国会質疑等(2023年6月27日)石橋通宏議員(立憲民主・参)質問主意書への政府回答[難民保護]

我が国における難民認定の状況に関する質問主意書(外部リンク:参議院ウェブ

提出者:石橋通宏議員(立憲民主党)
番号:第211回国会 質問110号
提出日:2023年6月27日
答弁書受領日:2023年6月15日

[211参-110]230615質-石橋通宏(立憲)_230627-岸田文雄首相 [難民認定状況][PDF・465KB]

テキスト 

第211回国会・質問第110号 参議院議員石橋通宏議員「我が国における難民認定の状況に関する質問主意書」(2023年6月15日)

答弁書第110号 参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書(2023年6月27日)

 

我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

 

一 難民認定の実態について

1 難民認定申請者について

(1)2021年末及び2022年末時点で、難民認定申請中の者の数及び難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

(2)2021年末及び2022年末時点で、審査請求(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の出入国管理及び難民認定法第61条の2の9第1項の規定による異議申立てを含む。以下同じ。)中の者の数及び難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

一の1の(1)及び(2)について

令和3年末時点で難民認定申請(出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)第61条の2第1項の難民の認定の申請をいう。以下同じ。)中の者の数及び審査請求(入管法第61条の2の9第1項の審査請求をいい、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第69号)第75条の規定による改正前の入管法第61条の2の9第1項の異議申立てを含む。一の4の(3)についてを除き、以下同じ。)中の者の数は、それぞれ、1万3,324人及び3,295人である。

令和4年末時点で難民認定申請中の者の数及び審査請求中の者の数は、それぞれ、9,860人(速報値)及び2,524人(速報値)である。

なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(3)2022年の難民認定制度の「濫用」の件数を示されたい。

一の1の(3)について

令和4年に地方出入国在留管理局等(地方出入国在留管理局及び地方出入国在留管理局支局をいう。以下同じ。)における振り分けの段階で明らかに濫用・誤用的な案件として振り分けられたB案件又はC案件(「難民認定事務取扱要領」(平成17年5月13日付け法務省管総第823号法務省入国管理局長通知)に「B案件」又は「C案件」として記載されているものをいう。以下同じ。)の数は、B案件が38件であり、C案件が1,131件である。

(4)難民認定事務取扱要領は、難民認定申請案件を「難民条約上の難民である可能性が高い案件、又は、本国が内戦状況にあることにより人道上の配慮を要する案件」(A案件)、「難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張している案件」(B案件)、「再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件」(C案件)及び「上記以外の案件」(D案件)の四類型(以下「四類型」という。)に振り分けている。B案件と確定した案件及びC案件と確定した案件のほかに「濫用」案件と見なしているものはあるか。また、出入国在留管理庁長官があらかじめ請訓不要と指定した類型の案件は、「濫用」と見なしているか。政府の見解を示されたい。

一の1の(4)について

御指摘の「「濫用」案件とみなしている」及び「「濫用」とみなしている」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、地方出入国在留管理局長が出入国在留管理庁長官に請訓を行わない案件(「難民認定事務取扱要領」に「本庁長官に請訓を行うもの」として記載されている以外の案件をいう。)には、B案件又はC案件以外の案件もある。

(5)2022年中にインタビュー等の調査の結果、D案件からB案件又はC案件に振り分けが変更された案件の数を示されたい。

一の1の(5)について

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(6)2023年3月に公表された「令和4年における難民認定申請者数等について」によれば、2022年の難民認定申請者のうち、1,202人が複数回申請者であった。このうち、前記「正当な理由」があるとしてA案件又はD案件に振り分けた案件の数を示されたい。また、どのような場合に「正当な理由」があると見なしているか、具体例を示されたい。

一の1の(6)について

前段のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

後段のお尋ねについては、御指摘の「「正当な理由」があると見なしている」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、C案件に該当する場合であっても、人道上の配慮の必要性を慎重に検討すべきと思われるときは、本国における情勢の変化などによるものについてはA案件に、本邦での日本人との婚姻などの個別事情によるものについてはD案件に振り分けている。

(7)2023年3月に公表された「令和4年における難民認定申請者数等について」によれば、2022年の難民認定申請者のうち、461人が20歳未満であった。そのうち、難民認定申請時に在留資格を有していなかった者の数を示されたい。また、難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

