法相会見(2023年6月16日)入管法等

法務大臣閣議後記者会見の概要 令和5年6月16日(金)(外部リンク:法務省ウェブ


入管法等に関する質疑について 

【記者】
 成立した入管法に関しての質問です。審議の中で、(難民審査参与員の)柳瀬氏をめぐって様々な問題が出てきました。それについて、今、いちいち全部は言いませんが、端的に言って、参与員制度そのものを揺るがす疑惑がいくつも出てきまして、大臣は先日、「常に自分の判断に間違いがないかどうか、胸に手を当ててしっかりやっていきたい。」とおっしゃっていましたけれど、そう考えていらっしゃるのであれば、やはり柳瀬問題、このままにしておくのは非常によろしくないと思われますね。真相究明が行われるまで柳瀬氏を参与員から外すだとか、何らかの対応をとらないと、法務省や入管庁の信頼、また、ひいては大臣の信頼にもつながることになるかと思いますが、いかがでしょうか。
 もう1点、緊急の案件がありまして、東京入管で難民認定申請に必要な書類を渡さないという問題が頻発していると。だから審査すら受けさせないというのは、非常に大きな問題だと思います。具体的には、B1604という番号を付けた女性職員が取り分け悪質だという報告も受けております。こういった問題について、速やかな調査や是正が必要かと思いますが、いかがでしょうか。

【大臣】
 まず、柳瀬さんの件から申し上げますと、これは繰り返し申し上げていますが、柳瀬さんが、令和3年4月の衆議院法務委員会の参考人質疑において、参与員として相当多数の審査請求に関わってきた御経験に照らして、申請者の中に難民はほとんどいないという旨を発言されていると。私は繰り返していますが、これは重く受け止めるべき発言だろうと思っています。
 柳瀬さんという方が、御案内のように難民認定に対する知識及び経験が豊富かつ長年にわたって難民の支援に真摯に取り組んでいる方であるということです。それから、柳瀬氏だけでなくて、本年の参議院法務委員会において、参考人となった3名の参与員及び元参与員の方も、ごく一部の事案でしか難民認定すべきとの意見を出さなかった旨を述べられていたと承知しています。
 更に加えまして、これも毎回申し上げていますが、難民不認定処分の適否が争われた訴訟、平成30年から令和4年の過去5年間で、109件中104件で国が勝訴しているということであります。これは、もし参与員の方による難民認定がおかしいということであれば、裁判所もこういう結果にはならないのではないかというふうにも思いますので、何度も申し上げていますが、柳瀬氏以外の方の御発言や訴訟の状況を踏まえましても、柳瀬氏の御発言を裏付けるものとなっていると思いますので、引き続き柳瀬さんには御協力いただきたいと思っています。
 さらに、あえて申し上げますが、数多くいる参与員の中でも柳瀬氏に関しては多くの質疑がなされ、また、数多くの報道がなされ、様々な指摘がなされていることに鑑みまして、柳瀬氏の名誉のために、今回に限り、彼女の了解を得て申し上げますが、先ほど申し上げた訴訟になった案件109件のうち5件は(国が)敗れているわけですが、その中に柳瀬さんが関与したものはありません。
 それから、難民(認定)申請書(の件)です。個別の事案における対応についてはお答えは差し控えますが、一般論として申し上げれば、入管収容施設においては、被収容者に難民認定申請書の交付の希望があれば、これを確実に交付するようにしていると承知しています。したがいまして、個別の案件は一つ一つ、我々も言われて、表では個別は言えませんが、中でもちろんチェックしたいと思っておりますけれども、そういうふうな対応をしているということです。

【記者】
 改正入管法について2点質問させていただきます。
 国会審議では、与野党の議員から多くの検討課題が指摘されて、今言ったような立法事実ですとか、情報公開の在り方も厳しく問われました。参議院では、15項目の広範な内容の附帯決議が採択されました。
 前回の記者会見でも出ていましたけれども、一年以内に全面施行されるということで、現行の入管法の実務上の運用の改善や、新法の施行に向けての検討課題が数多く、今あると思います。附帯決議では、難民調査官や難民審査参与員の包括的な実務研修の在り方や、UNHCRや有識者などの協力関係の必要なども書かれています。より外部に開かれた、透明性の高い難民認定制度の在り方も問われていると思います。
 今言った入管法の施行ですとか、現行制度の運用も改善しなくてはならないと思いますけれども、今言ったUNHCRや外部有識者、人権NGOなどに協力を要請して、第三者機関や有識者会議みたいなものを作って、具体的な制度の運用の在り方を意見交換したり、提言していただくことを考えていらっしゃるのかどうか。技能実習制度では、古川元法務大臣がそのような取組をしておられました。
 もう1点ですけれども、在留特別許可の運用ですとか、難民審査の在り方の見直しが具体的に求められていますけれども、難民申請の当事者や、日本での在留を希望する非正規滞在の御家族やお子さん、あるいはそういった既に在留特別許可をされた方や支援者などに、大臣が当事者に直接会ってお話を聞くようなことは考えていらっしゃるでしょうか。特に、3回目、4回目の難民申請中の方で、非常に、入管法が施行されると、大変な人生めちゃくちゃにされてしまうようなお子さん、御家族もいらっしゃると思いますが、このような当事者たちの声を聞くお考えがあるのかどうか、この2点についてお願いします。

