国会質疑等(2007年12月18日)福島みずほ議員(社民・参)質問主意書[入管収容]

国連の拷問禁止委員会の勧告に対する政府の対応及び入国管理局での収容実態等に関する質問主意書(外部リンク:参議院ウェブ

提出者:福島みずほ議員(社会民主党)
番号:第168回国会 質問80号
提出日:2007年12月12日
答弁書受領日:2007年12月18日

[168参-080] 071212質-福島みずほ(社民)_071218答-福田康夫首相 [拷問禁止委員会‐収容状況](合体版)[PDF]

答弁書80号 参議院議員福島みずほ君提出国連の拷問禁止委員会の勧告に対する政府の対応及び入国管理局での収容実態等に関する質問に対する答弁書(2007年12月18日)

国連の拷問禁止委員会の勧告に対する政府の対応及び入国管理局での収容実態等
に関する質問主意書

 

国際化の進展とともに、海外からの移住者は色々な形で増加しており、入国管理行政の人権に配慮した適正な対応が求められてきている。また、1998年11月の国連の規約人権委員会の総括所見や、本年5月の国連の拷問禁止委員会(以下「拷問禁止委員会」という。)の総括所見でも日本の入国管理手続や入国管理局の収容施設(以下「入管施設」という。)の処遇について懸念や勧告が出されるなど、国際人権機関から注目を集めている。

一方、ここ数年、法務省入国管理局もこうした懸念や勧告を受けて、人権に配慮したいくつかの改善を試みるなど、人権に配慮した運用を模索してきているとも見受けられる。そこで、国際的にも更に信頼ある日本の入国管理行政を構築するために、以下の点につき質問する。

 

一 拷問禁止委員会の勧告について

日本も加入している拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する条約に基づき、本年5月9日と10日にジュネーブで、拷問禁止委員会が同条約の実施状況に関する第一回日本政府報告書の審査を行った。本年5月21日に同委員会は総括所見を公表し、日本の入国管理行政について懸念を表明し、勧告を行った。

 

1 拷問禁止委員会は、総括所見第14項で、入管施設内における「多数の暴行の疑い、送還時の拘束具の違法使用、虐待、性的いやがらせ、適切な医療へのアクセス欠如といった上陸防止施設及び入国管理局の収容センターでの処遇」について懸念を表明している。さらに、同項で「入国管理収容センター及び上陸防止施設を独立して監視するメカニズムの欠如、特に被収容者が入国管理局職員による暴行容疑について申立てできる独立した機関の欠如」への懸念を表明し、「処遇に関する不服申立を審査する独立した機関の設置」を勧告している。こうした機関の設置については、1998年11月の国連の自由権規約委員会の日本政府に対する勧告でも指摘されてきた事柄である。現在法務省内部で、この「独立した第三者機関」の設置について、「刑事拘禁施設」とともに、設置の方向で検討を行っていると聞いている。

(一) 「独立した第三者機関」の設置について、弁護士会やNGOといった国民の意見を聞く場を設ける予定はあるか明らかにされたい。

一の1の(一)について

入国管理局の収容施設に収容されている被収容者は、被収容者処遇規則(昭和56年法務省令第59号)に基づき、自己の処遇に関する入国警備官の措置に不服があるときは、所長等にその旨を申し出ることができ、また、不服の申出について所長等の判定に不服があるときは、法務大臣に対し異議を申し出ることができる制度が整備されており、これにより処遇の適正を図ることが可能であるので、あえて不服の申出に関して独立した審査機関を設ける必要はないと考えている。

また、入国管理局の収容施設は、退去強制事由に該当する者を退去させるという行政目的実現のために外国人の身柄を一時拘束するための施設であり、刑事施設とは目的・性格が異なるものであるが、入国管理局の収容施設も身柄を拘束する施設であるという点では、刑事施設と共通していることから、法務省としては、刑事施設視察委員会の運用状況等をも参考にし、御指摘のような機関を設けることの是非を含め、検討してまいりたい。

