「出入国管理及び難民認定法改正案に関する意見書」(外部リンク:日弁連ウェブ)
日付:2021年3月18日
団体:日本弁護士連合会
日弁連から政府入管法改正案に対し、意見書が発表されました。
— 全国難民弁護団連絡会議(全難連) (@zennanren) March 25, 2021
入管収容に期間上限を設定すべきこと、司法審査を導入すべきこと、管理措置制度への反対、難民申請者の送還停止効の維持など、全般について問題点を指摘しています。https://t.co/aO3rd6Me8k
1 当連合会「収容・送還の在り方に関する意見書」(2020年3月18日) 2 前掲注*1「収容・送還の在り方に関する意見書」参照。 年7月3日)参照。 5 拷問禁止委員会第2回日本政府報告に対する総括所見(2013年)(CAT/C/JPN/CO/2)9 議決定)48条1項においてすら,収容令書の発付要件として「その者が逃亡し,又は逃亡す 11収容・送還に関する専門部会第2回会合資料4 14 難民研究フォーラムウェブサイト記事「収容代替措置(ATD)各国制度比較」参照。 15 前掲注*14 参照。初期段階の成果につき,当連合会「『空港において難民として庇護を求め 16 福岡高判平17年3月7日(最高裁判所ウェブサイト),東京高判平成19年2月27日(最 17 平成22年4月「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」の 19 後記のとおり在留特別許可に関する処分への行政手続法の適用が要請されるところ,在留特 20 名古屋地判平成25年10月3日(公刊物未搭載),名古屋地判平成31年4月18日(ウ 22 2011/95/EU指令は「国際又は国内武力紛争の状況における無差別暴力による文民の 23 前掲注*1・「収容・送還の在り方に関する意見書」参照。20 24 前掲注*1・「収容・送還の在り方に関する意見書」参照。 26 当連合会「刑事被収容者処遇法『5年後見直し』に向けての改革提言」(2010年11月 28 当連合会「入管収容施設における医療問題に関する人権救済申立事件(勧告・要望)」(2 30 前掲注*26「刑事施設医療の抜本的改革のための提言」参照。 31 55条の68第2項,55条の74第3項,55条の76第3項,55条の77第2項,5
出入国管理及び難民認定法改正案に関する意見書
2021年(令和3年)3月18日
日本弁護士連合会
政府は,2021年2月19日,出入国管理及び難民認定法(以下「法」又は「入
管法」という。)及び関連法の改正案(以下「法案」という。)を国会に提出した。
しかし,法案は,長期収容を解消するためとして,収容に代わる監理措置制度を創
設しようとしているが,監理人に選定されることが予想される支援者や弁護士等に
対し,被監理人を監督させ多岐にわたる届出義務等を課すといった根本的な問題点
をはらんでおり,入管収容制度自体の抜本的な改革が必要である。また,難民申請
者に対する送還停止効の一部解除の制度については,難民を誤って本国に送還して
その生命・身体等を危険にさらすおそれがある。しかも,退去命令制度や旅券発給
申請命令制度(罰則を含む。)の創設については,そもそも刑罰をもって強制するこ
との必要性を欠くものである。さらに,在留特別許可申請手続が創設されても,定
着性・家族統合・子どもの最善の利益などについて考慮が尽くされる保証はなく,
補完的保護対象者の認定制度が創設されても,対象者の範囲が非常に狭く,この点
でも対象者の生命・身体等が脅かされることが予想され,入管収容施設における処
遇に関する規定の整備についても,被収容者に対する行動をはじめとする各種制約
が改善される兆しが見られない等,多くの点において修正が必要不可欠である。こ
のように,法案には,今後の退去強制実務や難民認定実務に極めて重大な影響を及
ぼす数多くの問題点があることから,以下のとおり意見を述べる。
第1 意見の趣旨
1 入管収容制度自体の抜本的な改正の必要性等について
(1) 入管収容制度に関し,収容令書(収令)に基づく収容(収令収容)及び退
去強制令書(退令)に基づく収容(退令収容)のいずれについても,厳格な
実体的要件を明文上規定するよう改正すべきである。
(2) 収令収容・退令収容とも,事前の司法審査に基づき発付される令状に基づ
く制度(令状主義)に改めるとともに,令状発付に対して司法による簡易迅
速な不服審査手続を設けるべきである。
(3) 収令収容期間を現行法よりも短縮し(例えば原則10日間,延長後の上限
10日間以内とすること。),退令収容に期間の通算上限(例えば6か月間以2
内とすること 1
。)を法定すべきである。退令収容について,上記の上限期間
内においても,一定期間経過ごと(起訴後勾留同様に1~2か月ごとを想定)
に令状審査(更新手続)を要求する制度とすべきである。
(4) 前記(1)から(3)までのとおり入管収容制度を抜本的に改正するとともに,
難民申請者や在留特別許可を求める者等収容を回避すべき一定の対象者につ
いて,就労が認められない場合には,社会内での生活が可能となる衣食住の
条件を国も関与して整備することにより,一定の要件の下で収容を解くとい
う「収容代替措置制度」を構築するべきである。
2 収容に代わる監理措置制度の創設及び仮放免の範囲の限定について
(1) 法案は,長期収容を防止しつつ収容しない者を管理するための手段として,
新たに「収容に代わる監理措置制度」を創設するとしているが,支援者や弁
護士が監理人となって対象者の生活状況,監理措置条件の遵守状況等を監督
し,その状況について届け出る義務を負うこととされていること等,重大な
問題点があることから,反対する。
(2) 法案は,監理措置制度の創設と同時に,従前の仮放免を健康上の理由があ
る場合等に限定することとしているが,収容に代わる監理措置制度に前記の
問題点があることに鑑み,仮放免制度の範囲を限定することに反対する。
3 在留特別許可申請手続について
(1) 法案は,「在留特別許可申請手続」を創設するとともに,在留特別許可の判
断に際して考慮する事情を定めているが,日本への定着性,家族統合及び子
どもの最善の利益を特に積極的に考慮すべき事情として明記すべきである。
また,前科の存在は,その内容によっては必ずしも消極的に考慮すべきでな
い場合もあるものであって,原則的な不許可事由とすべきではない。
(2) 在留特別許可申請手続においては,現行の退去強制手続上の手続保障を後
退させないことはもちろんのこと,申請制度の告知や申請意思の確認の手続
を法律に明記して申請機会を十分に担保するとともに,代理人選任権の告知
や申請に先立つ聴取手続への代理人の立会権を法律上保障するべきである。
(3) 在留特別許可を認めない場合には,申請者に対し,具体的な不許可理由を
摘示した書面の交付を義務付けるべきである。
(4) 在留特別許可に係る処分を含む入管手続全般について,行政手続法及び行
政不服審査法の適用除外とする現行法(行政手続法3条1項10号,行政不
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2020/200318_4.html3
服審査法7条1項10号)を改め,適用対象とすべきである。
(5) 退去強制令書発付後の再審について,同令書の発付後の事情の変更を法的
地位に反映させるため,法案50条3項を削除した上,申請構造を有し,応
答義務を有する制度として,法律上整備すべきである。
4 補完的保護対象者の認定制度の創設について
法案は,「補完的保護対象者」の認定制度を創設するとともに,その対象者に
ついて難民条約上の難民に準じた定義を定めているが,紛争地における無差別
