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2023年 難民10大ニュース

1. 難民申請者の急増とホームレス化
 コロナ禍後、保護を求めて来日する難民申請者が急増している。11月の時点ですでに1万2500人を超え、過去最多の2017年に次ぐ人数となる見込みだ。支援団体には難民申請者の来訪が続いているが、唯一の公的支援の保護費も滞り、ホームレスになっている人も少なくない。政府は補正予算に保護費の追加を盛り込んだが、到底十分ではない。難民申請者の生存権を真に確保するための公的支援制度の確立が急務の課題となっている。
2. 参与員「臨時班」の実態が明らかに
 入管法改定案の審議中、難民の審査請求手続に関わる難民審査参与員のうち、2年間で約2500件も担当した参与員がいることが判明し、さらには「臨時班」と呼ばれる書面審査を中心に行うグループが存在することが明らかになった。審査請求は、申請者が口頭で訴える口頭意見陳述を行うのが基本だが、入管庁による臨時班への振分けによって、それが行われなかったケースが多数あったということになる。参与員は難民該当性を慎重に審査すべき立場にあるが、過去の審査が適切だったか、重大な疑義が生じている。
3. 本年3月大阪地裁ウガンダLGBT女性を難民と認める

 ウガンダLGBT難民女性、審査請求では「申立人の主張に係る事実が真実であっても、何らの難民となる事由を包含していない」として、難民審査参与員の口頭意見陳述不実施の上棄却、本年3月大阪地裁判決は女性の供述は信用でき、迫害のおそれがあるとして難民と認める。ビクトリアの滝ほどの落差、難民認定の国際水準から日本の難民認定実務がかけ離れていることを象徴している。いかにして、ここから脱却するか。

4. スーダン緊急避難措置
 スーダン国内で今年4月15日から武力衝突が発生していることを受けて、日本政府は、7月14日、日本に在留する正規滞在のスーダン国籍者等に対して「特定活動」の在留資格で日本滞在を認める緊急避難措置を発表した。しかし、すでに非正規滞在となっている者に在留資格付与を約束したものではないこと、「特定活動」から「定住者」などのより安定した在留資格への変更は認めていないこと、といった問題は残る。
5. 補完的保護対象認定制度スタート

 12月1日にウクライナ避難民などの紛争から逃れてきた人を難民に準じて保護するための補完的保護対象者認定制度の運用がはじまった。すでに複数のウクライナ避難民が新制度による保護を求めて申請を行ったようだ。内戦の続くミャンマー、4月に軍事衝突が勃発したスーダン、そして現在も報道が続くパレスチナなど、紛争は世界中で起きている。これまで適切に保護されてこなかった人々が新制度によって公正に保護されることを期待したい。

6. 子どもたちに在留特別許可
 8月、法務大臣は、「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針」を発表し、「今回限り」改正法施行時までに、「本邦で出生して小学校、中学校又は高校で教育を受けており、引き続き本邦で生活をしていくことを真に希望している子どもとその家族」に在留特別許可を与える方向で検討していると述べた。これをもって約140名ほどの子どもたちとその家族に在留特別許可が与えられる見通しとなり、現に在留特別許可を得た家族も出てきてはいる。これは、長年の市民・当事者らの運動の成果であると言えるが、親が非正規入国であった場合や一定以上の刑事罰を受けたことがある等の過去がある場合に、在留特別許可を真に必要とする子どもたちに在留特別許可を与えられない可能性があり、そもそも、施策を「今回限り」とするべきではないし、また、日本生まれでない子どもたちについて、あるいは、学校を卒業して成人している若者たちについてはどうなのかなどの懸念も残っており、在特を必要とする子どもたち(元子どもたち)と家族に「取りこぼしなく」在留特別許可が与えられる必要がある。
7. 入管法改悪
 2023年6月、多くの批判をよそに入管法改悪案が国会を通過してしまった。「難民鎖国」と揶揄されて久しい貧弱な日本の難民認定状況を更に悪化させる「送還停止効の例外規定」。原則収容主義からの脱却との触れ前であるが、実際には市民による非正規滞在者への監視を強化する為の「収容に代わる監理措置」等問題は山積みだ。改定法の大部分は2024年6月15日迄に施行される予定(補完的保護対象者は2023年12月1日から施行済)。
8. 難民専門部会の提言から8年越しの規範的要素の明確化
 2014年12月に「難民認定制度に関する専門部会」の報告・提言において,UNHCR諸文書も参照しつつ,難民認定の際の規範的要素を明確化することが求められてから8年以上が経過し,ようやく3月に「難民該当性判断の手引」が公表された。しかし,その内容は一部の進展をみつつも(ただ,裁判ではいまだ旧態依然の主張もみられる),UNHCR等が示す国際基準にはまだまだ遠く,しかも立証責任・立証基準等はいまだ何も語られていない。
9. アフガンのJICA現地職員ら114人を難民認定
 2021年8月のアフガニスタン政権崩壊後、日本に避難していた国際協力機構(JICA)の現地職員とその家族114人が、2023年7月に難民認定された。一度に難民認定された人数としては過去最大規模となる。政府は、2022年8月には、日本に退避していた在アフガニスタン日本大使館現地職員ら98人を難民認定しており、一斉の難民認定としては今回で二度目である。難民認定された人々が、日本社会に定着できるよう、継続的な定住支援が求められている。
10. 難民申請者の在留制限に対し国家賠償認める判決
 東京地裁は7月24日、3回目の難民申請者の「特定活動」の在留期間の更新を不許可とした東京入管局長の処分について、国家賠償を認める判決をした。改定入管法では3回目以上の難民申請者について、送還停止効の例外が定められたが、同判決は複数回の申請者であっても、難民条約の趣旨から、在留を認めるべき場合があることを示したものといえよう。また、在留資格を失って働けなかったことによる損害が認められた点も大きい。
2022年 難民10大ニュース
  1. 世界の難民/避難民の数が史上初の1億人越え 昨年から1000万人増加

  2. 入国制限の緩和。難民申請者数が増加。コロナ特活の終了(11月)

  3. ミャンマー緊急避難措置から1年

  4. 入管収容中のカメルーン国籍男性死亡事件の国家賠償判決

  5. 国籍法3条3項を新設する民法改正法案が国会で審議・可決

  6. 行政訴訟の裁判長が被告国側の訴訟責任者に

  7. 自由権規約委員会の日本審査と総括所見

  8. 在アフガニスタン日本大使館職員ら98人を難民認定

  9. ウクライナ避難民に対する日本政府の厚い支援

  10. 札幌高裁でトルコ・クルド人難民が逆転勝訴。トルコ国籍で初の難民認定

1. 世界の難民/避難民の数が史上初の1億人越え 昨年から1000万人増加

国連難民高等弁務官事務所は5月23日、紛争や暴力、迫害によって避難を強制された人の数が1億人を超えたと発表した。昨年末は約9000万人だった。1億人を超えるのは史上初めて。ウクライナ、エチオピア、ブルキナファソ、ミャンマー、ナイジェリア、アフガニスタン、コンゴなどの戦争や紛争によって避難を強いられる人が急増した。

【報道】 2022年5月23日・UNHCR「UNHCR:ウクライナ、世界各地の紛争により、強制移動の数が史上初の1億人超え」
2. 入国制限の緩和。難民申請者数が増加。コロナ特活の終了(11月)

 10月11日以降、新型コロナウィルス感染症に関する水際措置の見直しにより、外国人の新規入国制限が解除された。これにより、日本でも人の往来が再開されることになり、新たに日本に逃れてきて難民申請をする人も次第に増加している。一方、帰国困難者に対して認められていた特定活動の在留資格の特例措置が終了することになり、難民と認められなかった人が在留資格を継続できなくなることが懸念されている。

【政府】 入管庁「新型コロナウイルス感染症に関する在留諸申請について 帰国困難者に対する在留諸申請の取扱い」
3. ミャンマー緊急避難措置から1年

2021年5月に始まったミャンマー緊急避難措置。多数のミャンマー人が救済を得ている事実はあるものの,少数民族・ロヒンギャ等の非正規な滞在者が救済されない事態が続く。”緊急”の名が廃り,庇護の必要が高い人へのそれが実現していない。

【報道】 2022年11月6日・神田和則/TBS News「仕事禁止、保険なし…救済の手から取り残された在日ミャンマー人 「緊急避難措置」はどこへ」
4. 入管収容中のカメルーン国籍男性死亡事件の国家賠償判決
 2014年3月30日に東日本入国管理センターで死亡したカメルーン国籍男性の遺族が訴えた国家賠償請求訴訟で、9月16日、水戸地方裁判所は、救急車を呼ばなかったセンター職員らの注意義務違反を認め、165万円の賠償を命じた。「I’m Dying」と叫び、苦痛のあまりベッドから転落してしまった男性を、床に寝かせたまま翌朝まで放置し、死亡させてしまった責任を国が負うのは当然である。このような入管施設内の医療放置の根底には、被収容者に対する慢性的な差別意識があると考えざるを得ない。
5. 国籍法3条3項を新設する民法改正法案が国会で審議・可決

第210回国会が12月10日に閉会。民法等の一部を改正する法律案が審議・可決された。これに伴い、認知に基づく国籍取得を認める国籍法3条に、認知に血縁関係がないことが判明した場合、一度取得した日本国籍が遡って「剥奪」される3項が新設。この新設に反対する弁護士有志は、全難連を含む共同提案団体とともに意見書を公表、ロビー活動を行ってきた。結果、法案には、これにより影響を受ける子の法的地位の速やかな安定や施行後の課題の検討等を求める附帯決議が採決された。今後の実務運用が注目される。

【法律】 第210回国会提出法案 閣法12号
【声明等】 2022年10月28日・弁護士有志ほか「民法等の一部を改正する法律案による、国籍法3条3項の新設に反対する意見書 」
6. 行政訴訟の裁判長が被告国側の訴訟責任者に

本年9月1日、最高裁判所と法務省の間で、前日まで、難民事件を含む行政訴訟の専門部の裁判長だった裁判官を行政訴訟の国側の責任者である法務省訟務局長に就任させるという人事がなされた。これにより、係属中の行政事件について裁判官合議体が行ってきた評議の内容を訟務局長が知っているという異常な事態が生じることになり、10月には、300名を超える弁護士や約50の弁護士団体の有志が抗議声明を出した。こうした裁判官と検察官の間の人事交流は、裁判所の独立・裁判の公正の観点から問題が指摘され、刑事分野ではすでに廃止されている。

【声明等】 2022年11月1日 弁護士有志ほか「行政訴訟の裁判長を被告国側の訴訟責任者に異動させた人事に抗議する申入書 」
【報道】 2022年11月9日・論座/弁護士 児玉晃一「司法の公正を疑わせる〈裁判官・検事〉の交流人事 裁判長が行政訴訟「被告」トップへ、直ちに廃止を求める」
7. 自由権規約委員会の日本審査と総括所見

自由権規約委員会は2022年10月13日および14日に日本の定期報告を審査し、同月28日に総括所見を採択した。委員会は日本の難民認定率の低さや入管収容施設の劣悪な状況に懸念を示し、収容に司法審査を導入して必要最低限にとどめることや収容施設での処遇について適切な措置をとることを勧告した。11月18日には新たに東京入管の被収容者が死亡していて、入管収容制度全体を見直す必要性は高い。

【報告】 人権差別撤廃NGOネットワーク NGO共同レポート(ERDネット)
なんみんフォーラム(FRJ) NGOレポート
8. 在アフガニスタン日本大使館職員ら98人を難民認定

日本に退避したアフガニスタン人のうち、首都カブールの日本大使館で働いていた現地スタッフとその家族ら98人が、2022年8月に集団で難民認定を受けた。異例の早さでの難民認定で、難民受け入れ拡大の契機となり得る。しかし、日本に退避した在アフガニスタン日本大使館現地スタッフの中には、帰国させられたものもいる。また、難民認定を受けた98人は日本に逃れてきたアフガニスタン人の一部にすぎない。日本政府は、庇護を必要とする全てのものに対して、公平で迅速な保護を与えるべきである。

【声明等】 2022年8月23日・全難連「 在アフガニスタン日本大使館職員及びその家族の集団的難民認定に対するコメント」
【報告】 2022年3月8日・アフガニスタン待避者受け入れコンソーシアム「アフガニスタン退避者等概況調査」
【報道】 2022年9月16日・信濃毎日新聞(社説)「アフガン現地職員 帰国要請は人道に反する」
  2022年8月29日・信濃毎日新聞(社説)「アフガン難民認定 制度の根幹を改めねば」
9. ウクライナ避難民に対する日本政府の厚い支援

本年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略により、1500万人を超える人々が国外へ避難した。日本政府は国際社会のウクライナ支援と軌を一にしてすでに2000人を超える退避者を日本に受け入れた。支援の内容は、渡航手続き及び渡航費用の支援、自治体や企業に対する支援要請を通じての住居、仕事の確保、日本語学習支援、身寄りのない人に対する生活費の支援等、これまでの日本における難民支援より格段に充実している。しかし、日本政府が音頭をとったアフガン復興で受け入れた元留学生が日本の大学に避難を求めていること等に日本政府は冷淡で、またミャンマー国軍のクーデターから逃れてきた人々に対する保護も不十分である。これらの人々に対しウクライナと平等の保護が望まれる。