(二) 「独立した第三者機関」の監視対象に、上陸防止施設も入っているか明らかにされたい。また、入っていない場合は、その理由を示されたい。

一の1の(二)について

上陸防止施設は、上陸許可を受けることができなかった外国人が直ちに本邦から出国することができないと認められるときに、出国するまでの間、短期間とどまるための施設であり、入国管理局の収容施設とはその性格を異にしていることから、上陸防止施設を対象として御指摘のような機関を設けることは考えていない。

2 日本の入管施設の無期限・長期にわたる強制収容に関して、拷問禁止委員会は「特に弱い立場にある人々が送還を待つ間の収容期間に上限を設置すべき」との勧告をしているように、入管施設での無期限・長期収容が課題となっている。

(一) 本年10月1日時点において、入管施設に収容されている外国人の人数を示されたい。また、このうち収容期間が、半年未満、半年以上1年未満、1年以上1年半未満、2年以上別の内訳を明らかにするとともに、2年以上収容されている場合は、その具体的な期間、国籍別の人数、施設名をそれぞれ示されたい。なお施設を移された場合は、収容期間を合算して示されたい。

一の2の(一)について

平成19年10月1日現在、入国管理局の収容施設に収容されている外国人は1,653人である。これを収容期間別で見ると、半年未満が1,535人、半年以上1年未満が91人、1年以上1年半未満が23人、1年半以上2年未満が4人であり、2年以上収容されている者はいない。

なお、右に述べた収容期間別の人数は、平成19年10月1日現在で収容されている外国人の当該収容施設における収容期間別の人数であり、お尋ねのように「施設を移された場合は、収容期間を合算して」お示しすることは、その調査に膨大な作業を要することから、困難である。

(二) 無期限・長期収容による心身の健康被害を避けるために、現状では仮放免制度の弾力的な運用を行っていると察するが、より根本的には、退去強制命令発布後の収容期間の上限を制度的に設ける必要があると考えるが、この点につき、現在の検討状況を明らかにされたい。

一の2の(二)について

出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)において、退去強制令書が発付された者については、速やかに送還しなければならず、直ちに送還することができないときは、送還可能のときまで収容所、収容場等に収容することができる旨が定められている。

 また、長期間にわたって送還できない場合や、収容期間の長短を問わず、年齢、健康状態等にかんがみ人道的配慮を要する場合には、個々のケースに応じ、仮放免制度を弾力的に運用し、一時的に身柄の拘束を解くという措置をとっており、これにより、収容期間の長期化の防止を図ることができると考えているところ、他方、仮に退去強制令書発付後の収容期間の上限を制度的に設けるとなると、逃亡のおそれ、違法な就労等の開始、送還時の身柄の確保の困難化等の種々の問題への対応が難しくなるものと考えている。

二 未成年者の収容と退去強制について

児童の権利に関する条約(以下「子どもの権利条約」という。)第3条(子どもの最善の利益)を考慮し、保護者が出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反に問われた場合、日本の学校にて就学中の未成年者については、本人及びその養育親の退去強制を見合わせ、在留特別許可を与えるなどの方策を、法務省はケースによっては、とっていると認識している。しかし、小学校に在籍をしている者及びその養育親に「在留特別許可」が認められることはまれであり、2001年以降では、入管法違反者の摘発が強化されている。

そこで、未成年者のいる家族の収容と退去強制について、以下の点を明らかにする必要がある。

 

1 日本には、未成年者を入管施設へ収容することを制限する法律はない。また、学齢期の子どもの収容を避ける取扱いを明記した法律もない。日本の入国管理行政は「全件収容主義」をとっており、入管法上の違法状態にある場合、収容されることが、法律上の建前であると、政府は主張している。これは、子どもの権利条約第三条(子どもの最善の利益)、第二十二条(難民の子どもの保護・援助)、第二十八条(教育への権利)、第三十七条(死刑・拷問等の禁止、自由を奪われた子どもの適正な取り扱い)(b)及び(c)の各号の違反になると考えるが、政府の見解を示されたい。

二の1について

退去強制手続における収容は、退去強制事由の有無の審査を円滑に行い、退去強制処分が確定したときには被退去強制者の送還を確実に実施するため、その身柄を確保するとともに、被退去強制者の本邦における在留活動を禁止する目的から行っているものである。