の暴力などから逃れてきた者を含め,国際的に保護されるべきとされる者を漏
れなく対象とするべく,補完的保護に関するEU資格指令や補完的保護制度を
実施している各国の実例を参照した定義へと修正すべきである。
5 難民申請者に対する送還停止効の一部解除について
(1) 法案は,難民申請者に対する「送還停止効の一部解除」の規定を創設し,
3回目以上の難民申請者等については原則的に送還停止効を解除して送還を
可能とするようにしているが,難民条約の解釈・運用に関する国連難民高等
弁務官事務所(UNHCR)の解釈・勧告等を尊重するための法整備,難民
認定の質の向上のための具体的措置等を先行させるべきであり,難民の追放
及び送還の禁止の原則(ノン・ルフールマン原則)に反するおそれがあるこ
とから,反対する。
(2) 仮に送還停止効の一部解除の規定を設けるとしても,解除の例外に当たる
ことを理由に争うことのできる手続を設けるべきであり,また,解除の例外
に当たるか否かの判断について,第三者機関などによるモニタリングが実施
されるべきである。
6 退去命令制度や旅券発給申請命令制度(罰則を含む。)の創設について
法案では,送還を拒否する者に対する「退去命令制度」や「旅券発給申請命
令制度」を創設し,一定の要件に該当する場合にこれらの命令を行うとともに,
命令に違反した場合は刑事罰を科することとしているが,日本で生まれた子ど
も,日本人などの家族,難民申請者等が処罰の対象となり得ることに変わりは
なく,刑罰をもってして出国を強制する必要があるという立法事実も認められ
ないことから,反対する。
7 被収容者の処遇に関する規定の整備について
法案では,被収容者の入管収容施設における「処遇」に関する規定を法律で
整備することとしているが,国連被拘禁者処遇最低基準規則(いわゆるマンデ
ラ・ルールズ)や拷問禁止委員会による日本政府報告書審査総括所見などを踏4
まえた内容にするべきであり,具体的には以下の事項を含めた修正をすべきで
ある。
(1) 被収容者は原則として自由であり,保安上の支障の蓋然性が認められると
きに必要最小限の行動禁止がされることを個々の規定で具体化すべきである。
(2) 施設の規律維持のための措置が,拷問,残虐な,非人道的な,若しくは品
位を傷つける取扱いにならないよう具体的な禁止規定と手続保障を設けるべ
きである。
(3) 保安部門からの医療部門の独立ととともに,医師が被収容者の健康のため
保安部門に必要な報告をする制度が必要である。
(4) 医療を含む処遇に関する不服申立制度の整備,独立した審査機関の設置,
死亡事案の第三者による検証システムが必要である。また,入国者収容所等
視察委員会の独立性の確保,視察範囲及び事項の拡張,活動の充実化等を制
度化すべきである。
(5) 女性収容区画への男性職員の立ち入りを禁じるとともに,性同一性障害者
の性自認を尊重した処遇を行うことを確認する規定を設けるべきである。
(6) 入所時の被収容者に対する告知を充実化させるべきである。また,訴訟代
理人等の場合に限らず,法律問題全般について,立会い等の制限なく弁護士
と面会することができる権利が保障されるべきである。
第2 意見の理由
1 はじめに
現在,政府は,入管法及びその関連法について広範な改正を目指している。
この動きは,2020年6月19日に法務大臣の私的懇談会である出入国管理
政策懇談会の下に設置された「収容・送還に関する専門部会」(以下「専門部会」
という。)が公表した「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」(以下「専
門部会提言」という。)を契機に進められてきた。
当連合会は,専門部会開催中の2020年3月に「収容・送還の在り方に関
する意見書」2
(以下「2020年意見書」という。)を公表して入管収容と送
還のあるべき姿を明らかにし,専門部会提言が公表された直後にも会長声明を
発出して,同提言に看過し得ない問題がある旨を重ねて指摘した 3
。同年8月
3 当連合会「『送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言』に対する会長声明」(20205
には,国連人権理事会・恣意的拘禁作業部会が,日本政府に対し,入管の被収
容者の個人通報案件について当該収容が恣意的拘禁に該当し自由権規約9条等
に違反する旨を指摘している 4
。
しかし,政府は,当連合会及び国連人権理事会が指摘した問題を解消しない
ままに,2021年2月19日,「出入国管理及び難民認定法及び日本国との
平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一
部を改正する法律案」を閣議決定し,同日,衆議院にこれを提出した。
そこで,当連合会は,上記の法案に関し意見を明らかにすべく,本意見書を
公表するものである。
2 入管収容制度自体の抜本的な改正の必要性等について(意見の趣旨第1項関
係)
(1) 入管収容制度自体について
① 入管収容制度に関する法案の概要等
法案は,長期収容の解消を入管法の改正の重要な目的とするとともに,
収容を解く手段として収容に代わる監理措置制度を創設するとしている
一方,収容の要件,収容の手続,収容の期間といった事由については,改
正の対象から見送っており,現行の入管収容制度を維持する内容となって
いる。
むしろ,法案では,収容の手続に関する規定の内容が,「収容することが
できる」という収容しない裁量的な余地を認める規定から,「収容するもの
とする」という義務的な規定に改正することが予定されており,後記の収
容に代わる監理措置が適用されない場合は,義務的に収容されることとな
る規定ぶりとなっている(法案39条・52条)。
② 現行の入管収容制度の概要と問題点
ア 収容の要件について
現行の入管法上の身体拘束制度としては,①退去強制手続中に発付さ
れる収容令書(収令)に基づく収容(収令収容)と②退去強制令書(退
令)発付後の同令書に基づく収容(退令収容)が存在するが,これらの
入管収容制度は,以下のとおり,要件,手続,期間等に看過しがたい欠
陥を包含しており,長年,国際機関からも改善の必要性を指摘されてき
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/200703_2.html
4 A/HRC/WGAD/2020/58。6
た 5
。
(ア)収容の要件に関する現状
収令の発付要件について,現行の入管法は「入国警備官は容疑者が
第二十四条各号の一に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとき」
(39条1項)と定めるのみであり,嫌疑の存在以外の要件は法文上
明記されていない。実務上も,嫌疑が存在すれば常に収容は可能,あ
るいは義務的であるとさえ解釈され「全件収容主義」「収容前置主義」 ,
といった用語が慣用されてきた 6
。
また,退令の発付要件についても,入管法は「入国警備官は,第三
項本文の場合〔送還執行を行おうとする場合〕において,退去強制を
受ける者を直ちに本邦外に送還することができないとき(法52条5 」
項)と定めるのみで,直ちに送還することができないこと以外の要件
は法文上明記されていない。
(イ)収容の要件に関する問題点
しかしながら,人身の自由が尊重されるべきことは基本的人権の本
質的要請であり,その制限は必要最低限度とされるべきである。この
点について,例えば,刑事手続上の身体拘束制度である勾留の場合に
おいてすら 7
,嫌疑の存在ほかに「逃亡するに疑うに足りる相当な理
由」等の存在が法律上の要件とされ(刑事訴訟法60条1項),さら
