声明・提言等(2021年11月9日)全難連より「国際的に保護を必要とする難民等の受入れのための難民認定手続・保護基準の改革に向けた提言」を発表しました。

国際的に保護を必要とする難民等の受入れのための難民認定手続・保護基準の改革に向けた提言[PDF・360KB]

日付:2021年11月9日

団体:全国難民弁護団連絡会議

声明文テキスト 

国際的に保護を必要とする難民等の受入れのための難民認定手続・保護基準の改革に向けた提言

全国難民弁護団連絡会議
2021年11月9日

改革の方向

国際的な保護を必要とする難民等についての受入れのための難民認定手続・保護基準を、国際的な水準に高め、難民等の保護に関する責務を果たすべきである。また、保護すべき人を保護することにより、繰り返しの難民申請や送還困難事案の解消、国内の長期収容問題の改善を導くことになる。

目次

第1 難民認定手続(一次審査)における改革の必要性
1 現状
2 問題点
(1)手続きの不透明性
(2)手続きの独立性(出入国管理行政への従属)
(3)手続きの専門性
(4)手続きの正確性
3 提言
第2 難民認定手続(2次審査・審査請求段階)における改革の必要性
1 現状
2 問題点
(1)参与員の不安定性・独立性
(2)参与員の難民認定に関する専門性
(3)参与員意見の法的性格
(4)制度運用における恣意性の懸念
3 提言
第3 難民等の保護基準における改革の必要性
1 現状
2 問題点
3 提言


第1 難民認定手続(一次審査)における改革の必要性

1 現状

 難民の認定は、法律上、法務大臣がこれを行うこととなっている(法61条の2)。ただし、法務大臣の上記権限は、出入国在留管理庁長官・地方出入国在留管理局長に委任することができる(法69条の2、施行令61条の2)。

難民認定に関する事務は、従来法務省出入国管理局総務課の元に難民認定室が置かれていたが、組織変更に伴い、出入国在留管理庁出入国管理部出入国管理課が取り扱うものとされ(法務省組織令78条8号)、同出入国管理課に難民認定室が設けられている。

認定にあたって必要な場合には難民調査官が事実の調査をすることができることとなっている(法61条の2の14)。この難民調査官は入国審査官の中から指名されたものがこれを務めている(平成31年法務省訓令第3号3条「行政職俸給表(一)の職務の級3級以上の入国審査官の中から出入国在留管理庁長官が別に指名する者とする。」)。

2 問題点

(1)手続きの不透明性

行政手続法の適用除外になっており、「行政運営における公正の確保と透明性」(行政手続法1条)が全体として図られていない。

 実際にも、難民認定申請が行われると、難民調査官が、事実の調査としてインタビューを行うなどしているが、通訳を介したインタビューであるにもかかわらず、申請者が一方的に話した形の供述調書が残されるだけで、録音録画もされず、弁護士の立会いも許されないため、供述内容の正確性が度々問題となる。また、それ以外の事実の調査の内容は明らかでなく、また、その後の認定に至る過程は明らかでない。

この点、実務上、難民認定等の権限は地方入管局長に委任されているものの、国家的又は社会的見地から問題となるおそれがある案件等の一定の場合は地方入管局長から出入国管理庁長官に請訓されるものとなっており、実質的には本庁(出入国在留管理庁)において処分内容の決定が行われているものと思われるが、具体的な意思決定プロセスは不明である。 

(2)手続きの独立性(出入国管理行政への従属)

 難民調査官は、入国審査官の中から指名され、数年の勤務の後、再び入国管理の他部門に移るのが通常である。すなわち、難民調査官にとっては、難民調査官の業務は、出入国管理関係の業務の中で一時的に従事する仕事にすぎず、数年後には出入国管理業務に復帰するのであるから、今後も従事するであろう出入国管理業務と同様の出入国管理の観点から事実の調査を抑制的に行うことは容易に推測しうることであって、これを抑制する人事上の配慮はない。さらに、実質的に難民認定につき最終決定権限を有するのが本庁(出入国在留管理庁)であることは、難民認定がまさに出入国管理行政に従属する形となっていることを示している。

(3)手続きの専門性

 難民認定業務は、出身国の政治状況、治安状況などについての最新の情報の収集と分析、難民認定申請者の提出する書証や供述などの信憑性の評価、難民の有する特殊性への理解など事実認定に関する知識と経験、さらには難民法に関する素養など高度な専門性を要する業務である。そのため各国は、独自に難民認定にあたる者の育成プログラムを持ち、UNHCRも締約国の難民認定のためにハンドブックや研修マニュアルを作成している。

 一方、日本の難民調査官は入国審査官の中から指名され、数年後には再び入国管理の他部門に移るのが通常であるため、経験の浅い難民調査官が多く、また不十分な知識のもとで調査を行う例が少なくない。

