から4月3日までであった。Safari Diman氏は、2020年5月1日に入管に出頭するよう指示された。収容を繰り返す運用が再開されることが懸念されている。

法的分析

22. 情報源は、入管によるYengin氏とSafari Diman氏の繰り返されてきた収容は恣意的なものであり、カテゴリーIとIVに該当すると主張する。情報源はまた、彼らの繰り返されてきた収容は、入管手続の文脈においてより広範に常態化している同様の収容の一例であるとも述べている。

23. カテゴリーⅠに関連して、情報源は、繰り返される収容は法的根拠を欠いていると主張している。国際基準は、逃亡のおそれや、追放命令を受けた非正規移民の追放を円滑に進めるためなどの、法的地位のない移住者の収容を正当化する理由が、国内法の中に明確に定義され、網羅的に列挙されなければならないことを要求していると指摘している。国際基準はまた、収容の必要性は個人ごとに評価されるべきであり、移住者の現在の移住者としての法的地位の形式的な評価に基づくべきではないことを要求しているという。収容は、比例原則に従わなければならず、従って、移住(出入国管理)の文脈において自動的または義務的な収容は恣意的なものである。

24. 移住者は、国際基準によれば、移住(出入国管理)手続中の収容は、個々のケースに特有の状況に照らして、合理的で必要性があり、かつ比例したものとして正当化されなければならないと想起している。このような収容は、可能な限り短い期間のみ許され、懲罰的な性質であってはならず、また、時間の経過とともに定期的に見直されなければならない。移住(出入国管理)手続中の個人の無期限収容は正当化できず、恣意的である。

25. 情報源によると、退去強制令書による収容(Yengin氏とSafari Diman氏のケースもその例である)を含む日本における入管収容は、出入国管理及び難民認定法により行われている。このような収容には、司法による承認や審査は必要なく、当局は、退去強制命令を受けた者を退去強制令書により強制送還することができる(同法52条3項)。また、同法は、収容の最長期間を定めておらず、継続して収容するにあたり定期的な審査を定めていない。

26. 情報源によると、入管は、上記の規定に基づき、退去強制令書が発付されたすべての外国人を原則として無期限に収容し、司法当局による承認や審査を経ずに、入管の裁量で収容又は釈放を決定する方針をとっているとのことである。

27. 情報源によると、仮放免の手続について、法第54条第2項は、外国人に対し、情状、申請の裏付けとなる証拠、当該外国人の性格及び財産等を考慮し、法務省令で定めるところにより、300万円以下の供託金を納付し、かつ、居住地及び移動地域の制限、呼出しに対する出頭義務等の必要と認める条件を付して仮放免を行うことができると規定している。

28. 情報源は、その手続には司法の承認が必要ないこと、仮放免の決定をすべき期間が法律で定められていないことを強調している。また、仮放免が拒否される場合、その理由は明らかにされない。

29. 情報源は、仮放免を受けた後にYengin氏とSafari Diman氏が繰り返し収容されたことには具体的な理由がなく、必要性や法的根拠の要件を満たしていないと指摘している。彼らの収容を必要とする新たな事情は発生しておらず、入管はそれを証明する説明をしていない。このように、彼らの繰り返しの収容は、明らかに比例の原則を満たさないものであった。

30. 情報源は、Yengin 氏と Safari Diman 氏を繰り返し収容する必要性は、個別に評価されたものではなく、単に彼らの現在の移住者としての法的地位を形式的に評価したに過ぎないと主張している。情報源は、移住(出入国管理)の文脈での収容は原則として義務的であり、かつ、無期限であると主張している。

31. 情報源によれば、上記の繰り返された収容は、長期収容の後、わずかの期間のみ解放され、その後再び収容された2人の難民申請者の人間の尊厳に極度の悪影響を与えた。2人は2週間の仮放免を受けたが、その間、再び収容されることを常に恐れて生活していた。

32. 情報源は、繰り返し収容した目的は、収容中にハンガーストライキを行っていた人たちを萎縮させ、自発的に帰国するようにすることと、収容を一時的に中断することで収容の長期化問題を隠蔽することにあったとしている。情報源によれば、当局は、一時的に解放することで、継続的な収容期間がゼロにリセットされ、収容期間についての統計上の平均値を短縮することができると説明している。

33. 同情報源は、入管収容は、懲罰として、また、送還を拒否する者に対する送還の間接的な強制手段として利用されており、また、適法な在留許可を得ていない移住者は公共の安全を脅かすという差別的な考え方に基づいて、予防的手段としての役割も果たしていると主張している。

34. カテゴリー IV について、情報源は、国際基準は、移住(出入国管理)に関連したいかなる形態の行政上の収容または拘禁も、可能な限り短い期間、最後の手段としての例外的な措置として用いられなければならず、入国に関する文書作成や主張の記録化、または疑いがある場合の最初の人定など、適法な目的によって正当化される場合にのみ用いられなければならないことを要求していると指摘する。

35. さらに、国際基準は、移住(出入国管理)手続中を含むあらゆる形態の収容が、裁判官またはその他の司法当局によって命じられ、承認されなければならないことを要求している。移住手続中に収容された者は誰でも、速やかに司法当局の前に連れてこられなければならず、その前に、必要性、比例性、適法性、及び、恣意的でないことを確実にするために、自動的に定期的に収容の見直しを受けることができるようにしなければならない。

36. 情報源によると、Yengin氏とSafari Diman氏は、2週間の仮放免を受ける前に長期間拘束され、再び拘束された難民申請者である。情報源は、仮放免は実際には単に一時的に収容を停止しただけであり、彼らの収容は2週間の仮放免の前から継続しているとみなすことができるとしている。

