声明・提言等(2024年3月29日)全難連より「入管庁発表「令和5年における難民認定数等について」を受けての声明 」を発表しました

入管庁発表「令和5年における難民認定数等について」を受けての声明 [PDF・258KB]

日付:2024年3月29日

団体:全国難民弁護団連絡会議

令和5年における難民認定者数等について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

<声明文全文> 

入管庁発表「令和5年における難民認定数等について」を受けての声明

全国難民弁護団連絡会議
2024年3月29日

 2024年3月26日、出入国在留管理庁ウェブサイトにおいて「令和5年における難民認定数等について」が公表されました。今回の公表から、入管法改定によって2023年12月1日から施行された「補完的保護対象者」の認定数についても報告されており、難民認定数303人(前年比101人増)、補完的保護対象者認定数647人(2023年12月1日~2024年2月29日までの累計)、人道配慮1,005人(前年比755人減)となっていますが、同発表に対して次のとおりコメントしたいと思います。

1 難民認定数に関する分析

(1)アフガニスタン人の認定数が237人を占めること

303人の難民認定数のうち、アフガニスタン人の認定数が237人と大部分を占めています。しかしながら、ここ2年間のアフガニスタン人の難民認定数には、日本大使館[1]やJICAの関係者[2]が多く含まれており、今後はこのような一斉認定がされることはないと思われるため、今年以降の認定数には限界があるのではないかと推測されます。アフガニスタン出身の申請者について、どこまで保護が実践されるのか、注視する必要があります。

(2)アフガニスタン以外の難民認定数は66人に留まること

これに対し、アフガニスタン以外の出身国の難民認定数は、僅か66人に留まります。その内訳は、ミャンマー人が27人、ミャンマー人以外は39人であり、出身国の国籍に多少の広がりは見られるものの、従前の認定状況と大きな変化を見てとることはできません[3]

(3)ミャンマー人が適切に難民認定されていないこと

ミャンマーの27人という認定数は、2021年2月以後の軍事クーデター下での人権侵害の深刻な状況に鑑みても、極めて少ない認定と言わざるを得ません。ミャンマー人に対しては、本国の情勢や事情等を考慮した人道配慮によって、920人に在留を認めたと発表していますが、この中には、難民認定をすべきだった人が相当数含まれると思われます。更に特筆すべきは、このミャンマー出身者への人道配慮は、ほとんど/すべてが緊急避難措置によるもので、一定期間後に定住者への変更を認めている従来の人道配慮と異なり、地位の安定に欠けるものです。このように、難民認定数については、アフガニスタン人の大規模認定という特殊な事情を除けば、依然として極めて少ない認定しかなされておらず、今後のさらなる改善が望まれます。

2 補完的保護対象者についての問題

2023年12月1日から施行された補完的保護対象者の認定結果は、ほぼウクライナに限定されています(認定者数647人中、ウクライナ644人、スーダン3人)。ウクライナ出身の人々へ保護の手を差し伸べることは望ましいことですが、それ以外の国の出身者への対応との違いは、もはや差別的と言わざるを得ません。ウクライナから訪日した人々への補完的保護対象者申請への誘導や、その申請への認定が極めて迅速に行われたことからすれば、他の難民申請者への保護までの時間も、優に短縮化できたはずです。

今後は、ウクライナの申請者のみならず、他の国の申請者の認定も、迅速かつ広範になされていくのかについても、注視しなければなりません。

同時に、補完的保護対象者として定められている要件との関係についてもここで指摘したいと思います。新設された補完的保護対象者制度は、日本版補完的保護と言うべき独自のものであり、難民と同様に「迫害を受けるおそれ」を要件としていますが、これまで難民認定のハードルが高すぎると批判されてきたのは、日本のこの要件の解釈があまりに狭隘だったからでした。にもかかわらず、補完的保護対象者であれば、難民と同じはずの「迫害を受けるおそれ」を、容易く認定できるというのは、解釈の統一性を損ねるものであり、恣意的な運用と言わざるを得ません。

補完的保護対象者について緩やかな「迫害を受けるおそれ」の解釈をとるのであれば、難民についても同じように「迫害を受けるおそれ」を解釈すべきであり、ひいてはいずれの制度についても、国際的に通用している判断枠組みで保護を実現していくべきです。

3 手続の迅速性・適正さについて

審査の平均処理期間は、一次審査で前年をやや下回っているものの、 2023 年も約 26.6月と標準処理期間の6か月を大幅に上回る異常な状態が依然として続いています。当会の会員からは、一斉認定がされたアフガニスタンを除き、難民該当性の高い事案ほど著しい長期化の傾向にあると報告されています。他方、 不服申立てでは2023 年は約9.9月と前年から短縮されているものの、入管法改定の審議でも明らかになったとおり、不認定方向の事案を一部の参与員に集中させるいわゆる「臨時班」による大量処理の影響が考えられます。

4 今後に向けて

2023年は過去最高の認定数だったとはいえ、ここに述べてきたような問題を抱えています。しかも、近時、ウガンダ難民申請者についての2023年12月7日東京高裁逆転勝訴判決、ロヒンギャ難民申請者についての2024年1月13日名古屋高裁逆転勝訴判決があり、他の勝訴判決も出ています。

これらの判決の中では、出身国情報の分析の問題や、供述の信憑性判断の在り方等諸々の点が指摘されており、ここで指摘された内容を難民認定の現場で生かす取り組みこそが、まずは求められています。

しかも、名古屋高裁判決は、3度目の難民不認定処分を取り消し、難民該当性を認めました。これは、改定法の施行によって始まろうとしている3度目の難民申請者の送還停止効の解除による送還の実行に対して、警鐘がならされたものです[4]。難民認定制度の日本の到達点は、まだまだ適正さに遠く及んでいません。

難民として認定されるべき人々が、国際水準によって速やかに認定され、保護を受けられるよう、制度の適正さを実現していくことを改めて求めます。

以上

[1] NHK2022年8月23日「アフガニスタンから年間最多98人を難民認定」 https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/88008.html

[2] 時事通信2023年7月12日「アフガン退避114人を難民認定=JICA職員ら、過去最大規模」https://sp.m.jiji.com/article/show/2977928

[3] ここ5年の難民認定数は、2018年42人、2019年44人、2020年47人、2021年74人、2022年202人(うちアフガニスタン147人、ミャンマー26人)でした。

[4]  全難連「<3回の複数回申請者の難民不認定処分の名古屋高裁での取消判決>声明」http://www.jlnr.jp/jlnr/?p=9112

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