声明・提言等(2021年5月19日)全難連より声明「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(第204 回国会提出)についての廃案の決定について」を発表しました。

出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(第204 回国会提出)についての廃案の決定について[PDF・141KB]

日付:2021年5月19日

団体:全国難民弁護団連絡会議

<声明文 ▽>

    【声明】出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(第204 回国会提出)についての廃案の決定について
    
    全国難民弁護団連絡会議
    2021年5月19日
    
     私たちは,一貫して今般の法案に反対してきた立場から,廃案との扱いを評価します。この廃案に向けた広範な当事者,支援者,NGO,市民,メディア,国会議員,弁護士,弁護士会等,法案に反対し活動を支えてきたすべての団体・個人に敬意を表したいと思います。
    
     もともと長期収容という事態は,出入国在留管理庁(以下入管庁といいます)が作り出してきた事実です。その原因は,何よりも,入管法が人権保障は外国人にも及ぶという基本原則に立っておらず,入管法の上位法規である難民条約や国際人権諸条約などにしたがった適正な難民認定手続や入管手続が実施されていないことにあります。適正な収容手続に関する司法の規制が何ら存在しておらず,入管収容の上限もないという現行の入管法の根本的欠陥が,入管庁による権力的で恣意的な収容を可能にしてきました。
    
     今般の法案のうち,まず,難民認定手続に関する部分については,UNHCRからも厳しく指摘されているとおり,内容に以下の重大な問題点があるものでした。
    
     まず,送還停止効の一部解除について,複数回申請者に対する解除については,「2014 年12 月の「難民認定制度に関する専門部会」の提言の完全な実施も含めた公正・効率的な難民認定制度の確保のための更なるとりくみに費やすことが必要かつ効果的である」として重大な懸念が表明されていました。また,犯罪歴等の一定の属性のある者に言及する送還停止効の解除の規定(第61条の2の9第4項第2号)についても,ノン・ルフールマン原則に反するおそれがあるとして,その削除が提案されていました。
    
     次に,補完的保護については,その要件について,「現在提案されている文言は,国際・地域難民・人権法で使われている文言を採用したものではなく,拷問等禁止条約や自由権規約等,日本政府が負うすべての国際人権法上のノンルフールマンの義務の履行の確保が可能な文言に修正されることが望まれる」とされ,その保護範囲について根本的な問題が指摘されていました。
    
      他方,今般の法案のうち,収容に関する部分については,そもそも,昨年8月,国連の恣意的拘禁作業部会から,日本の収容制度が国際人権法違反であるとの意見が提出されていました。
    
    しかし,本法案は,これと真摯に向き合うことのないままに,監理措置制度の創設や罰則の強化など,原則収容主義及び入管の強大な権限を温存・拡大の方向に向かうもので,適正手続保障の実現のための方策がまったくみられませんでした。
    
    本法案について,恣意的拘禁作業部会のみならず,移住者の人権に関する特別報告者など4つの特別手続から,国際人権法違反であるとの強い懸念を示され,また,国内の国際法・憲法の研究者からも国際人権法違反であるとの声明が出されたのは,当然の結果であると言わなければなりません。
    
    これらの国際機関等からの重大な指摘を受けながら,これに逆行するかのような法案はそもそも上程されるべきでなかったのであり,仮に法案が成立していれば,日本が国際的な信義を損なったことは明らかです。
    
     ところで,今回の名古屋入管におけるスリランカ女性死亡事件は,廃案に向けて審議に大きな影響を与えることになりました。この真相究明は,この痛ましい事件の救済に向けた一歩であるにとどまらず,外国人の人間としての権利を無視して繰り返される収容者の死亡事件にみられるような入管収容の制度的問題点を明らかにし,長期収容に関する制度議論をする上での必須の前提となるというものです。しかし,真相の究明のためにビデオや文書の開示が遺族や国会議員から求められているにもかかわらず,政府はこれを拒否し続けています。
    
    私たちは,本法案の廃案にとどまらず,入管法やその実務が,難民法,国際人権法を遵守した適正なものとなるよう,また,今後の難民認定手続や入管収容をめぐる議論が真に実りあるものとして展開されるよう,入管庁,政府及び与党に強く求めるものです。また,名古屋入管でのスリランカ女性死亡事件については,独立した第三者による適正で客観的な調査結果が速やかになされることと,なによりも早くビデオの開示が遺族や国会等の関係機関にされることを求めます。
    
    今回,入管法の改悪を防止できたことは歓迎すべきことですが,忘れてならないのは,冒頭で記した現行の入管法の問題点が何も解決されていないことです。私たちは,外国人の基本的人権の保障を基礎に据えた改正を実現すべく,今後とも力を尽くしていきます。
    
    以上

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