 また、近時は出身国情報専門官が任命されているが、収集された出身国情報は公開も当事者に対する開示もされない。過去においては、申請者にとって不利な情報だけが使われていたことが明らかになっている例もあるところ、実際にどのような出身国情報が収集されているか、中立公平なものとなっているかの検証ができない。

(4)手続きの正確性

 難民は迫害を受けるおそれから逃れて国を出たものであるから、逃れた先で自らの難民性を立証するために証拠を準備して出国できるなどという例は稀であり、証拠が乏しいことが通常である。したがって、難民認定にあたっては、難民認定申請者の迫害の状況に関する供述が極めて重要な意味を持つことになる。そのため各国では難民認定にあたって難民認定申請者の供述の信憑性を正確に判断するため、難民認定申請者に自らの供述等につき釈明の機会を与えることが重要かつ不可欠とされている。

 ところが日本の難民認定にあたっては直接インタビューを行うのは難民調査官であるが、難民調査官は、難民該当性についての判断権を持たず、実質的に、直接の調査を担当しない出入国管理課の難民認定室が難民調査官が作成した供述調書等の書面のみに基づいて判断を行うこととなるから、難民認定申請者に釈明の機会が保障されていない。また、難民調査官が行うインタビューの内容も、迫害の状況等の根幹的な部分に重点が置かれるのではなく、入国の経緯や本邦での生活の状況等の周辺的な事情を含め、微に入り細を穿ったものになる傾向がある。

3 提言

  正確な認定を可能とするため、以下のような制度とする。

(1)行政手続法の適用対象とする

(2)一次審査を行う者として「難民保護官」(仮称)のポストを新設してその者の専門性を確保すべき措置を取ったうえ、その者が直接調査と認定にあたる

(3)難民審査官の属する機関として「難民保護庁」(仮称)を、法務省や外務省から切り離し、内閣府等の外局として設置する(やむをえず法務省内に設置する場合は、出入国在留管理庁から人事・予算上の独立性を確保する)

(4)審査基準を作成することによって判断の統一性を図る

(5)出身国情報を収集し、公開または当事者に開示する

(6)インタビューについては、録音録画を行い、また、弁護士の立会いを可能にする


第2 難民認定手続(2次審査・審査請求段階)における改革の必要性

1 現状

 2005年改正で「難民審査参与員」制度が導入された。難民審査参与員は、「人格高潔であって、…審査請求に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから、法務大臣が任命する」ことになっており、任期は2年(再任可能)で非常勤とされている(法61条の2の10)。

 2005年5月16日の制度発足時には参与員19名が任命され、その後増加の一途をたどり、令和3年8月30日時点で116名が任命されている(研究者、元外交官、元裁判官、元検事、弁護士、NGO職員、メディア関係者等)。原則として3名1組の固定班に編成されている。

 2005年改正で行政不服審査法が適用されることとなったが、2016年の改正行政不服審査法については、入管法において大幅な読み替えがなされ、その改正の趣旨が没却した状態にある。例えば、行政不服審査法上開催が原則とされる口頭意見陳述・審尋も、難民の不服申立手続においては裁決の1割以下の案件でしか行われていない。

 また、参与員は法務大臣に対して意見を提出し(入管法61条の2の9第3項、入管法施行規則58条の3以下)、法令上、法務大臣は裁決に当たって「難民審査参与員の意見を聴かなければならない。」とされているが、難民審査参与員の意見が法務大臣をどの程度拘束するかということについては条文上明らかではない。

2 問題点

(1)参与員の不安定性・独立性

 参与員は非常勤であることから、他に定職のある者か定年退職後の者へと選任対象が事実上絞り込まれてしまい、審査請求手続に全面的に注力して専門性を高めることがそもそも期待しにくいという問題がある。現実の人選を見ても、法律家は定年退職後の元裁判官や元検察官が相当数を占め、学者も60歳代以上の者が相当数を占めるという状態にある。

2次審査の事務局は依然として専ら入管職員が担っており、参与員に対する各種研修や資料提供を通じた情報操作の危険性や、参与員の班への恣意的な事件配転の危険性が除去される仕組みとはなっていない。また、参与員の意見書は書面で提出されるが(入管法施行規則58条の7)、この意見書原案の起案を、各班に配属された担当難民調査官に委ねている参与員(班)が相当数に上っているとの情報があり、これが事実であれば、独立した第三者の手続き関与という参与員制度の中核が骨抜きにされていると言わざるを得ない。

(2)参与員の難民認定に関する専門性

 参与員は人格性と、法律又は国際情勢の学識経験のみが選出要件とされており、必ずしも難民認定の知識や経験が要求されていない。その任命過程は不透明であり、難民認定の専門性が担保されていない。しかも、参与員になった後も特別な研修を受ける機会はなく、年に数回程度、参与員が任意に参加する「研究会」と呼ばれる会議において入管から認定事例等の報告を受けるだけとのことである。したがって、参与員は難民認定実務に精通していないことが珍しくなく、難民の定義すら理解していないと思われる質問を審尋において発することが散見される状況にある。