【大臣】
 まず、最初の質問ですけれども、今回成立した入管法改正法は、難民認定制度に関する専門部会、収容・送還に関する専門部会などにおいて、外部有識者の方々に御議論いただいた上で、その提言などを踏まえて立案し、今国会に法案を提出するに当たっても、必要に応じて、外部有識者の方々の御意見を伺いながら検討を進めてきたものです。
 そのため、現時点で、改正法の施行等に当たって、改めて専門部会等を設けるなどして、また始めから議論いただくようなことは考えていません。
 もっとも、法案審議におきまして、難民調査官や難民審査参与員の審査や研修の在り方、未成年の送還忌避者などに対する在留特別許可の在り方、収容に代わる監理措置制度の運用の在り方など、様々な事項について御指摘いただき、衆議院においては、条文の修正が行われ、参議院においても、附帯決議を頂いております。
 法務省としては、法案審議における御指摘について、真摯に受け止めた上で、その趣旨を踏まえ、改正法の施行に向けて準備を進めるに当たり、必要に応じて、多様な関係者の御意見にももちろん耳を傾けながら、適切に対応してまいりたいというふうに考えています。
 その上で、当事者である外国人の方々やその支援者の方々に対して、私が直接対応するかどうかについては、公平性の観点なども考慮しなければならないということもありますので、慎重な検討が必要であろうと考えていますけれども、いずれにせよ、現場で対応を行う職員には、しっかりと当事者や支援者の方々に向き合って、執務に当たってほしいということは、繰り返し申し上げておきたいと思っております。

【記者】
 ずっと皆さんが聞いていることです。参与員制度について、先週、大臣は会見で見直さないと言いました。あえて柳瀬さんを個人攻撃する必要はないと思います。在日特権という本を2007年に出版された参与員の方、浅川さんも招いていたということがあって、彼は3,900件中1件しか難民認定していない。それから、柳瀬さんも4,000件見たうちの6人しかいなかったと。この、あまりにも低すぎる認定者数というのが、外部から見れば、本当に適切に真摯にチェックできているのか、浅川さんは50件まとめて不認定処理を、紙の書類上出したということを言っていました。例えば、出身国がカンボジアで技能実習生であれば、これは難民申請者ではないですよね、ということを、これは柳瀬さんが支援者との会話の中でおっしゃっていました。カンボジアは今、非常に政府の迫害というものが進んでいまして、技能実習生であっても難民になり得る方たちはいるんですね。そういう意味で、柳瀬さんや浅川さんだけを個人攻撃するということではなくて、やはりこの参与員になぜこれほど一部の人に偏った割り振りを入管庁が自らやっているのか。一次審査についても、何度も言っていますけれど、立会いも録音・録画も認めていないという、入管庁が全て仕切っているということに一次審査でも問題があるし、二次審査でもこの偏りに問題あるという指摘がたくさん出ました。参与員制度を見直さないと、なぜこう言い切るのか、その根拠を言っていただきたいのと、施行まで1年、施行までに色々な問題が噴出した場合、やはりこの施行は見送るべきじゃないかという声もまだ出ております。そういった声にどう答えていくのかというのを、お聞かせいただけますか。

【大臣】
 繰り返し何度も同じことを申し上げていますけれど、この参与員制度について、柳瀬さんの御発言は確かにありました。その柳瀬さんがお話しになっている傾向については、つい先ほども私、答弁申し上げましたが、他の参与員の方もそういう傾向であるというふうに申し上げております。そして、もし柳瀬さんや、あるいは参与員制度がおかしいのであれば、その裁判において、もっともっと指摘をされるはずであると私は思っております。ところが、その裁判においても、おおむね入管の判断を支持しているということでありますので、この制度そのものがおかしいとか、機能していないというふうには、私には思えないのです。ですから、運用についてはもちろん細心の注意をしていかなければならないし、こういう批判は真摯に受け止めながら、それを検証していくということが必要ですけれども、今申し上げたような様々な事実を総合的に判断すれば、私は、全国の裁判所があえて不認定にしているとは思いませんので、法に基づいて判断されているということでありますので、私は、そこはトータルで是非見ていただきたいなと。裁判所の判決がこうなっているということにつきましても、なかなか皆さんも御理解いただけないのが非常に残念であります。


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