声明・提言等(2023年3月24日)全難連より「入管庁発表「令和4年における難民認定数等について」を受けての声明 」を発表しました

入管庁発表「令和4年における難民認定数等について」を受けての声明 [PDF・323KB]

日付:2023年3月24日

団体:全国難民弁護団連絡会議

令和4年における難民認定者数等について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

<声明文全文> 

入管庁発表「令和4年における難民認定数等について」を受けての声明

全国難民弁護団連絡会議
2023年3月24日

2022年の難民認定者数は202人となって前年に比べて128人の増加とされている。しかしながら、約4分の3にあたる147人はアフガニスタンであり、さらにそのうち100人以上は日本大使館職員及びその家族であるという極めて特殊な背景事情によるものである。ここから本国の情勢から当然に保護されるべきミャンマー26人を除いた人数はわずか29人であり、保護されるべき難民が十分に保護されない厳しい状態が依然として続いている。

また、2022年の人道配慮数は1,760人とされているが、ミャンマーが1,682人であり、これを除いた人数は78人に過ぎない。ミャンマーの人道配慮数には緊急避難措置が適用された人数が含まれており、人道配慮の実態に即しているとは言い難い。

  • 2022年の難民認定数の状況について

2022年は一次申請手続と不服審の合計で202人が難民認定を受けたとされており、前年比128人増となっているが、以下のとおり、保護されるべき難民が十分に保護されない厳しい状態は依然として継続している。

(1) まず、アフガニスタンについては、147人で最多となっているが、100人以上は2021年の秋以降、タリバンによるカブールの制圧から日本に退避していた在アフガニスタン日本大使館の現地職員及びその家族であることが判明している。

これらの現地職員及びその家族のほとんどは2022年8月に集団認定を受けたものであるが、その前には、外務省担当者から、「アフガニスタンに帰った方がいい」などと帰国するよう強く勧められたり、2022年8月末の契約終了を通告されて、危険な状態にもかかわらず、実際に帰国した者も相当数いたことが明らかになっている[1][2]。このように、現地職員らに対しては、強い帰国勧奨を経た後の集団認定であり、難民保護のあるべき姿とは到底いえない。

このように、2022年の難民認定数においては、極めて特殊な背景事情によって難民認定を受けた者がその多くを占めているものであり、通常の難民認定業務の過程で認定数が大幅に増加したものではないのである。

(2)  次に、ミャンマーについて、2021年2月に軍事クーデターがあったことを受け、2022年は認定数が26人となっているが、ミャンマーの情勢に照らしても極めて少ない数字と言わざるを得ない。約3,000人に及ぶミャンマーの難民申請者の存在に鑑みても1%に満たないものであり、到底適正な判断がなされたものとはいいがたい。

実際に、2022年におけるミャンマーの不認定者数は一次審査で1,455人、不服申立てでは486人となっているものであって、全体の認定率は1%をわずかに上回るにすぎないものとなっている。

  (3) その一方、アフガニスタンとミャンマーの2か国以外の出身の難民認定者はわずかに29人であり、前年までと同じく極めて低い難民保護水準が続いている。

2022年はトルコ国籍クルド人の1人が初めて認定されたが、2022年5月に札幌高裁で難民不認定処分の取消しが確定したことを受け、入管庁として難民認定をせざるを得なかった事案であり、それ以外に難民認定を行った事案は存在しないものであって[3]、トルコ国籍クルド人は複数回申請を行うことを余儀なくされている状況にある。

2   2022年の人道配慮数の状況について

  2022年の人道配慮数は1,760人とされており、前年比1,180人増となっているが、ミャンマーの1,682人を除いた人数は78人に過ぎない上、ミャンマーの人道配慮には緊急避難措置が適用された人数が含まれており、人道配慮の実態を有しているとはいえない。