(3)参与員意見の法的性格

 参与員が法務大臣に提出した意見の法的拘束力は法令上明らかではない。この点、平成23年頃までは入管は「過去に法務大臣が難民審査参与員の意見(意見が分かれたものについては多数意見)と異なる決定をした例はない」と公表していたが、平成25年から平成28年の4年間で参与員が認定意見を出した31件中うち4割が難民不認定とされ、平成29年以降不服申し立てが認められたのは、平成29年1人、平成30年4人、平成31年・令和元年1人、令和2年1人のみである。

このように参与員制度の形骸化は著しく、その存在意義が疑われる状態となっている。

(4)制度運用における恣意性の懸念

 参与員は3人1班に編制されているが、その班編成の方法・基準は不明である。また、事件を各班に配転する際の方法・基準も不明である。

 参与員3人の意見が割れた場合には、法務大臣は多数意見の方を参与員の意見として取り扱っていることが確認されている。したがって、班編制は極めて重要であるが、公平な班編制となることを担保する客観的方法・基準が欠如している。事件配転についても、公平な配転となることを担保する客観的方法・基準が欠如しており、一部の参与員は認定相当の事件をほぼ配転されたことがないと言った話も聞かれるところである。

3 提言

 不服審査機関は、本来は行政上の最後の判断機関として、1次審査機関と比しても、より高い専門性・独立性が要求される。諸外国の例を見ても、不服審査を司法機関・準司法機関などが行っている例は数多く見られる(フランス、カナダ、スイス、スペイン、オーストラリア、ニュージーランドなど)。

 また、国際的にはこれら不服審査を行う司法機関・準司法機関の各国メンバーが中心となって国際難民移民裁判官会議(IARMJ)が組織され、総会の開催や、新任の認定官の研修等を行うなど活発な活動をして、難民法の発展に大きく寄与している。

そこで、日本の難民保護制度においても、現行の難民審査参与員制度を廃し、内閣府設置法ないし国家行政組織法3条に基づく、高い独立性・専門性を有する不服審査機関として、「難民保護審査会」(仮称)を設立し、同審査会において不服審査手続を主催し、裁決を行う制度に変更すべきである。

(1)難民保護審査会は、法務大臣との指揮命令関係がなく、出入国管理・治安担当および外交担当機関から切り離された機関として設置する。さらに一次審査機関である難民保護庁(仮称)からも独立・優位する機関とする。

(2)難民保護審査会の委員が出入国在留管理局に異動・出向すること及び出入国在留管理局に在籍経験のある者が難民保護審査会の委員になることは認めない。

(3)難民保護審査会の委員は、難民法又は国際人権法の学識経験を有する者から、内閣総理大臣が、両議院の同意を得て、これを任命することとする。任命にあたって委員を推薦する推薦委員会(委員に難民法・国際人権法の学識経験を有する者、NPO/NGO職員、弁護士を含む)を内閣に設置することを検討する。

(4)難民保護審査会の委員の任期は4年程度とし、解任を許さない。


第3 難民等の保護基準における改革の必要性

1 現状

  世界平均では難民認定率は20~30%であるのに比べて、日本の難民認定制度は1%を大幅に下回り、異常な認定率の差異が生じている。UNHCRやアメリカ国務省などからも日本の難民認定が少なすぎる、認定の基準が厳しいといった指摘がなされている。

2 問題点

(主たる問題点)

・難民条約上に定められている難民の要件、「特に迫害を受けるおそれのある十分に理由のある恐怖」について、日本の行政・司法は極めて限定的な独自の解釈による基準を用いている。申請者が属する組織が外国政府から弾圧されていたとしても、具体的に当該個人が迫害対象として政府に把握されていなければ難民ではないとすることが多い。

・信憑性についても、証拠があるか、以前の供述と矛盾がないかなどが極めて厳しく見られ、また、インタビューが立ち会いなく、録画録音もなく入管職員が作成した供述調書が重要な証拠となることもあって、それとの齟齬などを理由に信憑性がないとされる場合も多い。

(その他の問題)

・上記の問題点以外にも、「迫害」の定義が狭きに過ぎる、新しい形態の迫害が十分に取り入れられていない、迫害の主体が非国家主体である場合の難民認定が限定的であるなどの問題もある。

3 提言

(1)UNHCRが(時限的に)認定手続の決定やプロセスに関与またはモニタリングを行う(クオリティ・イニシアティブ/アシュアランス)。その際、諸外国での実践例を参考にする。

(2)UNHCRやそのほかの専門家の意見を十分に取り入れながら、難民認定の基準やそのあり方を明確にする。その作成にあたっては、UNHCRハンドブックやその解釈、国際難民法における通説的見解を参照することを明確にし、これらを取り入れたものとする。

以上

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