一の1の(7)について

令和4年に難民認定申請をした者のうち、難民認定申請時に20歳未満であったもので在留資格を有していなかったものの数は200人(速報値)であり、このうち入管法第22条の2第1項の規定により本邦に在留していたものの数は124人であり、不法に本邦に在留していたものの数は76人(いずれも速報値)である。なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(8)2023年3月に公表された「令和4年における難民認定申請者数等について」によれば、2022年に仮滞在を許可した者は59人であった。このうち、20歳未満の者の数とその年齢の内訳を示されたい。

一の1の(8)について

令和4年に仮滞在許可(入管法第61条の2の4第1項の仮滞在の許可をいう。以下同じ。)を受けた者のうち、仮滞在許可を受けた時点で20歳未満であったものの数は23人(速報値)であり、その年齢別の内訳は、0歳が17人、1歳が2人、8が1人、9が1人、12歳が1人、17歳が1人(いずれも速報値)である。

また、同年に仮滞在の許否の判断をした者のうち、東京出入国在留管理局成田空港支局(以下「成田空港支局」という。)におけるお尋ねの仮滞在が「許可された人数」は2人、「許可されなかった人数」は4人、東京出入国在留管理局羽田空港支局(以下「羽田空港支局」という。)、名古屋出入国在留管理局中部空港支局(以下「中部空港支局」という。)及び大阪出入国在留管理局関西空港支局(以下「関西空港支局」という。)におけるお尋ねの仮滞在が「許可された人数」及び「許可されなかった人数」は、いずれも0人である。なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(9)2022年末時点で「送還忌避者」とされた4,233人のうち、難民認定申請を行っている者の数及び難民認定申請回数別の内訳を示されたい。また、3回目以降の難民認定申請を行っている者について、国籍の内訳を示されたい。

一の1の(9)について

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難であるが、お尋ねの「送還忌避者」のうち、令和4年末時点で難民認定申請中の者の数又は審査請求中の者の数は、1,794人(速報値)であり、その難民認定申請の回数別の内訳は、初回の難民認定申請が326人、2回目の難民認定申請が785人、3回目の難民認定申請が486人、4回目の難民認定申請が150人、5回目の難民認定申請が38人、6回目の難民認定申請が8人、7回目の難民認定申請が1人(いずれも速報値)である。

また、このうち3回目以降の者の国籍・地域別の内訳は、トルコが249人、スリランカが86人、パキスタンが52人、イランが46人、ナイジヱリアが27人、その他が212人(いずれも速報値)である。

 

2 難民認定者及び人道配慮による在留許可者について

(1)2022年に難民として認定された者(審査請求手続における認定者を含む。以下同じ。)のうち、複数回申請者の数を難民認定申請回数別に示されたい。また、退去強制令書発付後に難民として認定された者の数を示されたい。

(2)2022年に難民としては認定されなかったものの、人道的な配慮により在留を認められた者(審査請求手続の結果、在留を認められた者を含む。以下同じ。)のうち、複数回申請者の数を難民認定申請回数別に示されたい。また、退去強制令書発付後に在留特別許可された者の数を示されたい。

一の2の(1)及び(2)について

令和4年に難民と認定した者(審査請求手続において認定した者を含む。)202人のうち、2回目の難民認定申請に対して難民と認定したものの数は2人(速報値)、3回目の難民認定申請に対して難民と認定したものの数は2人(速報値)であり、退去強制令書発付後に難民と認定したものの数は4人(速報値)である。

また、同年に難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者1,760人のうち、2回目の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は105人(速報値)、3回目の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は80人(速報値)、4回目の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は29人(速報値)、5回目の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は2人(速報値)であり、退去強制令書発付後に在留を特別に許可したものの数は96人(速報値)である。

(3)2017年から2022年(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)に難民として認定された者全てについて、難民認定申請から難民の認定を受けるまでに要した期間を示されたい。

(4)2019年から2022年(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)に難民として認定された者について、四類型別の内訳を明らかにされたい。

(5)前記一2(3)及び前記一2(4)において、仮に「通常の業務において集計していないものであり」、「膨大な時間を要することから」「お答えすることは困難」である場合は、通常の業務において集計していない理由及び集計に要する時間の見込みを示されたい。