37. 情報源によると、これらの収容については、当初から司法による承認がなかったという。また、上記の個人を再び収容するという決定に対しては、行政的な審査は行われていない。国内法では、司法の承認も再収容に対する審査も要求されていない。

38. 情報源は、時宜を得た有効な司法的救済手段は利用できないとしている。仮放免の延長を拒否した行政処分に対する唯一の救済手段は、行政裁量権の濫用であるとして、行政処分取消訴訟を提起することである。とはいえ、通常の裁判手続であることを考えると、裁判所が判決を出すまでには1~2年程度かかると思われる。

政府の反応

39. 2020年4月9日、作業部会は、通常の通報手続に基づき、情報源からの主張を日本政府に送信した。作業部会は、政府に対し、2020年6月8日までに、Yengin氏とSafari Diman氏の現状に関する詳細な情報を提供するよう要請した。また、政府に対し、彼らの継続的な収容を正当化する法的規定を明らかにするとともに、彼らの継続的な収容が国際人権法、特に国が批准した条約に関する政府の義務と両立するかどうかを明らかにするよう要請した。さらに、作業部会は、政府に対し、Yengin氏とSafari Diman氏の身体的、精神的完全性(integrity)を確保するよう求めた。

40. 2020年5月18日、政府は、作業部会の作業方法に規定されているように延長を要請し、2020年7月8日という新たな期限で認められた。政府は2020年7月8日に回答を提出した。しかし、原文の回答は日本語で提出され、翻訳文は後から提出された。政府は、遅延はコロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによるものであると説明した。世界的なパンデミックの状況と世界的に課された制限を考慮し、その際に政府が提示した説明に留意し、作業部会は、時間通りに提出されたものとして例外的に回答を受け入れた。

41. 政府は、その回答の中で、Yengin氏とSafari Diman氏の収容が国内の法令に基づいて適切に実施されたことを確認している。また、両氏は仮放免され、2020年7月7日現在、再び収容されていない。

42. 政府は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第8条の規定を理由に、これ以上の個人情報を提供することはできない、しかし、Yengin氏及びSafari Diman氏の収容は、適切に実施されたものであり、日本が批准している自由権規約や他の人権条約に抵触するものではなく、また、恣意的な拘禁にも該当しないと説明している。

43. 政府は以下のように説明している。
本件に適用される日本の法的枠組みについて、外国人が行政
権力の恣意的な行使に基づいて国外追放されることはない。政府は、国際法上、その国の領土に合法的に居住する外国人は、原則として、法律に従った手続を経なければ、その国から追放されることができないことを認識している。したがって、日本に居住するすべての外国人の居住を公
平に管理するために、日本は,入管法を制定した。日本では、同法に定められた手続その他の関係法令に基づき、すべての外国人の強制送還が実施されている。

44. 同法には、不法入国、不法上陸、オーバーステイなどの退去強制事由が具体的かつ網羅的に記載されており、それ以外の場合には退去強制処分が実施されることはない(第24条)。また、退去強制令書が発せられる前には、入国審査官が調査結果に照らして客観的に事実関係を調査している。入国審査官の調査結果に対しては特別審理官に、特別審理官の決定に対しては法務大臣に異議を申し立てることができる。また、法務大臣は、申し立てられた異議申立が不合理であると認める場合であっても、その理由があると認めるときは、その外国人の家庭の事情その他諸般の事情を総合的に勘案して、その都度、在留を特別に許可することができる。退去強制令書は、退去強制の理由とともに、退去強制の対象となる者に見せなければならない(第51条、52条(3))。退去強制令書が発せられた者は、裁判所に行政訴訟を提起して、退去強制令書の取消しや無効確認を求めることができる(行政事件訴訟法第3条)。

45. また、行政処分の対象となる者に対して、行政処分取消訴訟を提起する権利と出訴期間を通知することが義務づけられており(行政事件訴訟法第46条)、司法手続へのアクセスが保障されている。このように、日本は、外国人が行政権力の恣意的な行使に基づいて、外国人の意思に反して日本から強制送還されることがないことを保障する仕組みを採用している。

46. 政府は以下のとおり主張する。したがって、出入国管理及び難民認定法は、公正な手続及び人権への配慮を確保するものであり、難民の地位に関する条約、自由権規約、拷問その他の残虐、非人道的又は品位を傷つけるような取扱い又は刑罰に対する条約その他我が国が批准している重要な国際人権条約に完全に適合するものである。また、我が国は、これらの条約に定められた義務の履行を確保するための仕組みを有しており、その中には、ノンルフールマンの原則に基づくものも含まれている。

47. 政府は、以下のとおり説明している。外国人が行政権力の恣意的な行使に基づいて収容されることはない。入国警備官は、日本に在留する外国人が退去強制事由のいずれかに該当すると信じるに足りる相当の理由がある場合には、書面による収容令書(出入国管理及び難民認定法第39条1項)に基づき、当該外国人を収容することができる。「信じるに足りる相当な理由」は、入国警備官の主観的な判断に基づくものではなく、客観的に見て疑われるに足る合理的な理由であることが求められる。また、主任審査官の収容令書を発付するか否かの判断の客観性は、入国警備官による法違反の調査結果に基づいて、あるいは当該外国人に係る刑事手続における有罪判決の確定判決に基づいて判断されるものであることからも保障されている。さらに、上記の行政訴訟は、書面
による収容令書又はこれに基づく収容に対して提起することができるので、入国審査官の決定は、訴訟において司法審査の対象となる。

