法相会見(2023年6月20日)出入国在留管理行政

法務大臣閣議後記者会見の概要 令和5年6月20日(火)(外部リンク:法務省ウェブ


出入国在留管理行政に関する質疑について 

【記者】
 改定入管法では補完的保護対象者の保護規定ができました。しかし、人道的配慮による在留特別許可の条項に関しては削除されています。現在よりも保護の範囲が狭まるおそれというものも指摘されていますが、改定入管法における補完的保護規定の追加、及び人道的配慮による在留特別許可の条項削除によりこれまでの保護される対象が増えるのか、狭まるのか予測シミュレーションを行ったことはありますでしょうか。ありましたらその内容をお知らせください。行っていない場合は、これほど重大な変更による現実的な影響を軽視しているのではないかと思われますが、なぜ行わないのか、今後実施の予定があるのかお知らせください。

【大臣】
 大変重要な点を指摘していただきました。この件は国会でも答弁させていただいているのですが、入管法改正法では、紛争避難民等の人道上、真に庇護すべき方々をより確実かつ早期に保護すべく、難民条約上の難民に該当しない場合であっても、難民条約上の五つの理由以外の理由により迫害を受けるおそれのある者を補完的保護対象者として認定する制度を創設する。これにより、現行法下で人道的配慮に在留特別許可を受けていた者に対して、補完的保護対象者と認定されれば、当然、制度的、安定的に支援を行うことが可能となります。また改正法下では補完的保護対象者と認められない者でありましても、退去強制手続において申請、あるいは、職権により、在留特別許可の判断を受けるということが可能となっているわけであります。したがいまして、現行法下で人道配慮による在留特別許可により、保護されていた者の保護の範囲が狭くなるということはありません。これは国会でも明確に答弁をさせていただいているところであります。

【記者】
 シミュレーションは行っていない。

【大臣】
 変わらないのでシミュレーションはやる必要がないということだと思います。

【記者】
 やる必要はない。

【大臣】
 今答弁で申し上げたように、現行法下で人道配慮による在留特別許可により保護されていた者の範囲が狭くなることはありませんので。

【記者】
 在留特別許可の話なんですけれども、退去強制令書が発付されている18歳未満のこどもたちの話なんですが、これについてはこれから少しお時間に余裕ができるということで、これから本格的に検討を始められるとこだと思うのですけども。これに関しては、18歳未満のこどもだけではなくて18歳以上の人たち、例えば19歳、20歳、21歳、高校卒業した、あるいは大学4年生とかですね、この方たちは親に連れられて日本で生まれ育ったということ、それで、自分は、育ってきた環境には、客観的には責任がないというこどもたちが多いんですよね。この子たちも就職活動、友達はみんな就職しているわけですよね、高校卒業したら、大学4年生になったら、就職活動、みんなしていると、スーツを着てね。でも自分はこれができないんだっていう状況はある意味、非常に苦しい立場にいる人たちがいるんですけれども、この方たちについては、どういうふうに対応されるか。方向性などをお示しいただければと思いますけれども。

【大臣】
 18歳を超えるケースのお話だと思うのですけれど、今回の法改正では、在留特別許可の判断の透明性、これを高めようということで、新たに考慮事情を法律で明示しております。判断に当たっては、御指摘のような児童の最善の利益、これについても法律で明示された考慮事情のうち、家族関係、又は人道上の配慮の必要性として当然考慮の範囲に入ってまいります。したがいまして、一つ一つ個別の事情を勘案する必要はありますけれども、それぞれの考慮事情の具体的な考え方を運用上のガイドラインとして策定することによりまして、こういった外国人の方のうち、どのような方が我が国に受け入れられるかについて、しっかり示すということを検討しているということであります。

