声明・提言等(2023年1月13日)全難連より「難民の強制送還条項等を含む入管法案の再提出にあらためて反対し、国際基準に沿った包括的な難民保護法制の実現を求める声明」を発表しました

難民の強制送還条項等を含む入管法案の再提出にあらためて反対し、国際基準に沿った包括的な難民保護法制の実現を求める声明[PDF・355KB]

日付:2023年1月13日

団体:全国難民弁護団連絡会議

<声明全文>

難民の強制送還条項等を含む入管法案の再提出にあらためて反対し、国際基準に沿った包括的な難民保護法制の実現を求める声明

2023年1月13日
全国難民弁護団連絡会議

  報道によれば、今月23日に招集予定の通常国会で提出される予定の法案中に入管法案(以下「本法案」といいます。)が含まれているとされています[1]。そして、本法案の概要については、2021年の通常国会で事実上廃案になった入管法案[2](以下「旧法案」といいます。)の骨格を維持するものと報じられています[3]

 私たちは、2022年4月22日の声明において、難民申請者の強制送還条項や退去強制に従わない者に対する罰則など重大な問題のある条項が含まれていた旧法案の再提出をしないよう求めていましたが[4]、以下の理由により、同様の条項を含む本法案の提出の動きに対してもあらためて反対し、国際基準に沿った包括的な難民保護法制の実現を求めます。

1 入管法案の骨格は旧法案とで何ら変わっていないことについて

 まず、前記の報道によれば、3回目以上の難民申請者等に対して原則として強制送還を可能とする難民申請者の強制送還条項や退去強制に従わない者に対する罰則等、旧法案の骨格は本法案でも維持されるものとされています。

 しかし、2022年11月に国連の自由権規約委員会の総括所見でも指摘されているとおり[5]、日本での難民認定率は著しく低い状態が続いており、保護されるべき難民が保護されない厳しい状況となっています。

 このような状況で難民申請者の強制送還条項が導入されるとすれば、真の難民であるのに難民と認められなかった者が、難民認定を求めて難民申請を繰り返した場合も強制送還がなされ、迫害の危険にさらされてしまうことになります。

 また、これらの事情で帰国できない人々に罰則を適用して帰国させようとすることは、日本が難民の迫害に加担するという取り返しの付かない結果をもたらすことになってしまいかねません。

入管収容制度が国際人権法に違反することに変わりはないことについて

 次に、前記の報道によれば、入管収容制度について、本法案では収容の必要性を3か月ごとに見直す規定を含めたほか、収容に代わる監理措置における監理人の報告義務を削除する一方、収容期間の上限は設けないとされています。

 しかし、そもそも、2021年3月に国連の特別報告者ら4者の共同書簡で、旧法案の国際人権法違反の懸念が示されていたとおり[6]、長期収容による深刻な人権侵害は、入管収容に司法審査がないことや収容期間に上限がないことを原因とするものです。同様の指摘は、前記の自由権規約委員会の総括所見においてもされています。

 本法案でも、司法審査は全く導入されないとともに、収容期間の上限すら設けられていないことからは、長期収容の問題を何ら改善する意図が見られないものと言わざるを得ません。

  

3 補完的保護の導入は入管法案の再提出の理由とはならないこと

 ところで、入管法案をめぐっては、一部に、ウクライナ避難民等の避難者の保護のために補完的保護の制度を導入すべきことを理由として、これを歓迎するような見解が依然として見られます[7]

 しかし、旧法案における「補完的保護」は、難民の定義と同様に「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」を要件としており、この要件について日本政府が限定解釈している実状のもとでは、ウクライナ避難民等が「補完的保護」の対象となる保障は何らありません。そもそも、ウクライナ難民すらも難民認定がされない現行の難民保護法制こそ問題なのです。

 さらに、ウクライナ、アフガニスタン、ミャンマーなどの広範囲の退避者が生じた国の出身者の間でも、政策的保護を付与されているかどうかで深刻な格差が生じています[8]。これらの人々を真に保護するためには、受入れ段階や生活支援など、入管法案の範囲に留まらない法制度が必要なのです。

4 結論-国際基準に沿った包括的な難民保護法の必要性

 このように、報じられている本法案においても、旧法案と同様に、深刻な人権侵害を生み出しかねない条項が含まれており、同法案を提出するべきでないことは明らかです。

 今、求められているのは、このような問題のある入管法案の提出ではなく、前記の自由権規約委員会の総括所見で日本政府に対して勧告された、国際基準に沿った包括的な難民保護法であることを、私たちはあらためて強調したいと思います。

以上

[1] 共同通信2023年1月11日付け報道(https://www.47news.jp/8793120.html)。

[2] 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(2021年2月19 日第204回国会提出)(https://www.moj.go.jp/isa/laws/bill/index.html)。

[3] 朝日新聞2023年1月12日付け報道(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15524690.html)。

[4] 全国難民弁護団連絡会議2022年4月22日付け声明(http://www.jlnr.jp/jlnr/wp-content/uploads/2022/04/全難連_声明_20220422_j.pdf

[5] 自由権規約委員会第7回日本政府定期報告書に対する総括所見32項・33項(http://www.jlnr.jp/jlnr/wp-content/uploads/2022/11/CCPR_JPN_第7回_2022103_総括所見_j抜粋.pdf

[6] 国連移住者の人権に関する特別報告者、恣意的拘禁作業部会、宗教または信条の自由に関する特別報告者並びに拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する特別報告者による日本政府に対する2021年3月31日付け共同書簡(https://hrn.or.jp/activity_statement/19726/)

[7] https://thetokyopost.jp/humanity/6535/

[8] 共同通信2022年7月21日記事(https://www.47news.jp/8077527.html

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