【2019年難民10大ニュース】

全難連2019年難民10大ニュース[PDF版]

1. 入管庁 組織改悪 出入国管理課下に難民認定室  

〔説明文〕 

  2019年4月1日より、従来、法務省の内部部局であった入国管理局が、法務省の外局となり名称も「出入国在留管理庁」に変更される組織変更が行われた。これに伴い、従来、総務課に所属していた難民認定室が、出入国管理部・出入国管理課の下部組織に置かれるという組織改編がなされた。この組織改編により、難民認定行政が出入国管理行政の下に置かれているという構造がより明確になり、これまでも悲惨であった難民認定数・難民認定率がより一層深刻なものになると懸念される。 

【声明等】全国難民弁護団連絡会議「出入国在留管理基本計画案に対する全難連からの意見」(2019年4月12日) 

【声明等】全国難民弁護団連絡会議「法務省発表「平成 30 年における難民認定数等について」を受けての声明〜濫用防止の名のもとに真に庇護を必要とする者の保護をないがしろにしてはならない〜」(2019年3月27日)


2. 緒方貞子さん逝去 

〔説明文〕 

 世界の緒方貞子氏であったと同時に,実は緒方氏は日本の難民行政にも強い関心を抱かれていた。1998年秋以後に日本の難民行政が動き始めたのは,緒方氏の強烈なプッシュがあったからである。もっともっと,私たちは緒方氏の思いを受けとめて,難民保護の実現に向けた力を尽くそうと思う。ご冥福をお祈りしたい。

【報道】「(平和考)「積極的」言葉だけでなく 元国連難民高等弁務官・緒方貞子さん」毎日新聞(2016年1月16日)

【報道】「インタビュー:日本の難民認定増やすべき=緒方元国連口頭弁務官」Reuters(2015年10月29日)

【報道】 「「難民受け入れは積極的平和主義の一部」 緒方貞子氏」朝日新聞(2015年9月24日)

【報道】「Ex-UNHCR commissioner Ogata seeks humane treatment of refugees in Japan」共同通信/Japan Today(2009年5月16日)


3. 仮放免不許可処分取消一斉訴訟 

〔説明文〕 

 2018年2月28日の法務省の内部指示以降、超長期化している入管収容に対して、2019年4月25日、第一陣として原告7名が東京地裁に仮放免不許可処分取消訴訟を提起した。原告には、難民申請者や健康状態が著しく悪化している者も含まれ、早期の仮放免を求めている。判決は年末から年明けの見通し。

【政府】平成30年2月28日付け法務省管警第43号法務省入国管理局長指示「被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の更なる徹底について」

【報道】「「入管での長期収容は国家による監禁」難民申請者らが集団提訴」冨田すみれ子/BuzzFeed.News(2019年4月25日)


4. 入管収容実務のさらなる悪化、収容送還専門部会の設置  

〔説明文〕 

 入管における被収容者の長期収容が深刻化する中、全国の入管の収容施設内に収容されている外国人が多数、長期収容に抗議するハンガーストライキを行い始めた。そうした中でついに餓死者が出る事態に至った。これに対し、入管は、ハンストを行い、著しく体重が減少した被収容外国人に対して、2週間という極めて短期間の仮放免を許可し、2週間後に再収容するという手段で対処した。入管の長期収容、上記仮放免の運用等の検討のため、法務大臣の私的懇談会である「出入国管理政策懇談会」の下に、「収容、送還に関する専門部会」が設置されたが、議論が収容の徹底・送還の促進の方向に進むことが懸念される。

【政府】法務省「収容・送還に関する専門部会について」「収容・送還に関する専門部会開催状況」(12月27日時点で第4回会合分まで掲載)

【声明等】全国難民弁護団連絡会議、ほか5団体「長期収容・「送還忌避者」問題解決のための共同提言」(2019年12月18日)

【声明等】日本弁護士連合会「大村入国管理センターにおける長期収容に関する人権救済申立事件(勧告)」(2019年11月25日)

【報道】「(今週の一言)オリンピックのために難民の収容はいらない」大橋毅/法学館憲法研究所(2019年11月4日)

【声明等】東京弁護士会「「収容・送還に関する専門部会」に対し、人権保障の観点からの抜本的な議論を求める会長声明」(2019年10月31日)