児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号。以下「児童の権利条約」という。)第3条は、公共の利益等を考慮に入れた結果、児童の不利益になるような措置がとられることを必ずしも排除するものではないと解されるので、右のような目的から行う退去強制手続における収容は、同条に違反しないものと考えている。

一般に、入管法第61条の2に規定する「難民である旨の認定」(以下「難民の認定」という。)を受けた児童については、退去強制手続により収容されることはない。児童の権利条約第22条は、「適当な保護」及び「適当な措置」をとると規定するにとどまるので、難民の認定を申請した児童について、右に述べた目的から行う収容がなされたとしても、同条に違反するものではないと考えている。

児童の権利条約第28条に規定する「教育についての児童の権利」は絶対的なものではなく、これに対する合理的な制限は許容されると解されており、退去強制手続における収容により、教育を利用する機会等が制限されたとしても、同条に違反するものではないと考えている。

児童の権利条約第37条(b)に規定する「逮捕、抑留又は拘禁」とは、刑罰法規に違反したことを理由として自由をはく奪することを、同条(c)に規定する「自由を奪われたすべての児童」とは、刑罰法規に違反したことを理由として自由をはく奪された児童をそれぞれ指していると解されており、入国管理局の収容施設に児童を収容することは、同条(b)又は(c)に違反するものではないと考えている。

なお、収容令書又は退去強制令書の執行に際しては、年齢、健康状態等にかんがみ、人道的配慮を要する場合には、仮放免を許可するなど、児童の最善の利益にも十分配慮した運用を行っている。

2 子どもの言語習得、特に学習言語の習得には小学校時代が最も重要な時期であり、この時期に退去強制を執行することは、差し控えるべきとの言語教育の専門家の指摘もあるが、この点について政府の見解を示されたい。

二の2について

法務省としては、児童については、一般に可塑性に富むものであって、本邦において日本語による生活環境の中で過した場合にあっても、本国において母国語を解する親の監護・養育を受けることを考慮すれば、時の経過とともに本国における生活環境に慣れることは十分に可能であると考えているところ、児童の年齢等によっては、それが難しい事案もあることもあり、在留特別許可の許否に当たっては、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、生活状況等のほか、当該児童の言語習得状況も含めた諸般の事情を総合的に勘案して、判断することとしている。

3 親の入管施設への収容に伴い、未成年者が親から分離され、児童相談所へ保護されることや親戚などへ預けられる場合があるほか、父親のみを収容し、母親と子どもについては仮放免を認めている場合も少なくない。未成年者のいる家族を収容の対象とすること及び家族を分離して収容すること自体に人権上の問題があると考えるが、政府の認識を示されたい。また、これは、子どもの権利条約第九条(親からの分離禁止と分離のための手続)に抵触すると考えるが、政府の認識を示されたい。

二の3について

退去強制手続における収容の目的は二の1についてで述べたとおりであり、御指摘のような人権上の問題があるとは考えていない。

また、児童の権利条約第九条1について、我が国は、「出入国管理法に基づく退去強制の結果として児童が父母から分離される場合に適用されるものではないと解釈するものであることを宣言」していることから、同条に抵触するとの御指摘は当たらない。

4 未成年である被収容者に関して、収容された人数を年齢区分別(6歳未満、6歳から12歳未満、12歳から15歳未満、15歳から18歳未満)、男女別、国籍別、収容期間別に、2005年と2006年の年別ごとに、それぞれ示されたい。また、施設を移された場合には、収容期間を合算して示されたい。

さらに、親の入管施設への収容に伴い、未成年者の児童相談所を始めとする児童保護施設への入所状況及び、保護期間を2005年と2006年につき年別、年齢区分別(6歳未満、6歳から12歳未満、12歳から15歳未満、15歳から18歳未満)、男女別、国籍別に、それぞれ示されたい。

二の4及び5並びに三の1から3までについて

お尋ねについては、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。

5 未成年者で退去強制令書執行後、退去強制手続をとった未成年者の状況について、年齢区分別(6歳未満、6歳から12歳未満、12歳から15歳未満、15歳から18歳未満)、男女別、国籍別に、2005年と2006年の年別ごとに示されたい。また、そのうち、実際に退去強制を執行した人数をそれぞれ示されたい。

