国会質疑等(2025年8月15日)松尾明弘議員(立憲民主・衆)質問主意書への政府回答[不法滞在者ゼロプラン]

「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」に関する質問主意書(外部リンク:衆議院ウェブ

提出者:松尾明弘議員(立憲民主党)
番号:第218回国会 質問2号
提出日:2025年8月1日
答弁書受領日:2025年8月15日

合体版(質問&答弁)[PDF・245KB]

質問&回答テキスト 

「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」に関する質問主意書&答弁書

  出入国在留管理庁(以下「入管庁」という。)は、令和7年5月23日に「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(以下「ゼロプラン」という。)を公表した。しかしながら、入管庁の公表した資料はわずか2頁のみであり、ゼロプランの対象の定義や範囲についての詳細な説明はなく、運用の透明性に疑義がある。以下、ゼロプランに関して質問する。

一 ゼロプランにおいては、「ルールを守らない外国人」が国民の不安の原因であり、「速やかに我が国から退去させる」こととされている。

1 「ルール」とは、法律に定められた行為義務・遵守事項のことを指すのか、それとも広く社会規範・慣習・行政上の基準などを含むのか、具体的な定義を示されたい。

2 「ルールを守らない」とは、誰がどのように判断するのか。判断する主体及びその基準・要件を具体的に示されたい。

3 2の判断の結果は、ゼロプラン策定以降の入管庁の運用において、行政処分・退去強制手続にどのように影響することとなるのか。政府の見解を示されたい。

4 1から3までの内容及び運用状況は、速やかに公表すべきと考えるが、公表の予定の有無について伺う。また、公表するとすれば、いつ、どのように公表するのか。

一について

 令和7年5月に出入国在留管理庁が取りまとめた「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(以下「ゼロプラン」という。)は、「不法滞在者ゼロを目指」すものであり、「不法滞在者」とは、我が国に、法令に違反して滞在している外国人をいうところ、御指摘の「速やかに我が国から退去させる」こととされている「ルールを守らない外国人」とは、不法滞在者を指すものである。

 また、ゼロプランにおいては、「退去強制が確定した外国人のうち、令和5年改正入管法により送還停止効の例外として送還が可能となった者や重大犯罪者などを中心に、計画的かつ確実に護送官付き国費送還を実施する」としているところ、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)第24条各号に掲げる退去強制事由に該当するか否かについては、入国審査官等が判断するものであり、その判断の結果を踏まえ、お尋ねの「行政処分・退去強制手続」を行うこととなる。

 さらに、ゼロプランにおいて、「不法滞在者ゼロプランによって期待される当面の効果(目標)」として掲げている「護送官付き国費送還」等に係る数値については、今後も公表することを考えている。

二 ゼロプランの前提となる「国民の間で不安が高まっている」状況とは、どのような根拠に基づくものか。具体的な世論調査、事件統計、報道分析などの有無及び内容を明らかにされたい。

二について

 お尋ねの「国民の間で不安が高まっている」状況に関する認識の根拠については、令和7年5月27日の参議院法務委員会において、鈴木法務大臣が「様々な場所でルール守らない外国人に係る報道、そういったことがある中で、まさに国民の皆様方の間での不安が強まっている、そういった状況ということを受けまして、まさにそうした外国人への対応、これは強く求められている、そうした認識を私どもとしても持ってきたところであります。」と答弁しているとおりである。

三 ゼロプランは、「誤用・濫用的な難民認定申請を繰り返している者を含め、」ルールを守らない外国人を対象とするとしているが、その範囲が必ずしも明らかではない。

1 「誤用・濫用的な難民認定申請を繰り返している者」の他にどのような類型の外国人が対象になるのか、具体例を示されたい。

三の1について

 ゼロプランにおいては、「不法滞在者ゼロを目指」すこととしているところ、「不法滞在者」には、例えば、不法残留者が含まれる。

2 令和6年末時点で明らかに誤用・濫用的な案件として振り分けられた「B案件」の件数は80件である(参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書(内閣参質217第191号))が、初回申請者であっても「誤用・濫用的」として「B案件」に振り分けられるのか。振り分けられるとすれば、80件のうち初回申請者による申請は何件か。また、再申請、再々申請等申請回数別の件数についても併せて示されたい。

三の2について

 御指摘の「誤用・濫用的な案件」については、「難民認定等事務取扱要領」(平成17年5月13日付け法務省管総第823号法務省入国管理局長通知別添)において、「再申請案件のうち」「新たな迫害事情を主張していないもの」及び「新たな迫害事情が、B案件に該当する事情であるもの」は「C案件」に振り分けることとしており、「B案件」に該当する案件はいずれもお尋ねの「初回申請者」によるものである。

3 「B案件」の類型化の具体的基準と基準策定の根拠を示されたい。特に、類型化の前提となる出身国情報等の公開状況について説明されたい。

三の3について

 前段のお尋ねについては、出入国在留管理庁において、ゼロプランを踏まえ、「誤用・濫用的な難民認定申請」の抑制を図るため、「B案件」を類型化し、地方出入国在留管理局及び地方出入国在留管理局支局における振り分けの基準として活用することとしているところ、お尋ねの「具体的基準」については、その策定過程を含め、これを明らかにすると、難民認定等に係る審査の事務に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。

 後段のお尋ねについては、「出身国情報」の一部について、「類型化の前提となる」ものであるか否かにかかわらず、同庁のホームページにおいて、諸外国の政府機関の報告及び同庁が収集し整理した「国別の主な申立てに係る出身国情報」を公表している。

4 3回の難民不認定処分を受けながらも、裁判で難民と認められたケースがあることから、B案件を類型化しても、「B案件」に該当するとされる者に対する適正手続が保障される必要性に変わりはない。運用変更後の申請者の反証機会の有無及び手続について明らかにされたい。

三の4について

 難民不認定処分を受けた者については、お尋ねの「「B案件」に該当するとされる者」であるか否かにかかわらず、その処分に不服があれば、審査請求(入管法第61条の2の12第1項の審査請求をいう。)を行ったり、行政訴訟を提起したりすることが可能であり、御指摘のように「適正手続が保障される」ものと考えている。

〔了〕

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