【2013年難民10大ニュース】

1. 難民認定水準が過去最低を更新 

〔説明文〕 

 3月に法務省入国管理局により発表された資料により、2012年の難民認定水準が史上最低であった前年を下回り、過去最低水準を更新していたことが判明した。一次手続での難民認定率は、0.2%(認定数5人/処理数2198人)で1982年の制度開始以来の最低であり、また、異議は、認定率1.3%(認定数13人/処理数996人)で2005年5月に難民審査参与員制度が導入されて以降で最低の数値となった。
 2013年についても、ビルマ出身者の難民認定数の減少などから、更に認定水準が下がることが見込まれる。

法務省入国管理局「平成24年における難民認定者数等について」(報道発表資料)2013年3月19日。


2. 異議手続きの長期化。審尋まで3年以上のケースも 

〔説明文〕 

難民審査参与員制度の導入以降、異議手続が長期化を続けており、審尋まで3年以上かかっているケースも報告されている。参与員の増員などにより処理数は毎年増加しているものの、未処理数はそれを上回って増加している。2013年の年始時点で、3342人が未処理案件となっていた。
 一次手続きでの難民認定数の低さと不認定数の急増が異議の未処理数を増やす一因となっており、異議手続きの抜本的な改革だけでなく、一次手続きの改善も求められている。


3. アフリカ出身の難民認定が相次ぐ。ウガンダ出身者が大阪高裁で勝訴後、コンゴ民主共和国出身者が異議で難民認定など。

〔説明文〕 

 4月、ウガンダ出身の難民が大阪高裁で勝訴(判決日2月27日)し、その後難民認定を受けた。9月にはコンゴ民主共和国出身の難民が異議手続で難民認定を受けた。このほか、アフリカ東部の国の出身者が一次で難民認定を受けたとの情報もあり、一次手続きにおける難民認定の「アフリカ枠」が倍増したのではないかとの指摘もされている。


4. 今野東先生と本間浩先生が逝去 

〔説明文〕 

 4月、難民問題への精力的な活動のほか、社会的弱者に対して暖かな視線と強い意志を持って活躍されていた今野東前参議院議員が65歳で逝去された。
 5月、難民法に関する多くの著書・論文を残し、NPO法人難民支援協会の上級顧問や難民研究フォーラムの代表などを務められた本間浩法政大学名誉教授が74歳で逝去された。
 日本の難民保護の精神的な要ともいえる2人を相次いで失った。ご冥福を心よりお祈り申し上げる。


5. 韓国で難民法施行 

〔説明文〕 

7月、東アジアで初となる独立した難民法が韓国で施行された。難民申請者が法的支援を受ける権利や就労する権利を定めており、認定手続や難民申請者の生活保障、難民認定者の社会統合政策などの改善が期待されている。
 韓国は、1992年に難民条約に加入し、日本の例にならって入管法に難民法を組み込んでいた。最初に難民申請を受理した1994年から2012年までの平均の難民認定率は12.4パーセントである。


6. 第三国定住難民受入れパイロット事業で2年ぶりに来日 

〔説明文〕 

 9月、第三国定住パイロット事業で2年ぶりに第4陣として4家族18人が来日した。前年は第3陣が出国間際で辞退したために来日者は0人となっていたが、今回は対象キャンプを広げての実施となった。
 日本は、第三国定住による難民受入れを行ったアジアで初めての国である。パイロット事業は2014年で終了し、2015年からは本格に第三国定住難民の受入れが始まる予定となっている。


7. 収容されたビルマ・ロヒンギャ庇護希望者が急死 

〔説明文〕 

 11月、ビルマ・ロヒンギャ族の難民申請者が、東京入国管理局で再収容された当日にクモ膜下出血で倒れ、意識不明のまま病院に搬送されたが数日後に亡くなった。意識不明で倒れた後の入管における対応の遅れについて、批判の声があがっている。


8. 難民審査参与員の意見と異なる法相判断3件 

〔説明文〕 

 2005年5月から施行されている難民審査参与員制度において、法務大臣は、初めて、難民審査参与員の全員又は多数意見と異なり、難民と認めない判断をした。法務大臣が難民審査参与員の意見と異なる判断をした3件のうち、2件については在特を付与し、もう1件については、本国政府の保護を受けていると考えられるとの理由で在特も与えなかった。
 「公正中立な第三者機関」という位置づけの難民審査参与員の意見を無視又は軽視し、漫然と「他の類似事案と比較考量し」て判断する手法は、参与員が審査に加わる意味を否定することになるものと懸念される。


9. 第6次出入国管理政策懇談会に難民専門部会設置。難民保護制度についての議論がスタート。渡邉彰悟代表がメンバーに選出 

〔説明文〕 

 11月、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会(親会)に「難民認定制度に関する専門部会」が設置され、全難連代表の渡邉彰悟弁護士が委員となった。4月か5月頃に中間報告が出され、年末頃まで議論が続く予定である。
 法務省が提案する主な論点は、複数回申請者や「濫用者」についての対策を施して難民申請者数を抑えることなどである。これに対し、親会メンバーからは、日本が難民受け入れの姿勢を国外に示すべきとの意見や、難民認定数の低さが日本のイメージの悪化につながるなどの指摘がされている。


10. 名古屋に難民異議申立事務局を設置。難民審査参与員が75人体制に増員 

〔説明文〕 

 難民異議申立数の増加とそれに伴う未処理案件の増加を受け、難民審査参与員が75人に増員された。特に名古屋入国管理局管内での異議申立数の増加が著しく、参与員名古屋班が2班に増やされ、難民異議申立事務局が設置された。 名古屋入管管轄地域においては、トルコ、パキスタン、スリランカ、ネパール出身者の難民申請数が多く、全体の8割を占める。


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