発言者:稲田朋美(自由民主党)
日付:2021年5月12日
会議:第204回国会 衆議院法務委員会
○稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。
まず、本委員会でも非常に重大な、そしてまた
悲痛な事案として取り上げられてきた名古屋入管
におけるスリランカ女性の死亡事案について、仮
放免をすべきだったのではないか、また、医療対
応が不十分であったのではないかという疑問があ
って、ひいては、改正法の前提として、入管の体
制そのものが不十分だったのではないかという指
摘がなされているところでございます。
死因も含めて、大臣のリーダーシップで、第三
者も入れて、今、事案の解明、調査中なんですけ
れども、この委員会で、亡くなられたスリランカ
人女性の収容中のビデオ映像を開示すべきである、
そういう指摘がなされてまいりました。
その点についての大臣の見解をお伺いいたしま
す。
○上川国務大臣 今般亡くなられた方の収容中の
ビデオ映像の開示について御質問がございました。
法務省といたしましては、相当ではないという
ふうに考えているところでございます。
その理由として、まず、ビデオ映像につきまし
ては、収容施設の整備の状況、職員の状況等を撮
影したものでございまして、保安上の観点から、
その取扱いには非常に慎重な検討を要するもので
ございます。ビデオ映像を開示することによりま
して、施設の設備や、また形状、職員による巡回
の体制や頻度、また、監視カメラの撮影範囲や解
像度などの具体的な状況が公となりまして、逃走
の防止や施設内の秩序維持といった保安上の対応
に支障を及ぼしかねないというふうに考えており
ます。
また、死亡に至る状況を撮影をした映像でござ
いまして、亡くなられた方の名誉また尊厳の観点
からも慎重な配慮を要するものと考えております。
さらに、現在、最終報告に向けまして、第三者
の方々に調査に加わっていただいて、そして公正、
客観的に調査検討を行っていただいている状況で
ございます。ここでビデオ映像を開示し、その内
容に基づきまして国会で質疑が行われた場合、ビ
デオ映像について一定の評価づけがなされること
となり、第三者の方々が先入観なくビデオ映像を
含む関係資料を検討することに対して影響を及ぼ
す可能性もあるというふうに考えております。
本件に関しましては、様々な御指摘、そして御
疑問、こうしたことに関しまして、最終報告書に
おきましてしっかりとお答えすることができるよ
う、公平、客観的な観点に立った調査の取りまと
めを進めさせる方針でございます。
○稲田委員 私も、このビデオ映像に関しては大
臣と全く同じ考えでございます。
もう既に、死体検案書、また、診療情報提供書
二通、職員作成の報告書、看護師メモ、血液検査
結果、また第三者との調査に関する契約関係書類
等々、委員の皆さんから御指摘があった、要望の
あった書類については閲覧をいただき、野党の先
生方も本当に熱心に、熱意を持って閲覧をされて
おられます。また、法務省からも見解のペーパー
も出されてきたところです。この間、誠実に対応
し、死因以外の処遇についてどうだったのか、一
定の評価が可能な状況にもなってきていると思い
ます。
しかも、この問題については、最終報告が出た
段階で、それが閉会中であったとしても閉会中審
査をやるべきではないか、両筆頭間で協議をせよ
と委員長から指示を受けているところでございま
すし、与野党共に、この問題について真摯に向き
合い、更に質疑を、最終報告が出た段階でもやっ
ていこうというふうに思っているところでござい
ます。
一方で、仮放免をすべきであったかどうか、ま
た処遇はどうであったかということの評価をする
ことを目的として、そのための手段として、この
スリランカ人女性が亡くなられる前日、亡くなら
れる当日、その様子を開示をするということで失
われるもの、先ほど大臣が様々御指摘をいただき
ました。それと、それによって得られるものとい
うものを考慮した場合に、私は、このビデオの開
示については慎重であるべきだ、このように考え
ております。
さて、この改正法案は、退去強制令書が発布せ
られたにもかかわらず送還を拒む、いわゆる送還
忌避者に対応することを目的の一つといたしてお
りますが、そもそも、退去強制令書が発付された
外国人はどのような外国人であり、なぜ我が国か
ら退去させなければならないのかについて法務当
局の見解を伺います。
○松本政府参考人 お答えいたします。
退去強制令書が発布された者とは、我が国に不
法に残留する者や、我が国で罪を犯し、相当期間
の実刑に処せられた者など、退去強制事由に該当
し、しかも、在留を特別に許可すべき事情が認め
られない者でございます。
在留資格を有する外国人についてのみ入国や在
留を認めることを根幹としております我が国の出
入国在留管理制度におきましては、退去強制が決
定した外国人を迅速、確実に送還できないことは、
我が国の在留資格制度そのものの崩壊につながる
のみならず、日本人や我が国のルールを守って生
活する多くの外国人の安心、安全な社会を脅かし
かねないものと認識しておるところでございます。
以上でございます。
○稲田委員 この改正法案に反対する立場から、
改正法案は難民を送還するものである、またある
いは難民を犯罪者にするものだというような指摘
がなされておりますが、私は全くこれは違うとい
うふうに考えております。また、この改正によっ
