声明・提言等(2020年6月3日)全難連より抗議声明を出しました。

全難連 2020年6月3日付け「東京入管における女性被収容者への措置等への抗議声明」[PDF版]

東京入管における女性被収容者への措置等への抗議声明

出入国在留管理庁長官 殿

東京出入国在留管理局長 殿

2020年6月3日

全国難民弁護団連絡会議

趣旨

1 東京出入国在留管理局収容場の複数の女性被収容者に対して過剰な暴力が行使され、隔離措置が懲罰として使用された疑いに重大な懸念を表明する。

2 被収容者が、収容施設が取る感染予防策(感染予防策としての仮放免活用の方針を含む。)についての情報にアクセスできるよう保障することを求める。

3 新型コロナウィルスに対する恐怖を送還や被収容者の抑圧に利用しているととられかねない仮放免の運用が東京出入国在留管理局において取られていることに懸念を表明し、生命の安全を最優先事項として考慮して、国内に受け入れ先のある被収容者をすべて解放すること、解放後のヘルスケア・適切な住居・食料・水・衛生などのサービスへのアクセスに配慮し、在留特別許可制度の柔軟な運用を含む必要な措置をとることを求める。

理由

1 2020年4月25日、東京出入国在留管理局(以下「東京入管」という。)収容場内の複数の女性被収容者らに対し、隔離措置が行われ、さらに既に予定されていた仮放免許可処分が保留とされたとのことである。

  複数の弁護士による被収容者からの聞き取り調査によれば、同月20日頃に帰国同意者(前科のある者を含む。)のみ数十人が職権仮放免許可を受けたという認識を多くの被収容者が共有したことを背景にして、複数の女性被収容者が、仮放免に関する東京入管の方針の説明を求め、職員の回答を待って自己の房への帰室をしようとしなかったところ、男性職員を含む多数の職員による房へ押し込める行為、一部被収容者を床に倒して四肢、頭、胸を押さえ付ける制圧行為(以下「本件制圧行為」という。)、隔離措置(以下「本件隔離措置」という。)が行われたとのことである。

2 そもそも、現在の新型コロナウィルス禍の下で、被収容者が、閉鎖空間における感染拡大の高いリスクに直面していることから、大きな不安と恐怖を抱くことは当然であり、このような被収容者が、感染予防策についての情報にアクセスできることは認められるべきである(国連移住ネットワーク「COVID-19と入管収容:政府と他のステークホルダーは何ができるか?」1.5 入管収容のコンディション参照)。仮放免制度が感染予防策として活用されるときは、その方針についてもこれに含まれなければならない。

  これが認められないときは、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重した取扱をする義務の違反(市民的及び政治的権利に関する国際規約10条)、非人道的または品位を傷つける取扱(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約(以下「拷問等禁止条約」という。)16条)にあたると考えられる。

3 本件制圧行為は、新型コロナウィルス感染予防策としての仮放免の運用について説明を求め、何ら暴力を行わず他害の危険のない女性被収容者らに対し行われたものであり、さらに多数の男性職員によって直接に女性被収容者の身体に加えられたことなどから、過剰な暴力行使である疑いが濃い。上記隔離措置についても、隔離の必要がないのに懲罰として行われた濫用的措置であった疑いが濃い。また、女子被拘禁者の監督を女子職員だけがすることを求める被拘禁者処遇最低基準規則81項にも沿わない。重大な人権侵害であった可能性があり、被収容者処遇規則のみならず、拷問等禁止条約13条1項、14条、16条に沿って、迅速かつ公平な検討、救済を受けること及び公正かつ適正な賠償(リハビリテーションに必要な手段を含む。)が保障される必要がある。

4 また上記の事態を理由にして既に予定されていた仮放免許可を保留とすることの問題はもちろん、帰国同意者のみへの職権仮放免許可が実際行われたのであれば、いずれも新型コロナウィルス禍における生命の危険を最優先に考慮した措置でないことは明白であり、判断者の意図の如何に関わらず、新型コロナウィルスに対する恐怖を利用して、被収容者の意見表明を抑圧したり、帰国への同意を強要する措置になりかねない。命の危険を弄ぶ点で不遜であり、なにより、非人道的であり、精神的拷問である。

  生命の安全を最優先事項として考慮して、国内に受け入れ先のある被収容者をすべて解放することが必要である(当会他「緊急共同要請」(2020年4月20日)参照)。

 また、職権仮放免の場合と申請に対する仮放免とに関わらず、解放後のヘルスケア・適切な住居・食料・水・衛生などのサービスへのアクセスに配慮することが必要であり(前掲「COVID-19と入管収容:政府と他のステークホルダーは何ができるか?」1.2「解放」参照)、それは在留の正規化をも含むべきである(同1.4「正規化とサービスへのアクセス」参照)。

                                 以上

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