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2011年の難民統計に関する全難連声明

〜過去最低の難民認定率をうけて〜

 

全国難民弁護団連絡会議

20124

 

1.過去最低の難民認定率

2011年の難民認定統計が法務省入国管理局により発表され、難民認定率が過去最低水準であることが明らかとなった。

 

2011年、難民認定数は21人であり、うち7人が一次手続における認定であり、残り14人が異議手続における認定であった。一次手続の認定者7人には、少なくとも2人の難民不認定取消訴訟で勝訴確定した者が含まれていた。

 

一次手続での取下げを含めた処理数に対する難民認定数の比率は0.33%(取下げを除く処理数に対する比率は0.35%)であり、過去最低水準となった。

 

一方、異議申立での取下げを含めた処理数に対する難民認定数の比率は1.6%(取下げを除く処理数に対する比率は2.2%)であり、2005年に難民審査参与員による手続が導入されて以降で過去最低水準となった。

 

2.認定者の国籍の偏り

2011年の難民認定申請数は過去最高の1867人であった。出身国別に見ると、ミャンマーが491人で1位であったが、ネパール(251人)が初めて2位となり、トルコ(234人)、スリランカ(224人)、パキスタン(169人)が続いた。

 

最近の傾向で見ると、エチオピア、ウガンダ、カメルーン、ナイジェリアなどのアフリカ諸国出身者の難民申請数の増加も目立つ。

 

他方、難民認定者の出身国についてみると、2003年以降はミャンマーに認定者に偏り、ミャンマーが全体の80パーセント以上を占めているが、2011年も21人中18人(85.7%)がミャンマー出身者であった。ミャンマー出身者以外の者が難民認定されることはほぼ不可能に近い。

 

特に、これまでにトルコ・クルドの出身者が難民認定を受けたことはなく、また、アフリカ出身者の一次手続での難民認定は年間1件が続いており、後者について一部の難民支援者たちは「アフリカ枠」と皮肉を込めて呼んでいる。20113月には、スリランカ難民が大阪地裁にて難民不認定取消訴訟で勝訴し、確定したものの、同難民には、ようやくその8ヵ月後の11月に人道配慮による在留特別許可が与えられたのみで、再び難民不認定処分がなされた。司法判断を軽んずる入管の姿勢がここにみられる。

 

3.異議申立継続事件の滞留

20107月に一次手続の審査期間を6ヶ月とする目標を公表して以来、一次手続の処理期間が大幅に短縮されたが、2011年、難民不認定者数が過去最高の2002人となった。審査期間の短縮が、これまでも批判され続けてきた難民認定の水準をより厳格なものとしていると懸念されるところである。異議申立数も過去最高の1719人となったが、年末時点での未済案件数は2600件あり、2011年の審査ペースを基にすると、これを消化するだけで3年かかる計算となる。

 

4.再難民申請が明らかにする現行制度の問題

2011年の難民申請者1867人のうち540人(28.9%)が再申請者であったが、これは、難民不認定率および異議棄却率の異常な高さから、本来保護を受けるべき者が再申請せざるを得ない状況にあることの表れでもある。したがって、2012年以降も再申請者数が高水準になることが予測される。

 

このほか、訴訟中の者が外務省の保護費を受給するためには再申請をしていなければならないなど、制度的に再申請を増やす仕組みがある。この状況で再申請をしていた者が訴訟係属中に再申請で在留特別許可を受けた事例もある。

 

5.まとめ

0.3%という難民認定率は、難民制度の濫用問題を抱える他の条約国にも見られない異常な低さである。法務省は、濫用者の増加という側面から分析するのではなく、現在の難民認定制度が本来あるべき機能を果たしていないという現実を受け止め、保護を受けるべき者をしっかりと保護する制度にするために基準や制度の見直しをするべきである。

 

参考資料

資料1 難民認定数等の推移(19782011

資料2 過去30年の難民認定数等の推移(5年ごと)

資料3 過去30年の出身国別難民申請数(上位10カ国、ほか)

資料4 難民認定数等の推移(ビルマとその他の国の出身者との比較)

資料5 難民申請および認定時の状況等

資料6 難民手続の審査期間の推移

資料7 主な難民受入国の難民認定数等(2010年)

資料8 難民受け入れにおける日本の貢献度‐G7諸国との比較(2010年)

以 上

 

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