法相会見(2021年6月4日)在留ミャンマー人への緊急避難措置に関する質疑について;難民申請に係る情報発信に関する質疑について;名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について

法務大臣閣議後記者会見の概要「在留ミャンマー人への緊急避難措置に関する質疑について」「難民申請に係る情報発信に関する質疑について」「名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について」(2021年6月4日)(外部リンク:法務省ウェブ

在留ミャンマー人への緊急避難措置に関する質疑について 

【記者】
 在留ミャンマー人に対する緊急避難措置につき2点伺います。
 一点目ですが,約4万人近い在留ミャンマー人に対して,在留資格の速やかな更新や,難民申請者や非正規滞在者に対しても6か月以上の在留資格を付与して,就労を許可することは今までなかったような大きな決断だったと思います。ちょっと遅かったような気もするのですが。この決断は法務省・入管庁が行ったのか,あるいは大臣や首相官邸などの政治決断があったのか,決断の経緯について教えてください。
 また,ミャンマーの場合は軍事クーデターですが,政府や軍隊,武装勢力などにより,市民が日常的に過酷な弾圧を受けている国は,ミャンマーだけではありません。私も長年難民問題に関わってきましたが,例えばナイジェリアですとかイランですとか,日常的にキリスト教徒が武装勢力に殺害されたり,イランですと反体制派の政治活動家や,デモに参加した市民ですとか,弁護士などが毎年数千人が逮捕・拘束されたり,数百人が死刑になるような国もあります。これもナイジェリアやイランに限ったことではありません。
 日本政府はごく限られた国しか難民認定しない。しかも強制送還できなくても,20年,30年以上に渡って在留資格が付与されず,仮放免の状態で非常に苦しい生活をする人,家族がたくさんいらっしゃいます。
 今回の在留ミャンマー人に対する大規模な措置を執ったということで,他の出身国の難民申請者に対する保護の在り方や,難民認定手続の実務における出身国情報の判断基準の在り方などを,これを機に見直す考えはあるのかどうか。
 この2点について,お答えください。

【大臣】
 まず一点目でございますが,ミャンマーにおきましては,本年2月1日の国軍によるクーデター以降,国軍等による一般市民の死亡・負傷事案が報告されるなど,ミャンマー国内の情勢は引き続き不透明な状況にございます。
 本邦におきましては,3万5千人を超えるミャンマー人が在留しておりまして,約3千人が難民認定申請を行っているところでございます。その中には,帰国することに不安を抱いている方が少なからずいると承知をしているところでございます。
 クーデターが発生した後,出入国在留管理庁におきまして,在留ミャンマー人に対する対応について検討してまいりました。
 今回,クーデター後の深刻な状況や我が国におけるミャンマー人の在留状況を踏まえ,法務省として,ミャンマーにおける情勢不安を理由に在留を希望する方につきましては,緊急避難措置として在留や就労を認めることとしたものでございます。
 二点目ですが,我が国におきましては,申請者ごとにその申請内容を審査した上で,難民条約の定義に基づきまして,難民と認定すべき者を認定するということで,適切に対応しているところでございます。
 難民とは認定できない場合でありましても,人道上の配慮が必要と認められる場合には,我が国への在留を許可しているところでございます。
 その上で,難民等の該当性の判断に当たり必要となる本国の情勢に関する情報につきましては,外務省,UNHCR等の関係機関と適切に連携しておりまして,最新の情報を積極的に収集している状況でございます。また,UNHCRとの間では,職員に対する研修を行っていただくなど,審査の質の向上に努めているところでございます。
 法務省としては,UNHCR等と更に連携を深め,真に保護を必要とする者を確実に保護してまいりたいと考えております。

【記者】
 再度聞きます。今回の在留ミャンマー人に対して特別措置を執るというのは政治判断だったのか,あるいは入管庁から出たことなのかということが最初の質問です。
 二点目については,出身国情報は再度更新しなければいけないのですが,今回ミャンマーにこういう判断をしたということがあるわけで,他の難民認定についても出身国情報の判断の基準の在り方を考え直す必要があると思います。これは法改正と深く関係してくるのですが,そういったことは今入管庁内で進められているのかどうかをお尋ねしています。

【大臣】
 一点目につきましては,法務省として緊急避難措置として在留や就労を認めることとしたものと答弁させていただきました。
 二点目につきましては,この難民等の該当性の判断につきましては,質の向上が非常に重要であると認識をしておりまして,その意味で,これまで外務省やUNHCRとよく情報交換をしながら,また必要に応じて研修等を設けさせていただきながら努めてきたところでございます。
 こうした姿勢で,真に保護すべき方を確実に保護していきたいと思っております。