【報道】「入管でのナイジェリア人“餓死”を「自業自得」と切り捨てる社会でいいのか 児玉晃一弁護士「入管はブラックボックス」」Courrier(2019年10月31日)

【声明等】全国難民弁護団連絡会議、ほか8団体「人道危機にある入管収容の現場から人間の尊厳の確保を求める声明」(2019年10月25日)

【声明等】「入管施設における恣意的収容の廃止及び法的改善を求める」ヒューマンライツ・ナウ(2019年10月18日)

【報道】「特集「入管に収容されている外国人が ハンストで餓死。入管施設で何が起きているのか?」児玉晃一(弁護士)×荻上チキ(評論家)」荻上チキ/TBSラジオ(2019年10月2日)

【政府】出入国在留管理庁「送還忌避者の実態について」(2019年10月1日)【政府】出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について」(2019年10月1日)

【報道】「長期化する入管収容 20年取り組む弁護士「今が最悪」」塩倉裕、鬼室黎/朝日新聞(2019年9月9日)

【報道】「入管、長期化する収容 弁護士・児玉晃一さん」朝日新聞(2019年9月5日)

【報道】「(支え合う「移民時代」)抗議のハンストも…外国人収容の長期化は問題 児玉晃一弁護士」和田浩明/毎日新聞(2019年8月15日)

【声明等】東京弁護士会「外国人の収容に係る運用を抜本的に改善し、不必要な収容を直ちにやめることを求める会長声明」(2019年7月1日)

【声明等】福岡難民弁護団「大村入国管理センターでのナイジェリア人の死亡事故についての声明」(2019年6月27日)


5. 恣意的拘禁WGに申し立て 

〔説明文〕 

 必要性相当性が問われないまま、長期収容、とりわけわずか2週間の仮放免後の再収容が行われている事態に鑑み、本年10月、2名の難民申請者である被収容外国人が、国連の恣意的拘禁ワーキンググループに対し、こうした収容が恣意的拘禁にあたるとして通報を行った。調査の上、国際人権条約上禁じられている恣意的拘禁にあたると判断されれば、同ワーキンググループよりその旨の見解が出されることになる。

【報道】「(特集ワイド)「2週間だけ仮放免」 繰り返される外国人長期収容 「一瞬息させ、水に沈めるようだ」」井田純/毎日新聞(2019年11月12日)

【報道】「「ハンスト無駄」見せしめか 外国人長期収容者死亡で批判→いったん仮放免、すぐに再収容…」井田純/毎日新聞(2019年9月2日)

【報道】「入管の仮放免延長求め提訴 茨城・牛久でハンストの2人」鬼室黎/朝日新聞(2019年8月13日)

【声明等】日本弁護士連合会「入国管理センターにおける被収容者の死亡事件及び再収容に関する会長声明」(2019年8月8日)

【声明等】東京弁護士会「人間の尊厳を踏みにじる外国人長期収容と違法な再収容に抗議する会長声明」(2019年7月31日)

【声明等】全国難民弁護団連絡会議、全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い「再収容に関する緊急共同声明」(2019年7月24日)

【報道】「絶食ハンストした2人、入管が再収容 仮放免から2週間」鬼室黎/朝日新聞(2019年7月24日)


6. 入管収容(処遇・医療)・提訴 

〔説明文〕 

 本年3月12日、東京入国管理局に収容中のトルコ国籍のクルド人男性が強く体調不良を訴え、その病状を心配した知人の要請で救急車が現地に出動したが、職員の説明に基づいて救急搬送の必要が無いとして搬送が回避されるという事態が起きた。入管収容施設において、必要な医療を提供せずに放置するなど、被収容者の生命健康が著しく軽んじられており、改善の兆しが見えない。

【報道】「入管施設の長期収容者、処遇改善必要 佐々木・出入国在留管理庁長官認める」和田浩明/毎日新聞(2019年9月9日)

【声明等】東京弁護士会「入管収容施設で繰り返される被収容者の生命・健康の軽視や死亡事件に抗議し、適時適切な医療の提供及び仮放免の適切な運用を求める会長声明」(2019年4月18日)

【声明等】入管問題調査会、全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い、カメルーン人男性入管死亡事件弁護団「チョラク・メメット氏の解放を求める緊急共同声明」(2019年3月13日)


