国会質疑等(2020年5月29日)打越さく良議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[長期収容]

201回国会質問第117号 議院議員打越さく良議員「新型コロナウイルスが出入国管理行政及び「収容・送還に関する専門部会」に与える影響に関する質問主意書」(2020519日)(外部リンク:参議院ウェブ

[201参-117] 200519質-打越さく良_200529答-安倍晋三首相 [収容・送還](合体版)[PDF]

答弁書第117号 参議院議員打越さく良君提出新型コロナウイルスが出入国管理行政及び「収容・送還に関する専門部会」に与える影響に関する質問に対する答弁書(2020529日)

新型コロナウイルスが出入国管理行政及び「収容・送還に関する専門部会」に与える影響に関する質問主意書

「第七次出入国管理政策懇談会における「収容・送還に関する専門部会」の開催について」(令和元年10月。出入国在留管理庁。)において、「収容・送還に関する専門部会」設置の趣旨について、次のように書かれている。

「かねてより退去強制令書の発付を受けたにもかかわらず、様々な理由により、送還を忌避する者が相当数存在しており、実務上、迅速な送還の実現に対する大きな障害となっている。(中略)送還忌避者の増加は、我が国にとって好ましからざる外国人を強制的に国外に退去させるという退去強制制度の趣旨を没却するばかりか、退去強制を受ける者の収容の長期化の主要な要因ともなっている。そして、送還忌避者の増加や収容の長期化が適正な出入国管理行政を害するものであることは明らかであることから、これらを防止する方策やその聞の収容の在り方を検討することは、出入国管理行政にとって喫緊の課題である。」

しかし、新型コロナウイルス禍を迎えたことにより、我が国の出入国管理行政を取り巻く情勢は、大きく変わっている。そこで、前述の専門部会設置の趣旨に鑑み、以下、質問する。

一 現在、多くの国際航空便が停止されていることから、退去強制令書の発付を受けた者の意思にかかわらず、退去強制令書に基づく送還執行は、困難となっている。現時点で退去強制令書に基づく送還執行は不可能として停止すべきと考えるが政府の見解は如何か。

二 新型コロナウイルス禍が収束し、各国に対する送還執行が可能となる時期について、政府の予測はあるか。あれば明らかにされたい。

一及び二について

退去強制令書の発付を受けた者は、原則として、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)第52条第3項の規定により送還され、又は同条第4項の規定により自ら本邦を退去しなければならず、現時点においても、航空便の運行状況その他の事情を踏まえつつ、可能な限りこのような送還又は退去を促進しており、今後もこのような方針に基づいて対応してまいりたい。

三 出入国在留管理庁の収容施設は、職員、被収容者を問わず、ひとたび新型コロナウイルス感染者が発生すると、集団感染の防止が困難な環境であることから、必要性の低い収容をすべきでなく、被収容者数を最低限に抑制するべき状況にあると考えるが、政府の見解は如何か。

三について

お尋ねの「必要性の低い収容」の意味するところが必ずしも明らかではないが、出入国在留管理庁の収容施設における収容は入管法第39条第1項又は第52条第5項に規定する場合に行っており、また、収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状等を総合的に考慮した上で相当と認める場合には入管法第54条の規定によりその者を仮放免することができるところ、同庁においては、新型コロナウイルス感染症に関する現下の状況を踏まえた特別の対応として、特に仮放免を行うことが適当でないと認められる場合を除き、仮放免を積極的に活用しているところである。

四 入管収容施設被収容者の合計人数及び収容施設別人数について、令和元年10月末日時点と、令和2年4月末日時点の数値を明らかにされたい。

四について

令和元年10月末日時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数は合計1,241人(速報値) であり、その主な施設別の内訳(いずれも速報値) は、入国者収容所東日本入国管理センター265人、入国者収容所大村入国管理センター83人、東京出入国在留管理局453人、東京出入国在留管理局横浜支局139人、名古屋出入国在留管理局207人、大阪出入国在留管理局85人などとなっている。

また、令和2年4月末日時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数は合計914人(速報値) であり、その主な施設別の内訳(いずれも速報値) は、入国者収容所東日本入国管理センター224人、入国者収容所大村入国管理センター86人、東京出入国在留管理局280人、東京出入国在留管理局横浜支局85人、名古屋出入国在留管理局168人、大阪出入国在留管理局62人などとなっている。