難民申請に係る情報発信に関する質疑について 

【記者】
 法務省はヘイトスピーチを根絶するということで,こういった取組は素晴らしいと思いますが,一方で法務省や入管の発信が難民申請者に対するヘイトスピーチになってしまっていると,差別や偏見を助長するようなところがあるかと思います。
 具体的に言いますと,よく「偽装難民」だとかそういうことを言われますが,「地理的要因が異なるため日本に来る真の難民が少ない」とか,「制度を濫用している者がいる」ということを盛んに法務省や入管が発信されている。ただし,これに関しては,UNHCRの方からも日本は難民認定率が低い国と名指しされているわけです。先ほどからUNHCRと緊密な連携を取っているとおっしゃっていますが,そのUNHCRから言われているわけです。
 また,地理的要因についても,支援団体や弁護団,裁判等によってこういった要因が理屈になっていないと。具体的に言うと,イランなど深刻な人権状況の国から来ている難民申請者も多いわけです。法務省の統計を見ても,難民申請者の最初の振分けとしてABCDがありますが,「明らかに難民ではないケース」は全体の2から3%にすぎません。そういった中で偽装難民や制度の濫用,地理的要因とかいう発信をやめないと,難民申請者に対する差別や偏見を法務省や入管が助長していることになるかと思います。こういったことに関して見直すおつもりはありますか。

【大臣】
 我が国の難民認定率が欧米に比べて低いとの指摘に対しましては,地理的要因や難民認定申請がなされる状況などが異なっておりまして,単純に比較することは相当ではないと説明をしてまいりました。
 地理的要因は,難民認定につきまして,各国,前提となる事情が異なることの一つの要因として挙げたものでございます。
 なお,今後,難民を多数受け入れている国との情報交換にも努めまして,難民認定率の違いの要因等につきまして,更に理解を深めてまいりたいと思っております。
 御指摘がありました点については,申請者数の推移や,出入国在留管理庁におきまして,申請の理由,主張されている事情等について審査をする中で,申請の中に,我が国からの退去の回避,我が国での就労・在留を目的とした濫用・誤用的な申請が相当数含まれていると認識しているということから,これまでそのように説明しているものと理解しております。
 また,御指摘の振分けの結果で2から3%という点は,案件について4つの仕分けがございますけれども,いろいろなケースがあるということでございまして,一つずつの案件について丁寧に積み上げてきた結果と理解しております。
 難民の申請について皆様にしっかりと理解していただくことは非常に重要なことだと思います。発信の部分につきましては,積極的に広報をしていく必要性があり,日本のルールといったことについてできるだけ多言語で皆様にお知らせをしていくと,こういったことについて積極的に指示しているところでございますので,そういったことをしっかりと踏まえてまいりたいと思っております。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について 

【記者】
 一番初めの質問に関して一点ですが,今回の在留外国人へのワクチン接種は,退去強制令書が出ている仮放免の外国人にも,同じ適用という理解でいいかという点。
 それから,名古屋入管に収容中の外国人の方々25人が,処遇の改善とスリランカ人女性の映像開示を求める署名を出されました。これに対する受け止めと,署名を代理として出された支援者団体STARTが,6月2日,名古屋入管局長宛てに収容者への非情な対応がまだ続いていることに対しての申入書を出しております。これを大臣は読んだか,それへの対応を含めお聞かせください。
 支援者によりますと,ナイジェリア人の男性が5月26日から,飲んでも吐き続ける状態になり,28日に外部病院で点滴三本を打ったということです。おそらくスリランカ人女性への反省を踏まえての処置だと思います。しかしその後,入管での点滴治療が一切なく,5月31日には,本人の意思に反して,職員20人近くが男性を制圧し,無理矢理単独室に移動させられたと指摘しています。
 かつ,その後,この男性は暴力を職員に振るったという,彼が言う事実とは異なる文書にサインを求められたと言っています。スリランカ人女性が単独室で亡くなり,多くの収容者が単独室に行かされることに非常に恐怖を感じている状態です。このような中で,なぜ,今回のような対応をしたのか。この点についてお聞かせ願えますか。

【大臣】
 ちょっと質問が多岐にわたっておりまして,一つずつ聞いていただけますでしょうか。事前に伺ってもおりませんし,この場で今五つぐらい質問があったかと思うのですけれども。一番目の質問は分かりますのでその後から。

【記者】
 6月2日に支援団体STARTが出された申入書をそもそも把握して読んでいるかという点。
 この申入書に書かれていることを私が具体的に踏み込んで話したところです。
 つまり単独室に行くことを拒否している方に対して,20人ぐらいの職員が制圧して行かせた,そこで5日間入れるぞということを言っていて,その理由として,職員にも暴力を振るったという文書にも,事実と異なるのにサインをさせられたということです。
 この単独室に強制的に入れるという判断について,スリランカ人女性が亡くなられたので,収容者が非常に恐怖と不安を感じているということです。このような措置はかなり問題ではないかと思うのですが,そもそもここまで把握されているかということもあるのですが,法務省として,大臣としての見解をお願いします。