【声明等】 2022年3月11日・全難連「ウクライナ、ロシア出身者の迅速な保護等を求める声明 」
【政府】 内閣官房「ウクライナ避難民対策連絡調整会議」
入管庁「ウクライナ避難民に関する情報」
  文部科学省「ウクライナから避難されている方々への支援」
 

外務省「ウクライナ情勢に関する対応」

【報道】 2022年11月9日・朝日新聞「難民受け入れ「統一的な対応」を グランディ国連難民高等弁務官」
10. 札幌高裁でトルコ・クルド人難民が逆転勝訴。トルコ国籍で初の難民認定

5月20日、札幌高裁が、トルコ国籍クルド人男性について難民該当性を認め、難民不認定処分を取消す判決を言渡した。同判決の確定を受けて8月9日、法相は、原告に難民認定処分を行った。トルコ国籍者への難民認定として、日本では史上初である。日本のトルコ国籍者の難民認定申請件数累計9,409件で国別で4位だが(当会HP統計参照)、認定は0で、他の先進諸国の、トルコ国籍者への高い認定率との差が顕著だった。当会は歓迎の声明を発している。

【声明等】 2022年8月10日・全難連「トルコ国籍クルド人の初めての難民認定に関する声明」
2022年5月31日・全難連「トルコ国籍クルド人男性に係る迅速な難民認定を求める申入れ」

2021年 難民10大ニュース
  1. チャーター便送還違憲判決

  2. 難民条約加入40年
  3. 入管法改定政府案の見送り、野党の対案

  4. ウィシュマさん事件(8月、政府調査報告)

  5. 国連特別報告者らが政府入管法改正案を国際法違反と指摘

  6. 明暗を分けた五輪代表選手の庇護

  7. サッカーミャンマー代表選手の難民認定
  8. ミャンマー緊急避難措置

  9. アフガニスタン問題

  10. 在留資格のない難民申請者の社会保障問題 医師の団体が被仮放免者への社会保障等の改善を国に求める  
1. チャーター便送還違憲判決
 9月22日、東京高裁は、難民異議棄却告知後直ちに収容し、翌日チャーター便により強制送還されたスリランカ人男性2名について、憲法32条が保障する裁判を受ける権利を侵害したとして国に対して慰謝料各30万円を支払よう命じる判決を下した。
 これに先立つ1月13日、名古屋高裁でも同様の事件で司法審査を受ける機会を侵害したとして国に賠償を命じる画期的な判決が下されていたが、憲法違反の主張は斥けられていた。東京高裁判決は、名古屋高裁判決の進化形といえる。

(参考情報)
【声明等】 全難連声明「東京高裁の送還違憲判決に従い難民申請者を含む外国籍者の裁判を受ける権利を保障するよう求める声明」(2021年9月28日)
【政府】 法相会見「人権,出入国在留管理行政等に関する質疑について」(2021年10月15日)
  法相会見「東京高等裁判所における国家賠償請求訴訟判決に関する質疑について」(2021年10月8日)
  令和3年6月17日付け入管庁警第82号出入国在留管理庁出入国管理部長指示「送還実施に当たっての留意事項について」 – 開示行政文書 (全難連会員ページ)
【報道】 「(社説)入管違憲判決確定 人権意識の欠如、著しい」秋田魁新報(2021年10月13日)
  「(社説)入管対応に違憲判決 人権顧みぬ体質改めよ」中國新聞(2021年10月2日)
  「(社説)送還違憲判決 断罪された入管の「闇」」朝日新聞(2021年9月28日)
  「(核心評論)「強制送還に違憲判決」 裁判所は入管に歯止めを 時代遅れの判例見直せ」共同通信/東奥日報(2021年9月28日)
  「(社説)裁判封じた送還「違憲」 人権無視した入管を糾弾」毎日新聞(2021年9月25日)
2. 難民条約加入40年
 1981年に難民条約を批准し,82年から施行された難民認定制度が40年を迎えた。当初60日ルールのもとで難民鎖国と言われた時代は2005年に変化し,新たに難民審査参与員制度も導入されたものの,近年一次は1%に満たず,不服の段階では0.1%にも満たず,難民条約締約国としての義務の履行がなされない状態が続いている。
 いま,難民保護の本旨が尽くされない状態で,送還停止効の一部解除の法案が提出される等,難民保護の本筋に向かうのか否か,日本は再び岐路にたっている。

(参考情報)
【声明等】 全難連提言「国際的に保護を必要とする難民等の受入れのための難民認定手続・保護基準の改革に向けた提言」(2021年11月9日)
【報道】 「難民条約加入40年 「鎖国」の批判やまず 認定されない少数民族 国連も収容の是正要求」共同通信/中部経済新聞(会員記事)(2021年10月7日)
  「五輪があぶり出した「難民鎖国」 入管行政に透明性を」日本経済新聞(会員記事)(2021年7月27日)
  「入管難民法、真の「改正」へ課題は 薄い難民保護意識、根幹に 全国難民弁護団連絡会議代表に聞く」信濃毎日新聞(2021年6月3日)
  「(外国人の「共生」の実相)「難民鎖国」脱却遠く 入管法改正断念、課題なお」日本経済新聞(会員記事)(2021年6月2日)
  「【連載】あなたの隣で~難民鎖国ニッポン」共同通信(2021年4月8日~12日) 第1回「厳しい認定、外国人を取り締まる役所が担当」;第2回「助けを求めたのに、身柄拘束された」;第3回「申請を繰り返したら、強制送還」;第4回「負担重い政府案、野党は抜本改革提起」;第5回「「共生」より「管理」の歴史、外国人に選ばれる国へ」
3. 入管法改定政府案の見送り、野党の対案
 本年5月18日、入管法改定政府案が廃案となった。この政府案は、帰国が困難な者の事情や収容の在り方に関する入管側の問題を考慮せず、入管の権限を一方的に強化するものであったため、市民の反発が強かった。他方で、同時期に参議院に提出された野党案は、難民等保護委員会の創設や収容に司法審査をもうけるなど、より国際的な批判に応えるものとなっている。入管法を変える動きは今後も続くため、来年も注視していく必要がある。

(参考情報)
【声明等】 全難連声明「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(第204 回国会提出)についての廃案の決定について」(2021年5月19日)
UNHCR 出入国管理及び難民認定法の政府改正案に関するUNHCRの見解(2021年4月10日)
【報道】 「(主張)入管法案見送り 長期収容の見直し進めよ」産経新聞(2021年5月24日)
  「(社説)入管法改正断念 人権尊重し抜本見直しを」新潟日報(2021年5月24日)
  「(社説)一刻も早い入管行政の刷新を」日本経済新聞(会員記事)(2021年5月23日)
  「(核心評論)「入管難民法の改正断念」 肥大化した裁量を縛れ 抜本改正へ議論始めよう」共同通信/山陽新聞(会員記事)(2021年5月21日)
  「(社説)入管法改正断念 人権を守る抜本改革こそ」西日本新聞(2021年5月21日)
  「(社説)[入管法改正断念]人権第一に再検討せよ」沖縄タイムス(2021年5月20日)
  「(社説)入管法改正見送り/抜本的に見直し再提出を」河北新報(2021年5月20日)
  「(社説)入管法改正断念 人権重視で一から出直せ」徳島新聞(2021年5月20日)
  「(社説)入管法見送り 長期収容の弊害是正が必要だ」読売新聞(2021年5月20日)
  「(社説)入管法改定断念 尊厳顧みぬ政策を改めよ」信濃毎日新聞(2021年5月19日)
  「(社説)入管法改正断念 人権軽視体質改めねば」中日新聞(2021年5月19日)
  「(社説)入管法の改正見送り 人権重視の制度が必要だ」毎日新聞(2021年5月19日)
  「(社説)入管難民法改正」宮崎日日新聞(2021年5月18日)
  「(社説)入管法改正案大詰め 廃案にして再提出せよ」琉球新報(2021年5月18日)
  「(社説)入管法の改正案 一からの見直しが必要だ」毎日新聞(2021年5月16日)
  「(社説)入管難民法改正案 これでは人権守られぬ」中國新聞(2021年5月10日)
  「(時論)制度見直しへ議論深めよ/入管難民法改正案」東奥日報(2021年5月4日)
  「(社説)[入管法改正断念]抜本的な修正が必要だ」沖縄タイムス(2021年5月1日)
  「(社説)入管法改正見送り/人権に配慮し抜本的修正を」河北新報(2021年4月28日)
  「(社説)入管難民法改正案 人権基準に達していない」琉球新報(2021年4月21日)
  「(社説)入管法改正案 国際標準から遠いまま」朝日新聞(2021年4月20日)
  「(社説)入管法の改正案 難民認定の見直しこそ」中國新聞(2021年3月1日)
  「(社説)入管法改正案 これでは理解得られぬ」朝日新聞(2021年2月28日)
  「(時論公論)外国人長期収容問題 入管法改正 審議を尽くせ」NHK(2021年2月26日)
  「(社説)入管法改正案 世界の人権潮流に背く」京都新聞(2021年2月25日)
  「(社説)入管難民法」宮崎日日新聞(2021年2月25日)
  「(社説)入管法改正案 人権への配慮を欠く」中日新聞(2021年2月23日)
  「(社説)入管法改正案 人権優先の姿勢が乏しい」新潟日報(2021年2月23日)
  「(論説)入管難民法 人権重視の制度改正を」共同通信/佐賀新聞(2021年2月22日)
  「(社説)信頼される入管行政の実現を」日本経済新聞(会員記事)(2021年2月21日)
  「(社説)入管法の改正案 人権感覚の欠如が深刻だ」毎日新聞(2021年2月21日)
  「(社説)入管法改定案 根本の問題が置き去りだ」信濃毎日新聞(2021年2月20日)
  「(社説)入管法改正案 閣議決定 「監理措置」疑問視 大村の支援者」長崎新聞(2021年2月20日)
4. ウィシュマさん事件(8月、政府調査報告)
 3月6日名古屋入管において、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが死亡した。
好きだった日本に来て、日本の子供たちに英語を教えたいと夢見ていた彼女はどうして死ななければならなかったのか。
 映像が残っている2月の後半からは自分で立つことも、歩くことも、食事をすることも、ベッドから起き上がることもできなかった。
 どうしてこのような状態の彼女を名古屋入管は病院に搬送しなかったのか。
 そこに入管の深い闇がある。この闇は解明されなければならない。

(参考情報)
【政府】 入管庁「令和3年3月6日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告書」(2021年8月10日)
入管庁「令和3年3月6日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査状況(中間報告)」(2021年4月9日)
【報道】 「(社説)入管文書黒塗り 死亡の真相 闇に閉ざすな」信濃毎日新聞(2021年8月23日)
  「(外国人「共生」の実相)日本の入管、希薄だった人権意識 スリランカ女性死亡 原則収容の見直し急務」日本経済新聞(会員記事)(2021年8月18日)
  「(核心評論)スリランカ人女性死亡で報告書 入管への全員収容廃止を」共同通信/北國新聞(会員記事)(2021年8月13日)
  「(社説)収容女性の死亡 入管の閉鎖性問い直せ」東京新聞(2021年8月11日)
  「(社説)入管での死亡 真相をうやむやにするな」信濃毎日新聞(2021年8月5日)
  「(社説)「入管収容で死亡 許されぬ人権軽視だ」中日新聞(2021年5月11日)
5. 国連特別報告者らが政府入管法改正案を国際法違反と指摘
 3月31日、政府提出の入管法改正案に対して、国連の特別報告者ら4者が連名で、同法案が国際人権法に違反するという懸念を表明した。具体的には、“監理措置”を新たに導入したとしても収容が原則である以上は身体の自由を保障する世界人権宣言や自由権規約に反すること、司法審査/期間上限のない収容は自由権規約に反すること、3回目以上の難民申請者を送還するのはノン・ルフールマン原則(拷問などの危険のある国への送還の禁止)に反することなどが指摘された。
 昨年9月の国連恣意的拘禁作業部会の意見に続き、日本の入管法が国際人権法に反することが一層明らかになったといえよう。

(参考情報)
【国際】 国連人権理事会特別手続専門家らによる政府提出の入管法改正案に対する共同書簡(2021年3月31日)
国連恣意的拘禁作業部会意見[A/HRC/WGAD/2020/58](2020年9月25日)
国連恣意的拘禁作業部会意見 恣意的拘禁ネットワーク日本語訳(2020年9月25日)
6. 明暗を分けた五輪代表選手の庇護
 7月から8月にかけて行われた東京五輪。二人の代表選手が本国での迫害を逃れるために庇護を希望したが、明暗が分かれる結果となった。
 7月に宿舎から失踪し、その後日本政府に対する難民申請の意向を示したウガンダ重量挙げ選手は、あろうことか、当局が本国の大使館に通報をし、説得され、帰国を余儀なくされた。帰国後、5日間拘束された。
 他方8月に帰国を拒んだベラルーシの陸上選手は、当初から外国への庇護を希望。希望がかなえられ、ポーランドによる庇護が認められた。

(参考情報)
【声明等】 全難連申入れ「オリンピック・パラリンピック関係者の難民申請対応に関する申入書」および「Request on Refugee Applications of those concerned in Olympic and Paralympic Games」(2021年7月22日)
7. サッカーミャンマー代表選手の難民認定
 サッカーのミャンマー代表選手が難民認定された。難民認定されたピエ・リアン・アウン選手は、5月のワールドカップ予選の日本戦で、ミャンマーのクーデターに対する抗議の意思を示す「3本指」を立てた。その後、難民認定申請を行い、申請後わずか2カ月ほどの8月に認定の結果が出た。この難民認定の結果は当然であるが、3本指を立てずともミャンマーに帰国して無事な者はどれだけいるだろうか。他のミャンマー出身者に対しても速やかな難民認定が求められる。

