法相会見(2022年1月28日)出入国在留管理行政に関する質疑について

法務大臣閣議後記者会見の概要「出入国在留管理行政に関する質疑について」(2022年1月28日)(外部リンク:法務省ウェブ

出入国在留管理行政に関する質疑について

【記者】
 大村入管収容所に長期収容中のネパール人男性について,施設内で起きた大けがを2年間放置された末,病状が悪化し続けて,現在ほとんど寝たきり状態になってしまっています。
 それにもかかわらず,適切な医療を受けられないということで,1月17日に長崎県弁護士会に人権救済を申し立てました。この方は既にこの件で国賠訴訟も起こしており,この件は報道もされています。 
 また,東京入管でも,長期収容中のスリランカ人男性が,2週間の仮放免と再収容を繰り返し,その度に健康状態を悪化させて,この数か月間,嘔吐がひどく,入管の医務室で点滴を毎日打っているような状況ですけれども,血管への負担が大きく,内臓疾患の疑いもあるので,入管の医師からは,入管収容がこれ以上続けば命に関わる,仮放免してそのまま入院する必要があると言われています。
 この件では,1月12日に,立憲民主党の国会議員,この中には医師の資格などもある阿部知子議員などもいるのですけれども,3人の議員が,東京入管局長に対して,仮放免を求める要請をしましたが,いまだに収容が続いています。
 現在法務省は,名古屋入管のスリランカ人女性死亡事案の最終報告書を踏まえ,「改善策の取組状況」を公表し,1月25日に改訂をしたのですけれども,今言ったような大村入管や東京入管で起きている被収容者の極度の体調悪化の状況というのは,大臣にも報告され,あるいは,こういった改善策の取組の中でも,しっかりと検討しているのでしょうか。
 実際に入管内での日々の実務に反映されなければ,「改善策の取組状況」を作成,公表してもあまり意味がないと思うのですけれども,一体何のために「改善策の取組状況」を作成し公表されているのか,その点についての説明もお願いします。
 この2点,大村入管と東京入管の件が報告されているのかどうか,こういった事例が,「改善策の取組状況」にしっかりと反映されているのかどうかといったことについてお答えください。

【大臣】
 仮放免の可否については,個別事案ごとの事情を踏まえ,許可すべきものと,すべきでないものを,適切に判断することが大事だと考えています。
 個別事案における具体的な事実関係については,お答えを差し控えさせていただきますが,体調不良を訴える被収容者に対しては,訴えの内容や症状等に応じて,必要な診療・治療を適切に受けさせているものと承知しています。
 加えて,名古屋事案を踏まえた改善策の一つとして,入管庁は,昨年12月28日,「体調不良者等に係る仮放免運用指針」を策定,発出しています。
 この新たな運用指針では,収容継続によって健康状態を大きく害するおそれがある旨の医師の所見が付された被収容者については,原則として仮放免を許可することなどを定めています。
 この運用指針に基づいて,体調不良者に対する仮放免の判断がより迅速かつ適切に行われていると聞いています。
 御指摘の「改善策の取組状況」は,こうした改善策の進捗状況をしっかりとお示しするために公表しているものです。

【記者】
 先ほどの質問ですが,大村入管と東京入管の件は大臣に報告されているのかどうかということをお答えください。
 それと,2020年8月に日弁連が,「入国者収容所等視察委員会の改革に関する意見書」を公表しています。このような法務省・入管庁から独立した専門的な第三者委員会の設立が必要だと大臣は考えていらっしゃるのかどうか,国連からも再三にわたり国内人権機関の創設を求められ続けているわけですが,それとも関係してくると思うのですけれども,こうした独立した入管施設の視察委員会をもう一度見直すといったようなことを考えていらっしゃるのかどうか,国連の勧告をなぜ受けようとしないのか,その理由についてお願いいたします。

【大臣】
 前段のお尋ねですが,個別の案件についてコメントすることは控えたいと思います。
 その上で,先ほど申し上げましたように,体調不良を訴える被収容者に対しては,その訴えの内容や症状等に応じて,必要な診療・治療を適切に受けさせているものと承知しています。
 後段のお尋ねですが,視察委員会は,学識経験者,法曹関係者,医療関係者等により構成されており,その運営は同委員会によって決定されています。
 視察委員会は,独立した立場で被収容者から直接意見を聞くことも可能です。また,各収容施設に設置されている提案箱を通じて,視察委員が直接被収容者の意見等を把握することもできます。
 このように,視察委員会は,入管庁とは一線を画した第三者機関であり,専門性・第三者性は十分に担保されていると考えています。

【記者】
 第三者性が担保されているとおっしゃっていますが,結局事務局も入管庁の総務課に設置されていますし,視察といっても,やはり全国に入管があるわけですから,東西に分かれて視察委員会がありますけれども,なかなか緊急事態に対処できるような仕組みになっていません。
 名古屋入管のケースでも,提案箱にスリランカ人女性自身が視察委員会宛てに要請を書いているのですが,それが検証されたのはスリランカ人女性が亡くなってからです。
 ですから,そういった緊急の申立てや個人通報的な形で,外部からきちんと,こういう状況だから検証してくださいといったような緊急の申立てには全然対処しきれていません。予算もない,本当に片手間に皆さんやっているような状況です。
 これはもちろん入管施設だけではなく,刑務所でもそういった視察委員会はあると思うのですけれども,入管の場合,特にそういった体制がぜい弱ですし,法務省の中でコントロールされているという意味合いが強いと思います。
 そういったことで,この日弁連の意見書というのを参考にされて,大臣はお読みになったのかどうかということを確認させてください。

【大臣】
 先ほど申し上げましたが,視察委員会は,学識経験者,法曹関係者,医療関係者,NGOや国際機関の関係者,地域住民代表者等の方々の中から任命するわけですが,選任が恣意的なものにならないように,日弁連や日本医師会等の所属団体から推薦を受けて選任しています。
 そして,視察委員会は被収容者から直接意見を聞くこともできる制度になっており,運営も視察委員会によって決定されます。
 現在の入管行政の在り方について,様々な御意見・御指摘があることは,私もよく承知していますが,あるべき入管行政の姿になるように不断の努力をしていくという姿勢に変わりはありません。
 第三者機関としての視察委員会については,専門性・第三者性は十分に担保されていると考えています。

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