難民専門部会(第18回・2014年11月26日)

難民認定制度に関する専門部会開催状況(リンク切れ)

○第18回会合 平成26年11月26日(水)
「難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)(案)」について議論を行った。

第18回 難民認定制度に関する専門部会 議事概要

1 日時
平成26年11月26日(水)午前10時から正午まで

2 場所
法務省20階最高検察庁会議室

3 出席者(敬称略)
(1)難民認定制度に関する専門部会
山本部会長代行,石川委員,滝澤委員,田中委員,野口委員,柳瀬委員,渡邉委員
(2)法務省
井上入国管理局長,杵渕官房審議官,菊池総務課長,丸山審判課長,小新井参事官,
君塚難民認定室長 他
(3)オブザーバー
外務省
UNHCR駐日事務所

4 議事概要
「難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)(案)」について議論を行った。
委員から出された主な意見や質問は以下のとおりであった。

○ 再度の提案になるが,一次審査における代理人の立会いについては,全件でなくとも,申請者が求める場合には認めるという方向で制度設計が必要であり,提言のレベルで何らかの表現ができないか。

○ この論点に関しては,前回かなり議論をしたところで,委員の御意見に対しては,かなり強い反対意見があったと認識をしているため,委員のご主張は,提言ではなく,両論併記として記載されることが適当ではないか。

○ 難民認定申請者に対する就労許可の論点については,正規・非正規を問わない問題として議論されるべきであり,濫用申請に対する抑制の文脈で位置付けられるべきではない。また,濫用の問題が,正規滞在者への就労許可が認められているということだけで起きているとも思わない。提言の中で論ずるとすれば,正規・非正規について一定の条件のもとで就労を認めていくとともに,濫用問題については慎重に検討するという方向性であれば了解できる。

○ 諸外国でも,一定の期間が過ぎたら無条件に就労を認めるというところはないのだろう。まずは,現状に対してどのように対応するかということを考えないといけない。現実に正規在留者からの就労目的の濫用的申請の問題が生じていることへの対応をまず検討し,具体的に対策を取った上でないと,一足飛びに非正規の就労についてまで検討することについては,さらに不法滞在者による濫用が生じる可能性が高くなり,国民の理解が得られないのではないか。

○ ここはシンプルに,「就労機会を与えるための許可のあり方に関して,今後もさらに検討を進めるべきである。」といった簡潔な表現にとどめてはいかがか。

○ 自分もその意見に賛成で,ここはシンプルに書いたほうがいいだろう。この部分は非常にセンシティブと思っており,なるべくシンプルに,一定の抑制もしつつ,一定の要件,条件等で許可の付与を検討するという形がよいのではないか。

○ 認定判断の明確化の論点について,「我が国でのこれまでの実務上の先例や裁判例を踏まえ」といった記述は不要ではないか。これらを踏まえた結果が認定数6人という現状であり,UNHCR等の諸文書や国際的な実務先例や学術研究の成果が参照されるべきである。

○ 実務先例あるいは裁判例と異なる判断をするとなると,その理由が適切に説明できなくてはならないが,他方,国際機関や学術研究の成果は,その場に応じて適切に参照するということが自由にできる。実務先例や裁判例について,「踏まえ」と記述したからといってそのまま取り入れるということにはならない。場合によっては,現在の考え方に合わないということで十分に検討した上で見直すことはあり得るため,その点からしても踏まえることは当然。削除してしまうと,逆に,国内の実務先例等は参照しなくてよいのかという誤解につながる。

○ これまでの日本の難民保護の基準が狭過ぎるという指摘があるが,それは,日本がこれまで国際的に協調していないということに原因があり,その一因として日本における国際文書の取扱い・位置付けがある。主権の問題から,実務先例や裁判例と完全に同列に扱うことは難しいものの,表現としては「参照」ではなく「踏まえ」とするべきではないか。

○ 実務上の先例や裁判例を踏まえるというのは常に求められることだし,これは必ず書かなければならない。むしろ,それ以外の国際文書などを「参照」するという点について,法律学の視点で原案を読むと,日本の実務に向けての提言としては,むしろかなり踏み込んで記載したという印象。

○ 収集・分析された出身国情報については,難民調査官や難民審査参与員等の実務に当たる者だけでなく,申請人や代理人弁護士にも提供されるべき。認定機関側だけが情報を保有しているという状況は,適正性・透明性のある判断に資さない。

○ 情報を可能な限り公開し,国民の理解を得ていくことは適当であると考えるものの,全てを公開し,申請人や代理人弁護士にアクセスさせるということは困難だろうと思う。随時公開していくという姿勢・取組は必要であるが,全ての情報にアクセス可能にするということと,情報を可能な限り公開するということは別の話であると思う。

○ 提言部分は,より適正な認定判断の実現のためにはどのようなことが必要かということで,情報を「実務に当たる者」に適切に提供できる仕組みを構築すべきであるという趣旨であり,ここに申請人等の当事者を入れるとなると,全体の文脈が変わってしまうためやや無理があると感じている。

○ 難民認定手続は行政事務手続であり裁判手続ではない。難民調査官や参与員が情報を活用するという方向性はよいが,それを申請人や代理人へもということになると,参与員制度も含めて様々な負担が行政側にかかり,審査期間も長期化する。むしろ,現在も,出身国情報についてかなりのものを集められる状況にありながら,代理人弁護士は全然それを利用しようともしていない,集めようともしないという実情があり,実態にも即していないのではないか。