(参考情報)
 【論考】 渡邉彰悟「ミャンマー出身難民申請者の保護のこれまでの経緯と現状 〜緊急避難措置の意義とその現実の運用等」(移住連『Mネット』218号(2021年10月号) 特集 ミャンマーの現在 民主化の行方と在日ミャンマー人の状況)
鈴木江理子「帰国できない、送還できない すべてのミャンマー人に人道的正規化を」(移住連『Mネット』218号(2021年10月号) 特集 ミャンマーの現在 民主化の行方と在日ミャンマー人の状況)
 【報道】 「ミャンマー代表選手を難民認定 母国のクーデターに抗議」朝日新聞(2021年8月20日)
「帰れぬロヒンギャ 難民認定に壁、不安定な生活強いられ」朝日新聞(2021年8月2日)
「国軍弾圧「帰ると命危ない」 ミャンマーの少数民族女性―難民の日」時事通信(2021年6月19日)
「難民申請意向のミャンマー選手 認定で調整 出入国在留管理庁」NHK(2021年6月18日)
「入管法改正におびえるミャンマー人女性 難民申請3回以上で送還対象に 「帰されたら捕まる」」 神田和則/47 News(2021年4月29日)
「「ミャンマーに送り返されれば死刑に」入管法改正案、市民が反対集会」西日本新聞/古川 幸太郎(2021年4月23日)
8. ミャンマー緊急避難措置
 2月1日の軍の突然のクーデターが起きたミャンマーではその後軍による市民の殺戮が続き,現在では約1300人が死亡したと言われる。この軍の暴虐を背景として世界でもミャンマー人保護が言われ,日本でも5月28日に緊急避難措置と銘打って希望するミャンマー人の在留の保護,送還停止が打ち出された。効果については十分な検証を要するものの,このような形で一般的・全般的に特定の国籍を対象として保護が打ち出されたのは初めての試みで,今後の展開と拡がりが期待される。

(参考情報)
【政府】 法相会見「在留アフガニスタン人への在留資格上の特別措置等に関する質疑について」(2021年8月31日)
令和3年7月16日付け入管庁入第1122号出入国在留管理庁出入国管理部出入国管理課長通知「ミャンマーにおける情勢不安を理由に本邦への在留を希望するミャンマー人に係る難民認定手続について」 – 開示行政文書 (全難連会員ページ)
法相会見「在留ミャンマー人への緊急避難措置に関する質疑について」(2021年8月3日)
法相会見「在留ミャンマー人への緊急避難措置に関する質疑について」(2021年7月6日)
令和3年6月16日付け出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課調整官事務連絡「公用旅券を所持して本邦に在留するミャンマー人留学生等への対応について」 – 開示行政文書(全難連会員ページ)
法相会見「在留ミャンマー人への緊急避難措置に関する質疑について」(2021年6月11日)
法相会見「在留ミャンマー人への緊急避難措置に関する質疑について」(2021年6月1日)
入管庁「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置」(2021年5月28日)
令和3年5月28日付け出入国在留管理庁在留管理支援部在留支援課補佐官事務連絡「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置について」 – 開示行政文書(全難連会員ページ)
令和3年5月27日付け入管庁審第960号出入国在留管理庁出入国管理部出入国管理課長及び審判課長通知「ミャンマーにおける情勢不安を理由に本邦への在留を希望するミャンマー人等への対応について」 – 開示行政文書  (全難連会員ページ)
9. アフガニスタン問題
 タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧した以降、日本に関係のある多くのアフガニスタンの人々が日本への退避を求めたり、日本での庇護を希望している状況にある。
 数百人の日本大使館やJICAで勤務していた職員らが日本政府の支援で日本に退避したとされているが、元留学生や日本で難民認定を受けた者の家族などについては、アフガニスタンからの出国が困難であったり、査証が発給されないなどの事情により、退避ができないまま危険に直面している。
 一方、日本に在留しているアフガニスタン人について、入管庁は、本人の意思に反して送還をすることはしないとしながらも、在留許可については判断を適切に行うと述べるにとどまっており、不安な日々を送らざるを得ない状況に置かれている。
 また、2021年11月時点で国内避難民は60万人を超え、1900万人が飢餓状態に陥っている。

(参考情報)
【声明等】 全難連声明「アフガニスタン出身者への緊急措置による迅速な保護等を求める声明」(2021年8月16日)
【政府】 入管庁「本国情勢を踏まえた在留アフガニスタン人への対応」(2021年10月)
法相会見「アフガニスタン人の難民受入れ等に関する質疑について」(2021年11月16日)
法相会見「在留アフガニスタン人への在留資格上の特別措置等に関する質疑について」(2021年8月31日)
法相会見「在留アフガニスタン人への在留資格上の特別措置等に関する質疑について」(2021年8月20日)
【報道】 「厳冬の到来でアフガニスタンの国内避難民ら870万人に飢餓の恐れ 東京のNPOが緊急支援」東京新聞(2021年12月8日)
「アフガニスタン、人口の半分以上が飢餓状態に WFPが報告書で予測」朝日新聞(2021年10月25日)
10. 在留資格のない難民申請者の社会保障問題 医師の団体が被仮放免者への社会保障等の改善を国に求める
 仮放免中の外国人は健康保険を利用できない。昨年からは健康保険被扶養者にも入れなくなった。保険対象外の外国人に高額な診療価格を設定する医療機関もある。仮放免中に病気になれば命の危険に晒される。出身国に戻れない事情を抱える難民申請者も同様である。11月29日に民医連は国籍や在留資格の有無に関わらず、すべての人への医療保障を求める要請書を提出した。在留資格のない外国人に対する社会保障のあり方を見直さなければならない。

(参考情報)
【声明等】 全日本民医連「国籍や在留資格の有無に関わらず、すべての人への医療保障を求める要請書」(2021年11月29日)
【政府】 厚生労働省保険局保険課長通知「被扶養者の国内居住要件等について」(2019年11月13日)
法相会見「被仮放免者への対応等に関する質疑について」(2021年11月5日)
【報道】 記事「健康保険に入れない外国人の高額医療費 改善を国に要請」NHK(2021年11月29日)

2020年 難民10大ニュース[PDF]
  1. 2019年、難民申請数・認定数が横ばい、不服審で認定わずか1... 1

  2. 無国籍の難民、東京高裁「地球上で行き場を失うことは、明白だった」逆転勝訴判決(1月)    2
  3. ミャンマー・カチン族難民高裁判決 東京高裁が地裁の認定判決を覆し難民と認めず逆転敗訴(12月)    2

  4. イラン・キリスト教改宗難民 難民不認定取消・義務付け、在留期間更新不許可取消訴訟で高裁でも勝訴(2月・3月)... 3

  5. 難民審査請求手続の問題(口頭意見陳述不実施7割)... 3

  6. 野党議員難民懇(5月設立)が難民法案及び入管法改正案を作成... 4

  7. 難民申請者2名への入管収容は「恣意的拘禁」国連恣意的拘禁作業部会が意見採択(8月)    4

  8. 収容・送還専門部会の提言(送還忌避罪、送還停止効の例外、仮放免逃亡罪)(6月)、全国各地の弁護士会が提言を発表(7月~11月);自民党の難民議連発足(11月)... 5

  9. 新型コロナウイルス感染症拡大と難民・庇護希望者を含む外国人住民の困窮が更に悪化、NGOが給付金を支給(5月~)... 7

  10. 新型コロナウイルス感染症拡大と入管収容・仮放免(4月~)... 8

 