7. スリランカようやく難民認定、国賠提訴 

〔説明文〕 

 2006年10月に難民申請したスリランカ人男性が、同年11月に不認定処分を受け、同不認定処分に対する取消訴訟の勝訴判決が2011年4月に確定した後、再度、同年12月に再度不認定処分を受けた事件で、再度不認定処分の取消および難民認定義務付けを求めて提訴したところ、東京地裁及び東京高裁で全面勝訴し、同確定判決に基づき2019年1月、国は当初の難民申請から約13年ぶりに男性を難民認定しました。この間、家族との絆など難民認定を受けられなかったことにより男性が失ったものはあまりに重く、男性は、本年8月23日に再度の不認定処分に対する国家賠償請求を提訴しました。この訴訟を通じて、男性の人間の尊厳を回復するとともに、濫用事例を理由とした迅速化にばかり傾いている日本の難民行政に対して誤った難民認定処分が行われた場合に生じる結果の重大性を認識させ、難民認定手続きにおける国際基準の遵守および正確性の担保の重要性を強く訴えるべく、弁護団としては国賠訴訟を勝ち切りたいと考えています。

【報道】「「確定した難民認定無視した」 スリランカ人が国を提訴」新屋絵理/朝日新聞/MSN(2019年8月23日)

【報道】「難民認定巡り、国に賠償請求 スリランカ人男性が提訴」共同通信/佐賀新聞(2019年8月23日)

【報道】「難民認定、高裁でもスリランカ人原告が勝訴 国が不認定」朝日新聞(2018年12月5日)


8. イラン/キリスト教改宗者難民不認定処分取消及び義務付け判決 

〔説明文〕 

 2019年9月17日、東京地裁民事38部でイラン国籍のキリスト教改宗者に対する難民不認定処分取消及び義務付け判決が出された。改宗事案による難民勝訴判決は初めてと考えられる。原告は2回目の申請であったが、2回目申請時には改宗者に対する迫害状況が悪化していたことなどが考慮された。原告は並行して、法務省の「さらなる運用の見直し」による在留期間更新許可申請不許可処分に対しても取消訴訟を提起していたが、こちらも同日、認容判決が出された。

【報道】


9. 空港収容 引き続き激減  

〔説明文〕 

 2019年においても、前年に引き続き、空港等の港湾における申請数が著しく減少していると指摘されており、水際で申請が抑制され続けていることが懸念される。また、同年には、「短期滞在」で上陸申請をしたスリランカ人に対し、庇護を求めるか否かを確認する確認票に署名させる運用がされていることが判明しており、これに署名したスリランカ人の難民認定申請書を受理しなかった事例が報告されている。

【声明等】全国難民弁護団連絡会議「スリランカ出身庇護希望者の港湾等における取扱いに関する要望書」(2019年6月18日)

【報道】

【政府】

  • 平成30年11月16日付け東京入国管埋局成田空港支局第一審判部門首席審査官事務連絡「セカンダリ審査又は口頭審理において「短期滞在」の在留資格を決定して上陸許可を行うこととなったスリランカ人に対する取扱いについて(依頼)」(不開示)
  • 平成30年8月10日付け東京入国管理局成田空港支局審査監理官事務連絡(短期滞在入国後の難民認定申請が多い国に対する厳格審査指示文書の発出について)


10. 行政争訟奨励賞を受賞 

〔説明文〕 

 日弁連法務研究財団にて本年度から設置された「滝井繁男行政訴訟奨励賞」の第1回の栄えある賞が当会議に授与された。1997年以来の当会議の活動と,難民不認定処分取消等を求める行政訴訟における,当会議の会員の実践と活動が評価された結果である。

【参考】公益財団法人日弁連法務研究財団「令和元年度「滝井繁男行政争訟奨励賞」受賞者決定のお知らせ」(2019年12月)


番外編 

x. 第三国定住事業の拡大

x. 裁判を受ける権利

x. 不法残留幇助事件

x. 同性愛者の難民認定(2018年)


参考資料 2019年の難民関連の報道一覧 


参考資料 2019年のその他収容長期化関連の報道一覧 


参考資料 2019年のその他の処遇関連の報道一覧 


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