【2017年難民10大ニュース】

1.16年ぶりに地裁・高裁で勝訴ゼロ 

〔説明文〕 

(説明)今年、退令事件での勝訴ケースは複数あったが、難民事件での勝訴はゼロ件で、2001年以来16年ぶりとなった。「日本の難民認定基準は厳しすぎる」という批判の高まりに対し、裁判所は今後どのように答えるのであろうか。

《全難連資料》

08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
提訴 72 50 55 40 46 35 35 61 50
判決 127 82 62 68
勝訴(地裁) 4 1 10 1 2 0 1 2 0 0
勝訴(高裁) 2 5 0 2 2 1 0 0 3 0
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07
提訴 52 53 25 52 59 82
判決 11 14 42 64 84 145
勝訴(地裁) 0 0 0 0 2 3 15 7 5 13
勝訴(高裁) 0 0 0 0 0 1 0 2 4 8

(参照 法務省ウェブ、ほか)


2.麻生発言 

〔説明文〕 

(説明)「武装難民」なる表現には驚愕した。欧州の政治家であればこれで政治生命は終わっていよう。「武装」「難民」は矛盾した概念であり,政治の中枢にある者の発言としてはあり得ず,日本政府の難民問題への無理解を端的に示すものとなった。

《全難連声明》

◆ 麻生太郎副総理の発言に対する抗議声明 全難連(2017年9月25日)

《関連報道》

◆ 麻生副総理、再び「北朝鮮武装難民」発言…選挙終盤まで北風活用 Hankyoreh(2017年10月19日)

◆ 麻生太郎氏「北朝鮮の武装難民来たら射殺か」 有事なら「真剣に検討」 産経新聞(2017年9月24日)

《政府》

◆ 麻生副総理の武装難民発言に関する質疑について(法務大臣閣僚後記者会見の概要) 法務省(2017年9月26日)


3.難民参与員の問題発言 

〔説明文〕 

(説明)本国で反対勢力の兵士から強姦されたことを訴えている難民申請者に対して、難民審査参与員が「美人だから狙われたのか?」などと質問したことが報道され、法務大臣は遺憾であると表明。全難連は、難民審査参与員の問題ある言動事例集を法務省に提出し、制度の改善を申し入れた。

《全難連声明》

◆ 難民審査参与員の問題行動に係る抗議声明 全難連(2016年9月5日)

◆ 難民審査参与員の問題発言・行動に対する申入書 全難連(2017年9月12日)

《関連報道》

◆ 難民審査 強姦被害者に「美人だから?」 弁護士が抗議 共同通信(2017年8月31日)

◆ 「美人だったから狙われた?」 難民審査で不適切な質問 朝日新聞(2017年9月1日) 《英語版》Lawyer: Refugee screener praises beauty of victim of sexual abuse 朝日新聞(2017年9月1日)

◆ 難民認定 審査で、強姦被害者に「美人」発言 毎日新聞(2017年9月1日)

◆ 難民審査参与員、性犯罪被害者に不適切発言か TBS(2017年9月1日)

◆ 難民認定審査制度の抜本改善を 参与員問題発言で申し入れ 共同通信(2017年9月12日)

◆ Lawyers’ group petitions ministry to improve attitudes of refugee counselors following alleged inappropriate remark(不適切発言疑惑を受け、弁護士団体が難民参与員の言動改善を求めて法務省に申し入れ) Japan Times(2017年9月12日)

◆ 難民審査で「あなたは難民としては元気すぎる」!?~難民審査参与員の問題事例が全国難民弁護団連絡会議に多数報告される――同会が改善求め法務省に申入書を提出 IWJ(2017年9月12日)

◆ 難民申請者に「不適切発言」 弁護団が法務省に改善要求 NHK(2017年9月12日)

◆ 難民認定審査めぐり支援弁護団が法務省に是正要求 テレビ朝日(2017年9月12日)

◆ 難民申請者に不適切発言、参与員制度の改善申し入れ TBS(2017年9月12日)

◆ 「美人だったから?」発言 全難連が難民審査の改善要請 朝日新聞(2017年9月13日)

◆ 暴行被害の女性に「美人だからか」…難民審査で 読売新聞(2017年9月13日)

◆ 難民審査員の「美人だったから?」発言 法相が「遺憾」 朝日新聞(2017年9月22日)

◆ 女性難民の審査で不適切発言 上川法相「誠に遺憾」 NHK(2017年9月22日)

《政府》

◆ 難民審査参与員の不適切発言に関する質疑について(法務大臣閣僚後記者会見の概要) 法務省(2017年9月1日)