1. 2019年、難民申請数・認定数が横ばい、不服審で認定わずか1人
   3月の入管庁による発表で、不服審(異議申立)での難民認定者数がわずか1人(棄却率がほぼ100パーセント)であることが判明し、不服審に独立性が欠如し、機能不全に陥っていることが更に浮き彫りとなった。難民申請者数・認定者数は入国者数の増加に相関せずに横ばいとなり、また、取下げ率が一次手続と不服審査手続のいずれでも過去最高を更新したが、支援の現場からは、難民申請の受理拒否や取下げへの誘導が疑われる事例が複数報告された。
【声明等】 全難連「法務省発表「令和元年における難民認定数等について」を受けての声明〜「濫用防止対策」のもと、庇護希望者にとって極めて厳しい状態が続く〜 」[PDF](2020年3月31日)
【統計資料】 難民認定数等の推移(1979~2019
2. 無国籍の難民、東京高裁「地球上で行き場を失うことは、明白だった」逆転勝訴判決(1月)
   2020年1月29日、東京高裁は、旧ソ連・現ジョージア出身(アルメニア民族)の無国籍の男性に対する難民不認定処分を取り消し、退去強制令書発付処分の無効を確認する逆転勝訴判決を言い渡した。裁判所は、男性は「難民であるばかりではなく無国籍者でもあり、受入見込国が存在しないこと、退去強制令書を発令すると地球上で行き場を失うことは、一見明白であった」と判断。受入見込国の不存在が退去強制の違法性に影響することを明確にした。この判決を受け、同年2月に男性は難民認定。「定住者5年」の在留資格を得た。出身国を追われてから27年、日本で難民申請をしてから10年を要した。
【判決】 東京高判令和2年1月29日[東京高等裁判所 第11民事部 平成30(行コ)222](外部リンク:裁判所ウェブ
【報道】 「迫害、脱出、流浪27年…たどり着いた日本で見えた希望」朝日新聞/鬼室黎(2020年6月20日)
  「東京高裁、無国籍の男性を難民認定 日本福音ルーテル社団の難民シェルターに居住」クリスチャントゥデイ(2020年2月6日)
  「「地球上で行き場失う」 無国籍男性めぐる判決に驚き」朝日新聞/藤崎麻里(2020年1月30日)
  「「地球上で行き場を失う」無国籍男性を難民と判断東京高裁」NHK(2020年1月30日)※リンク切れ
  「無国籍になった男性、難民と認定 東京高裁、国の処分は「違法」」共同通信/Yahoo!ニュース(2020年1月29日)
  「無国籍「強制退去は無効」 ジョージア出身 逆転勝訴 東京高裁判決」毎日新聞/巽賢司(2020年1月29日)
3. ミャンマー・カチン族難民高裁判決 東京高裁が地裁の認定判決を覆し難民と認めず逆転敗訴(12月)
   2020年3月10日、東京地裁は、ミャンマーのカチン族女性の難民不認定処分について、ミャンマーでは2011年6月に国軍がカチン独立機構との停戦協定を破棄して以降、国軍によるカチン州での暴力、破壊、反政府活動支持者への迫害がなされていたと認め、日本で反政府デモ等に参加していた女性の難民該当性を認めた。ところが12月17日、東京高裁は、国軍が女性の反政府活動を認識しているとはいえず、仮に認識しても迫害の対象となるような活動ではないとして、いわゆる個別把握説に立脚して一審判決を取り消した。カチン州における人権侵害状況を無視した判決と言わざるを得ない。
【報道】 「少数民族女性の難民認定請求認めず 東京高裁」産経新聞(2020年12月17日)
  「ミャンマー人女性、逆転敗訴 難民認定請求を却下―東京高裁」時事通信(2020年12月17日)
  「カチン族女性の難民認定命じる ミャンマー少数民族」朝日新聞(2020年3月11日)
  「少数民族女性に迫害の恐れ 難民認定命じる、東京地裁」共同通信/日本経済新聞(2020年3月11日)
  「ミャンマー少数民族の女性を難民認定 東京地裁」産経新聞(2020年3月10日)
4. イラン・キリスト教改宗難民 難民不認定取消・義務付け、在留期間更新不許可取消訴訟で高裁でも勝訴(2月・3月)
   2020年2月13日、東京高裁は、3回目の難民申請時に特定活動の在留期間更新を不許可とされたイラン国籍男性の処分取消を求める訴訟の控訴審で、2018年以降の「難民認定制度の適正化のための運用の更なる見直し」の運用下においても、改めて申請を行うことについて相応の合理性が認められる場合の在留制限は違法として、一審判決を維持した。また、同男性の難民不認定処分取消等訴訟についても、同年3月18日、東京高裁は、イランにおいて信仰実践を外面に表出するキリスト教改宗者は迫害される傾向にあるとして、難民該当性を認めた一審判決を維持した。個別把握説によることなく、一般的な迫害類型から認定した判決であった。
【高裁判決】 東京高判令和2年3月18日[東京高等裁判所第22民事部 令和元(行コ)255]全難連DB(会員専用))
【地裁判決】 東京地判令和元年9月17日[東京地方裁判所民事第51部 平成30(行ウ)287]裁判所ウェブ
【判例解説】 前田直子「国際法1. 改宗と難民該当性(東京地判令和元・9・17)」『ジュリスト臨時増刊号』1544号(令和元年度重要判例解説)274頁
【判例解説】 戸田五郎「イスラム教からキリスト教への改宗者の難民該当性」『新・判例解説WATCH』26号319頁
5. 難民審査請求手続の問題(口頭意見陳述不実施7割)
   難民審査参与員制度のもとでの不服申立手続は,その効果を発揮せず,2013年からは一桁の認定数で推移し,2017年に続いて2019年も認定一人となり機能不全ぶりが激しい。2020年に至り,コロナの問題に乗じてか,口頭意見陳述不実施は不服申立数の7割に及んでいると言われている。難民申請者の訴える迫害のおそれの内容を理解するのに,十分な出身国情報の分析のないまま直接の面接も実施しないとあっては,迫害の実態や信憑性の判断を形骸化するもので,難民申請に対する適正な判断とは乖離したものであり,条約締約国に値しないという事態にまで至っている。
【政府】 出入国在留管理庁「令和元年における難民認定者数等について」(2020年3月24日)
【声明等】 日本弁護士連合会「行政不服審査法改正の趣旨に沿った、難民不服審査制度の正常化を求める会長声明」(2020年8月27日)
6. 野党議員難民懇(5月設立)が難民法案及び入管法改正案を作成
   野党系超党派の衆参議員24人からなる「難民問題に関する議員懇談会(難民懇)」(本年5月設立)が、11月4日に、政府改正案の対案となる「難民等の保護に関する法律案(仮称)」「出入国管理及び難民認定法案(仮称)」の二つの議員立法案を懇談会内で了承した。この法案には、難民認定の主体を独立行政機関とすることや補完的保護対象者も「難民」と位置付けること、全件収容主義を撤廃すること、などといった内容が盛り込まれ、より国際水準に近づいた制度作りが目指されている。
【報道】 「入管難民制度の見直し求める議員グループ立ち上げ」週刊金曜日/西中誠一郎(2020年6月16日)
「難民懇が東京入管収容施設での暴力事案に関するヒアリングを開催」立憲民主党/BLOGOS(2020年5月30日)
【その他】 「難民問題議員懇で「難民保護のための立法措置・入管法改正案」を了承!」(2020年11月6日)(外部リンク:石橋通宏(立憲民主)フェイスブック
7. 難民申請者2名への入管収容は「恣意的拘禁」国連恣意的拘禁作業部会が意見採択(8月)
   本年8月28日、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は、長期収容された難民申請者2名の個人通報に対し、2名の収容は、自由権規約9条等が禁ずる恣意的拘禁であり、同条等に違反するとの意見を採択した。同作業部会が日本の入管収容について意見を採択するのは初めてである。入管収容は、必要性、相当性の要件を満たす必要があり、司法審査の機会を与えられるべきであり、これらを満たさなければ、「恣意的拘禁」であるというのが、国際的に一般的な解釈になっている。作業部会は、この一般的な解釈を採用し、日本政府による、収容が原則であるが、国内法に従ったもので違法ではないとの主張を退けた。
【作業部会意見】 国連恣意的拘禁作業部会意見[A/HRC/WGAD/2020/58](日本語訳)[PDF]/原文英語[PDF](2020年9月25日)(外部リンク:OHCHR)
【声明等】 関東弁護士連合会「国連恣意的拘禁作業部会意見採択を受けて,日本の入管収容における全件収容主義及び無期限収容を直ちに廃止し,国際法を遵守するよう求める理事長声明」(2020年10月26日)
日本弁護士連合会「入管収容について国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会の意見を真摯に受け止め、国際法を遵守するよう求める会長声明」(2020年10月21日)
  全難連「人道危機にある入管収容の現場からの提言~法務省は法の遵守を・入管分野にも法の支配を~」[PDF](2020年2月8日)
  全難連ほか9団体「国連の恣意的拘禁作業部会による国別訪問手続 (カントリー・ビジット)を直ちに実現するよう 求める共同声明」[PDF](2020年1月20日)
 【報道】 「(時論公論)外国人収容・送還問題法改正は慎重に(NHK解説委員…二村伸)」NHK(2020年10月9日)
  「国連部会、日本の入管に「レッドカード」 難民を追い込む長期収容に厳しい見解」弁護士ドットコム/志葉玲(2020年10月9日)
  「日本政府の難民2人長期収容「国際法違反で差別」 国連人権理事会部会が指摘」毎日新聞/和田浩明(2020年10月6日)
  「外国人を長期収容で国連作業部会「人権規約違反」の意見採択」NHK(2020年10月6日)
  「入管の長期収容は「国際人権法違反」 国連部会が意見書」朝日新聞/荒ちひろ(2020年10月5日)
  「入管による外国人長期収容、国連が国際法違反と指摘=支援団体」ロイター通信(2020年10月5日)
  「外国人の長期収容は国際法違反〜国連が日本政府に見解」OurPlanet-TV(2020年10月5日)
8. 収容・送還専門部会の提言(送還忌避罪、送還停止効の例外、仮放免逃亡罪)(6月)、全国各地の弁護士会が提言を発表(7月~11月);自民党の難民議連発足(11月)
   昨年6月大村入管センターで起きた長期収容中のナイジェリア人の餓死事件を契機に設置された出入国管理政策懇談会「収容・送還に関する専門部会」は6月送還忌避者に罰則を設けること、難民申請手続き中は送還を停止している現行法に例外を設けることなどを内容とする提言を公表した。自民党に難民議連が発足し、この重罰化を後押しせんとしているが、全国各地の弁護士会や市民団体はこれに反対している。現状の難民認定の貧困な実情、外国人の基本的人権の軽視による長期収容問題の検証を欠く重罰化は火事場泥棒的ではないか。
【声明等】単位会等 東京弁護士会「入管法に「監理措置制度」を導入することに反対する会長声明」(2020年12月21日)
山梨県弁護士会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に対する会長声明」(2020年12月11日)
新潟県弁護士会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に基づく法改正に反対する会長声明」(2020年12月9日)
札幌弁護士会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に対する会長声明」(2020年12月7日)
青年法律家協会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」等に反対する決議」(2020年12月5日)
愛知県弁護士会「刑事罰創設及び収容等に関する入管法改正に対する会長声明」(2020年12月1日)
沖縄県弁護士会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に対する会長声明」(2020年11月4日)
神奈川県弁護士会「収容・送還に関する専門部会提言及び同提言に基づく法改正に強く反対する会長声明」(2020年10月23日)
京都弁護士会「法務大臣の私的懇談会による「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」の問題点を指摘し、国際公約に則り国際人権条約と難民条約に基礎をおく入管法制及び難民認定制度の創設を求める意見書」(2020年10月22日)
滋賀県弁護士会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に関する会長声明」(2020年10月14日)
群馬県弁護士会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に対する会長声明」[PDF](2020年10月14日)
  長崎県弁護士会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に基づく刑事罰導入等に反対する声明」(2020年10月2日)
  大阪弁護士会「「送還忌避・長期収容の解決に向けた提言」に対する会長声明」[PDF](2020年8月4日)
  関東弁護士連合会「収容・送還に関する専門部会提言に強く反対する意見書」(2020年7月27日)
  第一東京弁護士会「「送還忌避・長期収容の解決に向けた提言」に対する会長声明」(2020年7月17日)
  日本弁護士連合会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に対する会長声明」(2020年7月3日)
  東京弁護士会「「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に基づく刑事罰導入等に反対する会長声明」(2020年6月22日)
【声明等】全難連等 全難連ほか5団体「収容・送還に関する専門部会提言に対する共同声明」[PDF](2020年6月22日)
  全難連「収容・送還に関する専門部会におけるこれまでの議論に対する意見」[PDF](2020年3月31日)
  全難連ほか5団体「長期収容・「送還忌避者」問題解決のための共同提言」[PDF](2019年12月18日)
【報道】 「自民党が出入国管理と難民認定法改正を検討〜外国人の不法就労を阻止へ」Net IB News(2020年11月11日)
【その他】 「出入国在留管理業務の適正運用を支援する議員連盟が菅首相に申入れ。…」(2020年11月29日)(外部リンク:宮崎政久(自民)ツイッター)
「出入国在留管理業務の適正運用を支援する議員連盟。本日夕、発足。…」(2020年11月10日)(外部リンク:三宅しんご(自民)ツイッター)
【政府】 第7次出入国管理政策懇談会「報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」」[PDF]/概要[PDF](2020年12月)(外部リンク:出入国在留管理庁
収容・送還に関する専門部会「報告書「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」」[PDF]/概要[PDF](2020年12月)(外部リンク:出入国在留管理庁
9. 新型コロナウイルス感染症拡大と難民・庇護希望者を含む外国人住民の困窮が更に悪化、NGOが給付金を支給(5月~)
   新型コロナウィルスの感染拡大は、移民・難民の生活に多大な影響を及ぼしたが、とりわけ、公的な支援を受けられない難民申請者や仮放免者の生活を直撃している。これを受け、全難連も参加している移住者と連帯する全国ネットワークでは、移民・難民緊急支援期間を立ち上げ、5月から9月にかけて、これらの難民申請者や仮放免者を支援した。しかし、感染拡大の収束が見えない中、これらの移民・難民に対する公的な支援の実施が緊急に求められている。
【参考資料】 移住連「新型コロナ「移民・難民緊急支援基金」最終報告の発表」(2020年11月10日)
【報道】 「入管のコロナ対策で仮放免の外国人 路頭に迷い保護、働けず帰国便も減少」東京新聞(20201124日)
「クルド人相談会で困窮実態明らかに」朝日新聞/堤恭太(20201119日)
「コロナで失業、医療費払えず困窮…テント村に外国人の列」朝日新聞/鬼室黎(2020112日)
「川口「テント村」で相談会 医療や仕事…困窮する外国人 食料や生活用品配布も」東京新聞(2020112日);「<新型コロナ>クルド人困窮、命守る 「仮放免」で就労できず あす川口で相談会」東京新聞(20201031日)
「どうやって生きていけば?コロナ禍で急増する“仮放免”外国人」NHK20201018日)
10. 新型コロナウイルス感染症拡大と入管収容・仮放免(4月~)
   新型コロナウィルスの感染拡大を受け、全難連は、4月20日、他の団体とともに、現在入管収容施設に収容されている人のうち、日本国内に受入先のある被収容者を全て解放することなどを内容とする緊急共同要請を行った。入管は、相当数の人を仮放免としたり、新たに収容する人を抑制するなどの対応を行っているが、未だに多くの人が仮放免を受けられておらず、入管収容施設に収容されている人の感染の発生の報道もされている。直ちに全ての被収容者を解放することが求められている。
【声明等】 全難連ほか4団体「緊急共同要請」(2020年4月20日)[PDF]
【声明等】 全難連、入管問題調査会、全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓いの3団体による申し入れ
2020年6月3日付け申入書[PDF]
2020年5月15日付け申入書[PDF]
  2020年4月24日付け申入書[PDF]
【政府】 入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル(外部リンク:出入国在留管理庁)

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2019年 難民10大ニュース[PDF]

