声明・提言等（2022年11月1日）弁護士有志ほかより「行政訴訟の裁判長を被告国側の訴訟責任者に異動させた人事に抗議する申入書 」が提出されました

行政訴訟の裁判長を被告国側の訴訟責任者に異動させた人事に抗議する申入書

２０２２年１０月 ３１日

最高裁判所長官　戸倉三郎　殿
法務大臣　葉梨康弘　殿

（申入れを行う者）行政訴訟に取り組む弁護団
弁護士団体
弁護士有志一同
（後記一覧のとおり）

申入れの趣旨
１　東京地方裁判所行政部の部総括裁判官（裁判長）であった人物を、令和４年９月１日付で国側の行政訴訟の責任者である法務省訟務局長に転任させた人事に、抗議します。
２　同行政部に係属している裁判の、評議の秘密が害されないことが保障される措置を要求します。
３　裁判所と法務省の、行政訴訟分野における人事交流について、廃止を求めます。

申入れの理由
　最高裁判所事務総局と法務省によって、令和４年９月１日付で、前日まで東京地方裁判所（以下「東京地裁」といいます。）の４つある行政訴訟専門部のひとつの部総括裁判官（裁判長）であった人物を、法務省訟務局長（以下「訟務局長」といいます。）に就任させる人事が行われました（以下「本件人事案件」といいます。）。
　訟務局長職は、行政訟務事務に係る国の責任者ですから、前日まで行政事件の裁判長だった人物を、翌日からは、同じ行政事件について、被告である国側の責任者に就かせたものです。
　従来、裁判官と検察官の間の人事交流、いわゆる判検交流について、裁判所の独立・裁判の公正の観点から問題が指摘され、刑事分野ではすでに廃止されていますが、行政分野では現在も続いています。また、東京地裁行政部の部総括経験者が、約１年の期間を置いた後に訟務局長となった例が、過去に少なくとも２例あり、そのことだけでも、裁判所行政部における情報が訟務局に取得されたおそれがあり、裁判の公正への信頼の点で問題がありました。
　本件人事案件は、さらにエスカレートして、直接の転任が行われており、前例のない事態です。
　本件人事案件によって、現時点で、係属中の行政事件について裁判官合議体が行ってきた評議の内容を訟務局長が知っているという、異常な事態が生じています。評議内容を口にすることはもちろん、評議内容を踏まえて国側の訴訟活動に関与し得るだけで、裁判所法第７５条が定める評議の秘密保持との関係で問題があることが明らかです。
　また、本件人事案件が異動前の裁判長に伝えられた時期は不明ですが、既に知った後に行政事件の判決に関わっていたとすれば、例えて言えば、裁判官が転職先として内定している企業を被告とする裁判について、その裁判官が判決を言い渡すことに類する状況です。仮に、敗訴した原告本人が本件人事案件を知った場合、裁判の公正への信頼を損なうことは明らかであり、外見的に「裁判の公正を妨げるべき事情」（民事訴訟法２４条１項）があります。

　私たちは、同行政部で、前裁判長の異動前後に判決を言い渡された事件や、現在同行政部に係属している事件を、原告訴訟代理人として直接担当し、あるいは、行政訴訟、国を相手とする訴訟にかかわる弁護団、弁護士団体、弁護士として、本件人事案件が裁判所の独立と裁判の公正に悪影響を及ぼすことを危惧しています。
　私たちは、本件人事案件に関与した最高裁判所事務総局と法務省に対して抗議し、同行政部で前裁判長が関与した裁判の評議の秘密が害されないことが保障される措置を求めると共に、裁判所の独立と裁判の公正の確保のため、今後は行政訴訟分野における人事交流についても、廃止することを求めます。

以上

（申入れを行う者一覧）

【呼び掛け人（弁護士）】
（東京）小島延夫　大橋毅　鈴木雅子　難波満　浦城知子　駒井知会　高橋済　高見智恵子　有園洋一　（第一東京）渡邉彰悟　高井信也　（神奈川）井上啓　（大阪）空野佳弘　小久保哲郎　仲岡しゅん　上林惠理子　松田真紀　（京都）吉田雄大　（広島）滑川和也（以上、19名）

【弁護団】
神奈川生存権裁判弁護団　黒川検事長勤務延長情報公開請求弁護団　広島・長崎ベトナム人元留学生に対する退令処分取消訴訟弁護団　アベノマスク情報公開請求弁護団　神奈川年金訴訟弁護団　水俣病行政訴訟弁護団　横須賀石炭火力発電所行政訴訟弁護団　福岡生活保護基準引下げ違憲訴訟弁護団　生活保護基準引下げ処分取消訴訟沖縄弁護団　性別変更後の子の認知訴訟　手指障害等級行政事件弁護団　旅券発給拒否訴訟弁護団　新・人間裁判弁護団　生活保護基準引下違憲大阪訴訟弁護団　生活保護基準引下げ違憲富山弁護団　申込みみなし厚労省通達情報公開請求訴訟弁護団　Ｂ型肝炎訴訟大阪弁護団　第３次新横田基地公害訴訟弁護団　名古屋地裁外国籍少年の居場所裁判弁護団　ラポロアイヌネイションサケ捕獲権確認訴訟弁護団　老朽原発40年廃炉訴訟弁護団　いのちのとりで裁判青森弁護団　「黒い雨」訴訟弁護団　大阪アスベスト弁護団　新•生存権裁判東京弁護団　新安保法制違憲訴訟長崎弁護団　岩国爆音訴訟弁護団　中央新幹線工事差止等請求事件弁護団　生活保護基準引下げ反対埼玉弁護団　特定整備路線補助86号線事業認可取消訴訟　石神井まちづくり訴訟弁護団　特定整備路線補助26号線事業認可取消訴訟　生存権訴訟愛知弁護団　生存権訴訟広島弁護団　「日本の入管収容は自由権規約違反」弁護団（以上、弁護団35団体）