一の2の(3)から(5)までについて

お尋ねについては、集計に当たって難民認定申請の受付及び処分を行う地方出入国在留管理局等に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、通常の業務において集計していないものであり、お尋ねの「集計に要する時間の見込み」を含め、お答えすることは困難である。

(6)2022年に難民として認定された者のうち、性的指向及び/又はジェンダー・アイデンティティを理由として難民と認定された者は含まれているか。含まれているのであれば、その人数及び「認定者の認定事由」のどれに当たるかを明らかにされたい。

一の2の(6)について

お尋ねの「性的指向及び/又はジェンダー・アイデンティティを理由として難民と認定された者」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、御指摘の「性的指向及び/又はジェンダー・アイデンティティ」の観点からの統計をとっておらず、お答えすることは困難であるが、いわゆる同性愛者について「特定の社会的集団の構成員であること」を理由に迫害を受けるおそれがあるとして難民と認定した事例があるものと承知している。

(7)2022年に難民として認定された者のうち、不服申立てで「理由あり」とされた者(難民認定者)15人の国籍の内訳を示されたい。

一の2の(7)について

令和4年に難民として認定された者のうち、不服申立てで「理由あり」とされた者15人の国籍別の内訳は、ミャンマーが9人、イエメンが1人、エチオピアが1人、カメルーンが1人、カンボジアが1人、コンゴ民主共和国が1人、中国が1人である。

(8)2017年から2022年(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)に難民としては認定されなかったものの、人道的な配慮により在留を認められた者のうち、一次審査により当該在留が認められた者の数を示されたい。

一の2の(8)について

令和4年に難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者1,760人のうち、一次審査(入管法第61条の2第1項に規定する難民の認定に関する処分を行うための審査をいう。)において在留を認めたものの数は1,481人である。なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(9)2022年五月に公表された「令和3年における難民認定申請者数等について」及び2023年3月に公表された「令和4年における難民認定者数等について」によれば、難民認定手続の結果、難民とは認定しなかったものの本国の情勢や事情等を踏まえて在留を認めた者の数は2021年が498人、2022年が1,682人とされている。この中に、1年未満の在留資格が付与された者は含まれているか。含まれているのであれば、その数を国籍別に示されたい。

(10)2021年及び2022年に難民として認定された者のうち、出入国管理及び難民認定法第61条の2の2第1項の各号に該当するとされた者の数をそれぞれ示されたい。

一の2の(9)及び(10)について

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

 

3 一次審査について

(1)2023年3月に公表された「令和4年における難民認定者数等について」によれば、2022年の一次審査の平均処理期間は約33.3月と、2010年以降最長を記録している。本来、難民認定申請は速やかに処理されるべきだが、処理期間が長期化している理由について、政府の見解を示されたい。

一の3の(1)について

平成22年から平成29年まで難民認定申請数が増加を続けていたことに伴い、審査期間が長期化している未処理案件が生じていた中で、それらを集中的に処理したことから、難民認定申請から処理までに要した期間の平均が長期化したものであると考えている。

(2)2023年3月に公表された「令和4年における難民認定者数等について」によれば、2023年に難民認定申請を行った者のうち、在留資格「技能実習」は466人、在留資格「特定活動(出国準備期間)」は105人、在留資格「留学」は47人であった。このうち、D案件に振分けられた者の数を示されたい。

一の3の(2)について

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

 

4 審査請求について

(1)2021年及び2022年に不服申立てに「理由あり」とされた者及び「理由なし」とされた者のうち、臨時班に構成された参与員が関与した事件数をそれぞれ示されたい。また、各年において、臨時班に構成された参与員の数を示されたい。

一の4の(1)について

お尋ねの「臨時班」のうち、迅速な審理が可能かつ相当な事件が重点的に配分された臨時班において、令和3年の不服申立て処理数のうち同班を構成した難民審査参与員が関与した事件数は3,915件であり、同班を構成した難民審査参与員は12名であり、また、令和4年の不服申立て処理数のうち同班を構成した難民審査参与員が関与した事件数は3,065件であり、同班を構成した難民審査参与員は13名である。