1. 入管庁 組織改悪 出入国管理課下に難民認定室 
    2019年4月1日より、従来、法務省の内部部局であった入国管理局が、法務省の外局となり名称も「出入国在留管理庁」に変更される組織変更が行われた。これに伴い、従来、総務課に所属していた難民認定室が、出入国管理部・出入国管理課の下部組織に置かれるという組織改編がなされた。この組織改編により、難民認定行政が出入国管理行政の下に置かれているという構造がより明確になり、これまでも悲惨であった難民認定数・難民認定率がより一層深刻なものになると懸念される。 
【声明等】 全国難民弁護団連絡会議「出入国在留管理基本計画案に対する全難連からの意見」(2019年4月12日) 
【声明等】 全国難民弁護団連絡会議「法務省発表「平成 30 年における難民認定数等について」を受けての声明〜濫用防止の名のもとに真に庇護を必要とする者の保護をないがしろにしてはならない〜」(2019年3月27日)
⇒ 難民認定関連の報道
2. 緒方貞子さん逝去 
    世界の緒方貞子氏であったと同時に,実は緒方氏は日本の難民行政にも強い関心を抱かれていた。1998年秋以後に日本の難民行政が動き始めたのは,緒方氏の強烈なプッシュがあったからである。もっともっと,私たちは緒方氏の思いを受けとめて,難民保護の実現に向けた力を尽くそうと思う。ご冥福をお祈りしたい。
【報道】 「(平和考)「積極的」言葉だけでなく 元国連難民高等弁務官・緒方貞子さん」毎日新聞(2016年1月16日)
【報道】 「インタビュー:日本の難民認定増やすべき=緒方元国連口頭弁務官」Reuters(2015年10月29日)
【報道】  「「難民受け入れは積極的平和主義の一部」 緒方貞子氏」朝日新聞(2015年9月24日)
【報道】 「Ex-UNHCR commissioner Ogata seeks humane treatment of refugees in Japan」共同通信/Japan Today(2009年5月16日)
3. 仮放免不許可処分取消一斉訴訟
    2018228日の法務省の内部指示以降、超長期化している入管収容に対して、2019425日、第一陣として原告7名が東京地裁に仮放免不許可処分取消訴訟を提起した。原告には、難民申請者や健康状態が著しく悪化している者も含まれ、早期の仮放免を求めている。判決は年末から年明けの見通し。
【政府】 平成30228日付け法務省管警第43号法務省入国管理局長指示被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の更なる徹底について
【報道】 「「入管での長期収容は国家による監禁」難民申請者らが集団提訴」冨田すみれ子/BuzzFeed.News2019425日)
4. 入管収容実務のさらなる悪化、収容送還専門部会の設置 
    入管における被収容者の長期収容が深刻化する中、全国の入管の収容施設内に収容されている外国人が多数、長期収容に抗議するハンガーストライキを行い始めた。そうした中でついに餓死者が出る事態に至った。これに対し、入管は、ハンストを行い、著しく体重が減少した被収容外国人に対して、2週間という極めて短期間の仮放免を許可し、2週間後に再収容するという手段で対処した。入管の長期収容、上記仮放免の運用等の検討のため、法務大臣の私的懇談会である「出入国管理政策懇談会」の下に、「収容、送還に関する専門部会」が設置されたが、議論が収容の徹底・送還の促進の方向に進むことが懸念される。
【政府】 法務省「収容・送還に関する専門部会について」「収容・送還に関する専門部会開催状況」(12月27日時点で第4回会合分まで掲載)
【声明等】 全国難民弁護団連絡会議、ほか5団体「長期収容・「送還忌避者」問題解決のための共同提言」(2019年12月18日)
【声明等】 日本弁護士連合会「大村入国管理センターにおける長期収容に関する人権救済申立事件(勧告)」(2019年11月25日)
【報道】 「(今週の一言)オリンピックのために難民の収容はいらない」大橋毅/法学館憲法研究所(2019年11月4日)
【声明等】 東京弁護士会「「収容・送還に関する専門部会」に対し、人権保障の観点からの抜本的な議論を求める会長声明」(2019年10月31日)
【報道】 「入管でのナイジェリア人“餓死”を「自業自得」と切り捨てる社会でいいのか 児玉晃一弁護士「入管はブラックボックス」」Courrier(2019年10月31日)
【声明等】 全国難民弁護団連絡会議、ほか8団体「人道危機にある入管収容の現場から人間の尊厳の確保を求める声明」(2019年10月25日)
【声明等】 「入管施設における恣意的収容の廃止及び法的改善を求める」ヒューマンライツ・ナウ(2019年10月18日)
【報道】 「特集「入管に収容されている外国人が ハンストで餓死。入管施設で何が起きているのか?」児玉晃一(弁護士)×荻上チキ(評論家)」荻上チキ/TBSラジオ(2019年10月2日)
【政府】 出入国在留管理庁「送還忌避者の実態について」(2019年10月1日)
【政府】 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について」(2019年10月1日)
【報道】 「長期化する入管収容 20年取り組む弁護士「今が最悪」」塩倉裕、鬼室黎/朝日新聞(2019年9月9日)
【報道】 「入管、長期化する収容 弁護士・児玉晃一さん」朝日新聞(2019年9月5日)
【報道】 「(支え合う「移民時代」)抗議のハンストも…外国人収容の長期化は問題 児玉晃一弁護士」和田浩明/毎日新聞(2019年8月15日)
【声明等】 東京弁護士会「外国人の収容に係る運用を抜本的に改善し、不必要な収容を直ちにやめることを求める会長声明」(2019年7月1日)
【声明等】 福岡難民弁護団「大村入国管理センターでのナイジェリア人の死亡事故についての声明」(2019年6月27日)
⇒ その他の収容長期化関連の報道
5. 恣意的拘禁WGに申し立て
    必要性相当性が問われないまま、長期収容、とりわけわずか2週間の仮放免後の再収容が行われている事態に鑑み、本年10月、2名の難民申請者である被収容外国人が、国連の恣意的拘禁ワーキンググループに対し、こうした収容が恣意的拘禁にあたるとして通報を行った。調査の上、国際人権条約上禁じられている恣意的拘禁にあたると判断されれば、同ワーキンググループよりその旨の見解が出されることになる。
【報道】 「(特集ワイド)「2週間だけ仮放免」 繰り返される外国人長期収容 「一瞬息させ、水に沈めるようだ」」井田純/毎日新聞(2019年11月12日)
【報道】 「「ハンスト無駄」見せしめか 外国人長期収容者死亡で批判→いったん仮放免、すぐに再収容…」井田純/毎日新聞(2019年9月2日)
【報道】 「入管の仮放免延長求め提訴 茨城・牛久でハンストの2人」鬼室黎/朝日新聞(2019年8月13日)
【声明等】 日本弁護士連合会「入国管理センターにおける被収容者の死亡事件及び再収容に関する会長声明」(2019年8月8日)
【声明等】 東京弁護士会「人間の尊厳を踏みにじる外国人長期収容と違法な再収容に抗議する会長声明」(2019年7月31日)
【声明等】 全国難民弁護団連絡会議、全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い「再収容に関する緊急共同声明」(2019年7月24日)
【報道】 「絶食ハンストした2人、入管が再収容 仮放免から2週間」鬼室黎/朝日新聞(2019年7月24日)
6. 入管収容(処遇・医療)・提訴
    本年3月12日、東京入国管理局に収容中のトルコ国籍のクルド人男性が強く体調不良を訴え、その病状を心配した知人の要請で救急車が現地に出動したが、職員の説明に基づいて救急搬送の必要が無いとして搬送が回避されるという事態が起きた。入管収容施設において、必要な医療を提供せずに放置するなど、被収容者の生命健康が著しく軽んじられており、改善の兆しが見えない。
【報道】 「入管施設の長期収容者、処遇改善必要 佐々木・出入国在留管理庁長官認める」和田浩明/毎日新聞(201999日)
【声明等】 東京弁護士会「入管収容施設で繰り返される被収容者の生命・健康の軽視や死亡事件に抗議し、適時適切な医療の提供及び仮放免の適切な運用を求める会長声明」2019418日)
【声明等】 入管問題調査会、全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い、カメルーン人男性入管死亡事件弁護団「チョラク・メメット氏の解放を求める緊急共同声明」2019313日)
⇒ その他の処遇関連の報道
7. スリランカようやく難民認定、国賠提訴
    2006年10月に難民申請したスリランカ人男性が、同年11月に不認定処分を受け、同不認定処分に対する取消訴訟の勝訴判決が2011年4月に確定した後、再度、同年12月に再度不認定処分を受けた事件で、再度不認定処分の取消および難民認定義務付けを求めて提訴したところ、東京地裁及び東京高裁で全面勝訴し、同確定判決に基づき2019年1月、国は当初の難民申請から約13年ぶりに男性を難民認定しました。この間、家族との絆など難民認定を受けられなかったことにより男性が失ったものはあまりに重く、男性は、本年8月23日に再度の不認定処分に対する国家賠償請求を提訴しました。この訴訟を通じて、男性の人間の尊厳を回復するとともに、濫用事例を理由とした迅速化にばかり傾いている日本の難民行政に対して誤った難民認定処分が行われた場合に生じる結果の重大性を認識させ、難民認定手続きにおける国際基準の遵守および正確性の担保の重要性を強く訴えるべく、弁護団としては国賠訴訟を勝ち切りたいと考えています。
【報道】 「「確定した難民認定無視した」 スリランカ人が国を提訴」新屋絵理/朝日新聞/MSN2019823日)
【報道】 「難民認定巡り、国に賠償請求 スリランカ人男性が提訴」共同通信/佐賀新聞(2019823日)
【報道】 難民認定、高裁でもスリランカ人原告が勝訴 国が不認定朝日新聞(2018125日)
8. イラン/キリスト教改宗者難民不認定処分取消及び義務付け判決
    2019917日、東京地裁民事38部でイラン国籍のキリスト教改宗者に対する難民不認定処分取消及び義務付け判決が出された。改宗事案による難民勝訴判決は初めてと考えられる。原告は2回目の申請であったが、2回目申請時には改宗者に対する迫害状況が悪化していたことなどが考慮された。原告は並行して、法務省の「さらなる運用の見直し」による在留期間更新許可申請不許可処分に対しても取消訴訟を提起していたが、こちらも同日、認容判決が出された。
【報道】 「改宗イラン人の難民認定命じる 東京地裁」共同通信日本経済新聞(2019918日)
【報道】 「キリスト教改宗のイラン人男性 「難民認定却下は違法」」新屋絵/朝日新聞(2019917日)
【報道】 「「イランに戻れば迫害の恐れ」改宗理由に難民認定…東京地裁」読売新聞(2019917日)
9.  空港収容 引き続き激減 
   2019年においても、前年に引き続き、空港等の港湾における申請数が著しく減少していると指摘されており、水際で申請が抑制され続けていることが懸念される。また、同年には、「短期滞在」で上陸申請をしたスリランカ人に対し、庇護を求めるか否かを確認する確認票に署名させる運用がされていることが判明しており、これに署名したスリランカ人の難民認定申請書を受理しなかった事例が報告されている。
【声明等】 全国難民弁護団連絡会議「スリランカ出身庇護希望者の港湾等における取扱いに関する要望書」(2019年6月18日)
【報道】 「成田入国、スリランカ人だけ「確認票」 難民申請減目的、支援者は批判」朝日新聞(2019年7月17日)
【報道】 「成田でスリランカ人だけ難民申請確認 支援者「出身国による差別」と反発」毎日新聞/鵜塚健(2019年7月17日)
【声明等】 「スリランカ人の成田入国に確認票 「虚偽なら不利益も」」鬼室黎/朝日新聞(2019年7月16日)
【政府】 平成30年11月16日付け東京入国管埋局成田空港支局第一審判部門首席審査官事務連絡「セカンダリ審査又は口頭審理において「短期滞在」の在留資格を決定して上陸許可を行うこととなったスリランカ人に対する取扱いについて(依頼)」
【政府】 (不開示)平成30年8月10日付け東京入国管理局成田空港支局審査監理官事務連絡(短期滞在入国後の難民認定申請が多い国に対する厳格審査指示文書の発出について)
10. 行政争訟奨励賞を受賞
   日弁連法務研究財団にて本年度から設置された「滝井繁男行政訴訟奨励賞」の第1回の栄えある賞が当会議に授与された。1997年以来の当会議の活動と,難民不認定処分取消等を求める行政訴訟における,当会議の会員の実践と活動が評価された結果である。
【参照】 公益財団法人日弁連法務研究財団「令和元年度「滝井繁男行政争訟奨励賞」受賞者決定のお知らせ」201912月)
11. 番外編
  x. 第三国定住事業の拡大
【政府】 内閣官房「第三国定住による難民の受入れ事業の対象の拡大等に係る検討会による検討結果の取りまとめ」「第三国定住による難民の受入れ事業の対象拡大等の検討結果について(資料)」2019517日)
  x. 裁判を受ける権利
【報道】 「「スリランカに帰れば殺される」…非人道的な日本の入管、難民認定せず追い返す」Business Journal2019121日)
【報道】 「スリランカ人の強制送還、日弁連が警告「裁判受ける権利を侵害」 家族にも連絡できず」弁護士ドットコム(2019925日)
【声明等】 日本弁護士連合会「非正規滞在者の強制送還に関する人権救済申立事件(警告)」2019924日)
【報道】 「難民訴訟でスリランカ国籍の原告が一部勝訴 「裁判を受ける権利」は認めず 名古屋地裁」毎日新聞(2019730日)
【報道】 「難民申請者への賠償、一部認定 裁判受ける権利は否定、名古屋」東京新聞(2019730日)
  x. 不法残留幇助事件
【報道】 「不法滞在ほう助罪で逆転無罪の画期的判決 前科付かず、法の濫用に警鐘」小川泰平/まいどなニュース(2019716日)
【報道】 「不法残留ほう助、逆転無罪 東京高裁」日本経済新聞(2019712日)
【報道】 「不法残留ほう助、日本人女性に逆転無罪」TBS2019712日)
  x. 同性愛者の難民認定(2018年)
【報道】 同性愛者 難民認定 政府、出身国での迫害理由に毎日新聞(201972日)
【報道】 「同性愛迫害 難民認定 政府が初 出身国で逮捕、保釈中」東京新聞(201972日)
【報道】 「同性愛迫害、初の難民認定=母国で収監、保釈中申請-政府」時事通信(201972日)
【報道】 「同性愛を理由に初の難民認定」共同通信/カナロコ(201971日)

2018年 難民10大ニュース

1. 再不認定処分のスリランカ難民が東京地裁・高裁で勝訴
   2006年に日本経由でカナダに逃れようとしていたスリランカ・タミール難民が,入管で難民として認められず,2011年に大阪地裁において難民不認定処分が取り消され判決確定したにもかかわらず,再度同年末に不認定処分にして在留許可をしたという事案で,その後も継続して争い,2015年に東京地裁に提訴した事案(不認定処分取消と義務付け)。この事案で原告は終止条項の適用を求め,地裁はこれに応えて,終止条項の適用によって,原告の難民性の継続を認定,高裁も12月にこれを維持しました。しかも高裁は明確に国際難民法の終止条項の規範を用いて国の主張を退けました。なお,201917日付で難民認定証明書が交付された。 
2. シリア難民集団訴訟で敗訴
 
3. 今年も難民審査参与員の問題言動
   異議申立ての口頭意見陳述・審尋の場において、質問をしていない参与員が居眠りを始めた。今にも座席から崩れ落ちそうになっており、目に余るため、代理人から「起きてください」と声掛けをしたものの、一度では起きず、再度「起きてください」と声掛けし、さらに難民調査官からも「先生」と促されて、当該参与員は目を覚ました。この件について、当該参与員から異議申立人に対する直接の謝罪はなく、後日、代理人から法務省と難民審査参与員に抗議の申し入れをしたところ、法務省において事実確認を行い、当該参与員は居眠りをしたことを認め、法務省から注意を行った、とのことである。2017年9月12日に、全難連から「難民審査参与員の問題ある言動実例集」を申し入れたが、いまだ改善が見られない。抜本的な見直しが必要である。 
4. 難民認定申請を抑制する運用変更
 
