発言者:谷合正明議員(公明党)
日付:2025年5月20日
会議:第217回国会 参議院 法務委員会
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テキスト抜粋 第217回国会 参議院 法務委員会 第10号 令和7年5月20日
○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
まず私は、今日は、令和五年に改正しました入管法、この委員会でも大きな論議になりました令和五年改正入管法について振り返っていきたいと思っております。
このときの国会審議において、送還を忌避している外国人のうち日本で生まれた子供について、本人には帰責性がないのに親が送還を忌避したことにより我が国での在留が長期化し、就職などの将来の不安があったり、健康保険に加入できず十分な医療を受けられないなど、様々な困難を抱えているということが明らかになりました。その対応が問題となったということであります。参議院審議では、与野党から声が上がりまして、当時、齋藤法務大臣が検討していく旨を答えられていたということであります。
法案成立後の令和五年の八月四日、齋藤法務大臣が子供に対する在留特別許可の方針を示したということになっております。この方針が示された経緯や基本的な考え方について、改めて法務省に伺いたいと思います。
○政府参考人(杉山徳明君) 令和五年の改正入管法によりまして、保護すべき者を適切に保護する一方、送還すべき者はより迅速に送還することが可能になった結果、今後は在留資格のないまま在留が長期化する子供の増加を大きく抑止することが可能となります。
これを前提といたしまして、お尋ねいただきました方針につきましては、本邦で出生し既に在留が長期化している子供に対しまして、改正前の入管法の下で迅速な送還を実現することができなかったことを考慮して、令和五年改正法の施行日である令和六年六月十日までに我が国で出生して小学校、中学校又は高校で教育を受けており、引き続き我が国で生活していくことを真に希望している者について、親に看過し難い消極事情がある場合を除き、家族一体として在留特別許可をする方向で検討するというものでございます。
○谷合正明君 つまり、このときの措置というのは、法改正前に迅速な送還ができなかったことを考慮するということでありまして、そのときにいた対象となる人たちを一括して判断した、審査した、判断したということが特別な措置だという理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(杉山徳明君) 委員御指摘のとおり、法改正を前提といたしまして、それ以前は、難民認定申請をすることによって送還が一切できなくなっていたというような事情があります。改正後は、三回目以降、難民認定申請三回目以降は、送還することができなかったということで、今後は在留が長期化しないということが前提となっているということでございます。
○谷合正明君 帰責性のある親を除いて子供のみに在留特別許可を与えますと、子供の生活が立ち行かなくなってしまう。また、その一方、立ち行かなくなってしまう一方で、帰責性のある親を含め在留特別許可を与えるものとするには出入国在留管理行政における支障がある場合もありまして、この線引きが難しいという問題があるわけですけれども、そのときの判断というのは、子供の利益に十分配慮をいただいた、適切に対応したものと私は評価をしています。
対象となった外国人の数、結果的に特別許可を受けた外国人の数について改めて確認したいと思います。
○政府参考人(杉山徳明君) 令和四年の十二月末時点で在留資格のない送還忌避者が四千二百三十三名おりました。そのうち、対象となる、この方針の対象となる者、すなわち本邦で出生した子供が二百一人でございました。この二百人のうち、この方針によりまして在留特別許可された子供は百七十一人となっております。
○谷合正明君 これに対しまして、今回のその方針の範囲を拡大して、在留特別許可されなかったケースにも在留特別許可すべきという意見もまだあります。一方で、それは特例の上に特例を重ねるということにもなります。
この方針によっても許可されなかった外国人についての対応について、改めて入管庁に対応を確認したいと思います。
○政府参考人(杉山徳明君) 委員御指摘、先ほども御説明させていただいたとおり、今回の方針は、親に看過し難い消極事情がある場合を除き、家族一体として在留特別許可をする方向で検討するというものでございました。
この中で、対象者の中で在留特別許可されなかった子供ということにつきましては、その世帯に看過し難い消極事情を有している者がいることなどを理由に在留特別許可をされなかった者でありまして、既に退去強制令書の発付を受けて退去強制が確定している者でございます。退去強制が確定した外国人は速やかに退去するということが原則でありますことから、法令に従い、速やかな送還に努めているところでございます。
○谷合正明君 この方針が示された当時いた外国人、当時いた、そのときの対象となる外国人に対する対応がそういうことだということは説明がありました。
その上で、今後の話になりますけれども、今回の方針に基づく措置については、昨年九月二十七日に結果の公表が行われて終了したものというふうに承知をしております。この措置は、先ほども答弁がありましたけれども、法改正が施行される前、それは迅速な送還ができなかったということを考慮したということであって、この措置というのは一回限りのものであるということで私も承知してきたところでございます。
今後、令和五年改正入管法に基づく速やかな送還を進めていくためには、この同様の措置を繰り返さないことを法務大臣が明言することも重要であると考えますけれども、法務大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 今回の方針に基づく措置ということで申し上げれば、まさにこれは今回に限り、家族一体として在留特別許可をする方向で検討するというものでありますので、そういうことで申し上げれば、これと同様の措置を今後繰り返し行うということについては考えておりません。このことは繰り返し答弁を申し上げたところでありますので、いま一度ここはしっかりと申し上げたいと考えております。
