声明・提言等(2024年4月22日)全難連より「パブリックコメント(入管法等改正に伴う関係政令の整備に関する政令案等について)」を提出しました

パブリックコメント(入管法等改正に伴う関係政令の整備に関する政令案等について)[PDF・278KB]

日付:2024年4月21日

団体:全国難民弁護団連絡会議

<意見全文> 

パブリックコメント(入管法等改正に伴う関係政令の整備に関する政令案等について)

全国難民弁護団連絡会議は、「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令/出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律の施行に伴う法務省関係省令の整備等に関する省令等」に対し、以下のとおり意見を述べます。

1 監理措置について

(1)監理措置について、弁護士や支援者がその守秘義務や信頼関係の問題から監理措置について懸念をし、また、監理人になれないと表明してきているのは周知のとおりです。改正法施行後、難民保護の分野で最も懸念されるのは、空港で庇護を求めたものの、一時庇護も仮滞在も認められない難民申請者です。彼らは、日本に知り合いもいないので、これまで仮放免をされる場合、そのほとんどの場合において保証人になってきたのは、監理人にはなれないと表明又は強い懸念を示している、弁護士や支援者です。他方、改正法によれば、仮放免は限定的にしか用いられないにもかかわらず、監理人が見つからなければ監理措置に付すことはできないため、収容の可能性が逆に高まります。このように、改正法は、特にもっとも脆弱な空港で庇護を求め、日本に身寄りもいない難民申請者にとって、現状より身体拘束の点で悪化をすることが強く懸念されています。しかるに、本政令省令案によっても、その手当は全くなされていませんので、この点の対応を求めます。

(2)難民条約は、「 締約国は、1の規定に該当する難民の移動に対し、必要な制限以外の制限を課してはならず、また、この制限は、当該難民の当該締約国における滞在が合法的なものとなるまでの間または当該難民が他の国への入国許可を得るまでの間に限って課することができる。」としています(難民条約31条)。しかるに、法文上、監理措置は、既に逃亡のおそれの程度を考慮して収容しないことが相当である場合に付されるものであるにもかかわらず(改正法44条の2等)、規則案によっては、「行動の範囲は、主任審査官が特別の事由があると認めて別に定めた場合を除き、指定された住居の属する都道府県の区域内とする」としています。これは、必要な制限以外の制限にほかなりませんので、削除し、制限の必要性が認められる場合に制限をするように改めてください(特別放免(法43条1項、)、仮放免(法49条2項等)も一律に都道府県内に移動制限をかけるものであることからすると同様の問題があります)。

2 旅券発給申請等の命令について

 旅券発給申請等の命令の対象となる「送還するために必要な行為」として、規則48条の2は、旅券発給申請の必要書類の作成や取得のほか、これらの必要書類や個人識別情報を大使館等に提供すること、大使館等から出頭又は面接を求められたときはこれに応じること等を定めています。しかし、旅券発給申請等の命令については、法文上、送還停止効が認められる難民申請者は除外されておらず、その結果、難民申請者がこれらの行為の命令に応じない場合にも刑事罰に処せられることになります。

このことは、本国政府の迫害から逃れて日本に保護を求めている難民申請者に対し、刑事罰をもって迫害主体である本国政府の機関に必要書類の提供や出頭等を命令するものであり、難民が保護を求める権利をないがしろにするばかりか、難民申請者の迫害の危険を高めることになりかねないものです。ところが、本政令省令案においても、このような難民申請者の状況をふまえた対応は全くなされていませんので、この点の措置を行うよう求めるものです。

3 送還停止効について

送還停止効の解除対象者のうち、「第61条の2第1項または第2項の申請に際し、難民の認定又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者を除く」とされていますが、法文上、相当の理由の判断がいつどのようにされるのか、申請者はどのようにその判断を知ることができるのか、判断がされるまでは送還停止効は継続するのかなど全く不明なままであったところ、規則でも全く明らかになっていません。ノンルフールマン原則という国際慣習法であり、難民条約にも明示的に記載される国際法上の義務に関わり、実際にも、難民申請者の生命身体の自由という重要な法益にかかわる問題であることからすれば、すべてを運用に委ねるべきではなく、少なくとも規則で明確にすべきです。

また、送還停止効が解除されて難民申請中に送還が実施される場合について、参議院法務委員会での附帯決議や大臣答弁によれば、ノンルフールマン原則に反しないようにすべく、入管法53条3項に違反する送還を行うことがないよう、送還先国の情勢に関する情報、専門的知識等を十分に踏まえることとされている。しかし、どのような手続でこうした判断がされるかについては、法文上も全く明らかでないところ、規則でも全く不明なままであるから、同様に運用に委ねることは相当でないものであって、少なくとも規則で明確に手続を保障する必要があるものです。

4 本国情勢による人道配慮の扱いについて

本改正法により、難民不認定処分がなされる場合に行われてきた人道配慮にかかる判断が、条文上は難民認定手続においてはなされないこととなります。しかしながら、人道配慮のうち、本国情勢に鑑みて出されるものは、迫害が難民条約上の5つの理由以外によってなされたからという理由でなされることはほとんどありません。狭隘であると批判されてきた、日本政府が解釈するところの迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖があると認められないとされる場合に、いわば難民と認定する代わりに用いられてきたものです。したがって、5つの理由を不要とするほかは難民条約上の難民とその定義を同じくする補完的保護がその代替となることはありません。また、今後難民申請者についても人道配慮に関しては退去強制手続を担う部門が行うこととなれば、婚姻や家族形成など日本における事情を元に人道配慮を得る場合と異なり、同部門においてはその判断の専門性がまったくなく、適切な判断がなされないことも懸念されます。加えて、現在の難民申請者の多くは難民申請者であることに基づき特定活動の在留資格を有しているところ、改正法及び本政令及び省令案によっては、これらの者が難民不認定処分を受けた場合に直ちに人道配慮による在留の判断が受けられるのか、それともいったん退去強制手続に載せられた結果でなければ人道配慮が受けられないのか(後者であれば、改正法により、多くの庇護を求める者の状況が悪化することになります)、不明というほかありません。早急に明確にすべきです。