5. 長期の入管収容が更に深刻化(平成30年2月28日付け法務省入国管理局長指示について)
   仮放免に関し、全難連による情報公開請求により、平成30年2月28日付け法務省入国管理局長指示「被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の更なる徹底について」が開示(一部)されました。

 同指示は「仮放免を許可することが適当とは認められない者」として8つの類型を挙げ、「送還の見込みが立たない者であっても収容に耐え難い傷病者でない限り,原則,送還が可能となるまで収容を継続し送還に努める。」としています。

 さらにそのうち4つの類型(重大犯罪で罰せられた者、犯罪の常習性が認められる者、社会生活適応困難者(DV加害者や社会規範を守れずトラブルが見込まれる者など)、悪質な偽装滞在・不法入国等の関与者など)については「重度の傷病等,よほどの事情がない限り,収容を継続する。」としています。

 本件指示により、収容の長期化が更に深刻になることが懸念されます。

6. 全難連が2018年難民アドボカシー賞を受賞
   難民にとって厳しい状況が続く日本での地道な活動が評価され、11月、全難連がカナダ難民弁護士協会(Canadian Association of Refugee Lawyers (CARL))より2018年難民アドボカシー賞を受賞しました。  
7. 入管法改正
 
8. 空港申請数が激減
   2018年6月までの空港での難民申請件数はわずか12件のみとのことで、2015年の173件、2016年の152件、2017年の133件と比較して激減している。詳しい原因は分かっていないが、空港窓口で難民申請をさせずに帰国させたケースが複数報告されており注意を要する。
9. 仮放免不許可処分取消訴訟で認容判決(東京地裁平成30年8月28日判決・確定)
 

 東日本入国管理センターに収容されていた50代男性が仮放免不許可処分の取消を求めた訴訟において、裁判所は、男性が拘禁性うつ病に罹患し改善が見られないことから、人道上配慮の観点から身柄の解放を相当とする場合に当たるとして、収容されて29か月後の不許可処分を違法とした。

 仮放免不許可処分が違法となる場合について、実質的に判断された初のケースであり、原則収容主義については容認するなど課題も残る判決であるが、今後の訴訟による発展に期待したい。 
10.

エチオピア難民勝訴

 

2017年 難民10大ニュース

1.16年ぶりに地裁・高裁で勝訴ゼロ

 今年、退令事件での勝訴ケースは複数あったが、難民事件での勝訴はゼロ件で、2001年以来16年ぶりとなった。「日本の難民認定基準は厳しすぎる」という批判の高まりに対し、裁判所は今後どのように答えるのであろうか。

《全難連資料》

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提訴

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判決

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勝訴(地裁)

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勝訴(高裁)

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提訴

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25

52

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判決

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64

84

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勝訴(地裁)

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0

0

0

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5

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勝訴(高裁)

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0

0

0

1

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2

4

8

(参照 法務省ウェブ、ほか)

2.麻生発言

 「武装難民」なる表現には驚愕した。欧州の政治家であればこれで政治生命は終わっていよう。「武装」「難民」は矛盾した概念であり,政治の中枢にある者の発言としてはあり得ず,日本政府の難民問題への無理解を端的に示すものとなった。  

3.難民参与員の問題発言

 本国で反対勢力の兵士から強姦されたことを訴えている難民申請者に対して、難民審査参与員が「美人だから狙われたのか?」などと質問したことが報道され、法務大臣は遺憾であると表明。全難連は、難民審査参与員の問題ある言動事例集を法務省に提出し、制度の改善を申し入れた。  

4.高裁で難民勝訴したネパール人2人に再び不認定処分

 裁判で難民不認定処分が取り消されても,法務省はまったく動じ ない。また入管に手続が戻ってきて再び難民不認定処分をして在留許可をしてそれで終了。これまでにも散見され,再度の裁判に至っているのはスリランカケースのみ。申請者の保護にも欠け,同時に司法軽視も甚だしく,さらに,難民条約上の終止条項にも反する結果導いている。

《全難連資料》法務大臣が裁判所の難民判断を尊重しなかった過去の事例

 

事案

裁判

法務大臣

1

トルコ・クルド人

2006630日に名古屋高裁で勝訴(確定)

再度の難民審査で不認定+人道配慮

2

アフガン・ハザラ人

2006913日に東京高裁で勝訴(確定)

再度の難民審査で不認定+人道配慮「日本人の配偶者」

3

スリランカ・タミル人

2011330日に大阪地裁で勝訴(確定)

再度の難民審査で不認定+人道配慮「特定活動」

5.強制送還で裁判の権利を奪われた庇護希望者が提訴

 平成26年12月18日「チャーター機送還」(集団送還)により、難民申請者らが難民異議棄却の告知から24時間以内にスリランカへ強制送還された。
 そのうち2名が平成29年10月19日、東京地裁に本件送還により「裁判を受ける権利」(憲法32条)の侵害を理由に国家賠償請求訴訟を提起した。  

6.「濫用」者排除の施策進む

 本年6月、入管法施行規則が改正され、難民認定の権限の法務大臣から地方入国管理局長への委任が可能となり、また、再申請者に対しては、同規則改正により再申請者用書式が新設されて再申請者は同書式を用いなければならないこととされた。もっとも、地方入管管理局長限りで決定をできるのは入管がほぼ「濫用」者と位置付けた者を不認定にする場合に限られ、同改正は、「濫用」者の速やかな排除を目的とするものとなっている。また、再申請者に対しては、就労や在留を認めず、場合によっては収容をするなど、その取扱いが厳しさを増している。難民認定の正確性を欠いたままこれらの施策が進められた結果、迫害を受けるおそれがありながら難民認定を受けられず、帰国もできない人たちがますます追い詰められている。  

7.脆弱者のインタビューへの立会の試行 

 日本では、難民認定申請手続における代理人等のインタビューへの立会いが認められていないが、2017年3月31日より、親等を伴わない16歳未満の年少者や精神的障害を有する者など、脆弱性を抱える難民認定申請者のうち、首席審査官が認めた場合は、例外的に弁護士、医師、カウンセラー等の立会いを認める取扱いの試行が始まった。ただし、対象を未成年者のうち16歳未満に限っていること、精神的障害についての当局側の制限的な理解もあり、まだ実施された案件はないと見られている。
  • ≪政府・入管≫ 平成29年3月31日付け法務省入国管理局総務課難民認定室長通知「親を伴わない年少者等に対して面接による事情聴取を行う際の立会いの試行について」
  • ≪政府・入管≫ 子どもの権利委員会への第4回・5回政府報告(2017年6月30日提出)

 

8.訪日外国人の増加、難民申請者数が増加 

(説明)2017年の難民申請数は2016年の10,901人を大幅に上回る見込みであり、7年連続で過去最多を更新することが予想されている。この背景には、観光立国推進のための訪日外国人2000万人という政府目標の達成に向けたビザの大幅緩和がある。実際に、2011年時点で500万人強であった新規入国者数は2016年には2404万人に達しており、2017年もこれを大幅に上回ることが予想されている。

《グラフ》

9.上半期認定3人(人道配慮27人)のみ

(説明)その年の難民認定の多くが年末に出される扱いが通例となっているが、半年間で僅か3人というのは異常としか言いようがない。一方で、認定業務の滞りによって長期間保留状態にある申請者は数多く、彼らの早期認定を望む。

 

10.シリア人留学生の受け入れ

(説明)内戦を逃れて隣国ヨルダン及びレバノンで暮らすシリア難民について、年間に国費留学生10人およびJICAの平和構築・人材育成プログラムで20人を留学生として日本への受け入れが開始された。政府は、5年間で合計150人を受け入れる予定。このほか、認定NPO法人難民支援協会が国内の大学や語学学校等と連携し、民間でのシリア人難民留学生の受け入れ事業も開始した。  

番外編.難民参与員の認定意見の4割が不認定にされていることが判明

(説明)2013年~2016年に参与員のうち多数が「難民相当」とした31人のうち、法務大臣が不認定にしたケースが約4割の13人であった。2012年以前は全員認定されており、「参与員の意見を尊重」しているとは言い難い現況が判明した。
《全難連資料》 難民審査参与員の多数/全員が認定相当と意見を出したものに対する法務大臣の判断

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《全難連資料 難民審査参与員の多数/全員が不認定相当と意見を出したものに対する法務大臣の判断