その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(2)2016年9月9日に開催された難民審査参与員協議会の議事概要メモにおいて、「・・・行政不服審査法上では、本人から審査請求があると直ちに各班に割り振らなければならないとされているところ、2年先に手続開始の可能性があるものを現時点で各班に割り振るというのは効率的な運用の面で問題がある。そこで、臨時的措置として、難民認定制度に関する知識又は経験の豊富な参与員にお願いして、臨時的措置による臨時班を編制し、そこに形式的に案件を割り振り、具体的事案を見て早期案件か否か判断し、早期処理案件であれば臨時的措置による臨時班で早期処理を行い、早期処理案件に該当しなければ指名替えを行い、常設班への割振りを行うという形をとり効率的な処理を行っていきたいと考えている。」と当時の審判課長が述べている。
 「形式的に案件を割り振」る判断及び「具体的事案を見て早期案件か否か判断」を行う者は誰か示されたい。

一の4の(2)について

お尋ねの事件の配分の運用に関する各判断は、出入国在留管理庁出入国管理部審判課が行っている。

その上で、迅速な審理が可能かつ相当な事件として臨時班に配分された事件であったとしても、難民審査参与員が更に慎重な審査を要すると判断した事件については、常設班に配分替えを行っている。

(3)B案件、C案件、出入国在留管理庁長官が請訓不要と指定した類型の案件は前記「臨時班」に形式的に割り振られる案件に相当するか。その他、「臨時班」に形式的に割り振られる案件の具体例を示されたい。

一の4の(3)について

御指摘の「形式的に割り振られる」とは、審査請求(入管法第61条の2の9第1項の審査請求をいう。)があった事件について、事件の内容によらずに暫定的に事件の配分を行うという意味であるところ、お尋ねの意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

(4)2023年3月に公表された「令和4年における難民認定者数等について」によれば、2022年に不服申立てに「理由あり」とされた者及び「理由なし」とされた者のうち、676人に口頭意見陳述等期日が実施され、4,064人には口頭意見陳述等期日が実施されていない。また、口頭意見陳述等期日を実施しなかった者のうち、2,766人が口頭意見陳述の申立てを放棄したとされている。
 口頭意見陳述等の期日が実施されていない4,064人のうち、口頭意見陳述の開催を希望したにもかかわらず、口頭意見陳述等の期日が実施されなかった人数について、①合計及び所管地方局別の人数、②判断をした難民審査参与員の班がある事務局設置局別(東京・名古屋・大阪)の人数をそれぞれ示されたい。

一の4の(4)について

審査請求に係る口頭意見陳述(行政不服審査法(平成26年法律第68号。以下「新法」という。)第31条第1項本文に規定する意見の陳述をいい、新法による改正前の行政不服審査法(昭和37年法律第160号。以下「旧法」という。)第48条において準用する旧法第25条第1項ただし書に規定する口頭で意見を述べる機会を含む。)及び質問(新法第36条に規定する質問をいい、旧法第48条において準用する旧法第30条に規定する審尋を含む。)の期日が開かれなかった4,064人のうち、口頭意見陳述及び質問を申し立てたが、期日が開かれなかった人数の合計は、1,298人である。

その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(5)口頭意見陳述等の期日が実施された676人のうち、原処分庁への質問が申し立てられた件数及びそのうち原処分庁が口頭意見陳述の期日に招集された件数を示されたい。

一の4の(5)について

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(6)2021年及び2022年に口頭意見陳述等の期日が開催された数を示されたい。

一の4の(6)について

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

(7)2021年及び2022年に難民審査参与員により提出された意見書の数を示されたい。そのうち、難民審査参与員のうち1名が「理由あり」とした案件の数を示されたい。

一の4の(7)について

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

 

5 訴訟について

難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、2022年に提起された件数及び終局裁判がなされた件数をそれぞれ明らかにされたい。加えて、難民不認定処分の取消し若しくは無効が確定した後、又は、難民認定処分の義務付け訴訟で国側が敗訴した後、難民認定がなされず、在留資格が付与されなかったケースはあるか。あれば、その理由について、政府の見解を示されたい。

一の五について

出入国在留管理庁において把握しているところでは、難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、令和4年に提起された件数は24件、同年に終局裁判がなされた件数は第一審、控訴審及び上告審の合計で25件である。

また、難民不認定処分取消請求訴訟、難民不認定処分無効確認請求訴訟又は難民認定義務付け訴訟のうち、同年において国の敗訴が確定した事案については、その確定後、難民の認定が行われた。

 