に解釈上は勾留の「必要性」の要件 8
も要求されているが,これらは,
人身の自由を可能な限り保障し,恣意的な拘禁を防止するために最低
限必要な要件である。
にもかかわらず,これらの要件すら一切要求することなく身体拘束
を許容する入管法上の収容制度が,根本的な制度的欠陥を抱えている
ことは明らかである 9
。したがって,収令収容・退令収容ともに,厳格
項,自由権規約委員会第6回日本政府報告に対する総括所見(2014年)(CCPR/C/JPN/CO/6)
19項,人種差別撤廃委員会第10回・第11回日本政府報告に対する総括所見(2018年)
(CERD/C/JPN/CO/10-11)36項等参照。 6 注解・判例「出入国管理実務六法」(旧「出入国管理 外国人登録 実務六法」。日本加除
出版)各年版の入管法39条の解説部分参照。
7 当連合会は,現行の刑事手続における身体拘束制度の問題点についても,度々指摘している
( 当連合会 「『人質司法』の解消を求める意見書」(2020年11月17日))
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2020/201117.html 等)。
8 刑事訴訟法87条参照。
9 なお,政府提出法案(廃案)である出入国管理法案(1973年(昭和48)年3月16日閣7
な実体的要件を明文上規定するべきである。
イ 収容の手続について
(ア)収容の手続に関する現状
収容令書の発付手続について,入管法は「入国警備官の請求により,
その所属官署の主任審査官が発付する」(39条2項)と定める 10。
つまり,入国警備官は,上司である主任審査官(地方入管の次長級)
に請求するだけで収令の発付を受けることができる仕組みである。
退令収容の場合,退令が退去強制手続終了時に主任審査官により発
付されるため(法47条5項,48条9項,49条6項),入国警備
官は,既に発付された退令を用いて,当該外国人を収容することがで
きる仕組みとなっている。
(イ)収容の手続に関する問題点
いずれの手続においても,司法機関による事前の令状審査はなされ
ず,かつ行政手続法や行政不服審査法の適用が全面排除されているた
めに(行政手続法3条1項10号,行政不服審査法7条1項10号),
適正手続が担保されず,さらには,令書発付処分に対する行政不服審
査請求を行うこともできない。
刑事手続上の勾留が,恣意的又は過誤的な拘禁を未然に防ぐ観点か
ら,原則として裁判官による事前の令状審査に拠り(令状主義),加
えて(準)抗告(刑事訴訟法429条,420条)という迅速な不服
申立手続を定めていることと比較しても,人権保障が大きく後退して
いることは明白である。
ウ 収容の期間に関する問題
(ア)収容の期間に関する現状
収容の期間は,収令収容では最大合計60日間(法41条1項)と
されている一方で,退令収容については「送還可能のときまで」とい
う不確定期限となっており(法52条5項),事実上無期限の収容が
可能である上,一定期間ごとの更新手続も存在しない。
ることを疑うに足りる相当の理由あるとき」が含まれていたという経緯がある。高橋済「我が
国の出入国管理及び難民認定法の沿革に関する一考察」(中央ロージャーナル12巻4号63
~117頁)参照。
10 この他に,法43条が要急収容について定めているが,やはり事後的な収令発付者は主任審
査官である。8
(イ)収容の期間に関する問題点
こうした制度の下,ひとたび退令発付された外国人が数年以上もの
長期にわたって収容され,あるいは一旦仮放免等で身体拘束を解かれ
ても,その後二度,三度と収容を繰り返されて通算収容期間が超長期
にわたるケースも相当数存在する 11。
この点も,刑事手続上,逮捕は72時間以内,起訴前勾留は原則と
して最大合計20日間以内 12,起訴後勾留も2か月間(以後1か月間
ごとの更新が必要)とされていること 13と比較しても,大きく後退し
ている。
このような収容期間の長さは,収容の要件及び手続の問題点と相ま
って,国連人権理事会等から恣意的拘禁と繰り返し指摘される根本的
な要因となっている。
③ 入管収容制度自体に関する意見
以上のとおり,収容問題の終局的な解決のためには,抜本的な制度改正
が必要な状況である。それにもかかわらず,前記のとおり,法案では,収
容の適正な実体的要件の明文化,事前の司法審査手続の導入,そして収容
期間の設定や短縮等はいずれも見送られている。
むしろ,前記のとおり,収令収容及び退令収容について義務的な規定に
改正することが予定されており,後記の収容に代わる監理措置が適用され
ない場合は,義務的に収容されることとなる規定ぶりとなっている。
この点,法案は,収容の長期化を防止するための手段として収容に代わ
る監理措置制度を導入することとしているが,同制度においても主任審査
官が判断することとされている上,収容を原則とし,身体解放を例外とし
て制度を創設するものであって,前提を誤っていると言わざるを得ない。
入管収容制度の抜本的な改正がない限り,問題の根本的解決への道筋が
見出されることはないものであり,当連合会は,2020年意見書に引き
続き,あらためて,入管収容制度に関し,意見の趣旨1(1)から(3)までの
とおり,収容の実体的要件,手続,収容期間等につき,入管収容制度を抜
本的に改めることを求めるものである。
(http://www.moj.go.jp/isa/content/930004748.pdf)によれば,2019年(令和元年)6
月末時点で2年以上3年未満の被収容者は計176名,3年以上の収容者は76名である。
12 刑事訴訟法205条2項,208条等参照。
13 刑事訴訟法60条2項参照。9
(2) 収容代替措置の構築について
① 収容代替措置の構築の必要性
上記(1)で述べた入管収容制度の抜本的改革が実現した場合であって
も,令状発付の対象となることが想定されつつ収容回避が相当と考えられ
る事案が発生することを想定せざるを得ない。このように収容を回避する
ことが相当な事案に関し,実効性ある「収容代替措置(Alternative To
Detention)」(以下「ATD」ともいう。)を設け,現実の収容を回避す
る必要性は大きい。
この点は,2018年に日本を含む152か国の賛成で採択された「安
全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」(Global Compact
for Safe, Orderly and Regular Migration)の要請にも合致する 。
しかし,現行法では,前記(1)のとおり,そもそも入管収容制度自体が適
切なものとは言い難いことに加えて,上記のような収容回避が相当な事案
に対する適切な身体拘束回避の仕組みが存在しないことから,そのような
仕組みの創設が望まれる。
② 収容代替措置に関する意見
ア 想定されるATDの対象者
このようなATDは各国による試みが続けられているが 14,次のよう
な者を対象者と想定して制度設計がされることが考えられる。
(ア)NGO等から住居やケース・ワーク等の提供を受ければ,収容の
必要がなくなる当事者(例えば,日本に到着したばかりの難民申請者)
(イ)年齢その他の属性により,収容を極力回避すべき「脆弱性」が認
められる当事者(例えば,未成年者,高齢者,病者等)
(ウ)事案の早期解決の見通しが少なく,収容が長期化(おおむね6か
月以上)することが当初から不可避と想定される当事者(例えば,審
査の長期化が見込まれる難民申請者,送還先の特定が容易ではない者,
送還先から受入が拒まれている者等)
(エ)その他上記各号に準ずるような事情を有する者
イ ATDの制度の内容
