声明・提言等(2022年5月13日)全難連より「入管庁発表「令和3年における難民認定数等について」を受けての声明」を発表しました。

入管庁発表「令和3年における難民認定数等について」を受けての声明[PDF]

日付:2022年5月13日(5月16日一部修正)

団体:全国難民弁護団連絡会議

参照

令和3年における難民認定者数等について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

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声明文テキスト 

入管庁発表「令和3年における難民認定数等について」を受けての声明

全国難民弁護団連絡会議

2022年5月13日

難民認定者数が74人で前年比27人増とされているが、本国の情勢から当然に保護されるべきミャンマーの32人を除いた人数は42人であり、保護されるべき難民が十分に保護されない極めて厳しい状態が続いている。

また、人道配慮数は580人とされているが、ミャンマーが498人であり、これを除いた人数は82人に過ぎない。ミャンマーの人道配慮数には緊急避難措置を受けたにすぎない人数も相当数含まれている可能性があり、人道配慮の実態に即しているとは言い難い。

  • 2021年の難民認定数の状況について

2021年は一次申請手続と不服審の合計で74人が難民認定を受けたとされており、前年比27人増となっているが、以下のとおり、保護されるべき難民が十分に保護されない状態は依然として継続している

(1) まず、ミャンマーについて2月に軍事クーデターがあったことを受けて32人で最多となっているが、2021年5月の緊急避難措置の開始前の難民申請者が約3000人であったことに照らし、また同国について報告されている人権侵害の状況に照らしても余りに少ない数字と言わざるを得ない。

また、年末時点で、ミャンマー出身者で難民認定等の決定を待っている手続中の者が2,889人(一次申請手続中2,648人(概数)と不服申立手続中241人(概数))いたほか、代理人がついている一次手続案件にほとんど進捗がなく、緊急避難措置を受けられないまま1年近く経過している者が非正規滞在の者を含み相当数におよぶことが代理人から報告されている。

  (2) 次に、中国について、18人が難民認定を受けており、昨年の難民認定者11人を上回り過去最多となっているところ、難民認定された者のうちウイグル出身者が多く占めていると見られる。

一方で、全能神教会等の宗教マイノリティに係る難民申請では、現在まで難民認定又は人道配慮を受けた者が全くいないと代理人から報告されている。

(3) アフガニスタンについて、8月に首都カブールが陥落してタリバンによる統治のもとにあるが、9人(5件)が難民認定を受けている。

しかし、アフガニスタン出身者手続については、ミャンマー出身者と同様に、「緊急措置」という名称からはほど遠く手続が進んでおらず、難民認定等の決定を待っているの者が相当いることが支援者や代理人から報告されている。

(4) さらに、上記3か国以外の出身の難民認定者は16人であり、前年までと同じく極めて低い難民保護水準が続いている。本邦で難民認定制度の運用が開始された1982年から2021年まで、裁判で難民不認定処分の取消しが確定した2件を含み、トルコ出身者が難民認定を受けた事案は依然として存在しない。難民認定制度において考慮されてはならない政治的要素が引き続き影響を与えている。

2   2021年の人道配慮数の状況について

  2021年の人道配慮数は580人とされており、前年比536人増となっているが、ミャンマーの498人を除いた人数は82人に過ぎない上、ミャンマーの人道配慮には緊急避難措置を受けたにすぎない人数も相当数含まれており、人道配慮の実態に即しているとは到底いえない。

(1) まず、今般の発表ではミャンマーの人道配慮は498人とされているが、それ以外の人数は82人にすぎないものであり、人道配慮によっても保護されるべき者が十分に保護されていない実態にある。

  (2) 次に、ミャンマーの人道配慮について見るに、「令和3年5月28日に開始した本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置に基づき、難民認定手続の結果が出る前に、当該措置に係る在留を先行して認めた者が含まれます」とされているところ、これに該当する者は42人となる。

 しかし、これ以外の人道配慮の456人については[1]、保護の態様が判然とせず、緊急避難措置を受けたにすぎない人数も相当数含まれている可能性があり、人道配慮の実態とはかけ離れているおそれがある。

 すなわち、人道配慮による保護という場合には、通常1年の在留許可が付与される。しかし、ミャンマーの難民申請者で難民の結論が出たものたちのかなり多くが6カ月の保護しか受けられなかったし、しかも週28時間の就労時間制限が付されていた。

これは単なる緊急避難措置による保護であって、いわゆる「人道配慮」ではないから、456人の保護の内訳を明示させる必要がある。仮に緊急避難措置6か月を含めている数字であるとすれば、虚偽の報告であると言わざるを得ない。

3 手続きの迅速さについて

審査の平均処理期間は、一次で約32.2月、不服申立てが約20.9 月とされている。2020年は一次約25.4月、不服申立ては約26.8か月だったのでトータルで見ると約1か月増、一次だけだと約7か月増となっている。この間、申請者達のほとんどは特定活動もしくは在留資格がない非常に不安定な状況に置かれている。

難民審査の標準処理期間は6か月とされているのに対して一次審査は5倍も掛かっていることについて、何ら反省も改善の方策も示されていないのである。

 

4 不服申立手続の機能不全の継続

 難民審査参与員による不服申立て手続きで難民として保護されたのは9人にとどまる。ここ数年不服申立て制度が事実上機能していない実態が指摘されているところであるが、その状況に大きな変化は生まれてない。

 

5 結論

 以上のとおり、2021年においては、難民認定者・人道配慮数が増加したとする入管庁の発表にもかかわらず、国際的な保護が必要な者が保護を受けられない状況は依然として変わっていない。

当会議は、難民条約の前文で述べられているような人間の基本的な権利や自由を保護するという姿勢に照らし、今後も、難民条約の趣旨と目的に沿った難民認定制度の抜本的な改正とともに、運用の改善を強く求めていくものである。

以 上

[1] ミャンマーの難民認定者数については、2021年3月末日現在で、2944人と公表されていた。昨年のミャンマー人難民申請者が612人となっており、4月1日以後の数字を特定できないものの、割合的には4分の3とみると、約460人となり、合計すると約3400人となる。そして、本発表では2021年末の難民認定手続き中であったミャンマー人難民申請者は2889人となっているので、結局その差は511人に結論が出されたという分析となる。人道配慮498人中42人が先行的な緊急避難措置であったということであるから、456人が難民の判断がなされた後の保護ということになる。

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