二の4及び5並びに三の1から3までについて

お尋ねについては、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。

三 妊婦、高齢者等の収容について

妊婦、高齢者等の収容実態について明らかにする必要がある。

 

1 入管法違反者で収容の対象になっている者のうち、妊娠中であること、高齢者であること、病気があること、心身に障害があることを理由にして仮放免の措置をとった者の件数を、2005年と2006年の年別ごとに、それぞれ示されたい。

二の4及び5並びに三の1から3までについて

お尋ねについては、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。

2 妊婦である被収容者について妊娠期間別、収容中の流産、堕胎件数について、2005年と2006年の年別に、それぞれ明らかにされたい。また、収容中又は一時執行停止中に、出産した者の人数を2005年と2006年の年別ごとに、それぞれ明らかにされたい。

二の4及び5並びに三の1から3までについて

お尋ねについては、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。

3 60歳以上の高齢である被収容者について、収容施設別、年齢別(60歳から65歳未満、65歳から70歳未満、70歳から75歳未満、75歳から80歳未満、80歳以上)に、その人数を2005年と2006年の年別ごとに、それぞれ明らかにされたい。

二の4及び5並びに三の1から3までについて

お尋ねについては、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。

4 乳幼児、妊婦、高齢者、心身に障害を持つ者、病者など、収容に適さない入管法違反者の収容を避けるためには、現行の仮放免制度だけではなく、第三者的な判断により収容の執行停止が可能なシステムを作る必要があると考えるが、政府の認識を示されたい。

三の4について

退去強制手続の目的は、被退去強制者を確実かつ迅速に送還することであり、そのため被退去強制者を原則として収容した上で退去強制手続を進めることとしているが、被退去強制者の個々の事情を考慮し、年齢、健康状態その他の理由により人道上配慮を必要とする場合には、妊婦、子供等に限らず、仮放免制度を弾力的に運用し対応しており、御指摘のような「第三者的な判断により収容の執行停止が可能なシステム」を設ける必要はないものと考えている。

しかしながら、法務省としては、御指摘のような者に対する配慮が必要であることを踏まえて、仮放免の許否に当たっては、これまで以上に被退去強制者の個々の事情を考慮し今後とも適正に対処してまいりたい。

四 被収容者処遇規則について

2001年11月に入管法に基づく被収容者処遇規則(以下「処遇規則」という。)の一部が手直しされ、被収容者の処遇に関していくつかの改善がなされ、第2条の2「意見の聴取」や、第41条「被収容者の申出」、第41条の2「不服の申出」、第41条の3「異議の申出」などの処遇改善にかかる制度が導入された。また、2003年には戒具についての変更がなされている。

 

1 2001年に導入された処遇改善にかかる制度に関して、収容施設の処遇の改善が行われた点を2001年以来、年別ごとにかつ収容施設別に示されたい。

四の1について

平成13年以降において講じた、年別及び収容施設別の被収容者に対する主な処遇の改善状況は、次のとおりである。

平成13年には、東日本入国管理センター、西日本入国管理センター及び大村入国管理センターにおいて臨床心理士によるカウンセリングの導入、西日本入国管理センターにおいて居室扉を開放することにより多目的ホール等を利用させ収容区画内を自由に行動することを認める開放処遇の時間の延長を行った。

平成14年には、東日本入国管理センターにおいて開放処遇時の電話使用の自由化、西日本入国管理センターにおいて戸外運動時間の延長、開放処遇回数の増加及び時間の延長並びに入浴回数の増加、東京入国管理局において被収容者の居室単位による分煙収容、東京入国管理局横浜支局、名古屋入国管理局及び大阪入国管理局神戸支局においてテレビ視聴の自由化を行った。