入管収容制度自体については,前記(1)のとおり,抜本的な改正が不可
欠であり,これとともに,あるべきATDの内容が検討されるべきであ
https://refugeestudies.jp/2020/11/research-atd/10
るが,日本では,少なくともこれまでの特定非営利活動法人なんみんフ
ォーラム(FRJ)・法務省・当連合会の三者によるパイロットプロジ
ェクト 15の成果を踏まえ,以下の要素を念頭に置いた制度設計がなされ
るべきである。
(ア)住居の指定等の必要最小限の条件の指定を行うにとどめるべきで
ある(現行の仮放免制度の実務のような都道府県を跨ぐ移動の原則禁
止などの行動制限や当局への定期的な出頭及び更新手続,保証金の納
付等は,当事者の負担軽減と行政経済の観点から,原則として不要と
すべきである。)。
(イ)保証人等を要件とする場合,その者は,ケースワーカーなど対象
者の在留特別許可申請手続や難民認定手続を支援する立場から関与す
る者とするべきであり,この立場と相反するような,対象者の行動を
当局に届け出る義務を負わせるべきではない。
(ウ)現行の仮滞在制度と同様,住民登録の対象とすべきである。
(エ)国が関与して衣食住の提供を行うこととし,これがなされない場
合は,収容令書発付段階,退去強制令書発付段階を問わず,一定条件
の下で就労を可能とすべきである。
3 収容に代わる監理措置制度の創設及び仮放免制度の限定について(意見の趣
旨第2項関係)
(1) 法案の概要
前記のとおり,法案は,入管収容制度の抜本的な改正を見送る一方,収容
の長期化を防止しつつ,収容しない者を管理するための手段として,収容に
代わる監理措置制度を導入するとともに,仮放免制度を限定するものとして
いるが,その概要は以下のとおりである。
① 主任審査官は,外国人が逃亡し又は証拠を隠滅するおそれの程度その他
の事情を考慮し,「相当と認めるとき」は,保証金(300万円を超えな
い範囲内)を納付することを条件として,当該対象者を監理措置(監理人
による監理に付する措置をいう。)に付する。この場合,住居及び行動範
囲の制限,呼出しに対する出頭の義務等の監理措置条件を付するものとす
る(法案44条の2・同52条の2)。これらの条件に違反して逃亡等し
た者に係る住居の確保等に関するパイロットプロジェクト事業報告書』の公表について」(2
015年3月11日)参照。
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2015/150311.html11
た場合は刑事罰の対象となる(法案72条4号)。
② 監理人は,当該外国人の生活状況の把握並びに指導及び監督を行うもの
とされているほか,逃亡又は証拠隠滅を疑うに足りる相当の理由のあると
き,監理措置条件に違反したとき,許可を受けないで報酬を受ける活動を
行ったとき等の場合には,主任審査官に届け出なければならない(法案4
4条の3・同52条の3)。監理人がこれらの届出義務を怠った場合は過
料の対象となる(法案77条の2)。
③ 監理措置に付された外国人は,退令の発付を受けるまでの間に限り,生
計の維持に必要な範囲内で,監理人による監理の下に,主任審査官の許可
を得た上で就労を行うことができるとされる一方(法案44条の5),退
令の発付を受けている場合は就労を行うことは禁止されている。これらに
違反して就労した場合は刑事罰の対象となる(法案70条9号・10号)。
④ 一方,仮放免制度については,監理措置制度の導入に伴い,健康上,人
道上その他これらに準ずる理由による場合に限り,一定の条件の下にこれ
を許可するものとされている(法案54条)。これらの条件に違反して逃
亡等した場合は刑事罰の対象となる(法案72条7号)。
(2) 法案の問題点
前記のとおり,監理措置については,主任審査官が判断するものである上,
収容を原則とし,身体解放を例外として制度を創設しているものであり,前
提を誤っているものと言わざるを得ないが,監理措置制度等の内容について
も,以下のとおり重大な問題点がある。
① 監理措置の要件について
監理措置の要件として,外国人が逃亡し又は証拠を隠滅するおそれの程
度その他の事情を考慮し,主任審査官が「相当と認めるとき」は,監理措
置に付するものとされている。
しかし,当該外国人の「逃亡のおそれ」は,主任審査官による相当性の
判断に関する総合考慮の中の要素にとどまるものとされているにすぎず,
「逃亡のおそれ」がなくとも収容が継続するという事態は今後も生じ得る
ものであり,恣意的拘禁と評価される長期収容を今後も防止できないおそ
れがあるものと言わざるを得ない。
② 監理人の届出義務等について
監理人については,対象者の生活状況の把握並びに指導及び監督を行う
ものとされているほか,一定の場合に主任審査官に届け出る義務を負うと12
されているところ,ここにいう監理人となる者については,当該外国人の
親族,知人,支援者,支援団体,弁護士等が想定されている。
しかし,前記の収容代替措置において述べたとおり,これらの者は,対
象者の生活のほか,在留特別許可申請手続や難民認定手続をサポートする
ケースワーカーとしての役割を有しているものであり,監理人となって当
該外国人の生活状況や監理措置条件の遵守状況等を監督し,その状況につ
いて届け出る義務を負うとされることは,このような役割と相容れない義
務を課すことになるものである。
また,弁護士については,在留特別許可申請手続や難民認定手続の代理
人や訴訟代理人として,対象者の利益を守り,守秘義務等を負うという職
務基本規程による規律を受ける者であり,このような届出義務を主任審査
官に対して負うことは,代理人としての立場と両立し難いものと言わざる
を得ない。
③ 監理措置に付された外国人の就労等について
監理措置に付された外国人については,退令の発付を受けるまでは,そ
の者の生計を維持するのに必要な範囲内で就労を行うことができるとさ
れているものの,退令の発付を受けている場合は就労を行うことが禁止さ
れている。
しかし,退令発付後であっても,難民不認定処分や退去強制令書発付処
分の取消訴訟が相当期間行われ得ることなどを考慮すれば,その者の生計
の維持に必要な就労を認めるべきことは同様であって,このような場合の
就労を認めることとすべきであり,仮に就労を認めないのであれば,少な
くとも生活保護の水準と同等の生活を保障すべきである。
また,法案においては,監理措置に付された外国人を住民登録の対象と
することは予定されていないが,このことは行政サービスを受ける上で重
大な支障をもたらすおそれがあることから,住民登録の対象とすべきであ
る。
(3) 監理措置制度等に関する意見
以上のとおり,法案における収容に代わる監理措置制度については,監理
人の届出義務をはじめ,長期収容を防止するという制度の創設の趣旨に反す
る看過し得ない重大な問題点があることから,これに反対せざるを得ない。
また,法案は,監理措置制度の創設と同時に,従前の仮放免制度を健康上
の理由がある場合等に限定することとしているが,監理措置制度に前記の重13
大な問題点があることに鑑み,仮放免制度の範囲を現行よりもさらに限定す
ることに反対する。
4 在留特別許可申請制度について(意見の趣旨第3項関係)
(1) 在留特別許可申請制度に関する法案の概要
法案は,在留を認めるべき者を適切に判別するためとして,在留特別許可
申請手続を創設しているが,同申請の要件及び手続について,以下のとおり
規定している。
① 在留特別許可申請制度の要件について
法案は,在留特別許可申請の処分要件の考慮要素として,a.在留を希望
する理由,b.家族関係,c.素行,d.本邦に入国することとなった経緯,e.