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2016年 難民10大ニュース(未確定)
  • 上半期  偽装難民申請事件が広く報道される
  • 1月 強制送還時の死亡事件で高裁逆転敗訴
  • 1月 法務省が難民認定数等の速報値を発表。日本の難民不認定率99%が海外メディアで広く報道される
  • 2月 申請者の在留に関する新運用下で9人に在留不許可の報道
  • 3月 難民申請認定手続の未処理数1万人越えの状況が広く報道される
  • 4月 行政不服法等の改正で難民審査請求制度が導入される
  • 5月 シリア人留学生を5年間で150人受入れる旨を政府が発表
  • 5月 ヘイトスピーチ法が衆院本会議で可決されて成立
  • 7月 大阪入管収容施設で処遇改善を求めるハンスト
  • 7月 名古屋高裁4部のネパール難民事件で逆転勝訴(確定)、名古屋高裁3部のウガンダ難民事件で逆転勝訴(確定)
  • 7月・8月 裁判の権利を奪われて本国に強制送還された庇護希望者らが大阪と名古屋で提訴
  • 9月 難民不認定処分に対する訴訟準備中のスリランカ・タミル人を含む30人がスリランカに集団送還される
  • 11月 運用改正で難民申請手続中の在留不許可が可能に
2015年 難民10大ニュース(未確定)
  • 2月 難民申請の「偽装」「濫用」「悪用」が各紙で報道される
  • 2月 【ビルマ難民訴訟】難民参与員多数が認定意見で異議棄却のビルマ人男性が不認定取消しを求めて東京地裁に提訴
  • 3月 【シリア難民集団訴訟】難民不認定のシリア人4人が認定を求めて提訴
  • 3月 日本の難民認定の閉鎖性を国外メディアが報道
  • 4月 東日本入管センターで被収容者らが長期収容等に抗議してハンスト
  • 4月 公明党PTが難民制度改善と提言
  • 4月 法務省が訟務局を設置。初代局長に判事。
  • 4月 名古屋でネパール出身者初の難民認定
  • 9月 西日本入管センター廃止
  • 9月 簡易却下手続の導入
  • 11月 国連難民高等弁務官が日本にもっと難民の受け入れと難民認定制度の見直しを要求
  • 11月 イランを送還先と指定した強制送還を違法とした大阪高裁判決
  • 12月 庇護希望者を含むバングラデシュ人22人をチャーター機で集団送還
2014年 難民10大ニュース(未確定)
  • 3月 2013年に難民認定数が1997年以来の1桁代。難民認定申請数は過去最多で3,000人を超える。
  • 3月 入管収容中のイラン出身者とカメルーン出身者が相次いで死亡。10月には、全件収容主義と戦う弁護士の会「ハマースミスの誓い」設立。
  • 4月 東京地裁でアンゴラ難民が勝訴(確定、難民認定)
  • 6月 世界の難民・避難民の数が初めて5,000万人を超える。
  • 7月 第6次出入国管理政策懇談会の難民認定制度に関する専門部会が「難民認定制度見直しのための議論の方向性の整理について」を報告
  • 8月 今年も難民審査参与員の多数意見と異なる法務大臣の決定。ビルマ出身者について難民審査参与員の多数意見で認定も、異議棄却で人道配慮もなし。
  • 8月 人種差別撤廃委員会が総括所見で難民認定制度について勧告。
  • 9月 第三国定住受け入れパイロット事業の最終5年目で5家族24人を受け入れ。来年度から本格事業が開始。
  • 11月 難民認定申請数が過去最多を更新。11月末で4,500人を超える。
  • 12月 不認定庇護希望者を含むスリランカ出身者20人以上をチャーター便で一斉送還。
2013年
  • 難民認定水準が過去最低を更新 3月に法務省入国管理局により発表された資料により、2012年の難民認定水準が史上最低であった前年を下回り、過去最低水準を更新していたことが判明した。一次手続での難民認定率は、0.2%(認定数5人/処理数2198人)で1982年の制度開始以来の最低であり、また、異議は、認定率1.3%(認定数13人/処理数996人)で20055月に難民審査参与員制度が導入されて以降で最低の数値となった。
     2013年についても、ビルマ出身者の難民認定数の減少などから、更に認定水準が下がることが見込まれる。
    法務省入国管理局「平成24年における難民認定者数等について」(報道発表資料)2013319日。
  • 異議手続きの長期化。審尋まで3年以上のケースも 難民審査参与員制度の導入以降、異議手続が長期化を続けており、審尋まで3年以上かかっているケースも報告されている。参与員の増員などにより処理数は毎年増加しているものの、未処理数はそれを上回って増加している。2013年の年始時点で、3342人が未処理案件となっていた。
     一次手続きでの難民認定数の低さと不認定数の急増が異議の未処理数を増やす一因となっており、異議手続きの抜本的な改革だけでなく、一次手続きの改善も求められている。
  • アフリカ出身の難民認定が相次ぐ。ウガンダ出身者が大阪高裁で勝訴後、コンゴ民主共和国出身者が異議で難民認定など。 4月、ウガンダ出身の難民が大阪高裁で勝訴(判決日227日)し、その後難民認定を受けた。9月にはコンゴ民主共和国出身の難民が異議手続で難民認定を受けた。このほか、アフリカ東部の国の出身者が一次で難民認定を受けたとの情報もあり、一次手続きにおける難民認定の「アフリカ枠」が倍増したのではないかとの指摘もされている。
  • 今野東先生と本間浩先生が逝去 4月、難民問題への精力的な活動のほか、社会的弱者に対して暖かな視線と強い意志を持って活躍されていた今野東前参議院議員が65歳で逝去された。
     5月、難民法に関する多くの著書・論文を残し、NPO法人難民支援協会の上級顧問や難民研究フォーラムの代表などを務められた本間浩法政大学名誉教授が74歳で逝去された。
     日本の難民保護の精神的な要ともいえる2人を相次いで失った。ご冥福を心よりお祈り申し上げる。
  • 韓国で難民法施行 7月、東アジアで初となる独立した難民法が韓国で施行された。難民申請者が法的支援を受ける権利や就労する権利を定めており、認定手続や難民申請者の生活保障、難民認定者の社会統合政策などの改善が期待されている。
     韓国は、1992年に難民条約に加入し、日本の例にならって入管法に難民法を組み込んでいた。最初に難民申請を受理した1994年から2012年までの平均の難民認定率は12.4パーセントである。
  • 第三国定住難民受入れパイロット事業で2年ぶりに来日 9月、第三国定住パイロット事業で2年ぶりに第4陣として4家族18人が来日した。前年は第3陣が出国間際で辞退したために来日者は0人となっていたが、今回は対象キャンプを広げての実施となった。
     日本は、第三国定住による難民受入れを行ったアジアで初めての国である。パイロット事業は2014年で終了し、2015年からは本格に第三国定住難民の受入れが始まる予定となっている。
    内閣官房「第三国定住による難民の受入れの実施について」(閣議了解)2015124日[PDF]。
    内閣官房「第三国定住に関する有識者会議報告書」(本文)20151月[PDF同(概要)[PDF]。
  • 収容されたビルマ・ロヒンギャ庇護希望者が急死 11月、ビルマ・ロヒンギャ族の難民申請者が、東京入国管理局で再収容された当日にクモ膜下出血で倒れ、意識不明のまま病院に搬送されたが数日後に亡くなった。意識不明で倒れた後の入管における対応の遅れについて、批判の声があがっている。
  • 難民審査参与員の意見と異なる法相判断3 20055月から施行されている難民審査参与員制度において、法務大臣は、初めて、難民審査参与員の全員又は多数意見と異なり、難民と認めない判断をした。法務大臣が難民審査参与員の意見と異なる判断をした3件のうち、2件については在特を付与し、もう1件については、本国政府の保護を受けていると考えられるとの理由で在特も与えなかった。
     「公正中立な第三者機関」という位置づけの難民審査参与員の意見を無視又は軽視し、漫然と「他の類似事案と比較考量し」て判断する手法は、参与員が審査に加わる意味を否定することになるものと懸念される。
    全国難民弁護団連絡会議「近時の難民審査参与員の意見と異なる法務大臣の決定に関する声明」201312月。
    法務省「難民認定において法務大臣が難民審査参与員の多数意見と異なる決定をした事案に関する質疑について」(法務大臣閣議後記者会見の概要)20131217日。
       自由権規約委員会「規約第40(b)に基づく第6回報告」(CCPR/C/JPN/62012424日[PDF]。  
       拷問禁止委員会「拷問禁止委員会からの質問に対する日本政府回答」(CAT/C/JPN/22011718日[PDF]。  
  • 6次出入国管理政策懇談会に難民専門部会設置。難民保護制度についての議論がスタート。渡邉彰悟代表がメンバーに選出 11月、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会(親会)に「難民認定制度に関する専門部会」が設置され、全難連代表の渡邉彰悟弁護士が委員となった。4月か5月頃に中間報告が出され、年末頃まで議論が続く予定である。
     法務省が提案する主な論点は、複数回申請者や「濫用者」についての対策を施して難民申請者数を抑えることなどである。これに対し、親会メンバーからは、日本が難民受け入れの姿勢を国外に示すべきとの意見や、難民認定数の低さが日本のイメージの悪化につながるなどの指摘がされている。
    法務省「第5回「第6次出入国管理政策懇談会」 議事録」2013104日[PDF議事概要
    法務省「難民認定制度に関する専門部会について」難民認定制度に関する専門部会開催状況1回会合 議事概要[PDF
  • 名古屋に難民異議申立事務局を設置。難民審査参与員が75人体制に増員 難民異議申立数の増加とそれに伴う未処理案件の増加を受け、難民審査参与員が75人に増員された。特に名古屋入国管理局管内での異議申立数の増加が著しく、参与員名古屋班が2班に増やされ、難民異議申立事務局が設置された。 名古屋入管管轄地域においては、トルコ、パキスタン、スリランカ、ネパール出身者の難民申請数が多く、全体の8割を占める。
    法務省「難民審査参与員一覧」20131212日。
2012年
  • 2011年の難民認定率が過去最低 2月、2011年の難民認定に関する数値が法務省入国管理局による発表され、一次手続きの難民認定率が0.3パーセント、異議手続きでの認定率が1.6パーセントといずれも過去最低水準であることが明らかとなった。
    2011年の難民統計に関する全難連声明~過去最低の難民認定率をうけて 全難連(2012年4月)
    平成23年の難民認定者等について 法務省入国管理局(2012年2月) 
  • ウガンダ難民事件で初の勝訴判決 2月、大阪地裁に係属していたウガンダ出身の難民事件で、ウガンダ難民事件では初の勝訴判決がだされた。事件は、国側が控訴し、2013年2月に高裁判決が出される予定。
  • 法務省入国管理局、日弁連、なんみんフォーラム(FRJ)が覚書締結 2月、上記三者が官民連携によって難民認定手続等を改善すべく覚書を締結した。覚書に基づき、収容代替措置に関するパイロットプロジェクトなど、三者の協働による取り組みがすすめられている。
    覚書本文(2012年2月12日)
    難民認定手続等に関する市民団体との協力関係に係る覚書について 法務省入国管理局(2012年2月10日)
  • 名古屋難民支援室設立 7月、東海地域での難民申請者の急増を受け、難民支援協会と全国難民弁護団連絡会議の協働により名古屋難民支援室が開設された。全ての庇護希望者にとっての支援の入口となるべく、英語名をDoor to Asylum Nagoya(DAN)とし、支援者や支援団体とのネットワークを構築しながら、地域の特色を活かした支援体制づくり中。
    名古屋難民支援室の解説のお知らせ 難民支援協会(2012年7月10日)
  • 新在留制度開始 7月、1947年以来の在留管理制度が終わりを告げ、入国管理と在留管理が一元化された新在留制度が導入された。難民認定者の在留資格が定住者5年となり、また、難民申請中の仮滞在者が住民登録の対象となって健康保険加入資格が与えられるなど前向きな変化がある一方、被仮放免者については身分を証明できるものがなくなり、基本的な社会サービスへのアクセスが困難になっていると懸念されている。
     尚、難民認定申請書も改訂されてこれまでの9ページから12ページとなり、家族欄の記載が細かくなったほか、迫害の主体や迫害の恐怖を感じ始めた時期を書く項目などが追加された。
  • ルワンダ難民初認定 9月、名古屋でルワンダ出身者が初めて難民認定された。異議手続きでの認定であり、一次不認定処分に対する不認定取消訴訟中であった。
  • ロヒンギャの高裁判決 9月、東京高裁に係属していたビルマ・ロヒンギャ難民集団訴訟で判決が言い渡された。裁判所は、1人については難民性を認めたが、残り16人については難民性を認めなかった一審を維持した。判決は、ミャンマーで法的に無国籍とされているロヒンギャについて、ミャンマー国籍を有すると独自に認定した。
  • 第三国定住、第三陣ゼロ 9月、タイ難民キャンプからビルマ難民を受け入れる第三国定住のパイロットプログラムの3年目について、希望者がゼロになったと発表された。今回の原因の究明と分析をすすめるとともに、支援のあり方や対象者の選定基準の見直しが求められている。
    FRJプレスリリース FRJ(2012年10月1日)
    第三国定住第3陣の受け入れゼロの内閣官房発表に対して 難民支援協会(2012年9月25日)
  • ホームレスとなる難民申請者が増加 支援が追いつかずにホームレスとなる難民申請者が増加している。路上生活には厳しい冬を迎え、緊急対策が必要となっている。
    記事「外国人難民申請者がホームレスに 過去最多で支援遅れ」 共同通信(2012年12月10日)
  • 難民申請者数が過去最高の見込み 2012年、難民申請者数が2000人を超えて過去最多になった。詳細は来年の法務省発表まで不明であるが、ビルマ出身者の難民申請数が減った一方で、スリランカ、トルコやアフリカ西部の国々の出身者からの申請数が増加しているものと見られている。申請の地域で見ると、東京入管横浜支局や名古屋入管が管轄する地域での申請が急増しているとみられる。

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2011年

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2010年
  • 伊藤和夫代表が逝去  長年にわたり人権活動に活躍されてきた伊藤和夫先生が2010年7月14日に逝去。5月の『伊藤和夫先生弁護士50周年記念論文集‐日本における難民事件の発展と現在』(現代人文社、2010年)の出版記念パーティーから2ヶ月足らずの悲報だった。
     全国難民弁護団連絡会議の代表のほか、在日ビルマ人難民申請者弁護団、クルド難民弁護団、アフガニスタン難民弁護団などの代表も務めた。享年81歳。
    渡邉彰悟、大橋毅、関聡介、児玉晃一編 『伊藤和夫弁護士在職50周年祝賀論文集‐日本における難民訴訟の発展と現在』 現代人文社 2010年
    記事:伊藤和夫氏死去 元袴田事件弁護団長 共同通信(2010年7月15日)
  • 第三国定住のパイロット・プロジェクトを開始  2008年12月の閣議了解を受け、3年計画約90人の第三国定住パイロット・プロジェクトでの受け入れを開始。9月と10月にタイのメーラ難民キャンプからビルマ・カレン族家族27人が来日した。
     公費による定住支援は6ヶ月間で、日本語教育のほか、日本居住に必要な生活基礎知識の研修を実施。
     語学研修の期間等でインドシナ難民受け入れの反省点が十分に活かされていないとの指摘があるほか、同じ人道配慮での庇護にも関わらず日本で難民認定申請をして人道配慮在特を受けた者が定住支援を受けていないといった支援格差の問題もある。
    閣議了解「第三国定住による難民の受入れに関するパイロットケースの実施について」 内閣官房(2008年12月16日)
    難民対策連絡調整会議決定「第三国定住による難民の受入れに関するパイロットケース実施の具体的措置について」 内閣官房(2008年12月19日)
  • 鶴見大学が庇護希望者への歯科治療プロジェクトを始動  2月、鶴見大学歯学部とUNHCR駐日事務所が、庇護希望者への無料歯科治療の提供プロジェクトを立ち上げ。難民支援のNGOが協力して運営している。プロジェクトは毎週1回の治療日に加え、緊急ケースにも対応している。
     鶴見大学は、歯科治療を受けにくる庇護希望者の交通費確保のための難民ランチの実施など、積極的に支援活動を展開している。
    「鶴見大学との歯科治療プロジェクト始動」 UNHCR(2010年2月23日)
  • 「難民研究フォーラム」設立  日本における難民専門の研究機関として7月に設立。これまであまり注目されてこなかった日本の難民研究の活性化とともに、判例研究等での法曹界との化学反応が期待される。
    難民研究フォーラムHP
  • 難民保護費の問題  難民申請者の唯一の生活支援金である難民保護費が、昨今の厳しい財政状況の中、2010年度予算で1億円以上増額された。しかし、受給希望者の増加や高額医寮費の出費で予算枯渇のおそれがつきまとっている。また、法的根拠のない保護費の予算を確保する上で、迅速性よりも濫用者の排除を優先することから、申請から支給までの期間の長期化(2ヶ月以上。平均4ヶ月とみているNGOもある。)という問題も生じている。待機者への生活支援はない。
     国民健康保険への加入などを含む包括的な難民申請者の支援体制の構築が必要。
    「難民申請者の生活保障のための措置を求める申入れ」 難民支援NGO9団体(2010年9月7日)
  • 庇護希望者の収容  入管施設に収容中の庇護希望者を含む者らが西日本で3月に、東日本で5月にそれぞれ処遇改善や長期収容者の仮放免などを求めて給食拒否を実施した。事件は国会での質疑や、国会議員による収容施設の訪問に発展。西日本では、ハンスト後に体調不良者の仮放免が相次いだとの報道があった。
     一方、5月に韓国で収容代替措置(Alternative to Detention)に関する国際会議が開催され、日本の法務省のほか、全難連やJARなどのNGOが参加した。7月に入国者収容所等施設委員会が設置され、被収容者の状況等を監視する新たな制度がスタートした。また、法務省と日弁連の定期的な協議の場が設けられ、収容や仮放免などについて意見を交わしている。
    記事「西日本管理センターでハンスト 仮放免求め約70人」 共同通信(2010年3月11日)
    記事“Inmates on hunger strike in Japan immigration centre” AFP(2010年5月19日)
    「5 入国者収容所等視察委員会の設置」 法務省HP
  • 福岡で連続勝訴 福岡難民弁護団が扱う難民事件で、3月にカチン族男性とロヒンギャ族男性が、4月にロヒンギャ族男性が地裁であいついで勝訴。カチン男性は、地裁で勝訴が確定し、難民認定を受けた。ロヒンギャ男性はいずれも控訴され、現在福岡高裁に係属中。
    事件番号: 平成19年(行ウ)第8号
    裁判所: 福岡地方裁判所
    判決日: 2010年3月8日
    《判決全文へジャンプ》
  • エチオピア難民不認定取消訴訟で一審勝訴 エチオピア出身の女性について、本国での政治活動等を理由にした迫害のおそれを認めた判決。地裁で勝訴が確定し、難民認定。東京地裁・民38部 2010年10月1日判決
  • ロヒンギャ集団訴訟で判決 2007年から提訴していたロヒンギャ難民の事件(東京20人、大阪6人、福岡3人)で、あいついで判決が出された。東京では2人が勝訴し、18人が敗訴するという結果となった。敗訴の18人は控訴した。勝訴の2人は勝訴確定後2011年1月に難民認定を受けた。
    事件番号: 平成17年(行ウ)第472号外
    裁判所: 東京地方裁判所
    判決日: 2010年10月29日
    《判決全文へジャンプ》
  • 無国籍難民の退令を違法とする判決 タイ生で生まれ育ったベトナム難民の2世について、ベトナムを国籍国と認定した上、ベトナムを送還先とした退去強制令書の発付処分を違法とした判決。裁判所は、当事者はベトナムに送還されることの認識なく口頭審理を放棄したため、かかる口頭審理放棄は無効であるとし、また、当事者の国籍国がベトナムであるとは証拠上明らかではなく、送還先をベトナムとしたことについても適法性に疑問があると判示した。国が控訴したが、高裁でも一審の判断が維持された。