48. しかしながら、政府によれば、書面による収容令書が出されていても、必ずしも収容されるとは限らない。外国人の日本での在留資格や退去強制手続の対象となる法令に違反しているかどうかによっては、収容に先立って仮放免が認められる場合がある(第54条2項)という。この場合には、実際の収容を行わずに退去強制手続を行うことができる。また、出国の意思をもって入国管理局に出頭し、速やかに出国する意思があることその他必要な要件を満たした者に対して、収容をせずに出国を命じる出国命令制度が広く利用されている(同法24条3項及び55条の2)。2019年には、8,713人の外国人の事件がその対象となった。日本では、出国命令制度や収容前の仮放免制度の対象外の人だけが収容される。

49. 政府は、収容令書に基づいて決定された収容期間は、原則として30日間であり、比較的短いと説明している。また、やむを得ない理由がある場合に限り、一度だけ30日を追加で延長することができる(第41条)。さらに、収容に不服のある者は、退去強制手続においてなされた各行政処分の取消しの訴えを提起することができるほか、収容の執行停止の申立てをすることができる。収容の執行停止の申立てがあった場合、裁判所は、「重大な損害を避けるために緊急の必要がある」と認めるときは、命令により、速やかに収容の執行を停止することができる(行政事件訴訟法第25条)。このように、司法審査は迅速に行われている。

50. また、書面による収容令書により収容された者又はその代理人若しくは家族が仮放免を申請した場合には、入国者収容所長又は主任審査官は、その申請にかかる事情及び証拠等を考慮し、仮放免について一定の条件を付すことができる(出入国管理及び難民認定法第54条2項)。仮放免の可否は、容疑事実や退去強制の事由、被収容者の性格、年齢、言動、家庭の状況、行政訴訟が係属中の場合は行政訴訟の進行状況、難民認定申請がされている場合は難民認定手続の進行状況、被収容者が逃亡したり、仮放免の条件に違反したりする可能性の有無等、事案の特性に応じた実質的な審査を経て決定されることになっている。

51. しかし、外国人が逃亡するおそれがある場合や仮放免の条件に違反した場合など、仮放免の許可を与えることが適切でない場合には、仮放免の許可又はその延長が認められず、又は仮放免の許可が取り消され、再び拘束されることがある。また、仮放免の許可が取り消されたために再度収容された場合でも、その後、仮放免が認められ、上記と同様の理由で再度収容されることがある。

52. 政府は以下のように述べる。同法によれば、退去強制令書が発せられた者の退去は、速やかに実施されるべきである。ただし、難民の地位に関する条約第33条1項、拷問その他の残虐、非人道的又は品位を傷つける待遇又は刑罰に対する条約第3条1項及び強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約第16条1項で言及されている国は、退去強制先として除外されており(法第53条2項1乃至3号)、我が国が批准している人権条約との整合性が取れている。

53. 同法は、退去強制が可能となるまでの間は、収容期間を継続することができると規定している(第52条5項)。退去強制は、そもそも可能な限り速やかに実施されなければならず(第52条3項)、退去強制令書が発せられた者が退去強制処分に従って自発的に出国することを希望した場合には、収容は直ちに終了することになる(第52条(4))。また、本人の出国拒否その他の理由で直ちに退去させることができない場合であっても、本人又は本人の代理人・家族の申請があれば、事案の特性に照らして、仮放免の実質的な検討を行うこととされている。実際には、強制送還が実施されるまでの間、仮放免制度は柔軟に運用されている。

54. 政府は、以下のように述べる。2019年12月末現在、書面による退去強制令書に基づき拘束されている者は942人であり、2,217人に仮放免が与えられている。このように、仮放免は、2019年12月末時点ではまだ日本におり、かつ、書面による退去強制令書が出された者の約70%に与えられている。これらの数字は、日本では仮放免制度が可能な限り柔軟に運用されていることを示している。

55. また、仮放免の申請の時期や回数に制限はないので、要件を満たすと考えられる被収容者は、いつでも申請することができる。被収容者の申請がなくても、仮放免が緊急かつ真にやむを得ない場合であって、被収容者が申請することが困難な場合には、十分な理由があるとの主務官庁の判断に基づき、職権で仮放免が認められる。

56. 日本の制度では、強制送還を免れた者や逃亡する可能性のある者など、逃亡防止の必要性などから仮放免が不適当と判断される者に限って、長期収容される。

57. ちなみに、日本では、強制送還を免れた被収容者のうち、かなりの割合が難民認定申請中であり、何度か申請をしている被収容者もかなりの数に上っている。2019年12月末現在、強制送還を免れている拘禁者649人のうち、391人(60%)が難民認定申請中である。その392人(翻訳者註:原文のまま)のうち、複数回申請を行っている被収容者は227人(58%)である。

58. 政府は、作業部会の改定審議結果第 5 号(A/HRC/39/45、annex)に留意している。その中では、退去強制を回避している被収容者に起因しない障害のために退去強制が実施されない場合、その被収容者は釈放されなければならないと述べられている。政府は、日本では、収容期間が長くなる者は、逃亡の危険があり、かつ、日本での在留資格がなく、逃亡その他の不法行為を行う可能性があるにもかかわらず、自らの意思で出国することを拒否しているため、仮放免の理由が見つからない者だけであることを強調する。そのような危険性からやむを得ず収容期間が長くなるにもかかわらず、政府が仮放免を許すことは、強制送還の手段がないことを利用した継続的な不法滞在を導くことになる。それは、日本に在留するすべての外国人の在留を公平に管理するという出入国管理及び難民認定法の趣旨に反するものである。

59. 政府は、欧州を含むいくつかの先進国では、法令上、収容期間の上限が設定されていないことに留意している。我が国の制度全体を総合的に検討し、他国の慣行を参考にすると、日本では、退去強制を拒否した結果、収容期間が長くなる人がいるかもしれないという理由で、恣意的な収容が行われているとすることは適切ではないことは自明である。