本邦に在留している期間,f.その間の法的地位,g.退去強制の理由となっ
た事実,h.人道上の配慮の必要性,i.内外の諸情勢,j.本邦における不法
滞在者に与える影響,k.その他の事情を規定している(法案50条5項)。
その一方,法案は,「無期若しくは1年を超える懲役若しくは禁錮に処
せられた者」等については,原則として在留特別許可をせず,「本邦への
在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情
があると認めるとき」のみに許可し得ると限定している(法案50条1項
ただし書)。
② 在留特別許可申請制度の手続について
法案は,在留特別許可の手続について,申請を行うことを認める一方(法
案50条2項),意見陳述の機会として口頭審理,代理人の立会い,弁護
士の選任,その告知といった規定を設けていない。
また,法案は,行政手続法及び行政不服審査法の適用除外を維持しつつ
(行政手続法3条1項10号,行政不服審査法7条1項10号),標準処理
期間,審査基準の策定義務・公表義務の規定を設けていない。
(2) 在留特別許可申請制度の要件について
① 在留特別許可の考慮要素について
ア 現状及び問題点
現行の在留特別許可制度(法50条1項)は,退去強制手続の最終段
階である裁決に当たって,退去強制事由に該当する外国人に対し,在留
を特別に許可するものである。その実体的要件を規定する入管法50条
1項は,1号から3号までにおいて考慮要素の一部を例示し,4号にお
いて「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めると14
き」と包括的な規定を置くにとどまる。そして,実務上,在留特別許可
の許否判断において考慮される事情は「在留特別許可に係るガイドライ
ン」(以下「ガイドライン」という。)で規定され,積極要素及び消極要
素につき「特に考慮する」要素と「その他の」要素が示されている。
しかし,現行在留特別許可制度の運用に当たっては,しばしば日本へ
の定着性,家族の統合及び子どもの最善の利益を適切に考慮したとは言
い難い合理性を欠いた判断がなされてきた。
実際に法務大臣又は地方出入国在留管理局長の在留特別許可をしない
という判断が,裁量権の逸脱・濫用に当たるとして取り消された裁判例
は多数存在する 16。これらの裁判例では,在留特別許可の判断に当たり,
日本人や永住者などの正規在留外国人との家族関係,当該外国人の定着
性,病気治療の必要性等を考慮しなかったこと,あるいは,考慮したも
ののその評価(重み付け)の合理性を欠いたことが裁量権の逸脱・濫用
の理由とされている。
イ 法案の問題点及び考慮要素に関する意見
前記のとおり,法案は,在留特別許可の考慮要素として,家族関係等
の要素を列挙しているが,その評価(重み付け)については何らの記載
がされておらず,日本への定着性,家族の統合及び子どもの最善の利益
といった,特に積極的に考慮されるべき事情について,適切な判断がさ
れることが担保されていない。そこで,これらの権利や利益を適切に保
護するために,在留特別許可の要件を具体化するなど法律による規律密
度を向上させるべきであり,例えば,本邦で生まれた子どもなど一定の
類型については,必要的な在留特別許可という制度を設けることを検討
すべきである。
それとともに,包括的な処分要件の判断に際し,比例原則を採用すべ
く,一定の積極要素の評価(重み付け)を法律に規定し,適切なバラン
ス・テストがなされるように担保すべきである。具体的には,子どもの
最善の利益,家族の保護(家族生活の自由),私生活(形成された私的な
生活)など,子どもの権利条約や自由権規約など国際人権条約によって
高裁判所ウェブサイト),東京地判平成21年3月6日(最高裁判所ウェブサイト),東京地
判平成21年3月27日(最高裁判所ウェブサイト),最判平成21年9月15日(平成20
年行ヒ第64号・判例集未登載),名古屋地判地判平成22年12月9日(最高裁判所ウェブ
サイト)等多数。15
保護される権利利益が特に重要な積極方向での考慮要素となることを
法律に明記すべきである 。
② 原則として在留特別許可をしない類型の創設について
法案は,前記のとおり,「無期若しくは1年を超える懲役若しくは禁錮
に処せられた者」は原則として在留特別許可をしないものと定めている。
しかし,実務上も,1年を超える懲役又は禁固の実刑判決を受けた事案
でも,日本にいる家族や定着性の存在が重要な積極要素として考慮され,
在留特別許可が認められることは珍しくなく,過去に法務省入国管理局
(当時)が在留特別許可された事例として公表したケースや裁判例の中に
も,こうした事例が存在する 17 18。
このことに示されているとおり,前科の存在は,その内容により消極的
な考慮事情の一つと位置付けることがやむを得ないとしても,あくまで積
極要素と比較衡量して判断されるべきであって,「無期若しくは1年を超
える懲役若しくは禁錮に処せられた者」についてのみ,その具体的な事情,
量刑,更生などを問わず,一律に原則として許可しないとすることは相当
でない。
(3) 在留特別許可申請制度の手続について
① 在留特別許可申請における意見陳述の機会の保障等について
現行法では,最終の意見聴取の場である口頭審理には,代理人選任権,
証拠提出権,証人尋問請求権,立会人の出頭を求める権利等(入管法48
条5項,10条3項~5項)の規定が設けられ,在留特別許可を求める理
由の主張,証拠の提出等を行うことができ,事実上,在留特別許可に関し
て極めて重要な主張立証の機会として機能している。しかしながら,法案
で新設を予定する在留特別許可申請手続においては,これらの規定が用意
されていない。そうすると,在留特別許可を求める者にとって,上記の主
張立証の機会を保障されない点で,手続保障が現行制度よりもむしろ後退
するという結果となりかねない。
また,親の在留特別許可の判断等においては,子どもの意見を聴取する
手続も整備されてない(子どもの権利条約12条参照)。
さらに,退去強制事由の存否が判断されるまで在留特別許可ができない
「(4)その他」「在留特別許可された事例」の事例9参照。 18 東京地判平成19年8月28日(判時1984・18)。16
とされる(法案50条4項)が,事案によっては,退去強制事由の判断が
数年もの時間を要する一方,明らかに在留特別許可を認めるべき事案も存
在する。
以上のとおり,現行法上保障されている(事実の調査の一環としてでは
ない)口頭による意見陳述の機会の保障,代理人選任権とその告知,証拠
提出権,証人尋問請求権等の各手続を後退させてはならず,申請構造に改
正するに当たっても,これと同水準の手続を整備すべきである。また,子
どもの意見を聴取する手続や,退去強制事由の存否を先決とすることにこ
だわらない制度を構築すべきである。
② 理由付記の程度について
法案では,申請に対して在留特別許可をしない処分をするときは,理由
付記を義務付けるものとされているが(法案50条10項),提示される
理由が,現行法下の実務のように「在留を許可すべき特別な事情が認めら
れない」などの抽象的な記載にとどまり,具体的な理由の開示がなされな
いのでは,処分対象者はその理由を知ることができず,理由付記の趣旨で
ある「行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するととも
