【2009年難民10大ニュース】

1. 難民審査参与員の大幅な増員 

〔説明文〕 

 難民異議手続の未処理数の増加と審査期間の長期化に対応するため、難民審査参与員の数を倍増することに決まった。増員は2段階で、2009年12月に12人、2010年5月に15人が新たに加えられた。難民認定申請から異議申立手続で決定が出るまでの平均期間は、2007年は602日(187件)、2008年は766日(317件)と長期化傾向にあり、2009年(258件)も前年より若干長期化している。


2. アフリカ出身の難民認定申請者数が増加 

〔説明文〕 

 アフリカ出身の庇護希望者による難民認定申請数が、2008年から増加傾向にある。2009年は、特にアフリカ中央部出身の難民認定申請者の増加が目立った。


3. 難民認定数/難民認定率が大きく減少 

〔説明文〕 

 2009年中に難民認定を受けた者の数(30人)が、一次手続と異議手続のいずれにおいても前年からほぼ半減した。一方、難民不認定の処分をした数も増加しており、難民認定率も減少。特に、一次手続の難民認定率は1%前半にまで下落した。


4. 人道配慮による在特が増加 

〔説明文〕 

 難民認定数が減少したのと対照的に、人道配慮による難民不認定者への在特の数が500人を超え(501人)、2008年(360人)以降の高い水準をキープしている。この人道配慮の増加は評価すべきものではあるが、これらの人道配慮を受けた者の中に「難民」が相当数含まれているであろうことは留意されなければならない。難民認定率の低さと併せて考慮すると、日本政府の極めて狭い「迫害」の解釈により、本来ならば難民認定されるべき者が人道配慮しか与えられていないことが、少ない難民認定数と多い人道配慮という現象の理由の一つになっていると推測される。


5. 難民申請者の困窮が深刻化 

〔説明文〕 

 不景気のあおりで職に就けない難民認定申請者が増加する中、セーフティーネットであった難民保護費の支給が厳格化され、100人以上が支給を打ち切られた。緊急対策として、全難連を含む難民支援NGO7団体が、4月から難民カンパ・キャンペーンを実施。その後、10月に支給制限が取り除かれ、外務省の働きなどで2010年度の保護費予算は倍増した。しかし、法的根拠の不在、変動する難民申請者数への対応、(再申請をしていない)裁判中の難民申請者への支給など、解決すべき問題が依然として残されている。


6. 第三国定住の受入れ準備 

〔説明文〕 

 2010年秋に受け入れ開始に向け、アジア初の第三国定住のパイロットプロジェクトの準備が進められた。受入れ後6ヶ月以降の支援体制など、残された課題も多い。


7. 庇護希望者の収容が増加 

〔説明文〕 

 6‐7月頃から、難民手続の決定を待たずに退令発付を受けて収容されるなど、難民申請手続中の収容が増加した。また、異議手続中(口頭意見陳述前)の仮放免更新時に更新不許可とされて突然収容されるケースもあり、従前にない不均衡な運用に対し、難民申請中の者の不安が増大している。


8. 裁判準備中の庇護希望者を本国に強制送還 

〔説明文〕 

 難民不認定処分に対する訴訟準備中のビルマ少数民族出身の庇護希望者が、裁判をする意思を入管側に伝えていたにも関わらず、出訴期限を待たずして本国に強制送還された。これは裁判を受ける憲法上の権利の侵害であり、勝訴して難民認定を受けるビルマ出身者が相当数いることなどを考慮すればより一層、許容されえない暴挙であったといえる。

    • 抗議書 在日ビルマ人難民申請弁護団(2009年11月4日)


9. 人道配慮「特定活動」のビルマ出身男性が自殺 

〔説明文〕 

 人道配慮による在留特別許可(「特定活動」)を受けていたビルマ少数民族出身の男性が、精神的な不安定、身体の不調、経済的な不安などを理由に自らの命を絶った。友人と家族によると、この男性は家族呼び寄せができないことで希望を失っていたという。人道配慮による在特では、在留期間などに応じて「定住者」または「特定活動」が与えられる運用がされている。この事件は、同じく人道配慮で在留を認められたにも関わらず、様々な点で不利な「特定活動」についての問題を浮き彫りにした。


10. 政権交代で積極的な難民政策への転換の期待が高まる 

〔説明文〕 

 2002年の瀋陽事件以来活躍してきた議員らが法相や政務官に就任するなどの動きに対し、新政権への期待が高まった。


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