法相会見(2021年5月11日)入管法改正案等に関する質疑について

法務大臣閣議後記者会見の概要「入管法改正案等に関する質疑について」(2021年5月11日)(外部リンク:法務省ウェブ

入管法改正案等に関する質疑について 

【記者】
 入管法改正案の国会審議についてお伺いします。
 法案の審議が衆議院法務委員会で大詰めを迎えておりますが,野党側は名古屋入管でのスリランカ人女性の死亡事案を巡り,女性の施設内での様子を映したビデオ映像を理事懇談会に提供するよう求めており,ビデオが提供されない場合は採決に応じない構えを見せています。
 法務大臣として今後の対応方針をお聞かせください。

【大臣】
 国会審議の在り方,進め方につきましては国会でお決めになることでございまして,そのことを御理解いただきたいと思っております。
 法務省といたしましては,送還忌避や長期収容の解消は大変重要な課題であると認識しておりまして,これまで様々な取組を行いつつ,不断の検討を進めてきたところでございます。
 そのような検討を経て,退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとするため,改正法案を今国会に提出させていただいたところでございます。
 今回の改正法案につきましては,送還忌避や長期収容の解消など喫緊の課題に対応するものでございまして,現場は常に絶えず動いております。法務省といたしましては,改正法案について,是非御審議を進めていただきたいと考えているところでございます。

【記者】
 スリランカ人女性の死亡の経緯について,支援団体のSTARTが作った面会記録の内容が,中間報告にはほとんど反映されておりませんでした。大臣に確認したいのですが,この支援団体が3月に入管庁の担当者に出した10枚の面会記録,これを事前にしっかり読んだ上で,今回の中間報告を出すことを承認したのでしょうか。

【大臣】
 まず,今回の事案につきましては,一人の命が失われているという状況でございまして,私としても大変重く受け止めているところでございます。この方の体調が時々刻々変化する中,病気の状態が医師との関係の中でどのような状況にあったのか,そして事実関係についてしっかりと調査をするということが,今回の非常に肝の基本的な考え方であります。このことについて中間報告の中でしっかりと明らかにするということも大事ではないかと。このようなことで中間報告をなるべく早く出させていただいたところでございます。
 今回,中間報告に対しまして,様々な御指摘を頂いていることにつきましても,もちろん承知をしているところでございます。出入国在留管理庁に対しましては,中間報告に対する様々な御指摘がいろいろなところであったということを真摯に受け止め,そして調査に加わっていただいている第三者の方々と共に,飽くまで公平・客観的な観点に徹して,最終報告に向けまして,評価・検討を進め,また改善策についてもしっかりと提示することを指示しているところでございます。
 御本人,また支援者の方の訴えへの対応を含めまして,当局等の対応の適否につきましては,必要に応じ追加的な事実の確認を行った上で,事実関係に評価・検討を加え,可能な限り速やかに,必要な改善策を含む最終調査報告としてまとめる方針でございます。
 私自身,この記者会見の場でも重ねて申し上げてきましたけれども,客観・公正な立場でこの調査がなされるということが非常に大事であると思っております。
 現在,この最終結果報告を待つということに私自身は徹しておりまして,御指摘がございましたような点も含めまして,調査内容の詳細に,私自身がこうした場で立ち入った所見を述べるということについては差し控えるべきであると考えております。

【記者】
 所見がどうかではなく,これを読んでいたかをお聞きしています。

【大臣】
 そういうことも含めまして,全体についてどうなのかということについては,調査チームがしっかりと対応すべきことと思っております。

【記者】
 この支援記録の面会書には「2月9日,トイレに行きたくて職員を呼んだが,一人でやってと言われ,立ち上がろうとして転び,左わき腹などを打ち,床に倒れていると,収容中の女性が抱きかかえてくれた」と話していたそうです。このとき彼女はもう車椅子で,歩けない状況でした。
 中間報告では「職員は介助を適宜行っているとの報告」というふうに書いてありますが,やはりスリランカ人女性がうそをつく理由はなく,この報告書も含め信用なりません。
 中間報告は入管に都合の悪いスリランカ人女性の指摘,これをことごとく省き,入管対応の問題に向き合っていないんじゃないかと,面談していた支援者の方々は批判をされています。
 この点について,もう一度大臣の見解をお願いします。

【大臣】
 ただいまのようなことも含めまして,中間報告にどのような記載があったのか,様々な御指摘がございます。そのことも踏まえまして,今回最終報告に向け,調査を更に深掘りし,また同時に検証をしっかり進め,そして改善策も含めて最終報告にまとめ上げると,これが調査チームにお願いをしたことであります。第三者の方々もその意味で,いろいろな角度から,こうした事案についてしっかりと見ていただいているということでございます。
 御指摘にあったように,それに対しての評価やコメント,こうしたことを私自身,それに対してどうだということを申し上げること自体が,調査内容そのものに立ち入るということになりますので,先ほど申し上げましたとおり差し控えるべき事柄であると思っております。
 最終報告に向けて,しっかりとチームが,様々な御指摘も含めまして調査を進めているという状況でございます。

【記者】
 中間報告の評価をしないということですが,これだけ様々なことが省かれている報告書,法務省トップとしてもう少し問題意識を強めてもらいたいと思います。
 スリランカ人女性は,職員が「病気じゃない,コロナだから入院できない」と言っていたと,その医師は驚いていたと,また,職員は,外に出るために私がずっとうそをついている,演技をしていると思っているとも話しておりました。他にも職員が詐病を疑っていたことを示す彼女の証言が幾つもこの面会記録にあります。
 やはり大臣が今やるべきは,これだけ問題の多い対応を続けていた入管に更なる権限を付与するような今回の法案を通すことではなく,入管の実態を徹底的に第三者に調査をさせ,関係する職員を処分し,収容者への医療ケア等の見直し,これをまずやるべきだと思うのですが,この点いかがでしょうか。

【大臣】
 ただいま御質問がございました御意見も,真摯に受け止めているところでございます。今回の中間報告は,先ほど申し上げましたとおり,その方の体調が刻々と変化をしているという中でのことについてでありまして,特に医療的な体制がどうだったのかということについては,外部の医師も関わっていることでもありますので,そういったことについて,しっかりと調査をするということから始まったところでございます。
 この過程の中でいろいろな御指摘がございました。そういったことにつきましても,真摯に耳を傾けながら,調査をしっかりと深掘りし,更に全体像が判明できるように,そしてまた課題や問題についてどのように検証するのか,このことも併せて,最終報告でまとめ上げるということでございます。私自身の問題意識は,冒頭から,客観・公正な事実関係の調査をするということが何よりも大事であると思っております。
 そのことに対しまして,いろいろな御意見があったということは承知をしておりますが,やはりチームが,第三者を含めて編成されておりますので,そこで責任のある取組をしていただくということについては,私はその結果をしっかりと待ちたいと思っております。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。