に,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨」(最
高裁平成23年6月7日判決・民集第65巻4号2081頁参照)は実現
されない。
そこで,理由の提示に当たっては,少なくとも,その事案において実際
に考慮された積極要素を基礎付ける事情及び消極要素を基礎付ける事情
並びに消極要素の方を重視する判断を行った根拠を具体的に示すべきで
ある 19。
③ 行政手続法及び行政不服審査法の適用除外について
法案は,行政手続法及び行政不服審査法の一律適用除外を維持する一方
で,入管法にも標準処理期間,審査基準の策定義務・公表義務の規定を一
切設けていない。
現行法においても,在留特別許可に係る処分について,行政手続法及び
行政不服審査法の適用除外であるため,標準処理期間もなく,在留特別許
可の判断までに数年にも及ぶ事件も散見され,審査基準も公表されていな
別許可に対する不許可理由の告知は,処分の理由提示義務を要請する行政手続法8条に合致す
る。17
いなど適正手続が保障されているものとは言い難い。
そこで,行政手続法及び行政不服審査法の適用除外(行政手続法3条1
項10号,行政不服審査法7条1項10号)を撤廃し,他の行政手続一般
と同様の手続保障を実現すべきである(この点については,在留特別許可
手続に関する処分のみならず,入管手続全般に同様に当てはまるものであ
る。)。
④ 退令発付後の再審の整備について
法案は,在留特別許可申請を,当該外国人に対して退令が発付された後
はすることができないとし(法案50条3項),退令が発付された後の事
情の変更を反映させるための再審を法律上整備しなかった。
在留特別許可が認められない場合,現行法では,在留特別許可をしない
旨の裁決がなされた後の判断の誤りの判明や事情の変更に基づく裁決の
見直し(いわゆる再審。裁決の職権取消し又は撤回と新たな在留特別許可
の判断)について規定はないものの,違反審判要領には「裁決の見直しに
伴う措置」の規定があり,実務上,再審による在留特別許可により,退令
発付後の事情の変更が反映されてきた。
法案においても,職権による再審は運用上も考えられるものの,現在と
同様に,職権の発動による在留特別許可を促すものでしかないため,申出
に対する応答義務もなく,再審を求める者の地位が極めて不安定なものと
ならざるを得ない。また,裁判例の中には,裁決後の事情を考慮して在留
特別許可をしない旨の裁決の撤回及び在留特別許可の義務付けを判断し
たものが複数存在するが 20,これらの司法判断に対応する手続も入管法上
規定されていない。
そこで,退去強制令書の発付後の事情の変更を法的地位に反映させるた
め,申請構造を有し,応答義務を有する再審を法律上整備すべく,法案5
0条3項は削除されるべきである 21。
5 補完的保護対象者の認定制度の創設について(意見の趣旨第4項関係)
(1) 補完的保護対象者の認定制度の概要について
法案は,紛争避難民等を保護対象として法律上認定するためとして,補完
ェストロー・ジャパン)等。
21 上記③記載のとおり在留特別許可に関する処分への行政手続法の適用が要請されるところ,
再審情願に対する応答を義務付けることは,申請に対する行政庁の応答義務を要請する行政手
続法7条に合致する。18
的保護対象者の認定制度を創設するものとし,この「補完的保護対象者」の
定義として,「難民以外の者であって,難民条約の適用を受ける難民の要件の
うち迫害を受ける恐れがある理由が難民条約第1条A(2)に規定する理由
であること以外の要件を満たすもの」(新2条3号の3)という規定を設けて
いる。
(2) 法案の問題点
上記の法案の定義によれば,補完的保護対象者に該当するためには,少な
くとも難民条約第1条A(2)にいう「迫害を受けるおそれがあるという十
分に理由のある恐怖」を有する者であることが必要となるが,法務省は,上
記にいう「十分に理由のある恐怖」について,「当該政府が特に当該人を迫害
の対象としていることが明らかになるような個別的で具体的な客観的事情が
あることを要する」という厳格な解釈を採っている。
しかし,このような解釈を前提とすれば,紛争避難民等を保護対象として
法律上認定するという補完的保護対象者の認定制度の創設の趣旨とは異なり,
法案の定義では,紛争避難民等を保護の対象とすることができないおそれが
ある。
(3) 補完的保護対象者の認定制度に関する意見
補完的保護対象者の定義については,むしろ難民条約の定義の要件に捉わ
れることなく,補完的保護に関するEU資格指令 22や補完的保護制度を実施
している各国の定義を参照し,紛争地における無差別の暴力などから逃れて
きた者など,国際的に保護されるべきとされている者を漏れなく保護するこ
とができるようにすべきである。
この点は,出入国管理政策懇談会の下に設置された「難民認定制度に関す
る専門部会」が2014年12月26日に公表した「難民認定制度の見直し
の方向性に関する検討結果(報告)」で提言されていたものであり,また,当
連合会が2015年3月19日付けで公表した「難民認定制度の見直しの方
向性に関する専門部会報告に対する意見書」でも提言していたところである。
6 難民申請者に対する送還停止効の一部解除について(意見の趣旨第5項関係)
(1) 難民申請者に対する送還停止効の一部解除の概要
生命又は身体に対する重大かつ個別の脅威」,「出身国における申請者への拷問若しくは非人
道的な若しくは品位を傷つける取扱い,又は刑罰 」などの「重大な危害を被る現実の危険に直
面することになるであろうと信ずるに足りる実質的な根拠が示されているもの」を保護対象と
している(2条f,15条)。19
法案は,従前は送還が停止されていた難民申請者について,送還回避のた
めに難民申請する者等を送還するためとして,3回目以降の申請(難民の認
定又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した
者を除く。)の場合や,3年以上の実刑に処せられた者等については,難民申
請中であっても送還を停止しないものとして,送還停止効の一部解除の規定
を設けている(61条の2の9第4項)。
(2) 法案の問題点
① 3回目以降の申請に対する送還停止効の解除について
しかし,当連合会が指摘しているとおり,日本の難民認定の状況におい
ては,相当数の者が複数回の申請後に難民として認定されたり,人道配慮
を理由に在留を許可されたりしている現状があり,このことは複数回の難
民申請を行う者の中に保護されるべき者が相当数存在していることを示
しているものであって 23,3回目以降の申請であることを理由に送還停止
効を解除することには,難民の可能性がある者を本国に送還する危険があ
る。
このような状況を受け,当連合会は,難民条約の解釈・運用に関する国
連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の解釈・勧告等を尊重するための
法整備など,難民認定の質を向上させるための具体的措置が採られない限
り,送還停止効を解除する規定を設けることに反対していたところである
が,このような具体的措置は現在に至るまで採られていない。
また,法案では,「難民の認定又は補完的保護対象者の認定を行うべき相