60. 入管収容施設における被収容者の処遇について、政府は、出入国管理及び難民認定法の規定に基づき、入管収容施設における被収容者の処遇の適正を確保するため、法務省令として被収容者処遇規則を整備したと説明している。被収容者の収容及び処遇に従事する者は、この規定に基づき、被収容者を適切に取り扱うことが求められている。収容施設の安全及び秩序を維持し、被収容者が収容施設内で安定した生活を営むことができるようにするために、被収容者の自傷を防止すること等を規定している。また、同規則は、収容施設の職員に対し、被収容者が疾病に罹患し、又は負傷した場合には、医師の診断を受けさせ、被収容者の状態に応じて適切な措置を講じなければならないこととし、被収容者の健康及び安全に配慮することを求めている。このように、被収容者が医療サービスを受けることを拒否しない限り、必要な医療サービスは無償で提供されることになっている。

61. さらに、被収容者処遇規則では、被収容者の適正な処遇を確保するための仕組みとして、不服申立制度や他の制度が定められている。また、収容すべきやむを得ない理由がある場合でも、入管収容施設が被収容者を拘束するための施設である以上、その施設においては処遇の透明性が確保されるべきである。そこで政府は、入国者収容所等視察委員会を設置し、同委員会が入管収容施設を訪問し、被収容者と面談し、その結果に基づき入管収容施設の施設長に勧告を行っている。同委員会は、収容定員、被収容者数、入管収容施設の管理体制等の入管施設の運営状況、被収容者への衛生・医療の提供、面会及び通信の授受、被収容者からの苦情等について報告している。この仕組みは、出入国管理下での処遇の透明性を確保し、入管収容施設の運営を改善するために十分に機能している。

62. 同委員会の役割は、市民の健全な常識を反映した意見を入管収容施設の施設長に提供することであるため、例えば、委員会の委員は、ある特定の専門家団体や組織を過剰に代表することにならないように、公私の団体からの推薦等により選任されている。また、関連する専門知識を有する者、法曹関係者、医療専門家、国際機関関係者等、幅広い分野の者の参加を求め、任命方法の公平性を確保している。第三者で構成された委員会による入管収容施設の訪問や被収容者との面談を通じて被収容者の処遇が確認されているため、被収容者の処遇の透明性と適正が確保されている。

63. 収容施設におけるCOVID-19対策に関する作業部会からの質問に対し、政府は、入管収容施設においては、被収容者処遇規則第31条(伝染病に対する予防措置)及び第32条(伝染病患者に対する措置)の規定に基づき、疾病に対応していることに特に言及している。例えば、インフルエンザが流行する季節には、収容施設に出入りする職員にマスクの着用や手洗いを徹底するなどの措置がとられている。また、新たなコロナウイルスの流行に対応するため、専門家のアドバイスを受けて、入管収容施設におけるCOVID-19の疾病管理について新たなマニュアルを作成した。入管収容施設では、このマニュアルに基づいて感染予防対策が行われている。具体的には、職員のマスク着用、手洗い、その他の感染予防措置を取り、新規被収容者を約2週間隔離して収容するなど、各留置施設において様々な対策を講じている。

64. 仮放免制度は、被収容者の健康状態等を総合的に勘案し、適切と判断される場合に利用されてきている。また、COVID-19のパンデミックによる欠航により、一部の国への強制送還が現実的に不可能又は困難な状況にある現状を踏まえ、仮放免が可能な被収容者については、収容施設の過密状態を回避するため、仮放免制度の適用をより積極的に行っている。

65. 我が国の難民認定率が 0.25%に過ぎないとの情報源の主張について、政府は、今回の通報の目的は、作業部会が、当該外国人の収容が恣意的拘禁のカテゴリーに該当するか否かを検討することであって、当該外国人を難民として認定すべきか否かを検討することではないと認識している。したがって、政府は、この問題についての詳細な記述はしていないが、真に保護を必要とする者を保護するために、政府は難民認定制度を適切に運用していることを強調する。その際には、申請の都度、十分な審査を行い、難民の地位に関する条約に規定された定義に基づき、難民として認定すべき者を認定している。我が国の難民認定制度は、我が国が難民の地位に関する条約及び議定書に加盟したことに伴い、創設されたものである。この制度では、法務大臣が所定の手続を経て難民と認めた者については、国民年金、育児手当、生活保護の受給資格等について、日本国民と同様の扱いを受けることができることになっている。

66. 政府はまた以下のように説明する。当該収容が恣意的拘禁に該当しないことを前提に、上述のとおり、現在、我が国には、一定数の送還忌避者が存在しており、このような送還忌避者の増加は、退去強制制度の趣旨を損ない、退去強制対象者の収容が長期化する大きな原因となっている。このような事態が発生しないようにするための方策や収容の在り方について十分に検討するため、2019年10月、法務大臣の私的諮問機関である「出入国管理政策懇談会」の下に「収容・送還に関する専門部会」が設置された。入管収容施設における収容・処遇の在り方について、関連する専門知識を有する専門家や実務家を中心に、法制化を含めた具体的な措置について議論・検討が行われた。

67. 審理結果は、「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」と題した報告書にまとめられ、報告書は、2020年7月に法務大臣に提出される予定である。入管庁は、報告書の迅速な審査と具体的な措置の実施に努める。

68. したがって、政府は、今回の申立てを否定すると共に、様々な意見に留意しつつ、収容や退去強制に関する制度やそれら運用について必要な検討を行ってきたことを強調する。