◆ 難民審査参与員の不適切発言に関する質疑について(法務大臣閣議後記者会見の概要) 法務省ウェブ(2017年9月19日)

◆ 難民審査参与員の不適切発言に関する質疑について(法務大臣閣議後記者会見の概要) 法務省ウェブ(2017年9月22日)

◆ 糸数慶子議員(沖縄の風)第195回国会(特別会) 参議院法務委員会質疑(難民保護、難民審査参与員制度、ほか) 2017年12月5日議事録抜粋[PDF]12月7日議事録抜粋[PDF] 参議院ウェブ


4.高裁で難民勝訴したネパール人2人に再び不認定処分 

〔説明文〕 

(説明)裁判で難民不認定処分が取り消されても,法務省はまったく動じ ない。また入管に手続が戻ってきて再び難民不認定処分をして在留許可をしてそれで終了。これまでにも散見され,再度の裁判に至っているのはスリランカケースのみ。申請者の保護にも欠け,同時に司法軽視も甚だしく,さらに,難民条約上の終止条項にも反する結果導いている。

《関連報道》

◆ 名古屋入管 「ネパール治安改善」で難民判決の2人不認定 毎日新聞(2017年6月13日 夕刊)

《全難連資料》

◆ 法務大臣が裁判所の難民判断を尊重しなかった過去の事例

事案 裁判 法務大臣
1 トルコ・クルド人 2006年6月30日に名古屋高裁で勝訴(確定) 再度の難民審査で不認定+人道配慮
2 アフガン・ハザラ人 2006年9月13日に東京高裁で勝訴(確定) 再度の難民審査で不認定+人道配慮「日本人の配偶者」
3 スリランカ・タミル人 2011年3月30日に大阪地裁で勝訴(確定) 再度の難民審査で不認定+人道配慮「特定活動」


5.強制送還で裁判の権利を奪われた庇護希望者が提訴 

〔説明文〕 

(説明)平成26年12月18日「チャーター機送還」(集団送還)により、難民申請者らが難民異議棄却の告知から24時間以内にスリランカへ強制送還された。

そのうち2名が平成29年10月19日、東京地裁に本件送還により「裁判を受ける権利」(憲法32条)の侵害を理由に国家賠償請求訴訟を提起した。

《関連報道》

◆ <難民申請>異議申し立て棄却の翌日に強制送還、裁判できず…スリランカ人が国を提訴 弁護士ドットコム(2017年10月19日)

◆ 強制送還のスリランカ人が提訴「裁判受ける権利を侵害」 朝日新聞(2017年10月19日)

◆ 提訴 「裁判受ける権利侵害」 送還スリランカ人、賠償求め 毎日新聞(2017年10月20日)

◆ 「強制送還で裁判権利奪われた」難民認定求めた2人が提訴 NHK(2017年10月19日)

◆ スリランカ人男性2人、難民認定の裁判受ける権利侵害されたと提訴 TBS(2017年10月19日)


6.「濫用」者排除の施策進む 

〔説明文〕 

(説明)本年6月、入管法施行規則が改正され、難民認定の権限の法務大臣から地方入国管理局長への委任が可能となり、また、再申請者に対しては、同規則改正により再申請者用書式が新設されて再申請者は同書式を用いなければならないこととされた。もっとも、地方入管管理局長限りで決定をできるのは入管がほぼ「濫用」者と位置付けた者を不認定にする場合に限られ、同改正は、「濫用」者の速やかな排除を目的とするものとなっている。また、再申請者に対しては、就労や在留を認めず、場合によっては収容をするなど、その取扱いが厳しさを増している。難民認定の正確性を欠いたままこれらの施策が進められた結果、迫害を受けるおそれがありながら難民認定を受けられず、帰国もできない人たちがますます追い詰められている。

《全難連声明》

◆ 出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案に対するコメント 全難連(2017年3月2日)

《政府》

◆ 難民認定に関する質疑について(上川法務大臣初登庁後記者会見の概要) 法務省(2017年8月3日)

《関連報道》

◆ 難民認定制度を厳格化へ 急増受け一律就労許可廃止 共同通信(2017年12月27日)

◆ 難民審査を厳格化へ=「偽装」排除、就労を抑制―法務省 時事通信(2017年11月18日)

◆ 難民「偽装申請」防止へ新対策、就労を大幅制限 読売新聞(2017年10月31日)

◆ 難民申請後の就労不可…偽装対策、実習生ら限定 読売新聞(2017年6月30日)


