法相会見(2021年7月30日)名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について;五輪関係者の難民認定申請に関する質疑について;UNHCRとの協力覚書の交換に関する質疑について

法務大臣閣議後記者会見の概要「名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について」「五輪関係者の難民認定申請に関する質疑について」「UNHCRとの協力覚書の交換に関する質疑について」(2021年7月30日)(外部リンク:法務省ウェブ

 

(在留外国人へのワクチン接種) 

 3件目は,外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)を通じた外国人への新型コロナウイルス感染症関連の情報提供についてです。
 FRESCは,昨年7月6日に開所されてから1周年を迎えました。
 FRESCを構成する各機関が相互に連携しながら,在留外国人に対する各種の情報提供や相談対応を行ってきた中で,出入国在留管理庁を中心として開所以来1年間にわたり,新型コロナウイルス関連の情報提供や相談対応にも力を入れてまいりました。
 まず,新型コロナウイルスの感染予防などに関する情報につきましては,内閣官房や厚生労働省を始め各府省庁が提供する情報を,出入国在留管理庁のホームページに集約して提供しています。
 また,最近では,地方出入国在留管理局や地方公共団体から,地域のコミュニティやインフルエンサー,NPO等の民間支援団体を通じて情報提供するための取組も進めているところです。
 特に,ワクチン接種などの情報につきましては,新型コロナウイルス感染予防の観点から在留外国人の方々にも正確な内容で迅速に届けることが大変重要です。
 出入国在留管理庁では,今後ともこれらの取組で構築した民間支援団体の皆様とのつながりや,SNSや地域コミュニティ内のネットワークを積極的に活用しながら,一人でも多くの在留外国人に必要な情報が確実に行き渡るようFRESCでの取組の充実を図ってまいります。

(入管施設内での新型コロナ感染) 

 4件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 7月16日(金曜日)の会見後から22日(木曜日)までの間に,職員については,5つの官署・施設で計6名の,被収容者については大阪拘置所で1名の感染が判明しました。
 また,23日(金曜日)から昨日までの間に,職員については,11の官署・施設で17名の,被収容者については,東京出入国在留管理局で1名,大阪出入国在留管理局で1名の感染が判明しています。
 詳細は既に公表されたとおりです。
 

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について 

【記者】
 名古屋出入国在留管理局でのスリランカ人女性の死亡事案についてお尋ねします。
 調査チームによる最終報告が7月中に公表されるのではないかとみられていましたが,いまだ公表されておりません。いつ公表されるのでしょうか。また,公表に当たっては,最終報告の内容についてマスコミに対する説明の場が設けられるのでしょうか。これらについてお聞かせください。

【大臣】
 出入国在留管理庁からの報告によりますと,調査チームは,現在,調査に加わっていただいている医師,弁護士等の第三者の方々の御意見・御指摘を踏まえながら,調査報告書の完成に向けて鋭意作業を行っているとの報告を受けております。
 私は,出入国在留管理庁に対し,十分な内容の最終報告書をできる限り速やかに取りまとめるよう指示しているところでございますが,公平・客観的観点から調査を尽くす必要があるため,私から調査の期日・期限を指示したことはございません。
 出入国在留管理庁からの報告によりますと,最終報告につきましては,今月中ではないものの,可能な限り近いうちに公表することができるよう,詰めの作業を急いでいるとのことでありまして,できる限り速やかな取りまとめを改めて同庁に指示しているところでございます。
 公表の具体的方法につきましては,出入国在留管理庁において検討するものと承知していますが,同庁に対しては,公表に際して,最終報告の内容について十分な説明を行うよう指示しているところでございます。

【記者】
 以前もお伺いしましたが,これまでも入管庁や法務省,また大臣の対応について,遺族の方々は,謝罪の一つも受けていない,自分たちが貧しい国の人間だからではないかとおっしゃっています。さらに,多様性と調和,あるいは団結ということを掲げた五輪をやるというのであれば,自分たちにしっかり対応してほしい,そうでなければ五輪など開く資格がないのではないかというふうなことまでもおっしゃっています。
 先ほど,人権尊重をするということを宣言をされたと大臣がおっしゃっていましたが,差別をなくすべく先頭に立つ法務大臣として,遺族の方々にこのように思わせてしまっている結果責任について,どのように受け止めて,どのようなことをなさるおつもりがあるのか,差別をするつもりはないとおっしゃっていたのは以前お伺いしていますが,お答えください。

