出入国管理及び難民認定法改正案に反対する会長声明(外部リンク:奈良弁護士会)
日付:2021年3月30日
団体:奈良弁護士会
奈良弁護士会が政府改正案に反対する会長声明を発表しました(3/30)
— 全国難民弁護団連絡会議(全難連) (@zennanren) April 1, 2021
「送還忌避・長期収容の課題を、もともとの手続や制度の欠陥を正すという方向ではなく、刑事罰等の威嚇によって早期送還を強行するという方向を選択して解消しようとしており、そこに根本的な問題がある」https://t.co/CVIahcX0SN
2021年3月30日会長声明 2021年(令和3年)3月30日 以 上出入国管理及び難民認定法改正案に反対する会長声明
奈良弁護士会会長 宮坂 光行
しかしながら,本改正案には,①退去強制令書の発付を受けた者に退去等を命ずる制度を創設するとともに,かかる命令に違反した者に対する刑事罰を定める点,②3度目以降の難民認定申請に対しては,送還停止効を認めないとの例外を定める点,③仮放免された者の逃亡等の行為に対する刑事罰を定める点につき,以下に述べる通り,看過できない問題が存在する。
実際,退去強制令書が発付された後,司法による救済を求めた結果,在留が認められたというケースも相当数存在する。
それにもかかわらず,未だ司法審査を経ていない者に対して,刑事罰の適用をもって退去を強制することは,被収容者の裁判を受ける権利を侵害するおそれがあると言わざるを得ない。
また,本改正案では,退去強制令書の発付を受けた者の支援者らも,共犯や犯人隠避罪等に問われる可能性があり,そのような支援者らの活動にも萎縮的効果をもたらすおそれが強く,容認することができない。
もともと,我が国の難民認定率は諸外国と比べても著しく低く,本来難民認定されるべき者が,正しく認定されていないとの批判もある。実際,数度に及ぶ難民認定申請の末に,難民認定がなされて在留が認められるというケースも相当数存在する。
このような我が国の難民認定制度の問題点を何ら改善することなく,送還停止効に例外を創設する本改正案は,難民を,迫害を受けるおそれのある領域に送還してはならないという国際法の原則(ノン・ルフールマン原則。難民の地位に関する条約第33条第1項)に抵触するおそれがあると言わざるを得ない。
送還され,その生命・身体等が侵害されてしまうと,後に回復することはできないのであるから,安易に送還停止効の例外を設けることは許されない。
また,万一,仮放免を受けた者が逃亡した場合には,その者に対する支援者らも共犯等に問われる可能性があり,萎縮的効果をもたらすおそれが強いという,前記2で述べたのと同様の問題もある。
よって,当会は,本改正案に反対する。