国会質疑等(2023年6月9日)鎌田さゆり議員(立憲民主・衆)質問主意書への政府回答[在留特別許可ガイドライン]

在留特別許可に係るガイドラインに関する質問主意書

(外部リンク:衆議院ウェブ

提出者:鎌田さゆり議員(立憲民主党)
番号:第211回国会 質問70号
提出日:2023年5月31日
答弁書受領日:2023年6月9日

[211衆-70]230531質-鎌田さゆり(立憲)-230609答-岸田信雄首相 [在特ガイドライン]

テキスト 

第211回国会・質問第70号 衆議院議員鎌田さゆり議員「在留特別許可に係るガイドラインに関する質問主意書」(2023年5月31日)

答弁書第70号 衆議院議員鎌田さゆり君提出在留特別許可に係るガイドラインに関する質問に対する答弁書(2023年6月9日)

在留特別許可に係るガイドラインに関する質問主意書

国会は、第百七十一回国会で「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」を成立させ、入管法を改正したが、その際の入管法附則(平成二十一年七月十五日法律第七十九号)第六十条第二項(以下「本件附則」という。)で、「法務大臣は、この法律の円滑な施行を図るため、現に本邦に在留する外国人であって入管法又は特例法の規定により本邦に在留することができる者以外のものについて、入管法第五十条第一項の許可の運用の透明性を更に向上させる等その出頭を促進するための措置その他の不法滞在者の縮減に向けた措置を講ずることを検討するものとする」と規定した。

 さらに、第百七十一回国会における衆議院法務委員会の「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議」の第七項(以下「本件衆議院附帯決議」という。)は、「本法の施行による不法滞在者の潜行を防止する必要性があることにかんがみ、在留特別許可の許否の判断における透明性を更に向上させるため、公表事案の大幅な追加、ガイドラインの内容の見直し等を行い、不法滞在者が自ら不法滞在の事実を申告して入国管理官署に出頭しやすくなる環境を整備すること」とし、同国会参議院法務委員会の「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議」の第九項(以下「本件参議院附帯決議」という。)も、同文である。

一 本件附則、本件衆議院・参議院附帯決議のいずれも、上記法条の要請に基づいて在留特別許可に係るガイドライン(以下「在特ガイドライン」という。)による在留特別許可の運用の透明化を図ることを求めている。

1 上記の在特ガイドライン策定の趣旨、位置づけからすれば、在特ガイドラインが特に積極に評価する要素としている事由、例えば日本人との婚姻関係があり、かつそれが安定・成熟しているという事由を、在留特別許可の許否の判断に際し、格別有利に考慮しないで判断することは、本件附則や上記附帯決議が在留特別許可の運用の透明性を要求することに反すると考えるが、どうか。

一の1及び4について御指摘の「格別有利に考慮しないで判断する」及び「在特ガイドライン自体の変更とそれを公にすることを経ないで、在特ガイドラインと食い違う運用をする」の意味するところが必ずしも明らかではないが、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第五十条第一項に規定する在留特別許可の許否の判断については、個々の外国人ごとに、在留を希望する理由、家族状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、我が国における不法滞在者に与える影響等諸般の事情を総合的に勘案して行うものであり、法務省入国管理局が平成十八年十月に策定し、平成二十一年七月に改訂した「在留特別許可に係るガイドライン」は、在留特別許可の許否の判断の透明性を高めるため、積極要素又は消極要素として考慮され得る事情を例示的に示したものであることから、「在留特別許可に係るガイドライン」に示したものも含め、諸般の事情を総合的に勘案して行う在留特別許可の許否の判断が「本件附則や上記附帯決議が在留特別許可の運用の透明性を要求することに反する」及び「在留特別許可の運用の透明性を後退させている」との御指摘は当たらないと考えている。

2 本件附則や上記附帯決議が在留特別許可の運用の透明性を要求することからすれば、在特ガイドラインの内容を変更し、又は考慮要素の追加をする内容の通達は、公にされなければならないと考えるがどうか。