【記者】
 在留特別許可のガイドラインと今おっしゃった新たな基準というものは同じものなんでしょうか、違うものなんでしょうか。
 それともう一つ、私が質問したかったのは、この間、色んな場で、大臣はこの5年間の間に行政訴訟が109件提起されていてそのうち104件が国の主張が認められているっていうのを繰り返し御発言になっています。これは多分、難民不認定処分取消訴訟の地裁と高裁判決の合計の数ということだと思うんですが、それでいいんでしょうか。
 それで、難民申請者にとって、行政訴訟のハードルが高いっていうのは誰でも知っていることです。日本には、そういった人権侵害を調査したり是正するための政府から独立した国内人権機関が存在しませんし、司法判断の後に、国連機関とかに訴えることができる個人通報制度にも、日本政府は一つも加入していません。そういう事情があるんですけれども、こういった人権保障システムが、国際人権基準から非常に立ちおくれている状況の中で、行政訴訟で、国の勝訴が多いということをそういうふうに強調することが本当にできるのかどうかと、その辺の大臣の御見解、特に国内人権機関の設置とか、その個人通報制度の加入を、なぜ日本政府はかたくなに拒み続けているのか、大臣の所見をお願いいたします。

【大臣】
 最初の御質問は、先ほどの御答弁と繰り返しになってしまうのですけれど、この改正法で在留特別許可の判断の透明性を高めようということで、新たに考慮事情を法律で明示しています。御指摘の児童の最善の利益につきましても、法律で明示された考慮事情のうち、当然、家族関係ですとか、あるいは人道上の配慮の必要性というもので考慮されることになるのです。考慮事情の中に入っているということであります。そしてそれぞれの考慮事情の具体的考え方というものをガイドラインとして策定をするということにしておりますので、そのガイドラインによって透明性を高めていきたいということであります。これが一つ目の御質問です。
 二つ目の訴訟のカウントの仕方につきましては、難民不認定処分の適否が争われた国が被告になった行政訴訟において、平成30年から令和4年の過去5年間で109件中104件で国が勝訴しているという事実関係、この訴訟には、難民不認定処分の取消訴訟と無効確認訴訟を含んでいます。この件数につきましては、基本的に当該訴訟の原告1人について、地裁の判決を基準に1件として計上しています。そして国側が高裁で逆転勝訴した訴訟及び国側が高裁で敗訴した訴訟については、高裁の判決を基準に1件として計上しています。地裁の後の判断を重視していることになります。そうして一つの訴訟について、二重に件数が計上されることのないようにカウントしているということであります。
 それから国内人権機関と個人通報制度のお話ですが、この件につきましては、日弁連も決議をされているということは承知しています。人権救済制度の在り方につきましては、これまでなされてきた議論がありまして、そういう状況を踏まえて、不断に検討しています。いずれにしても、差別のない社会の実現を目指して、個別法によるきめ細かな人権救済を推進してまいりたいというのが、今の日本政府の立場であります。なお、個人通報制度の受入れについて、条約等の締結を所掌する外務省において、関係府省庁と連携し、所要の検討が行われているものと我々は承知をしています。個人通報制度を受け入れていない理由につきましては、外務省の話ですけれど、外務省の検討に必要な協力は我々としては引き続き行っていきたいというふうに考えています。

【記者】
 技能実習制度の関連です。先日の関係閣僚会議、9日ですけども改訂された総合的対応策では、現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消して、新たな制度を創設すると記載されておりましたけれども、有識者会議の中間報告では、技能実習制度を廃止してというふうになっていたと思います。文言上は廃止から発展的に解消に変わりましたけれども、中間報告を受け政府は、技能実習制度を意味とすれば廃止するということに、そういった方針に変わりないということかどうか、そうでないとすれば、それでは有識者会議の提言、中間報告書を軽視することにはならないかというふうに思うのですが、大臣の御所見をお伺いしたいのと、発展的解消ということに政府として変更したのであればその理由についてもお聞かせください。

【大臣】
 これも大事な御指摘だと思います。技能実習制度の廃止という表現につきましては、4月10日の有識者会議において中間報告書のたたき台が提示されてから、現行の技能実習制度は、もうすぐやめちゃうのかという御指摘など様々な反応がありました。もっとも、中間報告書ではこういう表現がありまして、「技能実習制度が人材育成に加え、事実上、人材確保の点において機能していることを直視し、このような実態に即した制度に抜本的に見直す必要がある。」と、こういう表現が中にありまして、先ほど申し上げたような即刻取りやめるのかといった指摘は、この中間報告書の意図するものではないというふうに考えるわけであります。そこで、制度を実態に合わせて抜本的に見直すという趣旨が、より誤解なく伝わるようにするために、現行の技能実習制度の実態に即して発展的に解消という表現とされたもの、そういう考えでこの表現が使われるようになったということでございます。


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