【大臣】
 なぜ亡くなったのかを一日も早く知りたいという御遺族の方々の心情を思うに,現在,出入国在留管理庁が取りまとめに向けて取り組んでいる最終報告を,大変待ち望んでいらっしゃるのだと思います。
 真相解明,なぜそうなったのかについての事実をしっかりと調査し,最終報告書の中で検討し,改善をしていくという一連の過程の中で,しっかり調査するということを,今進めているところでございます。
 御遺族の方々が待っておられますので,出入国在留管理庁に対しては,公平・客観的観点に徹して最終報告を取りまとめるよう,また,可能な限りの情報の開示にも十分に意を用いること,取りまとめられた最終報告を必ずお届けし,調査結果について適切に御説明することを指示しております。
 今やるべきことは,早く最終報告をまとめて,それを説明していくことだと思っていますが,先ほど申し上げましたとおり,時期を急がせて不十分な調査にならないよう,私の方から,いついつまでにやれという指示はせず,なるべく速やかにと指示をしているところです。御遺族の方には,真摯にしっかりと説明をしてまいりたいと考えております。
 

五輪関係者の難民認定申請に関する質疑について 

【記者】
 ウガンダ人選手の対応に関してお聞きします。当初,ウガンダ人選手は難民申請をしたいと話していたと報じられましたが,28日,ウガンダで詐欺罪で訴追をされたと報じられました。
 選手は,大使館職員と面会後に,21日夜,成田から帰国しましたが,直後に拘束され,ウガンダの政府は選手の行動に対して,受け入れ難い裏切り行為だと非難し,今後はリハビリを行うとも言っております。帰国後に,逃亡したことでウガンダ人選手が政治的な迫害を受ける可能性は容易に想定され,やはり,弁護士に引き合わせるなどの対応をする必要があったのではないかと思うのですが,この点に関して,法務省として,選手の逃亡と身柄確保の後にどのように対応されていたのか,なぜ,助けようとする弁護士と引き合わせなかったのか,この判断は適切だと思うかお聞かせください。

【大臣】
 ただいまの御質問でございますが,個人の様々な手続に関することでございますので,お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論として申し上げると,本邦にいる外国人が,国籍国等に帰国すれば,被害・迫害を受けるおそれがあるとして我が国に庇護を求め,難民認定申請を希望している場合につきましては,関係機関等から出入国在留管理庁を案内されるものと認識しております。
 その上で,我が国において難民認定申請がされた場合につきましては,出入国在留管理庁において申請を受け付け,申請者ごとにその申請内容を審査した上で,難民条約の定義に基づきまして,難民に該当するか否かを適切に判断することになります。
 法務省といたしましては,引き続き個々の外国人の置かれた状況等に配慮しながら,適切に対応してまいりたいと考えております。

【記者】
 今の点ですが,大阪から泉佐野市の職員の方と大阪府警の方が渋谷警察に連れて行ったということなのですが,警察と大使館の方でやり取りがあったのではないかと思うのですけれども,この件について,法務省・入管庁の方には何か相談はあったのでしょうか。
 法務省が,この選手が強制送還されたということを認識したのはいつの時点でしょうか。法務省の対応について教えてください。

【大臣】
 事実関係そのものについての御質問でありまして,個別事案のため,お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
 出国時の手続についての一般論ということで申し上げると,入管法上,本邦外の地域に赴く意図を持って出国しようとする外国人は,入国審査官から出国の確認を受けなければならないとされています。
 その際,入国審査官において,外国人の出国の意思が確認できない場合には,本人から事情を聴取するなど,適切に対応していると承知をしております。