当の理由がある資料を提出した者」を送還停止効の解除の対象から除くと
されているが,このような措置は行政処分として定められておらず,これ
に対する救済措置が存在していないことから,適正手続の保障が存在して
いないという問題点を指摘せざるを得ない。送還停止効という難民条約の
趣旨に合致する制度に例外を設けるのであれば,その処分性と不服申立て
の手続を明示すべきであり,結局手続保障のないままに恣意的に送還が実
行されるおそれを否定できない。
② 3年以上の実刑に処せられた者等に対する送還停止効の解除について
また,法案は,3年以上の実刑に処せられた者等については,初回の申
請から送還停止効の例外を設けようとしているが,以下のとおりの問題点
がある。
難民条約33条は,1項において,難民の追放及び送還の禁止の原則(ノ
ン・ルフールマン原則)を規定する一方,2項において,その例外として,
「締約国にいる難民であって,当該締約国の安全にとって危険であると認
めるに足りる相当な理由がある者または特に重大な犯罪について有罪の
判決が確定し当該締約国の社会にとって危険な存在となった者は,1の規
定による利益の享受を要求することができない」と定めている。
すなわち,送還禁止の例外は,「特に重大な犯罪について有罪の判決が確
定し」たことと「当該締約国の社会にとって危険な存在となった者」との
認定が必要とされている。法案では,この「重大な犯罪」が3年以上の実
刑という形式的な基準に置き換えられ,「当該締約国の社会にとって危険
な存在となった者」の要件は無視される結果となっている。
なお,法53条3項は,難民条約33条 1 項に規定する領域の属する国
に送還することを禁止しているが,収容及び送還を実施すること等を権限
とする入国警備官にそのような判断を行うことは期待できないものであ
り,同規定の存在をもってノン・ルフールマン原則が担保されているなど
とは到底言えない。
(3) 難民申請者に対する送還停止効の一部解除に対する意見
以上のとおり,難民申請者に対する送還停止効の一部解除については,難
民条約の解釈・運用に関するUNHCRの解釈・勧告等を尊重するための法
整備等,難民認定の質の向上のための具体的措置を先行させるべきであり,
ノン・ルフールマン原則に反するおそれがあることから,反対するものであ
る。仮に送還停止効の一部解除の規定を設けるとしても,解除の例外に当た
ることを理由にこれを争うことのできる手続を設けるべきであり,また,解
除の例外に当たるか否かの判断について,第三者機関などによるモニタリン
グが実施されるべきである。
7 退去命令制度や旅券発給申請命令制度(罰則を含む。)の創設について(意見
の趣旨第6項関係)
(1) 退去命令制度・旅券発給申請命令制度の概要
① 退去命令制度について
法案は,「自ら本邦から退去する意思がない旨を表明している場合にお
いて,その者の53条に規定する送還先が退去強制令書の円滑な執行に協
力しない国以外の国として法務大臣が告示で定める国に含まれていない
こと」又は「その者が偽計又は威力を用いて妨害したことがあり,再び送21
還に際して同様の行為に及ぶおそれがあること」に当たり,送還先に送還
することが困難である場合であって相当と認めるときには,本邦からの退
去を命ずることができるものとする(以下「退去命令」という。)(55
条の2)。
そして,この退去命令に違反して一定の期間までに本邦から退去しなか
った者には,刑事罰を科すものとしている(法案72条8号)。
② 旅券発給申請命令制度について
法案は,「退去強制令書の発付を受けた者を送還するために必要がある
場合」には,その者に対し,相当の期間を定めて,旅券の発給の申請その
他送還するために必要な行為として法務省令で定める行為をすべきこと
を命ずることができるものとする(以下「旅券発給申請命令」という。)(法
案52条12項)とする。
そして,この旅券発給申請命令に違反した場合には,刑事罰を科すもの
としている(法案72条6号)。
(2) 法案の問題点
① 退去命令制度の問題点
しかし,退去命令制度については,当連合会が従前から指摘してきたと
おりの問題点があり 24,上記の要件を付したとしても,日本生まれの子ど
も,日本人などの家族,難民申請者(申請3回目以上に限る。)等が処罰の
対象となることには何ら変わりはない。また,実際には,退去強制令書が
発付された者のほとんどが任意出国しているのであるから 25,刑罰という
手段をもって強制する必要性も認められる状況にもない。
一方で,処罰の前提となる退去命令は「相当と認めるとき」になされる
ため,その明確性も認められない。さらに,退去強制令書発付処分又は退
去命令の取消訴訟を提起したとしても,執行停止がなされるまでに退去命
令の期限が経過してしまえば,退去命令違反が成立するのであるから,裁
判を受ける権利を実質的に侵害するものである。加えて,特定の国を告示
によって限定するものの,その告示は法務大臣が定めるものとされており,
これをもって処罰範囲が限定されるとは言い難い。
② 旅券発給申請命令制度の問題点
25 同上。22
旅券発給命令については,本国から迫害のおそれがあるとして難民申請
を行った者についても,本国政府の機関である大使館に対して旅券の発給
を申請することを義務付けることができてしまうことになり,難民が庇護
を求める権利を実質的に害することになるおそれがある。
また,法案を前提とすれば,旅券を職権で発給しない国が存在するため
に送還が困難な場合のみならず,そのような場合以外でも命令を行うこと
ができるようになっており,処罰範囲が拡大するおそれがあるものと言わ
ざるを得ない。
(3) 退去命令制度及び旅券発給申請命令制度に関する意見
以上のとおり,退去命令制度及び旅券発給申請命令制度については,日本
で生まれた子ども,日本人などの家族,難民申請者等が処罰の対象となり得
ることに変わりはなく,刑罰をもってして出国を強制する必要があるとも認
められないことから,反対する。
8 被収容者の処遇に関する規定の整備について(意見の趣旨第7項関係)
(1) 被収容者の処遇に関する規定の整備の概要
法案は,第5章の2(55条の3から同条の83まで)を新設し,被収容
者の入管収容施設における処遇に関連する規定を設けている。被収容者の処
遇については,従前は規則で規定されているにすぎなかったところ,これを
法律で定めた上,内容において刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法
律(以下「刑事収容施設法」という。)上の未決拘禁者の取扱いにほぼ準拠さ
せたことは,現行の入管法と比較したときの積極面ということはできる。
(2) 法案の問題点及び被収容者の処遇に関する意見
しかし,法案は,その内容において,2015年に改訂された国連被拘禁
者処遇最低基準規則(いわゆるマンデラ・ルールズ)(以下本項において単に
「最低基準規則」という。)や,2007年及び2013年の拷問禁止委員会
から日本政府への総括所見のほか,これらを踏まえた刑事収容施設法に関す
る当連合会の意見も考慮していないという問題点があることから,以下のと
おり意見を述べる。
① 処遇の原則と個別の規定との矛盾について
入管収容施設,特に,退令収容の目的は送還の準備以外になく,逃亡を
防止する以上に自由を制約する必要がない。そのため,法案55条の4に