五 収容施設別の、令和2年3月及び4月の新規収容者数(移収を受け入れた者を含む人数と含まない人数といずれでもよいが、いずれかに統一した上、いずれであるかを明示されたい。)をそれぞれ明らかにされたい。

五について

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

六 「入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」(令和2年5月1日。出入国在留管理庁。以下「対策マニュアル」という。) は、収容施設内における密集等の回避及び、感染発生時の収容余力の確保のための方策の一つとして、特に仮放免をすることが適当でないと認められる場合(既に感染が確認されている場合及び感染が疑われる場合を含む。) でない限り、仮放免を積極的に活用することとしている。

1 収容施設別(統計がない場合は総計) の、令和2年3月及び4月の新規被退令仮放免者数(即日仮放免を除く。即日仮放免数を除いた許可数の統計がない場合は、除かない人数を示されたい。)をそれぞれ明らかにされたい。また、そのうち、職権仮放免の数と、更に職権仮放免を受けた者のうち過去に有罪判決を受けたことがある者の数も明らかにされたい。

六の1について

令和2年4月に収容令書又は退去強制令書による収容中に仮放免された者(収容された当日に仮放免された者を含む。) の数は、合計563人(速報値) であり、その主な施設別の内訳(いずれも速報値)は、入国者収容所東日本入国管理センター61人、入国者収容所大村入国管理センター8人、東京出入国在留管理局293人、東京出入国在留管理局横浜支局78人、名古屋出入国在留管理局82人、大阪出入国在留管理局36人などとなっている。

その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

2 「収容・送還に関する専門部会」の議論は、対策マニュアルを踏まえていないと考えるがどうか。

六の2について

御指摘の「収容・送還に関する専門部会」(以下「専門部会」という。) においては、御指摘の「対策マニュアル」を資料として委員全員に送付し、出入国在留管理庁担当者からその概要等の説明を行った上で、議論を行っているところである。

七 「収容・送還に関する専門部会」第1回会合の資料とされた「送還忌避者の実態について」(令和元年10月1日付) の2ページに「我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消歴を有する者を仮放免することは、我が国の安全・安心を確保する観点から認めるべきでなく」との記載があったところ、「送還忌避者の実態について」(令和2年3月27日付) では削除され、さらに、令和2年4月、5月に、我が国で刑事罰を科された者や仮放免取消歴を有する者が複数、仮放免許可されている。現時点で政府は「我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消歴を有する者を仮放免することは、我が国の安全・安心を確保する観点から認めるべきでな」いとの見解を取っているか、明らかにされたい。

七について

仮放免を許可するか否かについては、従前から、御指摘の「我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消歴を有する者」であるか否かを含め、収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状等を総合的に考慮した上で判断しており、このような判断の在り方は現在においても変わりはない。

八 国際的な人の移動の減少に伴って、難民認定申請数は減少していると推測される。昨年と今年の、3月及び4月の難民認定申請数をそれぞれ明らかにされたい。全国総計未集計の場合は、各地方局で把握されている受理数だけでも明らかにされたい。

八について

平成31年3月1日から同年4月30日までの2箇月間に難民認定申請(入管法第61条の2第1項に規定する難民の認定の申請をいう。以下同じ。)をした者の数は、1,864人である。

また、令和2年3月1日から同年4月30日までの2箇月間に難民認定申請をした者の数は、現時点において確認できる範囲で、取り急ぎ集計したところ、968人である。

九 出入国在留管理庁が「収容・送還に関する専門部会」の議論に供した統計や資料は令和元年12月末日以前の状況に関するものであって現状に臨酷するのではないか。

九について

お尋ねの「現状に組離する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、出入国在留管理庁においては、専門部会の議論の状況を踏まえ、可能な限り、最新の統計その他の関係資料の提供を行ってきているところである。

十 そもそも前述の「収容・送還に関する専門部会」の設置の趣旨が前提としていた環境は、現在では既に存在しないと考えるが、政府の見解は如何か。

十について

お尋ねの「「収容・送還に関する専門部会」の設置の趣旨が前提としていた環境は、現在では既に存在しない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、専門部会は、送還忌避者の増加や収容の長期化を防止するための方策を検討する目的で設置されたものであるところ、このような検討を行う必要性は現在においても変わりはないと考えている。

右質問する。

[了]

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