て外国人の人権は更に守られる、そういう結果に
なると思いますが、この点について法務当局に伺
います。
○松本政府参考人 お答えいたします。
改正法案は、難民を送還するものでもありませ
んし、難民を犯罪者とするものでもございません。
入管法上、送還される者は、退去強制事由に該
当し、在留特別許可もなされず、退去強制令書が
発布された者のみでございまして、難民等の認定
を受けて在留が許可された者は、退去強制令書が
発布されることはございません。
さらに、改正法案は、難民等の申請回数自体を
制限するものではなく、三回目以降の難民等の認
定申請をした者でありましても、認定を行うべき
相当の理由がある資料を提出した場合には送還が
停止されることとなっております。
また、改正法案における退去の命令制度におき
ましても、難民として保護すべき者は対象となら
ず、難民を犯罪者とするものでもございません。
そのほか、この改正法におきましては、在留特
別許可の申請手続の創設や、難民に準じて保護す
べき者を補完的保護対象者として認定する制度を
創設しております。
さらに、長期収容の解消の観点から、全件収容
の現行制度を抜本的に改め、収容に代わる選択肢
としての監理措置を創設しております。
さらに、医療の充実を含め、被収容者の処遇を
一層適正なものとするための措置等を規定してお
ります。
さらに、送還促進策といたしましても、退去強
制令書の発付を受けた者が自らの負担で本邦から
退去したときは上陸拒否期間の短縮を可能とする
措置を設けるなど、退去強制手続を受け入れる外
国人の利益にも配慮しているところでございます。
以上でございます。
○稲田委員 まず、この改正によって難民の要件
が厳しくなるというわけではないということであ
ります。むしろ、補完的保護制度で、難民でなく
ても在留許可が与えられる、そういう場合が新設
をされるわけでございます。
また、監理人、監理措置制度というのもできま
して、現在の全件収容というのを改めて、逃亡の
おそれがない場合とか、また証拠隠滅のおそれが
ない場合などは親族や支援者の元で生活できる制
度、監理措置を新設をしております。例えば、今
回のスリランカ人女性の場合であっても、新法の
下では、収容することなく、この監理措置という
ことが取られる可能性もあったのではないかと思
います。
また、仮放免も、健康上、人道上その他これに
準ずる理由により収容を一時的に解除する制度と
いうふうに改められたところでございます。そう
いうことからいたしますと、非常に外国人の人権
に配慮をした、そういう規定だと思います。
また、その処遇についても、八十項目以上の規
則に書かれていたものが法律の中に規定されるよ
うになりました。例えば、食事を絶っておられる
方を強制的に入院をして、そして治療を受けさせ
るというようなことも書かれているわけでござい
ます。
そういう意味において、やはり外国人の人権を
私は更に尊重する内容になっていると思います。
大臣にお伺いをいたします。
この改正法により、全件収容主義は改められ、
そして長期収容は解消していくことになるのでし
ょうか。お伺いをいたします。
○上川国務大臣 現行の入管法におきましては、
退去強制手続を取る場合、収容令書又は退去強制
令書により収容をする、これが原則とされている
ところでございます。
改正法案におきましては、収容に代わる選択肢
として、当該外国人の逃亡のおそれの程度等を考
慮して、相当な場合に、収容せずに、監理人によ
る監理の下、社会内で生活をしながら退去強制手
続を進める監理措置、これを創設することといた
しました。
監理措置に付された場合は、収容令書が発付さ
れず、退去強制令書が発付された後も一切収容さ
れないまま退去強制手続を進めるということが可
能になります。これによりまして、いわゆる全件
収容主義は抜本的に改められることとなるところ
でございます。
この監理措置の創設等によりまして、被収容者
数、中でも長期の被収容者数は減少し、長期収容
が解消されていくものと認識をしております。
法務省といたしましては、改正法案における様
々な方策を駆使し、我が国に包摂すべき外国人を
一層確実に包摂、保護していくとともに、外国人
の方々の権利利益にもしっかりと配慮しながら適
正な送還を実現し、監理措置を適切かつ積極的に
活用することによりまして、長期収容の解消に努
めてまいりたいというふうに思います。
そして、外国人は地域のコミュニティーを構成
する一員として受け入れるという、こうした観点
から、我が国に入国、在留する外国人の方々が新
制度に対して十分な知識そして理解をお持ちいた
だいた上で生活をしていただくことができるよう
に、外国人に対する積極的な広報、そして外国人
とのコミュニケーションの徹底、そして外国人の
人権、利益に配慮した出入国在留管理行政の実現
に取り組んでまいりたいというふうに考えており
ます。
○稲田委員 今回の法案、退去すべき人にはしっ
かり退去いただく、反対に、保護すべき外国人の
方、難民の要件に当たらなくてもその範囲は広げ
る、そして、様々な、今までの特別許可ですとか
仮放免の手続、しっかりとその手続の保証もやる、
そういった優しさと厳しさ、外国人の人権をしっ
かりと守りつつ適正な入国管理を行っていく、そ
れを両方兼ね備えた非常に重要な法案だというふ
うに思います。そういう意味において、今国会に
おいてこの法案を成立させることが必要であると
いうことを指摘して、私の質問を終わります。
ありがとうございました。