法相会見(2023年10月17日)不法残留者対策;補完的保護対象者の認定制度等

法務大臣閣議後記者会見の概要 令和5年10月17日(火)(外部リンク:法務省ウェブ


不法残留者対策に関する質疑について 

【記者】
 (今月)13日に在留外国人の統計が公表されて、在留外国人の数はまず過去最多を記録しました。もう一方で、不法残留者の数字も公表されていまして、これもまた8万人弱に増えました。短期滞在からの不法残留が増えていることが主な原因とみられますが、今後、更に観光などで短期滞在の入国が回復すると見込まれます。その中で、不法残留対策というのはどういうふうにこれから強化していくのか、お聞かせください。

【大臣】
 その統計が公表されて、色々なところでかなり話題になっていますよね。国民全体の関心も、やはり高まってきているんだというふうに思います。
 その中での御指摘でありますが、まず数字から申し上げますと、今年の7月1日現在の不法残留者数は、7万9,101人でありまして、今年の年初、1月1日から比べますと、8,610人増加になっております。
 この不法残留者について、直前の在留資格別の内訳を見ますと、短期滞在が2,895人、技能実習が2,928人、特定活動が2,600人の増加となっておりまして、この三つの在留資格の方々の増加が不法残留者全体の増加に大きく影響しているというふうには、一応表面的には見えます。まだまだ分析は必要だと思います。
 増加の要因としては、御指摘が今あったかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の段階的な緩和などによって外国人新規入国者が増加した。実習先から失踪する技能実習生が増加している。在留不許可や難民不認定処分を受け、あるいは新型コロナウイルス感染症に関する在留資格上の特例措置の終了により「特定活動」によるそれ以後の在留が認められなくなった者が増加している。それぞれ今申し上げた、短期滞在あるいは技能実習、特定活動。そういうところから不法残留が増えている姿が浮かんでくるわけであります。様々な要因がありますから、この三つだと断定することはできないですけれども、一つのポイントとしてはそういうところになろうかと思います。
 これは、やっぱり国民の不安に直結していきます。大きな社会問題にもなり得る問題でありますので、厳格な出入国在留管理というものをもう一回しっかりと我々も見直し、しっかりと実施していかなければならないという状況にあるというふうに思っております。
 まず、色々な要素がありますけれども、法務省としては情報の分析ですね。まず、今申し上げたような、どこから・どういう形で不法残留というものが生じてくるのか。よくそこを分析をすることがまず第一だと思います。そのためには、たくさんの情報をなるべく把握したい。各種届出や実地調査等において把握した情報を活用する。あるいは不法就労という問題に今度は入っていくとなると、関係機関との連携、これも重要な要素だと思います。警察や厚生労働省等の関係機関と連携して、これを強化するための「不法就労外国人対策等関係局長連絡会議」を設置し、不法就労等外国人の問題についての連携・協力を強化するという取組を行っています。関係機関との連携ということでは、更に不法残留者の外国人の調査・摘発。今申し上げた警察関係等の、関係機関との協力・調査。こういったものを総体としてやりながら、機運の醸成として毎年6月を「共生社会の実現に向けた適正な外国人雇用推進月間」と定めて適正な外国人雇用の推進について、理解と協力を得るためのキャンペーンを行う。総合的に色々やっています。しかし、相当な数に達してきているので、もう一度、内容を私もよく吟味して、整理して、やるべきことに漏れがないか、もう一度しっかりと取り組みたい。そんなふうに思っております。国民の不安に、やはりしっかり我々は対応していくという大きな使命があると思いますので、御指摘も踏まえてしっかり対応していきたいと思っております。


補完的保護対象者の認定制度等に関する質疑について 

【記者】
 現行の難民認定制度と改正入管法の補完的保護制度のことで質問します。2005年以降に、異議審査の段階で難民審査参与員が導入されて、2016年に行政不服審査法が適用されて、難民審査参与員は行政不服審査法上の審理員というふうに位置付けられるようになりました。その審査結果というのは、一次審査の処分庁である入管庁自身が下して、行政不服審査会とか、そういった第三者機関への諮問や答申というのもなく、不服審査の独立性が担保されていないような、今、仕組みになっています。しかも、前回の改正入管法の国会審議では、一部の難民審査参与員で臨時班が構成されて、対面審査も行われずに大量の案件が迅速に不認定処理されていたということが明らかになって、非常に大きな問題になりました。これでは3回目以降の難民申請者の送還停止効を除外するというのはあり得ないという意見が噴出しました。
 現在、難民認定制度で、一次審査も不服審査機関も出入国管理行政から独立していないG7加盟国というのは、おそらく日本だけだと思います。国連の人権機関からも、色々独立した難民認定機関というものが求められているわけですけれども、それから程遠い状況があると。その中で今回、補完的保護制度を年内に施行しようということで、10月10日まで施行規則のパブリックコメントを法務省のほうで募集されていました。難民認定審査も補完的保護の認定審査も、おそらく入管庁難民認定室が担当されると思うんですけれど、現行99パーセント以上の難民認定申請が不認定になると。そこでまた新しく補完的保護制度の施策の規定を年内に策定するという、今、流れだと思うんですけれども、こういった一次審査の在り方や難民参与員制度の行政不服審査法上の今の不備の件については、検討されるようなお考えというのはあるのでしょうか。

【大臣】
 補完的保護対象者の認定制度について申し上げたいと思いますけれども、紛争避難民等の人道上、真に保護すべき方々をより確実かつより早期に保護するために、要件を満たす方々について速やかに補完的保護対象者と認定し、「定住者」の在留資格を付与するなどして安定的な在留を認め、支援を行う必要があるということから、(本年)12月1日からこれを施行するという形になっております。そのことも是非御理解いただきたいと思います。
 また、第三者機関の設置についての御議論の御質問がありましたけれども、現在の難民認定手続については、その他の出入国在留管理行政上の様々な手続と密接に関連しているということから、出入国在留管理庁において行うことが適当であり、独立した第三者機関を設置することは考えておりません。
 担当課の話がありましたけれども、補完的保護対象者の認定の申請に対して、一次審査は難民認定室、同申請の不認定処分が出た場合の審査請求は審判課が所管する。難民の場合と同じですね。その窓口になります。
 今のような御指摘も踏まえて、その上で、入管庁では制度と運用の両面から難民認定手続の適正性を確保し、真に保護すべき者の一層確実、迅速な保護を実現してまいりたいと思っております。


【関連】本邦における不法残留者数について(令和5年7月1日現在) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

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