【2021年難民10大ニュース】1~10

1. チャーター便送還違憲判決 

〔説明文〕 

 9月22日、東京高裁は、難民異議棄却告知後直ちに収容し、翌日チャーター便により強制送還されたスリランカ人男性2名について、憲法32条が保障する裁判を受ける権利を侵害したとして国に対して慰謝料各30万円を支払よう命じる判決を下した。

 これに先立つ1月13日、名古屋高裁でも同様の事件で司法審査を受ける機会を侵害したとして国に賠償を命じる画期的な判決が下されていたが、憲法違反の主張は斥けられていた。東京高裁判決は、名古屋高裁判決の進化形といえる。

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2. 難民条約加入40年 

〔説明文〕 

 1981年に難民条約を批准し,82年から施行された難民認定制度が40年を迎えた。当初60日ルールのもとで難民鎖国と言われた時代は2005年に変化し,新たに難民審査参与員制度も導入されたものの,近年一次は1%に満たず,不服の段階では0.1%にも満たず,難民条約締約国としての義務の履行がなされない状態が続いている。

 いま,難民保護の本旨が尽くされない状態で,送還停止効の一部解除の法案が提出される等,難民保護の本筋に向かうのか否か,日本は再び岐路にたっている。

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3. 入管法改正 野党が難民保護法案等を提出 政府法案は廃案に 

〔説明文〕 

 本年5月18日、入管法改定政府案が廃案となった。この政府案は、帰国が困難な者の事情や収容の在り方に関する入管側の問題を考慮せず、入管の権限を一方的に強化するものであったため、市民の反発が強かった。他方で、同時期に参議院に提出された野党案は、難民等保護委員会の創設や収容に司法審査をもうけるなど、より国際的な批判に応えるものとなっている。入管法を変える動きは今後も続くため、来年も注視していく必要がある。

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4. ウィシュマさん事件(8月、政府調査報告) 

〔説明文〕 

 3月6日名古屋入管において、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが死亡した。

 好きだった日本に来て、日本の子供たちに英語を教えたいと夢見ていた彼女はどうして死ななければならなかったのか。

 映像が残っている2月の後半からは自分で立つことも、歩くことも、食事をすることも、ベッドから起き上がることもできなかった。

 どうしてこのような状態の彼女を名古屋入管は病院に搬送しなかったのか。

 そこに入管の深い闇がある。この闇は解明されなければならない。

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5. 国連特別報告者らが政府入管法改正案を国際法違反と指摘 

〔説明文〕 

 3月31日、政府提出の入管法改正案に対して、国連の特別報告者ら4者が連名で、同法案が国際人権法に違反するという懸念を表明した。具体的には、“監理措置”を新たに導入したとしても収容が原則である以上は身体の自由を保障する世界人権宣言や自由権規約に反すること、司法審査/期間上限のない収容は自由権規約に反すること、3回目以上の難民申請者を送還するのはノン・ルフールマン原則(拷問などの危険のある国への送還の禁止)に反することなどが指摘された。

 昨年9月の国連恣意的拘禁作業部会の意見に続き、日本の入管法が国際人権法に反することが一層明らかになったといえよう。

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6. 明暗を分けた五輪代表選手の庇護 

〔説明文〕 

 7月から8月にかけて行われた東京五輪。二人の代表選手が本国での迫害を逃れるために庇護を希望したが、明暗が分かれる結果となった。

 7月に宿舎から失踪し、その後日本政府に対する難民申請の意向を示したウガンダ重量挙げ選手は、あろうことか、当局が本国の大使館に通報をし、説得され、帰国を余儀なくされた。帰国後、5日間拘束された。

 他方8月に帰国を拒んだベラルーシの陸上選手は、当初から外国への庇護を希望。希望がかなえられ、ポーランドによる庇護が認められた。

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7. サッカーミャンマー代表選手の難民認定 

〔説明文〕 

 サッカーのミャンマー代表選手が難民認定された。難民認定されたピエ・リアン・アウン選手は、5月のワールドカップ予選の日本戦で、ミャンマーのクーデターに対する抗議の意思を示す「3本指」を立てた。その後、難民認定申請を行い、申請後わずか2カ月ほどの8月に認定の結果が出た。この難民認定の結果は当然であるが、3本指を立てずともミャンマーに帰国して無事な者はどれだけいるだろうか。他のミャンマー出身者に対しても速やかな難民認定が求められる。

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8. 在留ミャンマー人への緊急避難措置 

〔説明文〕 

 2月1日の軍の突然のクーデターが起きたミャンマーではその後軍による市民の殺戮が続き,現在では約1300人が死亡したと言われる。この軍の暴虐を背景として世界でもミャンマー人保護が言われ,日本でも5月28日に緊急避難措置と銘打って希望するミャンマー人の在留の保護,送還停止が打ち出された。効果については十分な検証を要するものの,このような形で一般的・全般的に特定の国籍を対象として保護が打ち出されたのは初めての試みで,今後の展開と拡がりが期待される。

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9. アフガニスタン問題 

〔説明文〕 

 タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧した以降、日本に関係のある多くのアフガニスタンの人々が日本への退避を求めたり、日本での庇護を希望している状況にある。

 数百人の日本大使館やJICAで勤務していた職員らが日本政府の支援で日本に退避したとされているが、元留学生や日本で難民認定を受けた者の家族などについては、アフガニスタンからの出国が困難であったり、査証が発給されないなどの事情により、退避ができないまま危険に直面している。

 一方、日本に在留しているアフガニスタン人について、入管庁は、本人の意思に反して送還をすることはしないとしながらも、在留許可については判断を適切に行うと述べるにとどまっており、不安な日々を送らざるを得ない状況に置かれている。

 また、2021年11月時点で国内避難民は60万人を超え、1900万人が飢餓状態に陥っている。

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10. 在留資格のない難民申請者の社会保障問題 医師の団体が被仮放免者への社会保障等の改善を国に求める 

〔説明文〕 

 仮放免中の外国人は健康保険を利用できない。昨年からは健康保険被扶養者にも入れなくなった。保険対象外の外国人に高額な診療価格を設定する医療機関もある。仮放免中に病気になれば命の危険に晒される。出身国に戻れない事情を抱える難民申請者も同様である。11月29日に民医連は国籍や在留資格の有無に関わらず、すべての人への医療保障を求める要請書を提出した。在留資格のない外国人に対する社会保障のあり方を見直さなければならない。

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