6 本国情勢を踏まえたミャンマー・アフガニスタン・シリア人の庇護状況について

(1)2022年末時点で難民認定申請中のミャンマー・アフガニスタン・シリア人の数を在留資格別に示されたい。

(2)2023年3月に公表された「令和4年における難民認定者数等について」によれば、2022年に複数回申請を行った者のうち、83人がミャンマー出身者であった。このうち、非正規在留者の数を明らかにされたい。

(3)2021年五月に公表された「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置」によれば、2021年3月末時点で難民認定手続中の者の数は2,944人とされている。このうち、2022年末時点で難民認定手続中の者の数を示されたい。

一の六の(1)から(3)までについて

お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

 

二 空港等での庇護申請関係の統計について

政府は2015年9月から「難民の迅速かつ確実な庇護」を推進するための難民認定制度の運用の見直しを行っているという。空港は難民保護のまさに最前線であり、上陸審査時に難民認定申請を希望した者に適切に対処できているかどうかは、「難民を迅速に庇護」できているか否かを示す、重要な指標である。

1 2021年及び2022年に一時庇護上陸許可を申請した者の数及び許可状況を国籍別に示されたい。

ニの1について

令和3年に一時庇護上陸許可(入管法第18条の2第1項の一時庇護のための上陸の許可をいう。以下同じ。)の申請をした者の数は3人であり、その国籍・地域別の内訳は、トルコが1人、ロシアが1人、中国が1人である。同年に一時庇護上陸許可を受けた者の数は、シリアが1人である。

令和4年に一時庇護上陸許可の申請をした者の数及び一時庇護上陸許可を受けた者の数は、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。

 

2 2022年の我が国の空港支局等における難民認定申請件数を、申請が行われた空港支局別(成田・羽田・中部・関西)及び福岡空港出張所について年別に示されたい。

ニの2について

令和4年に、地方出入国在留管理局の各空港支局及び福岡出入国在留管理局福岡空港出張所(以下「福岡空港出張所」という。)において、難民認定申請を行った者の数は、成田空港支局については9人、羽田空港支局については0人、中部空港支局については0人、関西空港支局については0人、福岡空港出張所については0人である。

 

3 2023年3月に公表された「令和4年における難民認定者数等について」によれば、2022年に仮滞在を許可した者は59人、仮滞在の許否を判断した人数は600人である。そのうち、空港支局等(成田・羽田・中部・関西空港支局及び福岡空港出張所)において仮滞在が許可された人数及び許可されなかった人数をそれぞれ明らかにされたい。

(一の1の(8)の答弁を参照)

 

三 難民認定申請者の収容について

1 2022年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数と、そのうち、難民認定申請中、審査請求中及び難民不認定処分の取消しを求める訴訟係属中の者の数をそれぞれ明らかにされたい。

三の1について

令和4年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数は229人(速報値)であり、このうち、難民認定申請中のものの数は22人、審査請求中のものの数は16人(いずれも速報値)であるが、難民不認定処分取消請求訴訟係属中のものの数については、統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

 

2 2021年及び2022年の被収容者の自殺件数、自傷行為(自殺未遂含む)の件数、精神科医の利用実績、庁外診療数及び救急搬送件数を、収容施設別に示されたい。仮に統計がない場合、収容施設における医療体制の充実をはかることが困難である。集計が困難な理由を示されたい。

三の2について

被収容者の自殺件数について、令和3年は0人、令和4年は東京出入国在留管理局で1人である。

被収容者の庁外診療数(速報値)について、令和3年は、入国者収容所東日本入国管理センター166件、入国者収容所大村入国管理センター70件、札幌出入国在留管理局8件、仙台出入国在留管理局6件、東京出入国在留管理局210件、成田空港支局99件、羽田空港支局10件、東京出入国在留管理局横浜支局72件、名古屋出入国在留管理局272件、大阪出入国在留管理局106件、広島出入国在留管理局52件、高松出入国在留管理局4件、福岡出入国在留管理局44件、福岡出入国在留管理局那覇支局1件であり、令和4年は、入国者収容所東日本入国管理センター106件、入国者収容所大村入国管理センター64件、札幌出入国在留管理局5件、仙台出入国在留管理局7件、東京出入国在留管理局277件、成田空港支局80件、羽田空港支局1件、東京出入国在留管理局横浜支局25件、名古屋出入国在留管理局207件、大阪出入国在留管理局155件、広島出入国在留管理局24件、高松出入国在留管理局20件、福岡出入国在留管理局87件、福岡出入国在留管理局那覇支局4件である。