○谷合正明君 令和五年の入管法の改正の一つの目的としては、例えば難民認定審査、これが非常に時間が掛かる、長期化しているということで、保護すべき難民を迅速に保護しなきゃならないという趣旨の下、様々改正がなされたところであります。
令和六年の難民認定数が先般公表されました。審査期間は平均約二年十一か月と承知しております。難民認定の審査期間がいまだ長いということを懸念しています。早期に審査を行うとされているA案件、すなわちこの難民該当性が高いと思われる事例ですけれども、そのA案件に振り分けられた場合でも二年以上待たされている事例も珍しくないと聞いております。
そこで、A案件だとかB案件とかC案件とかD案件とか、入管庁の方では振り分けられていると承知しておりますけれども、改めて、令和五年の法改正、この入管法によって審査が、どのようにこの審査期間が変化しているのか。その審査期間の短縮に向けた取組について伺いたいと思います。
○政府参考人(杉山徳明君) 難民認定申請において、一次審査の平均処理期間を申し上げますと、令和五年改正入管法の施行の前後である令和四年から令和六年にかけて申し上げますと、令和四年が約三十三・三か月、令和五年が約二十六・六か月、令和六年が約二十二・三か月と、年ごとに短縮している状況にあります。
そのような中で、今般新たに案件の振り分け分類別の平均処理期間を集計いたしましたところ、委員が御指摘いただきましたA案件、難民等である可能性が高いと思われる案件でございますが、A案件の平均処理期間については、令和六年におきまして、暫定値ではありますが、約十・一か月と。平均処理期間が約二十二・三か月でございますので、この平均処理期間を大きく下回る期間で処理することができており、保護すべき案件については可能な限り迅速に処理しているということが明らかになったかと考えているところでございます。
もっとも、申請全体の平均処理期間については、標準処理期間である六か月を大きく上回る状況が継続しております。この点につきましては、本年三月に大臣から、難民等認定申請の早期処理についてその運用を改善してスピードアップできるようにという御指示をいただいているところであり、早期に対策を講じることができるよう鋭意検討を行っているところでございます。
○谷合正明君 難民該当性の高いA案件について十・一月ということでありますけれども、参考までに、逆に、その難民該当性が低いと言われている、判断されているB案件、あるいは同じような内容の申請が繰り返されているとされているC案件ですとか、またDもありますかね。これ、ちょっとA以外の数字についても、そのBやCやDが何を指すのかを含めて御答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(杉山徳明君) 委員御指摘いただいたまずB案件といいますのは、申立て内容からして難民該当性が低いと思われる案件でございます。それについては、平均処理期間が六・三か月というふうになっております。
委員が御指摘いただいたC案件といいますのは、申立てが、同じ内容の申立てが再度なされたというような案件を内容としておりまして、その平均処理期間は二十一・〇か月ということとなっております。
○谷合正明君 ほかにもありますか、Dとか。
○政府参考人(杉山徳明君) そのほか、それ以外の案件ということでD案件というのが、ABCDのD案件でございます。実は今、このD案件というものに振り分けられているものがかなり多くなっております。その平均処理期間は二十・〇か月ということでございます。
いずれにせよ、平均処理期間の短縮、大臣の御指示もありますので、鋭意その短縮方策を検討してまいりたいと考えているところでございます。
○谷合正明君 令和五年の改正入管法のときには、この難民認定申請については、複数回申請については全く同じ理由の場合はこれ制限掛けるということになったわけですから、そういう意味では、同じ申請のものが来るというC案件が二十一か月ということは、もうほぼ二年ということであります。やはりこの辺り対応していかないと、全体の審査期間の迅速化にはつながらないのではないかというふうに思っております。
その上で、難民審査に必要な入管庁の職員、スタッフ体制、予算というものを十分に確保していくということが求められております。この点についての答弁を求めたいと思います。
○政府参考人(杉山徳明君) スピードアップのために人員の確保が必要だという御指摘かと思いますが、入管庁におきましては、難民等の審査を適正に実施するため令和七年度に十人の増員がなされているほか、業務状況に応じて機動的な応援派遣を行うなどの体制整備を図ってきたところでございます。
適正な出入国在留管理行政を実現する上で、人員及び予算を含めた入管庁の体制整備を図ることは重要であると認識しておりまして、引き続き、必要な体制整備に最善を尽くしてまいりたいと考えているところでございます。
○谷合正明君 保護すべき者を的確に、また迅速に保護していくということが本当に基本中の基本だと思いますので、しっかりと対応していただきたいというふうに思います。
最後になりますけれども、国際刑事裁判所、ICCに対する支援ということについて大臣に伺いたいというふうに思います。
何度かこの質問をさせていただいておりますが、ICCは重大な国際犯罪行為の抑止と法の支配に不可欠な機関でありますが、近年、一部の国による介入や圧力がその独立性と機能を脅かしています。日本は、ICC規程の締約国として、国際的な法の支配を守る重要な責任を負っています。こうした状況下、法務省として、ICCへの人的支援の強化ですとか協力の拡充を通じて、ICCの独立性と有効性を支えるべく、全力を尽くすべきだというふうに思います。
日本がこのICCへの対応方針というのをはっきりこれを示していくということが今大事だと私は思っておりますので、改めて法務大臣の見解と決意について伺いたいと思います。