国会質疑等(2025年3月25日)福島みずほ議員(社民・参)質問主意書への政府回答[エチオピア難民の保護]

日本におけるエチオピア人難民の保護の現状に関する質問主意書(外部リンク:参議院ウェブ

提出者:福島みずほ議員(社民党)
番号:第217回国会 質問55号
提出日:2025年3月12日
答弁書受領日:2025年3月25日

合体版(質問&答弁)[PDF・317KB]

質問&答弁テキスト 

日本におけるエチオピア人難民の保護の現状に関する質問主意書&答弁書

 エチオピアは、ノーベル平和賞を受賞したアビィ・アハメド・アリ首相の下で、この3年の間に内戦状態に陥り、民族浄化とも評される深刻な民族対立が生じている。日本におけるエチオピア人難民の保護の現状について以下質問する。

一 エチオピアの現状について

1 政府は2021年に「エチオピア北部における国内避難民等に対する緊急無償資金協力」を実施する等、同国の人権状況の改善に積極的に取り組んでいると承知している。2021年以降、国連人権理事会は「International Commission of Human Rights Experts on Ethiopia」(以下「国際委員会」という。)を設置し、国連の様々な機関がエチオピアの紛争と残虐行為に関する決議やプレスリリースを発表している。
 国際委員会の活動内容について政府の把握状況を示されたい。また、国連の機関によるエチオピアの紛争と残虐行為に関する決議やプレスリリースについて表題の訳文とともに政府の把握状況を示されたい。

一の1について
 前段のお尋ねについては、御指摘の「国際委員会」は、令和3年12月17日に第33回人権理事会特別会合(以下「特別会合」という。)において採択された決議に基づいて、令和2年11月3日以降にエチオピアにおいて発生した国際人権法の違反等が疑われる事案に関する調査等を行うことを目的として設置され、令和5年10月にその活動を終了したものと承知している。
 後段のお尋ねについては、「エチオピアの紛争と残虐行為」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、エチオピアの人権状況については、令和6年6月14日に、国連人権高等弁務官事務所が、「エチオピア:国連人権高等弁務官が侵害と濫用を止める持続的な努力を要求」(仮訳)と題するプレスリリースを行ったと承知している。

2 政府は国連の場において、エチオピアについてどのような見解を表明しているか示されたい。

一の2について
 お尋ねについては、例えば、特別会合において、エチオピアにおける長期的な平和と安定を達成するための取組に貢献していく旨の発言を行った。

二 出入国在留管理におけるエチオピア人難民認定申請者について
 現在、法務省が公表している毎年のエチオピア人の①難民認定申請者数、②難民認定者数は次のとおりである。
平成26年① 23人 ②不明
平成27年 ①17人 ②不明
平成28年 ①13人 ②4人
平成29年 ①22人 ②不明
平成30年 ①13人 ②5人
令和元年 ①35人 ②2人
令和2年 ①不明 ②0人
令和3年 ①10人 ②0人
令和4年 ①17人 ②2人
令和5年 ①不明 ②6人

 提出された難民認定申請が同一年内に処理されていると仮定すれば、10年を通じたエチオピア人難民認定申請者の認定率は高くても約13%(19人/150人)である。これは、エチオピアの人権状況の劣悪さから考えて余りにも低いと言わざるを得ない。国際基準に合致する難民認定が実施されているのか検証する必要がある。実際、関係資料によれば、米国の認定率は66%である。

1 過去15年における難民認定申請者数に占める難民認定者数の割合(以下「難民認定率」という。)及び難民認定申請者数及び補完的保護対象者認定申請者数の合計に占める難民認定者数及び補完的保護対象者認定者の合計の割合(以下「庇護率」という。)をそれぞれ明らかにされたい。

二の1について
 お尋ねの「過去15年における難民認定申請者数に占める難民認定者数の割合」及び「難民認定申請者数及び補完的保護対象者認定申請者数の合計に占める難民認定者数及び補完的保護対象者認定者の合計の割合」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、平成21年から令和5年までの間に難民認定申請(出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第61条の2第1項の難民の認定の申請をいう。以下同じ。)をした者のうち難民と認定したものの割合及び難民認定申請又は補完的保護対象者認定申請(同条第二項の補完的保護対象者の認定の申請をいう。)をした者のうち難民と認定したもの又は補完的保護対象者と認定したものの割合についてのお尋ねであれば、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