5 難民認定申請書・補完的保護対象者認定申請書について

別記様式の申請書では、改善されたところも見受けられますが、難民認定や補完的保護対象者認定が正しくなされることに資するよう、以下のとおり、更なる修正を求めます。

(1)現状では、在留資格のあるうちに申請を行えば合法在留が継続するのに対し、一旦在留資格がなくなれば、難民認定か補完的保護対象者認定又は人道配慮による在留許可が出されるまではその在留が合法化される道がないことから、早期の申請を迫られ、準備を十分に行う時間がありません。また、申請については、法律扶助の仕組みはなく、上記の時間的制限もあり、ほとんどが代理人なしで準備を行わざるを得ません。仮に代理人がついた場合も、上記のとおり通訳をつけて同人の事情を十分に聴きとって準備する時間がないことがほとんどであるのに加え、読み書きができない場合を除いて、記入は本人が本人の読み書きできる言語で直筆したものでなければ受け付けられません。

以上の現状は、いずれも早急に改められることが必要です。とりわけ、読み書きができない場合を除いて、本人の直筆以外の記入や印字による記入認められていない点については、何らの法的根拠もなく、実際に以前は日本語での記入も認められていたもので、現在の運用は適切ではありません。他の入管手続と同様、署名を自筆ですることで足りるとすべきであり、また、代理人弁護士による記入、提出についても当然受理するべきです。これらは単なる運用の問題ですので、直ちに改めてください。

それが改められるまでの間にも、上記に鑑み、申請書については以下の修正が必要です。

  •  申告書や申請書自体は簡易なものとし、詳しい内容を後日提出させる運用とすること
  •  2ページ目の冒頭の注意事項のうち「□ この申請書には、あなたが主張したい事情を全て書いてください。」及び3の「上記1のおそれがあると考える根拠となる全ての事実を書いてください。」は削除すること。上記の事情から「全て」の記載を求めることは現実的ではありません。

(2)難民該当性判断の手引きで、迫害につき、「殺害や不当な拘禁などがその典型であるが、その他の人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力等についても、「迫害」を構成し得る。 それ自体としては「迫害」に当たるとまではいえない措置や不利益等であっても、それらの事情が合わさった結果として、「迫害」を構成する場合がある。 法の定める手続に従って行われる訴追や処罰は、通常、「迫害」に当たらないが、恣意的・差別的な訴追や処罰又は不当に重い処罰は「迫害」に当たり得る。」としています。他方、申請書中、迫害についての具体的な問いは、逮捕、起訴、有罪判決に関するものに限られ、上記の迫害事由を広く把握しようとするものとなっておらず、適切ではありません。「生活手段の剥奪や精神に対する暴力等重大な人権侵害や、差別を受けたことがありますか」など、迫害事由を広く把握するための質問も設けるべきです。

(3)4「家族の身に何か起こったことはありますか」というのは何を聞かれているのか、申請者はよくわからず、また、適切に訳すことも容易ではないように思われます。例示をする、表現を変えるなどの工夫をしてください。

(4)5「今回の難民・補完的保護対象者認定申請に関連するものとして」何らかの組織に属したりしていたかという質問もわかりにくいので、表現を変えるなどの工夫をしてください。

(5)6にも5と同様の表現が出てきますが、同様に表現を変えるなどの工夫をしてください。また、「政治的意見を表明したり」の「政治的」は、迫害を受けるおそれの理由が政治的意見意外である場合に適さないので、削除が相当であると考えます。

6 難民認定申請書・補完的保護対象者認定申請書(再申請用)について

(1)全体として、再申請に個別の「新たな迫害事情」が必要であるかのような構成・質問内容になっており、これは迫害が現実に起きたこと(迫害経験)を意味していると思われます。しかし、迫害が現に起きたことは、難民の要件ではなく、不適切です。現実の迫害経験以外にも、再申請の理由はありえます。なぜ再申請を行うかについて、自由に記述する欄を設けるべきであると考えます。

(2)「新たな迫害事情」に関し、申請者が何を新たな迫害事情と考えているかを先に記述する欄を設けるべきであると考えます。用語も「迫害事情」ではなく、「迫害を受けると思う理由」などにすべきです。この欄がないままに、入管庁は、本人または詳細を書くことを求められるために、適切な返答が困難です。

(3)個別の新たな迫害経験がなくとも、本国情勢に大きな変化があったことが再申請の理由である場合もありますので、本国情勢に関する質問は、「新たな迫害事情」の内容の中でなく、独立した項目とするのが適切であると考えます。 5(6)「いかなる事態が生じますか」は、迫害の確実的発生を求めるものであり、定義と合致しません。「いかなる事態が生じる可能性がありますか」などに修正されるべきです。 4の質問は、難民とは別の質問ですので、5より後に記載すべきと考えます。

〔了〕

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