【弁護士団体】
政府の公文書のあり方を問う弁護士・研究者の会　全国難民弁護団連絡会議　西日本難民弁護団 生活保護基準引き下げにＮＯ！全国争訟ネット　恣意的拘禁ネットワーク 一般社団法人JELF（日本環境法律家連盟）　福岡難民弁護団　全件収容主義と闘う弁護士の会ハマースミスの誓い　入管を変える！弁護士ネットワーク　ウィシュマさん死亡事件真相解明弁護団（以上、弁護士団体10団体）

【弁護士】
（札幌）山本完自 島田度 中島哲 佐藤哲之 中島光孝 尾崎祐一 齋藤耕
（仙台）宇部雄介
（青森県）葛西聡
（東京）中村優介 新倉修 丸山由紀 江森民夫 村山裕 俵公二郎 朝倉正幸 小川隆太郎 中野由紀子 北村聡子 杉浦ひとみ 金子美晴 本多貞雅 斉藤豊 高遠あゆ子 奈良泰明 植村公彦 橘高真佐美 山浦誠治 水野泰孝 金谷達男 淵脇みどり 山本英司 望月晶子 板倉由実 古池秀 児玉晃一 山下敏雅 岡崎敬 菊間龍一 紙子陽子 上野格 上杉崇子 永野靖 木塚雅美 藤原朋弘 徳永裕文 谷田和一郎 岡田浩志 平岡百合 西田美樹 田中美和子 千葉恒久 金哲敏 荻野明一 川口智也 皆川涼子 辻田航 樋渡俊一 稲村宥人 竹澤克己 鈴木堯博 古川健三 加藤桂子 関聡介 林治 光前幸一 出口かおり 澤藤大河 藤井なつみ 桐本裕子
（第一東京）田代夕貴 実野現 飯田豊浩 中島広勝 小田川綾音
（第二東京）千葉恵子 三宅千晶 河邉優子 五十嵐潤 猿田佐世 小竹広子 渕上隆 長谷川弥生 指宿昭一 井桁大介 伊藤朝日太郎 藤田城治 日置雅晴 町田伸一 吉村功志 他谷耕助 野口景子 伊藤藤吉 藤田裕 穂積剛 吉田朋弘 富田隼 三雲崇正 高津尚美 宮村啓太 山中眞人 武田昌邦 福田健治 岩井信 仲村渠桃 島村洋介 岩本拓也 趙誠峰 今泉義竜 原田真実子 久道瑛未 山口紀洋 永井久楽太 横山佳枝 青木秀樹 西川研一 幸田雅治 花澤俊之
（神奈川県）馬奈木幹 飯田学史
（埼玉）北川浩司 渡邊享子 設楽あづさ
（千葉県）辻慎也 中村亮 藤吉彬 立花朋 及川智志 佐藤健介
（茨城県）伊藤しのぶ 尾池誠司 大塚喜封 鈴木裕也 坂本博之
（群馬）古平弘樹 船波恵子 吉野晶 鈴木智之 野上恭道 嶋田久夫
（静岡県）高貝亮 鈴木建瑠 濱田六法 荒井摂子
（山梨県）長倉智弘 梶山正三 宋日序
（長野県）藤原寛史 澤田若菜 米山秀之 丸田由香里 福本昌教 出井博文 室賀俊樹
（愛知県）小島寛司 渥美雅康 森弘典 永井康之 中根祐介 久野由詠 松村啓史 野田葉子 室穂高 河野優子 北村栄 稲垣仁史 池谷昇 堀居真大 大坂恭子
（三重）木村夏美 村田正人 石坂俊雄
（岐阜県）稲田安由未 神谷慎一 林真由美 山本亮
（福井）市川徹 吉川健司
（大阪）小野順子 小谷成美 牧野幸子 在間秀和 武村二三夫 安原邦博 西本哲也 阪口徳雄 徳井義幸 谷真介 遠地靖志 由良尚文 井上洋子 金英哲 冨田真平 和田信也 橋本智子 辻野篤郎 斎藤浩 原啓一郎 喜多鉄春 川村遼平 高山巌 里見和夫 久堀文 位田浩 西谷春平 中井雅人 村角明彦 大山弘通 渋谷元宏 平方かおる 能瀬敏文 三輪晃義 脇山美春 金井塚康弘 七堂眞紀 吉田恵美子 中島ふみ 定岡由紀子 信岡登紫子 笹山将弘 康由美 宇野裕明 城使洸司 奧山泰行 今山武 浦野智文 田中萌奈美 谷次郎 田中晴登 養父知美 岡野一洋 渋谷有可 中野博之 中村ちとせ 村本健司 青木重人 田積祥子 越知覚子 角谷洋一郎 松田さとみ 繁松祐行 正木みどり 川﨑真陽 松森彬 西晃 坂東大士 奥田愼吾 越尾邦仁 北本修二 金星姫 馬場圭吾 森博行 冠木克彦 浦功 菅充行 楠晋一 福光真紀 青木克也 福井謙多朗 福原哲晃 森本智子 富﨑正人 丹羽雅雄 松本康之 金奉植 松本亜土 西村英一郎 大橋さゆり 室谷悠子
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（奈良）佐藤真理 新田令華 中西達也
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（広島）端野真 中村越史 足立修一 平田かおり 依田有樹恵
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（徳島）堀金博
（愛媛）薦田伸夫
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（長崎県）森永正之 中鋪美香 魚住昭三
（熊本県）石黒大貴
（宮崎県）松田幸子
（沖縄）大井琢 河井耕治 寺田明弘
（以上、弁護士316名）