7.脆弱者のインタビューへの立会の試行 

〔説明文〕 

(説明)日本では、難民認定申請手続における代理人等のインタビューへの立会いが認められていないが、2017年3月31日より、親等を伴わない16歳未満の年少者や精神的障害を有する者など、脆弱性を抱える難民認定申請者のうち、首席審査官が認めた場合は、例外的に弁護士、医師、カウンセラー等の立会いを認める取扱いの試行が始まった。ただし、対象を未成年者のうち16歳未満に限っていること、精神的障害についての当局側の制限的な理解もあり、まだ実施された案件はないと見られている。

《政府》

◆ 平成29年3月31日付け法務省入国管理局総務課難民認定室長通知「親を伴わない年少者等に対して面接による事情聴取を行う際の立会いの試行について」

◆ 子どもの権利委員会への第4回・5回政府報告(2017年6月30日提出)


8.訪日外国人の増加、難民申請者数が増加 

〔説明文〕 

(説明)2017年の難民申請数は2016年の10,901人を大幅に上回る見込みであり、7年連続で過去最多を更新することが予想されている。この背景には、観光立国推進のための訪日外国人2000万人という政府目標の達成に向けたビザの大幅緩和がある。実際に、2011年時点で500万人強であった新規入国者数は2016年には2404万人に達しており、2017年もこれを大幅に上回ることが予想されている。


9.上半期認定3人(人道配慮27人)のみ 

〔説明文〕 

(説明)その年の難民認定の多くが年末に出される扱いが通例となっているが、半年間で僅か3人というのは異常としか言いようがない。一方で、認定業務の滞りによって長期間保留状態にある申請者は数多く、彼らの早期認定を望む。

《全難連声明》

◆ 法務省発表「平成28年における難民認定数等について」を受けてのコメント~制度の歪みのコストを難民に負わせてはならない~ 全難連(2017年3月30日)

《関連報道》

◆ 難民認定 申請が急増 上半期8561人 目立つ就労目的 毎日新聞(2017年10月2日)

◆ 難民認定、上半期わずか3人…偽装申請止まらず 読売新聞 via MSN(2017年10月3日)


10.シリア人留学生の受け入れ 

〔説明文〕 

(説明)内戦を逃れて隣国ヨルダン及びレバノンで暮らすシリア難民について、年間に国費留学生10人およびJICAの平和構築・人材育成プログラムで20人を留学生として日本への受け入れが開始された。政府は、5年間で合計150人を受け入れる予定。このほか、認定NPO法人難民支援協会が国内の大学や語学学校等と連携し、民間でのシリア人難民留学生の受け入れ事業も開始した。

《関連報道》

◆ JICA 妊婦難民「奨励せず」 募集要項、批判受け削除 毎日新聞(2016年12月22日)

◆ シリア難民、300人規模で受け入れへ 政府、定住に道 朝日新聞(2017年2月3日)

◆ シリア難民、留学生で受け入れ 日本のNPOが6人招く 朝日新聞(2017年2月9日)

◆ シリア難民の留学生、日本に無事到着 「チャンスをありがとう」 クリスチャン・トゥデイ(2017年4月3日)

◆ 難民対策 政府、シリア留学生に家族同伴認める 毎日新聞(2017年5月7日)

◆ JICA、シリア難民留学生受け入れ=院生20人、ヨルダン、レバノンで募集 時事通信(2017年8月22日)

◆ シリア難民留学生受入(第2年次)の募集開始:シリア難民に日本での教育機会を提供 JICA(2017年9月8日)


番外編.難民参与員の認定意見の4割が不認定にされていることが判明 

〔説明文〕 

(説明)2013年~2016年に参与員のうち多数が「難民相当」とした31人のうち、法務大臣が不認定にしたケースが約4割の13人であった。2012年以前は全員認定されており、「参与員の意見を尊重」しているとは言い難い現況が判明した。

《関連報道》

◆ 難民「相当」を4割不認定 法相、有識者審査「尊重」せず 東京新聞(2017年6月11日 朝刊)

《全難連資料》

◆ 難民審査参与員の多数/全員が認定相当と意見を出したものに対する法務大臣の判断

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
認定 12 4 17 8 13 14 13 3 5 8 2 ?
不認定 0 0 0 0 0 0 0 7 5 1 0 ?
12 4 17 8 13 14 13 10 10 9 2 ?

◆ 難民審査参与員の多数/全員が不認定相当と意見を出したものに対する法務大臣の判断

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
不認定 127 183 300 230 325 635 790 921 1171 1763 2112 ?
認定 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ?
127 183 300 230 325 635 790 921 1171 1763 2112 ?


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