情報源からの更なる情報

69. 政府の回答は、さらなる主張のために情報源に送付され、情報源は 2020 年 7 月 23 日に提出した。その回答の中で、情報源は、政府はYengin氏とSafari Diman氏の個別の事例について言及しておらず、むしろ彼らの収容に適用される法的枠組みの説明にのみ焦点を当てていることを強調し、主張を再び述べている。

検討

70. 作業部会は、政府および情報源による資料提出に感謝している。

71. 作業部会は、その先例の中で、証拠に関する事項を取り扱う方法を確立している。情報源が恣意的拘禁を構成する国際的要件の違反について一応の証明をした場合に、政府がその主張に反論したい場合は、立証責任は政府にあると理解されるべきである(A/HRC/19/57、パラ68)。

72. 予備的な問題として、作業部会は、Yengin 氏も Safari Diman 氏も、申立てが行われた時点では拘束されていないことに留意する。しかし、作業部会は、両氏が 10 年以上の期間内において、何度も相当の期間収容されていることに留意する。本件は、日本における入管収容を取り巻く法的枠組みの重要な側面にも関係している。したがって、作業部会は、その作業方法の第 17 条(a)に従って、この通報の検討を進めるものとする。

73. さらなる予備的な問題として、作業部会は、日本の法律ではYengin 氏と Safari Diman 氏のケースに関する情報の公表が認められていないため、政府は Yengin 氏と Safari Diman 氏のケースに関する情報を提供することができない、という政府の立場に留意している。しかし、当作業部会が以前に日本に関する先例の中で述べたように、「政府は、国内法が国家当局の行為の詳細な説明を提供することを妨げていると主張するだけでは十分ではない」としている[1]。作業部会は、その理由を以下のように詳述している[2]。作業部会が世界中の恣意的逮捕・拘禁の犠牲者のニーズに応え、加盟国が相互に説明責任を果たすために設立されたことを考えると、加盟国は、犠牲者によってもたらされた紛争を解決するためのメカニズムを企図していたはずである。これは、人権理事会が最近の決議33/30において行ったように、作業部会に全面的に協力するよう各国に念を押す動機でもあった。そのため、政府からの回答は通常60日以内に行われることが作業部会によって期待され、その間、政府は作業部会に可能な限りの情報を提供するために適切な調査を行うことができる。

74. 情報源は、Yengin氏とSafari Diman氏の収容は恣意的なものであり、作業部会のカテゴリー I とIV に該当すると主張している。政府はこれらの主張を否定している。

カテゴリーI

75. 作業部会は、収容が法的根拠を欠くものであれば、恣意的なものであり、カテゴリー I に該当すると考えていることを想起する。今回のケースでは、Yengin 氏と Safari Diman 氏は、出入国管理及び難民認定法に基づき、司法の承認や審査なしに退去強制令書に基づく収容を認められており、繰り返し収容されていたことが認められる。また、同法54条2項は、法務省令で定めるところにより、外国人が300万円以下の保証金を納付し、居住地及び移動地域の制限、出頭義務の制限等の必要と認める条件を付して、事情、申請の裏付けとなる証拠、外国人の性格、財産等を考慮して、入管収容所長又は主任審査官が外国人に対して仮放免を認める権限を付与しているものである。したがって、法の規定により、収容も、収容からの解放も、行政府の命令でなされる。しかし、
同法は、仮放免の決定を行うべき期間を定めておらず、行政府に無制限の裁量を与えている。

76. 作業部会は、国内法で収容が認められていても、それが恣意的なものである可能性があることを想起する。「恣意性」の概念は、「法に反して」と同義に扱われるべきものではなく、より広範に解釈され、不適当、不公正、予測可能性の欠如、法の適正手続の欠如のほか、合理性、必要性、比例性の要素を含むものとされている[3]。本件では、Yengin氏とSafari Diman氏の両氏は繰り返し収容され、収容の理由も、収容期間も告げられていない。移住(出入国管理)に伴う収容は、収容の必要性を個別に評価した上での例外的な最終手段[4]でなければならないが[5] 、日本の当局は、両氏のいずれに対しても評価を行っていない。当局は、国際法の下で義務づけられている収容の代替手段を検討したこともなかった[6]。この点で作業部会は、入管被収容者の保釈の水準に関する議論の対象とはなっていない主張に留意する。作業部会は、入管手続中に収容された者が支払うことができないような過度に高い保証金を設定することは、事実上、過大な保証金は収容されている者に収容の真の代替手段を提供しないため、収容の代替手段の要件を満たすとは言えないことを想起する[7]。

77. 作業部会は、両氏が収容される前に、それぞれ13年、30年と非常に長い期間日本に住んでいたことを特に問題視しており、当局はそれを考慮に入れるべきであった。作業部会は、政府が回答の中で、出入国管理及び難民認定法の規定に関する情報を提供しただけで、同法がYengin氏とSafari Diman氏の具体的な状況にどのように適用されたかについての詳細な情報を提供していないことに留意している。

78. さらに、作業部会は、Yengin 氏と Safari Diman 氏が 2 週間またはそれ以上の、一時的な解放期間を定期的に与えられ、再び収容されることを常に恐れながら過ごしていたという、争いのない主張について懸念している。作業部会は、このような慣行が、移住(出入国管理)の状況下でのいかなる収容も最後の手段であり、また、その収容が必要性と合理性の要件を満たすことを要求する基本原則に反するものであると考える。作業部会が改定審議結果第5号(パラ22)で説明したように、合理性の要素は、個々のケースごとに、正当な目的のために収容が課せられることを要求するものである。これは、収容を正当化する正当な目的である理由を明確に定義し、網羅的に列挙した法律によって規定されなければならない。収容を正当化する理由には、非正規の状況にある者の本人確認の必要性や、更なる手続のために本人の出席が必要な場合の逃亡の危険性などが含まれる。