3 在特ガイドラインの内容を変更し、又は考慮要素の追加若しくは変更をする内容の通達は、現在、存在するか。

一の2及び3について御指摘の「在特ガイドラインの内容を変更し、又は考慮要素の追加をする内容の通達」及び「在特ガイドラインの内容を変更し、又は考慮要素の追加若しくは変更をする内容の通達」については、「在留特別許可に係るガイドラインの見直しについて(通達)」(平成二十一年七月十日付け法務省管審第四百十四号法務省入国管理局長通達)を発出しており、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)に基づく開示請求が行われた場合には、同法の規定に基づき、開示しているところである。

4 齋藤法務大臣は、令和五年四月十八日の衆議院法務委員会において、「例えば当該未成年の子が幼くて、親による監護、養育が必要な場合において、親に在留資格がなく、在留特別許可も認められないようなとき、こういうときには、人道上の観点から、当該未成年の子のみを在留特別許可とすることは適切ではないわけでありますので、これらの事情を考慮してもなお当該子のみに在留を認めるべき特段の事情がない限り、家族一体として帰国をしていただくということになります。他方、当該未成年の子が本邦において出生し、相当期間本邦の初等中等教育機関で教育を受けているなどの事情がある場合において、例えば、親のほかにも適切な養育者が存在しているですとか、自活するめどが立っているとか、そういう事情も総合的に勘案して、当該未成年の子について在留特別許可を認めているという運用をしているところであります。」と答弁している。
 この答弁内容となっている運用は、在特ガイドラインが、特に考慮する積極要素の一つとして「当該外国人が、本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し、当該実子を監護及び養育していること」を挙げて、親にも在留許可の可能性を示していることと食い違っている。
 在特ガイドライン自体の変更とそれを公にすることを経ないで、在特ガイドラインと食い違う運用をすることは、在留特別許可の運用の透明性を後退させていると考えられるがどうか。

一の1及び4について御指摘の「格別有利に考慮しないで判断する」及び「在特ガイドライン自体の変更とそれを公にすることを経ないで、在特ガイドラインと食い違う運用をする」の意味するところが必ずしも明らかではないが、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第五十条第一項に規定する在留特別許可の許否の判断については、個々の外国人ごとに、在留を希望する理由、家族状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、我が国における不法滞在者に与える影響等諸般の事情を総合的に勘案して行うものであり、法務省入国管理局が平成十八年十月に策定し、平成二十一年七月に改訂した「在留特別許可に係るガイドライン」は、在留特別許可の許否の判断の透明性を高めるため、積極要素又は消極要素として考慮され得る事情を例示的に示したものであることから、「在留特別許可に係るガイドライン」に示したものも含め、諸般の事情を総合的に勘案して行う在留特別許可の許否の判断が「本件附則や上記附帯決議が在留特別許可の運用の透明性を要求することに反する」及び「在留特別許可の運用の透明性を後退させている」との御指摘は当たらないと考えている。

5 平成二十九年三月三十日付法務省管審第五六〇号法務省入国管理局長通達は、在特ガイドラインの内容を変更し、又は考慮要素の追加をする内容の通達か。

一の5について平成二十九年三月三十日付け法務省管審第五百六十号法務省入国管理局長通達(以下「五六〇号通達」という。)は、御指摘の「在特ガイドラインの内容を変更し、又は考慮要素の追加をする内容の通達」ではない

6 平成二十九年三月三十日付法務省管審第五六〇号法務省入国管理局長通達の内容を明らかにされたい。明らかにできない場合、できない理由を具体的に示されたい。

一の6について五六〇号通達の一部については、これを公にすることにより、退去強制手続の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとの理由から公表を差し控えており、お尋ねについてはお答えを差し控えたい。

