法務大臣閣議後記者会見の概要「名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について」「日本に退避したアフガニスタン人への在留支援に関する質疑について」(2021年9月14日)(外部リンク:法務省ウェブ)
名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について 【記者】
先週の金曜日,スリランカ人女性の遺族の立会いに弁護人が認められないということで,遺族の視聴拒否ということになりました。
その場に入管庁の佐々木長官が来まして,弁護士に対して,残りのビデオを見て,シンハラ語に訳された調査報告書が出たら,故郷に帰り母親に報告した方がいいのではと何度か説得に当たったそうです。遺族は,事実の全てを見られる2週間の動画を視聴することを強く求めていまして,このビデオが見られない限りは,帰ることは絶対できないと言っています。
佐々木長官の話が法務省の見解だとすると,もうこれ以上ビデオを出すことはなく,後は民事の裁判が始まるまで,いたいなら日本にいなさいと,こういうメッセージなのでしょうか。御見解をお願いします。
【大臣】
出入国在留管理庁では,御遺族の方にビデオ映像を御覧いただく2回目の機会ということで,9月10日,御遺族に用意した全てのビデオ映像を御覧いただけるよう,できる限りの準備をしていたと承知しています。
佐々木長官の発言について言及がありましたが,佐々木長官は,代理人弁護士から立会いを求められたことに対し,代理人の閲覧には応じられないことについて説明したものと聞いています。
御遺族や代理人弁護士と出入国在留管理庁との間のやり取りについては,出入国在留管理庁にお問い合わせいただきたいと思います。
【記者】
引き続き9月10日のビデオの開示のことで伺いたいのですけれども,このとき,今大臣がおっしゃったように代理人弁護士の立会いが認められなかったわけですが,その場にいた入管庁の部付検事から,直接遺族に対して,これは弁護士を通り越してということだったようなのですけれども,「行政機関として非開示情報だが,人道上の特別の配慮として開示します。しかし,第三者が見ることは考えていない。」とか,「行政機関が開示できる情報は法律で決められていて,それ以外の情報は開示できない。」とか,あたかも代理人弁護士を否定し,情報公開制度をねじ曲げるような説明が遺族に対してあったようです。
それを弁護士も阻止しようとしたわけですけれども,基本的人権を守るために代理人弁護士が立ち会ったり,特に情報公開でも,人権・生命を守るための行政情報というのは,行政機関の裁量で任意に開示することができると思うのですが,弁護士法でも情報公開法でも認められた権利を否定するような入管庁の部付検事の発言に対して,大臣はどのように考えていらっしゃるのかということが1点。
それからもう1点。大臣の任期があと2か月足らずで終わるということになると思うのですけれども,この2か月の間に,遺族に対して何ができるのか,先ほどの佐々木長官の発言があったように,これで幕引きだというふうに考えていらっしゃるのか,大臣の御見解をお願いします。
【大臣】
ビデオ映像を御遺族に御覧いただくことについてですが,これまでにも御説明しているとおり,収容施設内や被収容者等の具体的状況の記録であるため,情報公開請求に対しても,基本的に不開示情報として取り扱っています。
調査報告書が公表された現在においてもなお,保安上の問題に加え,亡くなられた方の名誉・尊厳の観点からの問題もあるため,代理人弁護士の方を含めて,ビデオ映像を公開することは,適当ではないと考えています。
御遺族に対しては,私もこの場でも何度も御質問にお答えしてきましたが,お姉様がお亡くなりになったお部屋も御覧になったり,情報にも触れていただいてきたわけですが,やはり映像を御覧になりたいだろうと考え,人道上の対応として,保安上の支障をマスキング等により軽減させる処置をした上で,通訳を介した説明を行いながら,時間をかけて御覧いただいてきたところです。
日常の様子や調査報告書で不十分・不適切な対応等があったと指摘されている場面,亡くなられた方の体調に外観上顕著な変化が生じた状況を含め御遺族に御覧いただくべきと国会で御指摘のあった3月4日以降の様子などを幅広に御覧いただくこととしていたところです。
これらにより,亡くなられた方の御様子や状況の推移を,時を追って御確認いただけるものと考えていたところです。
1回目の閲覧の際には非常に大きな心理的負担があったとのことでしたので,心理的負担に配慮して対応するため,事前に臨床心理士の助言を受けたのに加えて,別室に臨床心理士及び看護師に待機してもらい,機動的かつ的確に対応できるよう,体制を整えて臨むこととしていました。
今回の調査は,外部有識者からしっかりと御意見をいただくため,全てのビデオ映像を御覧いただいた上で,その他の客観的な資料等に基づき,客観的・公正な立場から御意見・御指摘をいただきながら,問題点を広く抽出して検討を行ったものです。
ビデオの閲覧については,御遺族の心理的負担にしっかりと配慮しながら,適切に対応してまいりたいと思っております。
【記者】
引き続きスリランカ人女性のビデオの件ですけれども,代理人の立会いを認めなかったということですが,今もお話がありましたけれども,遺族への開示というもの自体が人道的な配慮だということで,裁量でやっているわけですよね。その意味では,遺族が望んでいる代理人の同席,この代理人が同席しないと見ることができないと言っているわけですから,その思いに対しても,裁量の範囲で応えることができるのではないかと思います。
それをしないのは,結局,今もお話がありましたけれども,遺族へ思いを寄せているということも全然なく,あるいはスリランカ人女性の死に対しての責任もさほど感じていないから,そこの配慮,裁量を広げて見せるということ,代理人の立会いを認めるということをしないということなのではないかと感じられます。いかがでしょうか。
大臣の中では,最終報告書を第三者の専門家には見せることはできて,遺族の代理人弁護士には見せられないという線引きがあるようですけれども,代理人弁護士に見せることで,どうして保安上の問題や尊厳の問題というのが生じるのかということの理由を併せてお聞かせください。
【大臣】
繰り返しになりますが,先ほどもお答えしたとおり,御遺族にビデオを御覧いただくことについては,保安上の問題に加え,亡くなられた方の名誉・尊厳の観点からの問題が残る中で,異国の地で御家族を亡くされた御遺族の気持ちに応えるという人道上の配慮から行うものです。
前回御覧いただいた際に心理的負担について御指摘がありましたので,それも含めてしっかりと対応して臨むようにと指示し,10日を迎えたところです。
今申し上げたことから,先ほどもお答えしましたが,ビデオについては,御遺族の方に御覧いただきたいと思っております。
心理的な負担についての御指摘がありましたので,その部分については十分対応するということで,今回,準備をしてきたところです。
日本に退避したアフガニスタン人への在留支援に関する質疑について
【記者】
アフガニスタン人のJICA(国際協力機構)職員とその家族の計10人が13日までに日本に到着しました。加藤勝信官房長官は同日の記者会見で,「日本に在留を希望する場合には,在留支援の在り方を検討する。」と述べています。
出入国在留管理庁として就労の許可を含め,在留支援にどのように取り組んでいくのかをお伺いします。
【大臣】
アフガニスタンの情勢が厳しい中にあって,今回,退避されてきた方々が本邦に安全に到着したところです。
今後については,まずは御本人の御意向を十分に確認していくことが重要と考えています。
御本人が本邦での在留や就労を希望される場合には,法務省,出入国在留管理庁においては,その希望を踏まえ,在留資格について適切に対応していくとともに,関係機関としっかりと連携し,きめ細やかな在留支援を行ってまいりたいと考えています。