【大臣】
 まずワクチンについてでありますが,対象者の指定につきましては,厚生労働省においてなされることでございまして,同省にお問い合わせいただきたいと思っております。
 先ほど申し上げたことではございますが,円滑な予防接種の実施に向けましては,既に入管当局におきまして,収容施設に入っている外国人の方もいらっしゃいますし,そうでない方につきましても,窓口で適切に相談できるように,様々なツールで情報発信をしてまいりたいと思っております。ワクチンが感染に係る大きな対抗策であるということからすると,できるだけ多くの方に受けていただく,御本人の希望ということもありますが,できるだけ受けていただきたいと思っておりますので,そのサポートについては全力を尽くしてまいりたいと思います。在留外国人全員にということです。命に変わりはありません。そこは官房長官からもそのような指示があったものと承知しております。
 次の申入れの件につきましては,報告を受けております。ただ個別の事案ということでございますので,今いろいろな背景についての御意見をいただきましたが,それについても差し控えたいと思っております。

【記者】
 この間,スリランカ人女性の遺族である妹さんたちは,今回の件について,お姉さんは入管の中で殺されたんだと思っているとおっしゃっています。大変重い言葉だと思います。
 それ以外にも,この間の政府の対応に大変不信感を募らせていて,これ以上私たちの家族を弄ばないでほしいということまでおっしゃっています。これは本当に,この間の政府の説明に納得いくものが得られていないということからきているものだと思います。
 私もこの間,何度か聞かせていただいていますけれども,ちゃんと答えていただけていないので改めてお伺いします。ビデオの開示について保安上の理由を挙げていますが,遺族を含め,施設の中を視察し,あるいはこれまでビデオの開示がされたケースもあるわけで,その上で保安上の理由というのは成り立たないと思うわけです。これまで以外の説明で,なぜ開示をしないのかということについて説得的な答えをお願いしたいのが一つ。
 それと,この間お伺いしましたけれども,大臣が面会をしてお悔やみを申し上げたということですが,遺族が求めているのは謝罪であります。この間,謝罪を全くされていない,誰もされていない,大臣を含め政府の関係者からです。謝罪をされないのはなぜなのかというのが二点目です。
 そうした対応について,スリランカ人女性の遺族たちは,この扱いは自分たちがスリランカという小さな国から来た人間だからだと,これは差別をされているからだと,日々,思いを募らせているわけです。そうした気持ちを少しでも和らげるために,政府あるいは法務省,あるいは大臣から,何か遺族の側になされたことがあるのか。あるのであれば,それは何をしたのか。していなかったとすれば,なぜしていないのか。それをお伺いしたいと思います。
 最後にしますが,先ほどもお話がありましたけれども,こうした死亡した件も含めてですが,遺族もおっしゃっているように,遺族に対して軽んじられているような対応をされていることが,正にヘイトスピーチというものを煽ってる面があると思います。そうした指摘に対して,どのようにお答えをされるつもりでしょうか。

【大臣】
 まずお尋ねのビデオの件でございますが,出入国在留管理庁からの報告でございますけれども,収容施設内の映像記録につきましては,この施設,被収容者等の具体的状況の記録であるということでございまして,情報公開法に基づいての情報公開請求に対しましては,基本的に不開示という情報として取り扱っているものでございます。
 その意味で従前御質問があったときにも,そうした法律にのっとって行動しているということについて,重ねて申し上げてきたところでございます。その背景の中には,この保安上の問題に加えまして,亡くなった方の名誉・尊厳の観点からの問題,また今回につきましては,最終報告の取りまとめで,第三者の方々から公正な検討を行っていただいているという状況がございますので,そういったことへの影響というものも説明をしてきたところでございます。
 法務省としては,御遺族との関係におきましても,ビデオの閲覧ということについては相当ではないと判断をしているものでございます。このことにつきまして,出入国在留管理庁の方からも,5月18日に御遺族の方々が法務省を訪問されたときに,その旨の理由の御説明をさせていただいております。
 それから,現在,正に最終報告に向けまして,弁護士や医師等の外部の第三者の方々とともに,出入国在留管理庁の調査チームにおきまして,資料の分析,外部病院の医師,第三者である医師を含む関係者からの聴取,事実関係の評価・検討などの調査を最終段階に進めているところでございます。
 十分な内容の最終報告をできる限り速やかに取りまとめること,そのことに最大限の努力をすることを重ねて指示しているところでございまして,そうした認識の中で,今取組をしているものと承知をしております。
 最終報告におきましては,第三者の方々とともに,公平・客観的な視点に徹した取りまとめの仕方,可能な限りの情報の開示,こういったことにつきましても十分に意を用いること,また,取りまとめられた最終報告について,必ず御遺族にお届けをし,真相究明をしたその調査として,御説明をしっかりとさせていただくこと,これらを行うことが私の責任ではないかと判断をしているところでございます。
 繰り返し申し上げているところでございますが,この事案が発生したときから,命を預かる私どもの施設の中で亡くなられたということについては,大変重く受け止めさせていただいております。その意味で,早い段階で調査を指示しまして,中間報告も早い段階でお出しするようにと,これも指示してきたところでございます。
 この間,皆様からも様々な視点からの御指摘がございました。しっかりそれを受け止めさせていただきながら,最終報告でしっかりと分析,検証するということが大変重要なことであると思います。
 改善方策も含めまして,二度とこうした事案が起こらないようにすることが御遺族の方からのお声でもございました。このことに今全力で取り組ませていただいているところでございます。

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