7 齋藤法務大臣は、令和五年四月十八日の衆議院法務委員会において、入管法が改正された場合における在留特別許可に係るガイドラインについて、「それぞれの考慮事情の評価に関する考え方を運用上のガイドラインとして策定し、明示することにより、退去強制事由に該当する外国人のうち、どのような方を我が国社会に受け入れるのかを明確にすることとしております。新たなガイドラインの具体的な内容につきましては現在検討を重ねているところでありますが、例えば、我が国に不法に滞在している期間が長いことにつきましては、長いほど在留管理秩序を侵害する程度が大きいと言えることから、消極的に評価をすることとしております。その一方で、御指摘のように、その間の生活の中で構築された日本人の地域社会との関係、本邦で家族とともに生活するという子供の利益の保護の必要性、特に未成年の日本人である子と同居して監護及び養育をしていること、将来の雇用主等の第三者による支援の内容が十分なものであること、本邦で疾病の治療を受けている者で、相当期間本邦で治療を受けなければ生命に危険が及ぶ具体的おそれがあることなどを積極的に評価をすることとする予定でありまして、これらの事情を含めて、個別事案における具体的な事情を総合的に判断することによって、人道上在留を認めるべき者については、引き続き適切に在留を認めることとなります。」
 「新たなガイドラインの内容については、現在、検討をまだ重ねているところでありますが、本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性、それから、認知が事実に反することが明らかとなり、帰責性なく日本国籍が認められなくなった者で、本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けていること、これを積極的に評価することなどについて、明確に規定する必要があると考えています。」と答弁している。
 しかし、新たな在特ガイドラインが策定されて公にされても、これを実質的に変更する通達が国会の知り得ないうちに策定されることがあり得るのであれば、審議の前提となり得ないと考えられる。
 新たな在特ガイドラインについて、在特ガイドライン自体の変更とそれを公にすることを経ないで、在特ガイドラインと食い違う運用をすることはないと約束できるか。

一の7について御指摘の「実質的に変更する通達」及び「在特ガイドライン自体の変更とそれを公にすることを経ないで、在特ガイドラインと食い違う運用をする」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「在留特別許可に係るガイドライン」は、在留特別許可の許否の判断の透明性を高めるため、積極要素又は消極要素として考慮され得る事情を例示的に示したものであり、御指摘の「新たな在特ガイドライン」を策定した後も、入管法第五十条第一項に規定する在留特別許可の許否の判断については、引き続き、個々の外国人ごとに、諸般の事情を総合的に勘案して行うこととなる。

二 法務大臣の前記各答弁は、検討中の新たなガイドラインの内容として、現行在特ガイドラインに、特に考慮する積極要素の一つとしてある「本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している子であること」及び「当該外国人が、本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し、当該実子を監護及び養育していること」について触れるところがないが、子どもの権利条約、こども基本法、児童福祉法を踏まえれば、子どもの利益保障を後退させてはならないと考える。

 現在検討を重ねているという新たなガイドラインの具体的な内容に、「本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している子であること」及び「当該外国人が、本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し、当該実子を監護及び養育していること」にあたる、またはこれを含む積極要素を置き、また該当する範囲を狭めないことはもちろん、広げるようにするべきと考えるがどうか。

三 法務大臣の前記各答弁は、検討中の新たなガイドラインの内容として、現行在特ガイドラインに、特に考慮する積極要素の一つとしてある「当該外国人が、日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退去強制を免れるために、婚姻を仮装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、次のいずれにも該当すること ア 夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助していること イ 夫婦の間に子がいるなど、婚姻が安定かつ成熟していること」について触れるところがないが、憲法上の婚姻の自由、市民的及び政治的権利に関する国際規約第十七条を踏まえれば、婚姻の保護を後退させてはならない。現在検討を重ねているという新たなガイドラインの具体的な内容に、現行の在特ガイドラインの上記の、日本人または特別永住者との婚姻に係る積極的考慮要素にあたる、またはこれを含む積極要素を置き、また該当する範囲を狭めないようにすることはもちろん、「安定性・成熟性」を削除するなど範囲を広げるべきと考えるがどうか。

ニ及び三についてお尋ねの「新たなガイドラインの具体的な内容」については、現在検討しているところであり、現時点でお答えすることは困難である。

右質問する。

[了]

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