2 2024年11月末現在における、難民認定申請中のエチオピア人の数を示されたい。
3 2024年11月末現在における、難民不認定処分に係る審査請求を行っているエチオピア人の数を示されたい。
4 2024年11月末現在における、仮放免されており就労資格や国民健康保険加入資格のないエチオピア人の数を示されたい。また、出入国在留管理庁の収容場に収容されている難民認定申請中又は審査請求中のエチオピア人の数を示されたい。

二の2から4までについて
 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

5 難民等に関する出身国情報について、法務省のウェブサイトに公表されている英国内務省、米国国務省等の出身国情報以外に、本省の難民認定室が保有し、地方出入国在留管理官署(以下「地方入管」という。)の難民調査官が閲覧可能なエチオピアに関する出身国情報はあるか示されたい。

二の5について
 お尋ねのような「出身国情報」はある。

6 過去3年間、エチオピア人難民認定申請者の保護についてUNHCRと協議したり、UNHCRから何らかの文書を得たりしたことはあるか示されたい。ある場合は、難民調査官や難民審査参与員に協議の結果や文書の内容を情報提供し、難民認定の審査に反映させるため、どのような措置を講じているか示されたい。

二の6について
 出入国在留管理庁において、令和5年12月に、国連難民高等弁務官事務所から「エチオピアへの帰還に関するUNHCRの見解(仮訳)」と題する文書を受領しており、当該文書については、難民調査官に提供し、また、難民審査参与員からの求めに応じて提供している。

7 米国、カナダ、英国、ニュージーランド、オートラリア、欧州連合など、他国におけるエチオピア人難民認定申請者の難民認定率ないし庇護率を把握しているか。把握している場合は、把握している国の難民認定率ないし庇護率を示されたい。

二の7について
 お尋ねの「他国におけるエチオピア人難民認定申請者の難民認定率ないし庇護率」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、諸外国における難民認定制度及び「庇護」に関する制度について網羅的に把握していないため、お答えすることは困難である。

8 エチオピアにおける人権状況の急激な悪化に鑑み、ノン・ルフールマン原則に違反する強制送還を予防する防護措置として、北米、欧州諸国でどのような措置が講じられているか政府の把握状況を示されたい。

二の8について
 お尋ねの「エチオピアにおける人権状況の急激な悪化に鑑み、ノン・ルフールマン原則に違反する強制送還を予防する防護措置」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、諸外国の法制度を網羅的に把握していないため、一概にお答えすることは困難であるが、難民の地位に関する条約(昭和56年条約第21号)又は難民の地位に関する議定書(昭和57年条約第1号)の締約国は、「ノン・ルフールマン原則」に関連する規定を含めた同条約又は同議定書の実施について、必要な措置を講ずることとなる。

三 難民認定手続全体について

1 難民認定手続では、処分庁である地方入管が審査庁となる本省難民認定室に事案を進達し判断を仰ぐこととされており、これは処分庁と審査庁の独立を損なうものであると考えるが政府の見解を示されたい。
2 個々の難民不認定処分に係る審査請求において、難民認定室の職員が処分庁である地方入管の代表者として審尋に臨み、審査請求人や難民審査参与員からの質問に処分庁として回答する実務が行われている。これは、難民認定室が処分庁たる地方入管に出身国情報を提供するという補助的、限定的な役割にとどまらず、意思決定権者であることを公的に示す行為であると考える。審尋の場において当該難民認定室職員は、所属も氏名も明らかにしない。処分庁に所属しない難民認定室職員が地方入管職員の代わりに発言するのは違法と考えるが政府の見解を示されたい。
4 審査庁は独自に出身国情報を収集する体制を有しているか。あるいは、審査庁は、難民認定室に出身国情報の提供を依存しているのか示されたい。

三の1、2及び4について

 お尋ねの「審査庁となる本省難民認定室」、「処分庁に所属しない難民認定室職員が地方入管職員の代わりに発言する」及び「審査庁は独自に出身国情報を収集する体制を有しているか。あるいは、審査庁は、難民認定室に出身国情報の提供を依存しているのか」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

3 難民認定室は審理員である難民審査参与員に出身国情報を提供しているか示されたい。

三の3について
 お尋ねの「難民認定室」は、難民審査参与員からの求めに応じて「出身国情報」を提供している。

5 出入国在留管理庁は、難民該当性の評価に先立って難民認定申請者の主張の信ぴょう性を評価するための具体的な手順や注意事項を定めた文書を有しているか示されたい。有している場合は、その文書名を明らかにされたい。

三の5について
 お尋ねについては、「難民認定等事務取扱要領」(平成17年5月13日付け法務省管総第823号法務省入国管理局長通知)において、「調査における事実認定に係る留意事項」及び「聴取事項等」について記載している

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