被収容者の自傷行為(自殺未遂を含む。)の件数、精神科医の利用実績及び救急搬送件数については、いずれも集計に当たって被収容者の処遇を行う地方出入国在留管理局等に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、通常の業務において集計していないものであり、お答えすることは困難である。

 

四 保護費の支給状況について

1 2022年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間。以下四5まで同じ。)について、保護費を申請した者の数、保護費を受給していた者の数をそれぞれ明らかにされたい。

四の1について

令和4年度において、難民認定申請をしている者のうち生活に困窮するものに対する支援としてする保護費の支給(以下「保護措置」という。)の申請をした者の数は、221人であり、保護措置を受けた者の数は、204人である。

 

2 2022年度に保護費を受給していた者の申請から受給決定までの平均待機期間、平均受給期間をそれぞれ示されたい。

四の2について

外務省においては、難民認定申請者保護事業等の実施を公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部(以下「委託先」という。)に委託しているところ、令和4年度における、委託先が保護措置の申請を受け付けてから保護措置を開始して差し支えない旨の結果通知を同省から受けるまでの期間の平均は、約34日である。

また、同年度における保護措置を受けた者の平均受給期間は、約19箇月である。

 

3 2022年に保護費を申請したが受給できなかった者の数、国籍の内訳、申請から結果が出るまでの平均待機期間を明示されたい。

四の3について

令和4年において、保護措置の申請をしたものの保護措置の開始が不適当と判断された者の数は、17人であり、その国籍は、アフガニスタン、イラク、イラン、エチオピア、カメルーン、ミヤンマー及びリベリアである。

また、同年における、委託先が当該申請を受け付けてから保護措置の開始が不適当である旨の結果通知を外務省から受けるまでの期間の平均は、約67日である。

 

4 2022年度の難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「ESFRA」という。)の利用者数を性別、国籍別に示されたい。また、保護費の申請からESFRAの利用開始までの平均日数、最短日数及び最長日数をそれぞれ示されたい。

四の4について

令和4年度において、保護措置の対象者のうち直ちに住居を確保する必要があるものに対する支援として提供している難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「緊急宿泊施設」という。)を利用した者の数は、25人であり、その男女別の内訳は、男性が15人、女性が10人であり、国籍別の内訳は、イエメンが2人、イランが2人、カメルーンが2人、コンゴ民主共和国が12人、ジンバブエが3人、セネガルが1人、ブルンジが1人、モロッコが1人、リベリアが1人である。

また、保護措置の申請から緊急宿泊施設の利用開始までの平均日数は1日、最短日数は0日、最長日数は37日である。

 

5 2022年度について、①保護費、②生活費、③住居費、④医療費のそれぞれの支給額を示されたい。また、2022年度のESFRAの予算額及び執行額をそれぞれ示されたい。

四の5について

お尋ねの令和4年度の支給額は、

①    保護費が9,311万6,240円、

②    生活費が6,073万6,774円、

③    住居費が2,398万7,194円、

④    医療費が839万2,272円

である。

また、同年度の緊急宿泊施設の予算額は、300万9,600円であり、執行額は、現在精算の手続を行っているところであり、現時点で具体的な金額をお示しすることは困難である。

 

五 難民認定制度のあり方について

1 法務省は、2015年9月に公表した「難民認定制度の運用の見直しの概要」の5の(1)においていわゆる「新しい形態の迫害」を申し立てる者が難民条約の適用を受ける難民の要件を満たすか否かの判断に関して「難民審査参与員が法務大臣に提言をし、法務大臣がその後の難民審査の判断に用いるようにするための仕組み」を構築するとしている。
 この「仕組み」に関して、私が提出した「我が国における難民認定の状況に関する質問主意書」(第208回国会質問第57号)に対する答弁書(内閣参質208第57号。以下「前回答弁書」という。)の「一の2の(6)」で「現在においても引き続き検討中」とされていたが、現在の状況を明らかにされたい。

五の1について

御指摘の「いわゆる「新しい形態の迫害」」に係る御指摘の「仕組み」の内容については、難民審査参与員からの提言や諸外国の実例なども参考にしながら、現在においても引き続き検討中である。