79. Yengin氏とSafari Diman氏は、収容の理由について説明を受けていない。さらに、政府は回答の中でそのような説明を一切していない。実際、作業部会としては、断続的に解放される期間を挟みつつ、10年以上にわたって6ヶ月から3年もの期間、個人を収容することを正当化する正当な理由があるというのは受け入れがたい。したがって、作業部会は、事実上、出入国管理及び難民認定法は、無期限の入管収容を許すものであり、これは、 自由権規約第 9 条(1)に基づく日本の義務と両立しないため、恣意的なものであると考える。

80. さらに、作業部会は、身体の自由を奪われた者が裁判所に手続を持ち込む権利に関する救済及び手続に関する国連の基本原則及びガイドラインによれば、拘禁の合法性について裁判所で異議を唱える権利は、民主主義社会における合法性を維持するために不可欠な、独立した人権であることを想起している[8]。この権利は、実際のところ国際法の確立した規範であり、あらゆる形態の身体の自由の剥奪[9]、すなわち「刑事手続目的の拘禁だけでなく、…移住者の収容、身柄引渡しのための拘禁を含む行政及び他の法律分野の下での拘禁を含む身体の自由の剥奪のすべての状況」に適用される[10]。さらに、「拘禁の場所や法律で使用されている法律用語にかかわらず」適用される。いかなる形態による身体の自由の剥奪であっても、司法による効果的な監視とコントロールの対象とならなければならない」[11]。

81. 今回のケースでは、Yengin氏とSafari Diman氏は10年以上にわたってかなりの期間、移住者としての(出入国管理上の)地位のために繰り返し収容された。いずれのケースも、収容の適法性に異議を唱えることができるよう、司法当局の前に連れてこられることはなかった。作業部会は、あらゆる形態の拘禁に対する司法による監視は、個人の身体の自由の基本的な保障であり[12]、拘禁に法的根拠があることを保証するために不可欠であることを強調する。Yengin 氏と Safari Diman氏には、自由権規約第 9 条(4)に違反して、これが認められなかった。

82. したがって、作業部会は、Yengin 氏と Safari Diman 氏の繰り返された収容は、法的根拠を欠く恣意的なものであり、カテゴリー I に該当すると結論付けている。

83. 作業部会は、日本の出入国管理及び難民認定法の、国際法及び特に自由権規約の下での日本の義務との両立性について、深刻な懸念を表明する。作業部会は、この法律があらゆる人の個人の身体の自由の権利を適切に反映することを保証するように、この法律を速やかに見直すよう政府に要請する。

カテゴリーII

84. 情報源はカテゴリーⅡに基づく提出を行っていないが、作業部会は、Yengin 氏と Safari Diman氏の収容の唯一の理由は、彼らが日本で庇護を求めており、この地位の認定のための申請を行っていたことであることが提出資料から明らかであると考えている。この点については、政府は異議を申し立てていない。

85. 作業部会は、庇護を求めることは犯罪行為ではなく、それどころか、庇護を求めることは、世界人権宣言第 14 条に明記された普遍的な人権であることを改めて表明する[13]。作業部会はまた、移住(出入国管理)の文脈における自由の剥奪は最後の手段でなければならず、収容の代替手段は比例性の要件を満たすために模索されなければならないことを再確認している[14]。さらに、自由権規約委員会が身体の自由と人の安全に関する一般的意見第 35 号(2014年)で論じているように、違法に締約国の領域に入った庇護希望者は,彼らの入国について記録し,彼らの主張を記録し,疑いがある場合には身元を特定するために,初期の短期間,収容され得る。彼らの主張の審理中もさらに収容することは,逃亡の個別的蓋然性,他者に対する犯罪の危険又は国家安全保障に反する行為の危険といった個人特有の特別な理由がない場合,恣意的になるだろう(パラグラフ18)。

86. 今回のケースでは、Yengin 氏と Safari Diman 氏は、日本の当局によって何らの理由もなく繰り返し収容された。これが、彼らの入国について文書化したり、身元を確認したりするなどの正当な目的のために行われたものではないことは、作業部会にとって明らかである。実際、作業部会は、Yengin 氏と Safari Diman 氏が収容されたのは、世界人権宣言第 14 条に謳われている庇護を求める権利を正当かつ平和的に行使するためであったと確信している。したがって、彼らの収容は恣意的なものであり、カテゴリーIIに該当する。

カテゴリーIV

87. 作業部会は、庇護希望者、移住者または難民が、行政的または司法的な見直しや救済の可能性のない長期の行政収容を受けている場合、収容は恣意的であり、カテゴリーIVに該当することを想起する。

88. 作業部会は、Yengin氏とSafari Diman氏のように、拘禁の合法性に異議を唱える権利は、移住(出入国管理)の文脈で拘禁された者を含め、拘禁されたすべての者に属することをすでに想起している。

89. 作業部会は、政府は、Yengin 氏と Safari Diman 氏が 10 年の間に 6 ヶ月から 3 年以上の期間にわたって繰り返し収容されたとの主張に異議を唱えていないことに留意している。Yengin氏が拘束された期間の合計は5年近く、Safari Diman氏が拘束された期間は4年半近くである。この間、作業部会が既に明確化しているように、彼らが収容の適法性に異議を唱えるために司法当局に出頭する機会を与えられたことは一度もない。また、国際法で求められているように、時の経過による状況の変化に留意しながら、収容の適法性を継続的に確保するための定期的な司法審査も行われていない[15]。作業部会は、政府は、回答が遅れているにもかかわらず、Yengin 氏と SafariDiman 氏の具体的な事例について何ら説明を行っていないことに留意する。