 すなわち、人道配慮による保護という場合には、通常「特定活動」(1年)の在留許可が付与されるが、ミャンマーの難民申請者のうち少なくない者について「特定活動」(6か月)の取扱いであり、週28時間の就労時間制限が付されていた。

 2022年4月以降の緊急避難措置のもとでは、一定の者が「特定活動」(1年)を受けるようになったが、「自己の責に帰すべき事情」によって在留活動を満了しなかった者については、引き続き「特定活動」(6か月)で週28時間の就労時間制限が付されている。

 軍事クーデターを契機に帰国できない者に対し、週28時間の就労時間制限を付する合理的な理由はなく、日本での生活を無用に困難ならしめるものであり、あるべき保護の形ではない。

 しかも、昨年に続き6月と1年の区別をせずに統計上すべてを「人道配慮」とすることは統計上も正確なものとは到底いいがたい。

3 手続の迅速・適正について

審査の平均処理期間は、一次審査で2022年は約33.3月と2021年の約32.2月をさらに上回り、標準処理期間の6か月を5倍以上も上回る異常な状態が依然として続いている状況にある。

他方、不服申立てでは2022年は約13.3月と2021年の約20.9 月を短縮しているものの、口頭意見陳述等期日を実施したのは676人、実施しなかったのは4,064人となっており、この内、口頭意見陳述の申立てをしたにもかかわらず、同期日が実施されなかったのは1,298人となっている。不服申立手続きにおいて、口頭意見陳述の実施は、行政不服審査法上義務的であるにもかかわらず、その原則が難民認定手続に関しては大きく歪められており、手続の適正を欠いた状態にある。

4 不服申立ての機能不全の継続

 不服申立てで難民として保護されたのは2022年は15人である一方、不認定者は4,725人となっており、不服申立てにおける認定率はわずか0.3%にとどまっており、引き続き、不服申立てが事実上機能していない状況にある。

5 結論

 以上のとおり、2022年においても、難民認定者数や人道配慮数が増加したとする入管庁の発表にもかかわらず、国際的な保護が必要な者が保護を受けられない状況は依然として変わっていないと言わざるを得ない。

 このような状況を受け、米国国務省の2022年の日本の人権状況に関する報告書においても、入管庁の難民認定基準が厳格に過ぎており、「迫害のおそれ」について申請者に差し迫った危険があることを絶対的に確実なものとして要求する過度に厳しいものと批判されている[4]

  折から、3回目以上の難民申請者の送還を可能にすることなど重大な問題点を有する入管法改定案については、2022年3月7日に閣議決定がされ、通常国会において4月以降に審議入りすることが見込まれている。

日本政府において今求められているのは、2022年11月の自由権規約委員会の第7回日本政府報告書審査における総括所見で述べられているように[5]、「国際基準に則った包括的な難民保護法制」を早急に採用することであり、このような入管法の改定を強行することは断じて許されない。

以 上

[1] 全国難民弁護団連絡会議「在アフガニスタン大使館職員及びその家族の集団的難民認定に対するコメント」(2022年8月23日)

http://www.jlnr.jp/jlnr/wp-content/uploads/2022/08/jlnr_statement_20220823_j.pdf

[2] 朝日新聞「『日本での暮らしは地獄』外務省担当者は告げた 難民認定の裏側で」

https://www.asahi.com/articles/ASR2G3F4ZR1LPTIL01Q.html

[3] 全国難民弁護団連絡会議「トルコ国籍クルド人の初めての難民認定に際しての声明」(2022年8月10日)(http://www.jlnr.jp/jlnr/wp-content/uploads/2022/08/jlnr_statement_20220810_j.pdf)

[4] U.S. Department of State, ‘Japan 2022 Human Rights Report’ p.10.

(https://www.state.gov/reports/2022-country-reports-on-human-rights-practices/japan)

[5] 自由権規約委員会第7回日本政府報告審査における総括所見33項参照。

https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/activity/international/library/human_rights/no_7_soukatsu_shoken.pdf

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