 

2 2020年12月に公表された第7次出入国管理政策懇談会による報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」は、「適正手続保障の観点から、代理人の立会いを認める範囲など、申請者の置かれた立場に配慮した一次審査における適切な事情聴取の在り方を検討する必要がある」としている。また、前回答弁書において、政府は「代理人の立会いを認める範囲」に関して「難民認定申請に対する一次審査における難民認定申請をした者に対する事情聴取は、当該者から本国での迫害状況等の難民となる事由を聴取してその内容を確認するとともに、当該者の供述態度等からその供述の信用性を慎重に吟味することを目的として行うものであることに鑑みると、難民認定申請に対する一次審査における事情聴取に際して代理人の立会いを認めることについては、慎重に検討すべきものであると考えている」と述べている。「供述態度等」の具体例を示されたい。

五の2について

お尋ねの「「供述態度等」の具体例」については、供述する際の所作や、難民調査官の質問に対する反応が挙げられる。

 

3 2020年12月に公表された第7次出入国管理政策懇談会による報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」は、「行政の公正性や適正性を維持する観点から、難民認定業務の専門性・独立性をより高めるために、その組織の在り方について検討することを求めたい」としている。
 公平・中立な難民認定審査を行うに当たり、独立性を有する組織の設置は必須と考えるが、政府の見解を示されたい。また、「難民認定業務の専門性・独立性をより高めるため」の「組織の在り方」に関する現在の検討状況を明らかにされたい。

五の3について

お尋ねの「独立性を有する組織の設置」については、難民認定手続とその他の出入国在留管理行政の様々な手続とは密接に関連しており、難民の認定に関する事務を出入国在留管理庁において行うことには合理性があり、新たに独立した機関を設置する必要はないものと考える。

その上で、難民認定手続においては、従前から、難民の地位に関する条約(昭和56年条約第21号)第1条の規定又は難民の地位に関する議定書(昭和57年条約第1号)第1条の規定により難民の地位に関する条約の適用を受ける者を、難民認定申請の内容により個別に審査して難民と認定するなど、難民認定手続の適正な運用に努めてきたところであるが、更なる適正化を図るため令和2年12月に第7次出入国管理政策懇談会が取りまとめた報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」を踏まえ、当該報告書で示された論点について、現在、法務省において検討を行っているところである。

 

4 2021年7月に行われた、UNHCRとの協力覚書の交換において、「難民調査官の調査の在り方についてUNHCRとケース・スタディを実施」するとされている。現時点までのケース・スタディの実施件数及び今後の予定を示されたい。また、当ケース・スタディの結果、地方官署に対して発出した文書を提示されたい。

五の4について

これまでにケース・スタディの対象となった事案は3件であり、現在、国連難民高等弁務官事務所と調整しながら、新たな事案を対象として、更なるケース・スタディの実施に向けた検討を進めている。

また、ケース・スタディの結果、地方出入国在留管理局等に対して「面接による事情聴取の際の難民認定申請者への配慮について」(令和5年4月5日付け出入国在留管理庁出入国管理部出入国管理課難民認定室長事務連絡)を発出した。

 

5 2023年4月1日現在の難民調査官に指定されている者の数を地方局別に示されたい。また、行政職(一)3級及び4級の難民調査官の数を示されたい。さらに、それらの者が難民調査官に指定されてからの平均期間を明らかにされたい。

五の5について

令和5年4月1日現在の難民調査官に指定されている者の数は433人であり、その内訳は札幌出入国在留管理局24人、仙台出入国在留管理局27人、東京出入国在留管理局135人、名古屋出入国在留管理局27人、大阪出入国在留管理局44人、広島出入国在留管理局37人、高松出入国在留管理局21人、福岡出入国在留管理局118人であり、その余のお尋ねについては、集計を行っておらず、お答えすることは困難である。

 

6 2023年4月1日現在の出身国情報の収集等に専従する職員の数を示されたい。また、それらの者が当該職に就いてから現在までの期間を明らかにされたい。

五の6について

令和5年4月1日現在の出入国在留管理庁におけるお尋ねの「出身国情報の収集等に専従する職員の数」は5人であり、その余のお尋ねについては、集計を行っておらず、お答えすることは困難である。

 

右質問する。

[了]

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