90. さらに、作業部会がすでに指摘しているように、移住(出入国管理)手続の過程での収容は、個々のケースにおいて、合理性、必要性および比例性という累積的な要素を満たさなければならない[16]。このことから、移住(出入国管理)の文脈で収容される各人について個別の評価が行われることが必要とされる。今回のケースでは、Yengin 氏も Safari Diman 氏も、それぞれのケースの特定の状況に照らして、収容が合理的、必要性および比例性を有するかどうかを確認するための個別の評価を受けていない。作業部会は、当局の要請に従順であり、何度も収容された後も最初の要請に応じて当局に出頭した者に対する収容が適切であるとみなされたことに留意している。さらに、両者とも何十年も日本に住んでおり、どちらも逃亡の危険性や社会への危険性がないことは明らかであった。彼らが継続し、繰り返し収容された唯一の理由は、庇護を求める正当な権利を行使した彼らを罰することを当局が望んだことである。作業部会は、政府はその回答の中で、彼らが繰り返し収容された理由を提示していないと認める。

91. さらに、作業部会にとっては、彼らのいずれかがいつでも再び収容され、収容の適法性に異議を唱える有効な手段も、いつ釈放されるかもしれないという知識もないまま、再び収容される可能性があることは明らかである。したがって、作業部会の意見では、彼らは、移住(出入国管理)の文脈において強制的な無期限収容に服することになる。作業部会は、移住(出入国管理)手続中の個人の無期限収容は正当化できず、恣意的であることを強調する[17]。そのため、作業部会は、移住(出入国管理)手続の過程の収容の最長期間は法律で定められなければならず、法律で定められた収容期間が満了すると、収容された者は自動的に解放されることを要求してきた[18]。

92. したがって、作業部会は、Yengin 氏と Safari Diman 氏が無期限の入管収容を受けたことは、日本が国際法、特に自由権規約第 9 条の下で負う義務に反していると認める。したがって、作業部会は、Yengin 氏と Safari Diman 氏は、世界人権宣言第 8 条及び第 9 条、並びに自由権規約第2 条(3)及び第 9 条に違反して、収容に異議を唱えるための有効な救済手段を否定されており、したがって、彼らの収容は恣意的であり、カテゴリー IV に該当すると結論付ける。

カテゴリーV

93. 情報源はカテゴリーVでの提出を行っていないが、作業部会は、提出資料からはこのカテゴリーでも審査の対象となると考えている。

94. 作業部会は、情報源が提示し政府が否定していない Yengin 氏と Safari Diman 氏の事例と、日本で何年にもわたって難民認定申請をしてきた非正規移住者が繰り返し収容されていることとの間にパターンがあると観察している。Yengin氏とSafari Diman氏は、それぞれ2008年と2010年以来、日本の入管収容施設への入所、出所をしてきており、作業部会が既に明確化しているように、これは不当に長い期間である。その理由は、彼らの移住者としての法的地位のみである。

95. 作業部会は、2007 年に、拷問等禁止委員会が、日本における難民認定申請者に対する司法審査の欠如と、移住(出入国管理)の文脈での収容の長さに懸念を表明したことを指摘し、同委員会は、長期的、さらには無期限にさえなる可能性があると認めた[19]。2013 年、日本の状況のその後の審査において、拷問等禁止委員会は、再びその懸念を繰り返し表明し、日本における移住(出入国管理)の文脈での収容が最後の手段としてのみ使用されることを勧告した[20]。

96. 2014年、自由権規約委員会は、難民認定申請に関する否定的な決定に対し、それを猶予する効果を持つ独立した不服申立てメカニズムがないことに懸念を表明した。また、適切な理由が与えられず、収容決定の独立した審査が行われないまま行政機関による拘束が長期化していることに懸念を表明した[21]。2018年、人種差別撤廃委員会は、締約国による難民認定申請の認定率が非常に低いと報告されていること(11,000件の申請のうち19件)に懸念を表明した。また、同委員会は、難民認定申請者の拘束のための一定の期限を定めないまま、不定期間の拘束が行われていることにも懸念を示した[22]。

97. 作業部会は、情報源から提起された問題は、10 年にわたる条約機関の懸念を繰り返すものと認める。したがって、日本においては庇護申請をしている個人に対して差別的な対応をとることが常態化しており、移住者としての法的地位を理由としてなされたYengin氏とSafari Diman氏の収容については、これらはすべて自由権規約第 26 条に違反しており、カテゴリー V に該当する。作業部会は、さらなるアクションのため、本件を、移民の人権に関する特別報告者に付託する。

98. 作業部会は、報告されているYengin氏とSafari Diman氏の健康問題について懸念を表明する。反論されていない情報源からの主張は、彼らが深刻な精神状態にあると診断されたことを示しており、両氏が行ったハンガーストライキの結果、彼らの身体的健康が懸念されていることを示している。作業部会がここに確認したように、Yengin氏とSafari Diman氏が受けた恣意的な身体の自由の剥奪は、彼らの状態を悪化させている可能性が高い。作業部会は、日本の当局に対し、Yengin氏とSafari Diman氏の健康に対する権利が正当に尊重され、保護され、彼らがすべての適切な治療と投薬を無料で受けることを保障するよう求める。作業部会は、本件を、身体的及び精神的健康の最高の達成可能な水準を享受するすべての人の権利に関する特別報告者に付託する。

99. 作業部会は、恣意的な身体の自由の剥奪に関連する日本政府の深刻な懸念に対処するため、日本政府と建設的に協力する機会をもつことを歓迎する。2016年11月30日、作業部会は、政府に対し、国別訪問(カントリー・ビジット)を実施するよう要請書を送付し、作業部会がジュネーブで開催した国連事務所日本政府代表部及びその他の国際機関との会合を通じて、そのような訪問の可能性をさらに議論するための政府の関与を歓迎する。2018年2月2日、作業部会は、政府に対し、国別訪問(カントリー・ビジット)の実施を求める更なる要請書を送付し、人権理事会の特別手続への協力を強化する意思の表れとして、政府から積極的な回答が得られることを期待する。

