声明・提言等(2021年2月13日)名古屋チャーター便送還国賠弁護団より声明が発表されました。

弁護団声明[PDF・137KB]

日付:2021年2月13日

団体:名古屋チャーター便送還国賠弁護団

弁護団声明
1 名古屋高判令和3年1月13日は、難民申請者を強制送還して難民不認定処分取消訴訟の機会を奪った事案において、強制送還を国家賠償法上違法と判断した。
この事案は、いわゆるチャーター便による強制送還であった。すなわち、国は、難民申請者(異議申立者)が取消訴訟を提起する時間的猶予を奪うことを目的として、チャーター便を手配し、異議棄却の告知日を調整した。そして、事前に難民異議申立者の身柄を拘束したうえで、異議棄却を告知し、同時にチャーター便で強制送還する、という技巧的な手法によって、難民異議申立者が取消訴訟を提起する機会(難民該当性について司法審査を受ける機会)を奪った。
名古屋高裁は、難民異議申立者には、「難民該当性について、司法審査を受ける機会を実質的に奪われないこと」について、「法律上の利益」があると初めて判示し、国の一連の行為を違法と判断した。
この理由付けにおいて判旨は、行政事件訴訟法8条(自由選択主義)、同46条1項(行政庁の教示義務)、同14条3項(出訴義務)を列挙し、さらに、日本政府が国連へ提出している報告書等の対外的な表明との相違を挙げた。
さらに、判旨は、このような解釈は、「憲法の定める裁判を受ける権利や適正手続の保障、各種人権条約の規定(自由権規約2条3項、14条1項、難民条約16条)に適合する」、と明言した。
このように、判例によれば、入管法の規定にかかわらず、憲法や国際人権条約、行政事件訴訟法の趣旨から、「難民性についての司法審査を受ける利益」が保障されている。したがって、法務省出入国在留管理庁及び全国の地方入管は、これまで進めてきた難民申請者の司法審査を受ける機会を奪うチャーター便による違法な強制送還を全面的に見直さなければならない。それとともに、入管行政全般について、憲法や国際人権条約に適合するように運用を改善する必要がある。
2 また、今般の入管法改正案によれば、3回目の難民申請からは送還停止効が適用されず、強制送還が可能になる、という。
しかしながら、上記判例によると、入管法の規定にかかわらず、難民申請者には、「難民性について司法審査を受ける利益」が認められているのであるから、その「司法審査を受ける利益」の侵害は、国家賠償法上違法となり得る。複数回の難民申請であっても、処分行政庁から独立した裁判所による司法審査と同一視できず、難民性がないと決めつけることはできない。
そもそも、我が国の難民認定が不十分であること(司法救済によって難民認定される例があることや、難民認定率の異常な低さ、参与員制度の不十分さ)や後発難民の存在からすれば、改正法によると、「難民」が送還される危険性が高い。これは、迫害や拷問等を受けるおそれのある地域に送還してはならないという国際法の「ノン・ルフールマン原則」に反する。
このように、司法審査を経ていない難民申請者を強制送還することは、違法となりうるのであり、送還停止効に例外を設ける入管法改正案は、人権条約や難民条約と適合せず、極めて不当である。
名古屋チャーター便送還国賠弁護団

名古屋高判令和3年1月13日[名古屋高等裁判所 民事第7部 令和元(ネ)664 裁判を受ける権利 国賠○(一部勝訴)] – 難民法律支援資料 (会員ページ)

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