○ 出身国情報等を充実させていくのは当然だが,完全なものとすることは難しく,それを完全にオープンにするとなると,オープンにできないものは収集・蓄積しないこととなることが懸念され,その意味では情報の収集・分析という点では不十分なものになってしまうおそれがある。この点については慎重に対応しないといけない。

○ UNHCRから提供される出身国情報は貴重であるため,UNHCRの関与という点でUNHCRにお願いしたいことは,充実した出身国情報を提供いただき,参考にさせていただくことだと思う。

○ 情報の収集・分析に当たっては,関係府省,UNHCRを初めとする国際機関及び国内外の民間機関との連携を強化すべきであるという点には同意する。さらに,近隣関係諸国という趣旨の表現を入れたらどうか。具体的に念頭に置いているのは韓国であり,同国はこの五,六年の間に難民政策を積極的に推進している。地域協力のようなものができればよい。

○ 出されている意見の中に,UNHCRに今後の難民認定制度の在り方を議論する場に参加する権限を認めるべきとの意見,あるいは参与員人事に関与させるべきとの意見や,個々の難民認定手続に事前又は事後に関与させるべきといった方向の意見があるが,これらは重大な憲法問題を惹起するものである。参与員人事の件に関していえば,憲法15条1項で公務員の選定罷免権との関係で問題となるし,公権力の行使である行政処分の手続に国際機関が関与するということは,当然に国民主権ないしは民主制原理との関係で大議論になるところ。もちろん,協力関係の中でUNHCRの見解も聴取することは必要だが,国家の主権的な権限行使に加わることを認めることは非常に問題であり,その「一線」は守られるべき。

○ 自分が提案したUNHCRが個別ケースに関与するべきとの意見は,つまり,UNHCRが個別ケースのレビューをすることを通じて認定実務の質を高めていけるのではないかという趣旨。認定判断が終わったケースでもよい。研修と個別ケースの決定との中間ぐらいのレベル感をイメージしているが,それによりUNHCRの見解というものを具体的に知るよい機会となる。その意味において,提言や参考意見としてレビューについて入れていただきたい。

○ レビューといった場合には,例えば刑事裁判でいえば控訴審が事後審として「審査する」という意味合いで理解されることが一般的で,手続の中での正式な関与というイメージがどうしても出てくる。判断が最終的に決着した後,それについて様々な角度から複眼的に批評し,次なる判断のための参考にするということで理解されるべきものであると思う。報告書の文脈の中で誤解を生じない表現として位置付けられることが望ましい。

○ UNHCRとの関係については,論理や法令面でこうあるべきだということを書いてもなかなかうまくいかない。双方が良好な人間関係を築き,意見交換を重ねることで多くの部分は解決するという面があるのではないか。

○ 「真の難民は日本を選ぶインセンティブが弱く,申請者の大半は難民ではないという現在の状況につながっている。」とのご意見はどのような趣旨か。世界の難民は7割,8割が女性と子供で占められているが,日本の申請者は9割が20代~40代の働き盛りの男性である。その中で認定実務に当たる参与員等が,真の難民を何とか見つけ出そうという苦労を重ねているが全然いないという状況がある。

○ 現状,申請者の大半は難民ではなく,言いかえれば,稼働目的又は制度を誤解した者であろうということ。その原因は,制度の問題もあるが,そもそも真の難民が日本に来るインセンティブが弱く,それは,難民への社会的な支援の不十分さにあると考えている。そういう趣旨で個別意見として記載されるべき。

○ 自分はこれまで申請者の実態について,一貫して説明をしてきた。多くの参与員もその対策について専門部会にかなり期待をしている。一次審査の代理人の論点や,UNHCRの関与の議論だけでなく,むしろ,本質部分である複数回申請に関する明確な対応,在留配慮に関する参与員の対応,難民該当性のある申請者が全くいないという実態への対応などについて解決策を示すべきではないか。異議審査においても,「こんな無駄なことをしているのがばかばかしい。」と辞める参与員すらいる状況。

○ 参与員関係については多少言及が弱いところが気になっていたが,例えば,継続的検討課題として,現在の3人体制での処理を事案により一人で判断するという体制をつくる,あるいは審尋を原処分に関与していない難民調査官に委ねるという形で改善ができるのではないかという意見が出ている。難民該当性以外の事由を参与員意見の中で書くべきなのかということについて議論はあったが結論は出ていないと認識。ただ,制度の趣旨から考えると,通常は,難民該当性の有無を判断していただくのだろう。

○ ここで議論されていることがどこまで実現できるのかということについて懸念があり,自分としては,制度を具体化する際には,専門部会が継続的に関与することが望ましく,さらには制度設計を具体化するに当たってはUNHCRの意見を聞いたほうがよいと思っている。そのようなことを書き込むべきではないか。

○ 部会の議論を法務省のほうで十分に尊重して具体的に詰めていくべきということは申し上げたいが,この専門部会は,出入国管理政策懇談会によって設置をされ,与えられた検討事項の範囲内で動いているため,この先どのような議論・検討の体制をとるかについての制約をこの報告書に盛り込むことは,専門部会の役割として適当ではないと考えている。

以 上

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