おいても,「被収容者には,入国者収容所等の保安上支障がない範囲内でで
きる限りの自由が与えられなければならない」という刑事収容施設法にな23
い処遇の原則を示している。
ところが,面会,信書発受,書籍閲覧,自弁物品,診療など個別の規定
を見ると,原則としての禁止が個別に許可される仕組みとなっており,外
部との連絡手段も,信書と電話に限定されているなど,上記の原則と矛盾
する内容となっている。
面会,通信手段など原則として自由であり,規律及び秩序の維持その他
管理運営に放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が合理的理由
をもって認められる場合に限り,必要かつ最小限度の範囲内で行動が禁止
されるよう,個々の規定において原則と例外を入れ替えるべきである 26。
② 規律及び秩序の維持について
法案は,隔離(55条の50),制止(55条の51),戒具使用(55
条の52),保護室等収容(55条の53)等の規律及び秩序の維持に関す
る規定を設けている。
まず,入国警備官は,被収容者に対し,正当防衛の場合,逃走しようと
する場合,明示の条文に根拠する命令に対する身体的抵抗に対し必要な場
合を除いては,実力を行使してはならないことを明記すべきである(最低
基準規則82項参照)27。
また,規律及び秩序の維持の措置は,拷問その他の残虐な,非人道的な
若しくは品位を傷つける取り扱いであってはならず,具体的には,15日
を超える独居拘禁,体罰,集団的処罰,拘束具の制裁目的の使用,制裁目
的の家族との交信の制限の禁止のほか(最低基準規則43項参照),女性や
未成年者の独居拘禁の禁止(同45項参照),戒具使用の補充性及び必要最
小限性(同48項参照)が明記されるべきである。
さらに,隔離や保護室等収容措置(法案55条の50,同条の53)に
おける手続保障(意見聴取,理由告知等)の規定を設けるとともに(最低
基準規則41項参照),保護室等収容措置については,心身の疾患が疑われ
る者に対して原則として行わない旨の規定を設けるべきである。
③ 保健衛生及び医療について
法案は,保健衛生及び医療の原則として,「社会一般の保健衛生及び医療
17日)参照。
27 近時,入管収容施設における職員による過剰な暴力について,国家賠償請求の提訴がされる
事例が相次いでおり,大阪出入国在留管理局において,事実上責任を認めた和解がされた報道
もされている(朝日新聞2020年10月1日付け記事参照)。24
の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずる」(法案55
条の37)とされていることからすれば,原則として社会一般の医療関連
法令が適用されなければならず,このことを明記するとともに,入管収容
施設内の職員,医師,看護師に研修を実施する規定を設けるべきである。
また,診療の必要性は,専ら医療的な見地から判断されなければならず,
保安部門の介入は排除されるべきである(最低基準規則27参照)。被収容
者から診療の申出があった場合は,これを速やかに医師に伝えるとともに,
入国者収容所長等でなく医師が診療の要否を決定すべきであり,診療に立
ち会った入国警備官は医療行為に介入してはならないことが明記される
べきである 28(なお,法案には,ハンガーストライキをする者に対し,入
国者収容所長等が医師による強制治療をする規定が設けられているが(法
案55条の32第1項ただし書・2号),強制治療は医師の倫理に反すると
いう見解が有力であることに照らし(医師の倫理に関するマルタ宣言参
照),入国者収容所長等が医師の診療を規律することがあってはならな
い。)。
さらに,医師の外部診療の指示があった場合はこれを速やかに実施する
とともに,診療記録開示請求や収容からの解放時における診療情報提供書
の作成の請求に関する規定の整備が必要である 29。
他方,被収容者の身体的又は精神的健康が,収容の継続又は収容条件(独
居拘禁を含む。)によって悪化する場合には,医師が入国者収容所長等に報
告する義務を負うものとし(最低基準規則33項,46項参照),入国者収
容所長等が報告を考慮する義務を負う規定を設けるべきである(同35項
2参照)。
④ 不服申立制度及び入国者収容所等視察委員会制度等について
ア 不服申立制度について
法案は,審査の申請(55条の68から73まで),事実の申告(55
条の74から76まで),苦情の申出(55条の77から79まで)等の
不服申立制度を法律上整備している。
これらの不服申立ては,いずれも法務大臣又は出入国管理庁長官等に
対するものであるところ,拷問禁止委員会から日本政府に対する総括所
014年10月14日)参照。
29 当連合会「刑事施設医療の抜本的改革のための提言」(2013年8月22日)参照。25
見で指摘されているとおり,独立した審査機関による不服申立制度とす
べきである。
また,不服申立ての対象には医療に関する措置に対する不服も含める
べきであるほか 30,法案は代理人による不服申立てを認めていないこと
から 31,これを認めるようにすべきである(最低基準規則56項参照)。
さらに,入管収容施設においても死亡事案が度々発生しているところ,
その検証は全て入管収容施設に委ねられていることから,死亡事案の第
三者による検証システムが設けられるべきである(最低基準規則71項
参照)32。
イ 入国者収容所等視察委員会制度について
法案は,入国者収容所等視察委員会制度については,現行の入管法の
規定を維持しており(法案55条の10から14まで),何らの改正も行
っていない。
当連合会は,入国者収容所等視察委員会による視察機能を強化するた
め,「入国者収容所等視察委員会の改革に関する意見書」(2020年8
月20日)を公表しているところであり,この内容を踏まえ,独立性の
確保,視察対象事項・範囲の拡張,視察活動の充実化を制度化するべき
である。
⑤ 女性収容区画への男性職員の立入りの禁止等について
法案は,女性収容区画への男性職員の立入りを禁止する規定や性同一性
障害者の性自認を尊重した処遇を行うことを確認する規定を設けていな
いが,これらの規定を設けるべきである(最低基準規則11項参照)。
⑥ 弁護士による面会について
法案では,訴訟代理人等である弁護士も含めて,一定の場合には面会制
限が可能となっているが(法案55条の55ただし書),現行の被収容者処
遇規則33条では,領事官や訴訟代理人である弁護士については面会は制
限されないことになっているものであって,被収容者の弁護士等との交通
権保障のため,弁護士や領事官との面会は制限されるべきではない。
また,訴訟代理人等以外の弁護士は,面会に原則として立会い等の制限
が課されると取られかねない規定となっているが(55条の56第1項),
5条の78第2項,55条の79第2項参照。
32 前掲注*26「刑事施設医療の抜本的改革のための提言」参照。26
法律問題全般について,弁護士と立会い等の制限なく面会することができ
る権利が保障されるべきである。
⑦ 入所時の告知について
法案では,入所時の告知事項が限定されているが(55条の18),被収
容者の処遇に関する法律の内容を告知すべきであり,特に,入国者収容所
等視察委員会に対する書面提出(55条の12第4項),代理人選任権,監
査官の存在(55条の9)は必ず告知するものとすべきである(最低基準規
則54項参照)。
以