決定

100. 以上のことを踏まえ、当作業部会は以下の意見を示す。
Deniz Yengin氏とHeydar Safari Diman氏の身体の自由の剥奪は、世界人権宣言第2条、第3条、第8条、第9条、第14条、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)第2条、第9条、第26条に違反し、恣意的なものであり、カテゴリーⅠ、Ⅱ、Ⅳ、Ⅴに該当する。

101. 作業部会は、日本政府に対し、Yengin氏及びSafari Diman氏の状況を遅滞なく是正し、世界人権宣言並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約に定められたものを含む関連する国際的規範に適合させるために必要な措置を講じるよう要請する。

102. 作業部会は、本件のすべての状況を考慮に入れ、適切な救済措置は、国際法に従って、彼らに補償その他の賠償を受ける法的強制力のある権利を与えることであろうと考える。

103. 作業部会は、政府に対し、Yengin氏とSafari Diman氏の恣意的な身体の自由の剥奪を取り巻く状況について完全かつ独立した調査を確保し、彼らの権利を侵害した責任者に対して適切な措置を講じるよう求める。

104. 作業部会は、日本が自由権規約の下で負う義務との整合性を確保するため、出入国管理及び難民認定法を見直すよう政府に要請する。

105. 作業部会は、作業方法の第 33 条(a)項に従い、適切な措置をとるために、本事案を移民の人権に関する特別報告者及び身体的及び精神的健康の最高の達成可能な水準を享受するすべての人の権利に関する特別報告者に付託する。

106. 作業部会は、政府に対し、利用可能なあらゆる手段を用いて、可能な限り広く本意見を発信するよう要請する。

フォローアップ手順

107. 作業部会は、作業方法の第20条に従って、作業部会は、情報源及び政府に対し、本意見においてなされた勧告のフォローアップで取られた行動について、以下を含む情報を提供するよう要請する。
(a) Yengin氏とSafari Diman氏に補償金その他の賠償金が支払われたかどうか。
(b)Yengin氏及びSafari Diman氏の権利侵害に関する調査が行われたかどうか、また行われた場合にはその調査の結果。
(c) 今回の意見に沿って、日本の国際的な義務との調和を図るための法改正や実務の変更が行われたかどうか。
(d) 本意見を実施するために他の措置を講じたかどうか。

108. 政府は、本意見の勧告を実施する上で直面した可能性のある困難や、作業部会の訪問などによる更なる技術支援が必要かどうかについて、作業部会に報告するよう求められる。

109. 作業部会は、情報源及び政府に対し、本意見の送信日から6ヶ月以内に上記の情報を提供するよう要請する。しかし、作業部会は、本件に関連して新たな懸念が生じた場合には、意見のフォローアップとして独自の措置をとる権利を留保する。このような措置をとることにより、作業部会は、その勧告の実施の進捗状況や措置をとらなかった場合には、人権理事会に報告することが可能となる。

110. 作業部会は、人権理事会がすべての国に対し、作業部会に協力するよう奨励し、作業部会の意見を考慮し、必要に応じて、恣意的に自由を奪われた者の状況を救済するための適切な措置を講じるよう求め、また、その措置を作業部会に報告するよう要請したことを想起する[23]。

[2020年8月28日採択]

[1] 意見第 70/2018 号、パラ 32。
[2] 意見第 70/2018 号、パラ 32–33。人権理事会決議 42/22 パラグラフ 7 及び 9、 A/HRC/36/38 パラ 15 も参照。
[3] 自由権規約委員会、一般的意見第 35 号、パラ 12。
[4] 改定審議結果第 5 号 パラ 12 。
[5] 同上、パラグラフ 14、19、22。14、19 及び 22。
[6] 同上、パラグラフ 16 と 24。A/HRC/30/37 パラ 111 も参照。
[7] 意見第 49/2020 号参照。
[8] A/HRC/30/37、パラ 2–3。
[9] 同上、パラ 11。
[10] 自由を奪われた者が裁判所に手続を提起する権利に関する救済及び手続に関する国際連合の基本原則及び ガイドライン(A/HRC/30/37、annex)、パラ 47(a)。
[11] 同上、パラ 47(b)。
[12] A/HRC/30/37, パラ 3。
[13] 例えば、意見第 28/2017 号、第 42/2017 号、第 72/2017 号、第 21/2018 号、第 50/2018 号、第 50/2018 号、第74/2018 号、第 1/2019 号、第 2/2019 号、第 7/2019 号、第 74/2019 号及び第 49/2020 号参照。改定審議結果第 5 号パラ9も参照。
[14] A/HRC/10/21, パラ 67。改定審議結果第 5 号パラ 12 及び 16 も参照。
[15] 改定審議結果第 5 号パラ 14。
[16] 同上、パラ 20。
[17] 同上パラ 18 および意見 No.42/2017、No.28/2017、No.7/2019。A/HRC/13/30 パラ 63 も参照。
[18] 改定審議結果第 5 号、パラ 25。A/HRC/13/30 パラ 61、および意見第 7/2019 号も参照。
[19] CAT/C/JPN/CO/1, パラ 14。
[20] CAT/C/JPN/CO/2, パラ 9。
[21] CCPR/C/JPN/CO/6,パラ 19。
[22] CERD/C/JPN/CO/10-11, パラ 35。
[23] 人権理事会決議 42/22 パラ 3 及び 7。

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