声明・提言等(2024年2月2日)全難連より「<3回の複数回申請者の難民不認定処分の名古屋高裁での取消判決>声明」を出しました。

<3回の複数回申請者の難民不認定処分の名古屋高裁での取消判決>声明[PDF・175KB]

日付:2024年2月2日(2月5日一部訂正)

団体:全国難民弁護団連絡会議

<声明文テキスト> 

<3回の複数回申請者の難民不認定処分の名古屋高裁での取消判決>声明

2024年2月2日
全国難民弁護団連絡会議

1 昨年、入管・難民法はいくつもの問題のある改定がなされました。送還忌避者に対する刑事罰や監理措置制度の導入とともに、送還停止効の例外を認め、2回の難民申請手続が終了した場合は送還できるとしました。

当会はこれらの改定に強く反対し、「難民の強制送還条項等を含む入管法案の再提出にあらためて反対し、国際基準に沿った包括的な難民保護法制の実現を求める声明」(2023年1月13日、http://www.jlnr.jp/jlnr/?p=8006)等の声明を発してきました。送還停止効の例外については、現在の国際基準からかけ離れた難民認定実務のもとでは、真の難民を迫害が待ち受ける本国に送還するというノン・ルフールマンに違反する事態が生じるのが必至であることを指摘してきました。そして、その改定法の全面施行が迫っています。

2 こうした中、2024年1月25日名古屋高裁(長谷川恭弘裁判長)は、2007年に庇護を求めて来日したミャンマーのロヒンギャ難民の3回目の難民申請について、難民該当性を否定した1審名古屋地裁判決を変更し、難民であることを認めました。

ロヒンギャとは、古くベンガル地方からミャンマーに移住したとされる少数民族で、宗教はムスリムが多く、ミャンマー国籍を否定され、社会のあらゆる場面で差別と無権利の状態におかれ、2017年からは治安部隊による襲撃により大量殺戮され、国連等の機関がミャンマー政府に対し民族浄化の停止を求めた人々です。

高裁判決は、詳細に本国情勢を認定した後、不認定処分の取消の部分では、上記の累積的な迫害が認められることを理由に取り消し、難民認定の義務づけの部分では、難民不認定処分の後に発生した大量殺戮や民族浄化も踏まえ、「通常のロヒンギャであれば、ラカイン州外のロヒンギャであったとしても、迫害の恐怖を抱く客観的事情が存在しているということができ、当該恐怖は十分に理由のあるものであるということができる」と判示し、ロヒンギャであれば難民という認定をしています。これは今日の国際的な難民認定では標準とされているものであり、画期的な判決です。(高裁判決はこのほかにも、UNHCR難民認定ハンドブックの位置づけ、難民申請者の供述の信憑性評価のありかた、国の不相当な主張の弾劾、難民審査参与員の姿勢の問題点、通訳選任上の問題点など、注目すべき判断も示しています。)

3 この名古屋高裁判決は、上記送還停止効の例外の導入に深刻な警告を発するものです。

第1に、2回以上難民不認定処分を受けながら、3回目以降の難民申請について裁判所によって難民として認められることがあることが証明されたことであり、改定法施行の後では、このロヒンギャ難民は送還された可能性が大きいことです。難民申請が複数回に及ぶ場合、入管の審査は形式化する傾向があり、真の難民を難民と認定し得ない現状がさらに悪化するおそれがあります。

第2に、本件のようなケースは、特定の社会集団に属する難民申請者全てに起きる可能性があることです。送還停止効の例外の施行後、難民条約に違反する重大な権利の侵害が日本で生じるおそれがあります。

入管当局に対しては、この名古屋高裁判決を教訓として、送還停止効の例外を適用することのないよう求めるとともに、国会に対しては、日本の難民認定の現状が抜本的に改善されていないため、送還停止効の例外条項の廃止を求めます。

以上

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