【記者】
 ウガンダ人選手の件につき,個別なことは答えられないということですが,今回警察や入管が行った弁護士と引き合わせないという判断によって母国で迫害を受けているのではないかという点なので,秘書官のメモを見るのではなく,御自身の見解を聞かせてください。
 全国難民弁護団が,このような状況下で,選手が難民申請の意向を示しているときに,大使館の担当者と会わせ,担当者が選手に翻意を促すに任せるのは,警察に保護を求めたDV被害者を加害者に会わせ,家に戻る説得を許すのと同じであって,あってはならない対応だと指摘されています。
 難民条約加盟国として,今選手が置かれている状況を含め追跡をしているのか,ウガンダ政府とのやり取りを続けているのか,また,今後同様のケースで申請者が出たときに,弁護士に面会をさせず大使館と同じように引き合わせるということをまた継続していくのか,この点について大臣の見解をお答えください。

【大臣】
 事実関係その他につきましては,個別案件でございますので,お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
 

UNHCRとの協力覚書の交換に関する質疑について 

【記者】
 7月21日に入管庁とUNHCRが,上川大臣とグランディ難民高等弁務官の立会いで,協力覚書を交換・署名しました。しかし,協力覚書の詳細な内容が公表されていません。
 入管庁が公表した参考資料には「新たな協力」として,「難民該当性に関する規範的要素の明確化」についてUNHCRが意見を提出するとか,「難民審査官の調査の在り方についてUNHCRとケース・スタディを実施する」ということが挙げられています。
 この件は,既に2014年の「難民認定制度の見直しに関する専門部会」の提言でも,それから先般の入管法改正の衆議院法務委員会の質疑でも取り上げられています。
 しかし,実際の法務省・入管庁の難民認定基準は,「迫害を受けるおそれ」という難民条約の基本中の基本の一つをとっても,UNHCRの見解など,国際的な難民認定基準からかけ離れており,非常に狭い日本独自の定義と言わざるを得ない状況です。
 その結果,他の国では難民認定される人も日本では難民認定されない,99%以上の人が難民不認定であるという結果の一因となっていると思います。
 今回の協力覚書では,今までの日本の難民認定の審査基準を根本的に見直すための諸課題,いろいろな問題が取り上げられると思うのですけれども,そういった問題点がこの協力覚書の中で指摘されているのかどうかという点と,なぜ協力覚書の詳細を現時点で公表されていないのか,この2点についてお願いします。

【大臣】
 今回の協力覚書は,今後,難民認定制度の質の向上を図るための施策を機動的に実施していくために,出入国在留管理庁とUNHCRとの間の協力に係る基本的認識を確認し,協力する分野をあらかじめ定めたものです。協力分野につきましては,既に出入国在留管理庁のホームページで公表しているところであり,本文は,先方と協議の上,公表しないこととしたところです。
 また,具体的な協力につきましては,その都度,UNHCRと個別に協議していくこととなるものです。
 本協力覚書の下での新たな協力といたしましては,例えば,今御指摘いただいたところですが,出入国在留管理庁におきまして,我が国及び諸外国でのこれまでの実務上の先例,UNHCRが発行する諸文書等を参考としつつ取り組んでいる難民該当性に関する規範的要素の明確化について,UNHCRから御意見をいただくことを予定しております。
 具体的には,出入国在留管理庁において作成した案文をUNHCRにお示しし,より明確化できる部分がないか,参考とした文書の解釈に誤りがないかなどについて意見交換をすることを予定しております。
 また,本協力覚書の下,難民調査官の調査の在り方につきましても,UNHCRとケース・スタディを実施することを検討しております。詳細についてはUNHCRと協議中でありまして,現時点でその具体的内容についてお答えすることは困難でありますが,いずれそうした協議が整うものと思っております。
 新たな協力の在り方として,現時点で,これら2つを考えているところですが,今後も必要に応じまして,UNHCRと協議を進めてまいりたいと考えております。
 こうした協力覚書を正式に交わすことができ,署名後も協議をさせていただきましたが,具体的な活動については実務者レベルでしっかりと対応していこうという話をしたところでございます。

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