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2009年
  •  難民審査参与員の大幅な増員  難民異議手続の未処理数の増加と審査期間の長期化に対応するため、難民審査参与員の数を倍増することに決まった。増員は2段階で、2009年12月に12人、2010年5月に15人が新たに加えられた。難民認定申請から異議申立手続で決定が出るまでの平均期間は、2007年は602日(187件)、2008年は766日(317件)と長期化傾向にあり、2009年(258件)も前年より若干長期化している。
    難民審査参与員を大幅増へ 法務省、認定の迅速化図る 共同通信(2009年10月14日);参議院法務委員会質疑(2009年3月17日);参議院法務委員会質疑(2008年3月25日)]
  •  アフリカ出身の難民認定申請者数が増加  アフリカ出身の庇護希望者による難民認定申請数が、2008年から増加傾向にある。2009年は、特にアフリカ中央部出身の難民認定申請者の増加が目立った。
  •  難民認定数/難民認定率が大きく減少  2009年中に難民認定を受けた者の数(30人)が、一次手続と異議手続のいずれにおいても前年からほぼ半減した。一方、難民不認定の処分をした数も増加しており、難民認定率も減少。特に、一次手続の難民認定率は1%前半にまで下落した。
     [難民認定3分の1に激減 1~9月、申請は最多に 共同通信(2009年12月20日)]
  •  人道配慮による在特が増加  難民認定数が減少したのと対照的に、人道配慮による難民不認定者への在特の数が500人を超え(501人)、2008年(360人)以降の高い水準をキープしている。この人道配慮の増加は評価すべきものではあるが、これらの人道配慮を受けた者の中に「難民」が相当数含まれているであろうことは留意されなければならない。難民認定率の低さと併せて考慮すると、日本政府の極めて狭い「迫害」の解釈により、本来ならば難民認定されるべき者が人道配慮しか与えられていないことが、少ない難民認定数と多い人道配慮という現象の理由の一つになっていると推測される。
  •  難民申請者の困窮が深刻化  不景気のあおりで職に就けない難民認定申請者が増加する中、セーフティーネットであった難民保護費の支給が厳格化され、100人以上が支給を打ち切られた。緊急対策として、全難連を含む難民支援NGO7団体が、4月から難民カンパ・キャンペーンを実施。その後、10月に支給制限が取り除かれ、外務省の働きなどで2010年度の保護費予算は倍増した。しかし、法的根拠の不在、変動する難民申請者数への対応、(再申請をしていない)裁判中の難民申請者への支給など、解決すべき問題が依然として残されている。
     [難民申請者の生活保障のための措置を求める申入れ 難民支援NGO5団体
  •  第三国定住の受入れ準備  2010年秋に受け入れ開始に向け、アジア初の第三国定住のパイロットプロジェクトの準備が進められた。受入れ後6ヶ月以降の支援体制など、残された課題も多い。
  •  庇護希望者の収容が増加  6‐7月頃から、難民手続の決定を待たずに退令発付を受けて収容されるなど、難民申請手続中の収容が増加した。また、異議手続中(口頭意見陳述前)の仮放免更新時に更新不許可とされて突然収容されるケースもあり、従前にない不均衡な運用に対し、難民申請中の者の不安が増大している。
  •  裁判準備中の庇護希望者を本国に強制送還  難民不認定処分に対する訴訟準備中のビルマ少数民族出身の庇護希望者が、裁判をする意思を入管側に伝えていたにも関わらず、出訴期限を待たずして本国に強制送還された。これは裁判を受ける憲法上の権利の侵害であり、勝訴して難民認定を受けるビルマ出身者が相当数いることなどを考慮すればより一層、許容されえない暴挙であったといえる。
     [抗議書 在日ビルマ人難民申請弁護団(2009年11月4日)]
  •  人道配慮「特定活動」のビルマ出身男性が自殺  人道配慮による在留特別許可(「特定活動」)を受けていたビルマ少数民族出身の男性が、精神的な不安定、身体の不調、経済的な不安などを理由に自らの命を絶った。友人と家族によると、この男性は家族呼び寄せができないことで希望を失っていたという。人道配慮による在特では、在留期間などに応じて「定住者」または「特定活動」が与えられる運用がされている。この事件は、同じく人道配慮で在留を認められたにも関わらず、様々な点で不利な「特定活動」についての問題を浮き彫りにした。
     [「定住者」求め集団申請 難民不認定の37人 共同通信(2009年12月14日)]
  •  政権交代で積極的な難民政策への転換の期待が高まる  2002年の瀋陽事件以来活躍してきた議員らが法相や政務官に就任するなどの動きに対し、新政権への期待が高まった。

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2008年
  •  難民申請者数が急増、1500人超
  •  ビルマ人難民申請者を中心に人道配慮に基づく在特付与が急増
  •  ビルマとその他の出身国の難民申請者との認定基準のダブルスタンダード化が鮮明に
  •  在タイ難民キャンプから第三国定住受け入れ試行を決定、3年間で100人
  •  難民・庇護希望者のためのRHQ保護費が枯渇
  •  難民審査参与員棄却ケースで逆転勝訴3件
  •  東京で初の高裁逆転勝訴
  •  トルコ出身クルド人一家に在特
  •  不況で難民・庇護希望者の解雇が相次ぐ
  •  自由権規約委員会が日本の難民認定制度に勧告

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2007年
  •  拷問禁止委員会が日本の難民行政について勧告
  •  裁判所が難民と認めたアリ・ジャンに、在留特別許可出る
  •  しかし、再び難民不認定処分
  •  北朝鮮脱出漂着者、政治判断で韓国へ
  •  難民審査参与員が第二期目に突入
  •  福岡ビルマ弁護団結成
  •  ロヒンギャ民族の難民不認定取消に係る集団訴訟を東京、大阪、福岡で提起
  •  異議申立手続き段階での一次申請手続きの本人尋問の調書開示を開始
  •  全難連10周年
  •  9年以上の長期未済案件が判明
  •  日本政府が第三国定住に向けて始動

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2006年
  •  シンポジウム開催される  11月2日、日弁連が「改正難民認定制度施行後 1年を振り返って~難民鎖国は開かれたか~」と題するシンポジウムが開かれた。新法施行後の難民認定制度について、その運用状況につき事前に行ったアンケートを発表、日弁連がまとめた意見書を紹介した(意見書は日弁連HPに掲載)。さらに、パネルディスカッションではUNHCR、難民審査参与員、法務省入国管理局付検事、日弁連人権擁護委員会難研委委員長が初めて一同に介し、参与員制度のあり方、求められる適正手続や仮滞在の運用状況につき激論を交わした。
  •  高裁勝訴判決続く  昨年の大阪高裁、東京高裁に引続き、今年も、東京高裁(3月ビルマ、8月ビルマ、9月アフガン)と名古屋高裁(7月クルド)で、難民関連裁判の勝訴判決が相次ぎました。地裁段階だけでなく、高裁段階でも、難民裁判で勝訴できることが定着しつつあります。
  •  マニュアル刊行  
  •  ナンセン人権賞を日本人が受賞  
  •  グテーレス難民高等弁務官来日  
  •  クルド、アフガン確定  6月27日大阪高裁でアフガン難民に、6月30日名古屋高裁でクルド難民にそれぞれ難民不認定を取り消す判決が言い渡され、上告されることなく確定した。アフガン、クルドとも、高裁段階で勝訴し、確定したのは初めて。アフガン難民では、9月13日に東京高裁でも勝訴判決が言い渡され、確定した。しかし、入管は再調査すると言い、年末に至るまで認定されていない。
  •  難民申請者激増  
  •  収容状況の悪化:空港収容激増、大村収容増加  
  •  仮滞在運用悪化  難民申請者の法的地位の安定を目的として導入された仮滞在制度であるが、最近、仮滞在許否の判断の審査期間が長期化し、上陸許否の判断も仮滞在許可の判断もされないまま事実上空港のホテルに留め置かれたり、仮滞在の不許可事由がないのに収容令書で収容されるなど、難民申請者の身柄拘束が長引く事例、さらに、「逃亡のおそれがある」という理由のみで仮滞在が不許可にされる事例など、制度趣旨を没却するような運用が多発している。
  •  参与員制度1年経過、問われる専門性  2005年5月からはじまった難民認定異議手続における難民審査参与員制度が1年を経過した。しかし,研修の実態も見えず,難民認定そのもののあり方について専門性を向上させている徴候もみられない。特に審尋における質問内容が難民性の認定にとっての中核的な部分に及ばず,周辺的な事情や重要でない事実の信憑性を問題にされたりなどその専門性に疑問が投げかけられている。

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2005年
  •  難民審査参与員制度始動!はじめての第三者関与  1982年の難民認定制度開始以来初の本格的改正によって、異議申立手続に難民審査参与員が諮問委員として参加することになりました。初めて第三者が手続に参加することで、客観性の向上に期待が寄せられています。
  •  UNHCRマンデート難民カザンキラン退去強制  UNHCRが難民として認定していた父子が、強制退去されました。難民すらも退去しようとする入管の姿勢には内外の批判が集中しました
  •  大阪・東京高裁で難民裁判勝訴  地裁段階では2004年まで多数の勝訴判決が蓄積されていましたが、2005年ようやく6月に大阪高裁で(しかも逆転勝訴!)、12月には東京高裁で(こちらは地裁判断の維持)、それぞれ壁を突破しました。
  •  難民認定数増加(現時点で40名を超えているようです)   これまで最高で26名という数字に留まっていた年間認定数が、2005年は45名以上となっているようです。2004年に比べても3倍の数字となっており、今後のさらなる増加に期待をしたいと思います。
  •  アフガニスタン人難民申請者アリジャン勝訴  東京地裁民事38部において、アフガニスタン人アリジャンさんが難民として認定され勝訴しました。しかし、これを不服として法務省は控訴しており、今後控訴審の動向が注目されます。
  •  全難連による参与員ボイコット運動 適正手続を訴える  全難連では、難民認定手続の第一次手続段階の資料の開示など適正手続の保障を求め、やむを得ず新制度のボイコットに踏み切りました。その後、入管との間で、不認定理由の詳細化、入管と全難連との定期的協議の機会の設置などを確認し、9月から手続に参加しています。
  •  難民申請者の収容が全体として減少傾向に   これまで退去強制手続が難民認定手続と別に進められ、申請者の収容は非常に大きな問題とされてきました。改正に伴う「仮滞在許可制度」や認定手続中の退去不執行等の効果とともに、これまでのUNHCRからの要望がようやく実になったのでしょうか。
  •  就労禁止条件を付されたKKO(ビルマ人難民申請者)収容される  これまで黙認状態であった難民申請者の収容問題に、初めて入管側が就労禁止条件を付し、生存のために働かざるを得なかったKKOさんは仲間の見詰める中収容されていきました。申請者の生存権の保障をどうするのかが、これからの課題です。
  •  広島アジズ民事初勝訴  刑事事件で難民該当性が認められたアブドゥル・アジズさんについて、広島地裁は、3月、行政事件で再度難民該当性を認めました。にもかかわらず、法務省はこれを不服として控訴し、現在、広島高裁で審理が行われています。
  •  東京入管前キャンドル人文字「ともだち」,難民申請者励ます  3月、約400人が集まり、東京入国管理局前の公園で、強制収容されている外国人らを元気づけるため、コンサートを開きました。夜になると、参加者はキャンドルを手に持ち、多文化共生の願いを込めて人文字「ともだち」を作りました。
番外 日弁連、法務省によるトルコ現地調査に「警告」
年末に飛び込んだニュースです。トルコ出身クルド人難民申請者の身分を明らかにする形で法務省がトルコ当局に照会し現地調査を行っていた問題で、日弁連は12月26日、クルド人9名の人権救済申立てを認め、「新たな迫害のおそれがあり重大な人権侵害行為だ」として「警告」を出しました。

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