平成15年には、東日本入国管理センターにおいて入浴回数の増加、西日本入国管理センターにおいて開放処遇時間の延長並びに開放処遇時の電話使用、入浴及び洗濯の自由化、大村入国管理センターにおいて開放処遇時の電話使用の自由化、東京入国管理局においてテレビ視聴の自由化、開放処遇の実施、開放処遇時の電話使用、入浴、洗濯及び戸外運動の自由化、被収容者による貴重品保管のための貴重品ロッカーの提供開始並びにテレホンカード及び清涼飲料水の自動販売機の設置、東京入国管理局成田空港支局において被収容者による貴重品保管のための貴重品ロッカーの提供開始、大阪入国管理局関西空港支局及び広島入国管理局においてテレビ視聴の自由化を行った。

平成16年には、東日本入国管理センターにおいて被収容者による貴重品保管のための貴重品ロッカーの提供開始、看護師等による被収容者健康相談の実施及びテレホンカードの自動販売機の設置、西日本入国管理センターにおいて被収容者による貴重品保管のための貴重品ロッカーの提供開始、大村入国管理センターにおいて被収容者による貴重品保管のための貴重品ロッカーの提供開始及び清涼飲料水の自動販売機の設置、大阪入国管理局、大阪入国管理局関西空港支局、大阪入国管理局神戸支局及び福岡入国管理局において被収容者による貴重品保管のための貴重品ロッカーの提供開始を行った。

平成17年には、東日本入国管理センターにおいて一般面会室の増設、西日本入国管理センターにおいて清涼飲料水及びテレホンカードの自動販売機の設置、名古屋入国管理局において開放処遇の実施、開放処遇時の電話使用、入浴及び洗濯の自由化、テレホンカードの自動販売機の設置並びに被収容者による貴重品保管のための貴重品ロッカーの提供開始を行った。

平成18年には、東京入国管理局成田空港支局において電話使用及びテレビ視聴の自由化並びに入浴回数の増加を行った。

平成19年には、西日本入国管理センターにおいて常勤医師による定期健康診断の実施、東京入国管理局において看護師による健康カウンセリングの実施、大阪入国管理局において入浴回数の増加を行った。

2 被収容者からは、「処遇に関して意見を入れるポストが収容エリアにあり、そこに紙に書いて入れるシステムになっている」と聞いているが、このことについて、2006年に東京入国管理局に収容されていた被収容者は、「ポストは共有エリアに置いてあるが、英語で案内が書かれていたので私には読めなかった」、「エリアに出られるのは、一日に2時間だけ。この間に電話をかけたり洗濯したりシャワーを浴びたりせねばならず、不服を申し立てることはできなかった」、「不服の申出については、職員から何の説明もなかった。外から面会に来てくれた人に教わって、初めてそれが何のためにあるのか知ることができた」、と指摘している。かかる処遇改善にかかる制度の被収容者に対する周知徹底はどのようになされているか、収容施設ごとにそれぞれ示されたい。

四の2について

被収容者処遇規則第2条の2に規定する意見聴取制度については、被収容者から処遇に関する意見を聴取するためすべての収容施設内の適切な場所に施錠可能な意見箱を設置するとともに、各収容施設の実情に応じて、英語、中国語、韓国語、タイ語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、ロシア語、フランス語、トルコ語、ペルシャ語又はミャンマー語で意見聴取制度に関する必要な事項を記載した案内文を収容施設内の意見箱の設置場所付近等に掲示したり、居室内に冊子として備え置いたり、被収容者から問い合わせがあった場合に意見聴取制度に係る説明を行うなどして、被収容者に対する周知を図っている。

収容施設別に見ると、その実情に応じて、大村入国管理センター及び札幌入国管理局では一か国語、広島入国管理局下関出張所では二か国語、大阪入国管理局、大阪入国管理局神戸支局、大阪入国管理局関西空港支局、広島入国管理局、高松入国管理局及び福岡入国管理局鹿児島出張所では三か国語、西日本入国管理センター、東京入国管理局横浜支局、福岡入国管理局及び福岡入国管理局那覇支局では四か国語、東日本入国管理センター、名古屋入国管理局及び名古屋入国管理局中部空港支局では六か国語、仙台入国管理局では8か国語の案内文によりそれぞれ被収容者に周知している。

なお、東京入国管理局においては、案内文を掲示したり冊子として備え置いたりせず、意見箱に英語で「オピニオン・ボックス」と記載し、被収容者から問い合わせがあった場合はその説明を行っており、東京入国管理局成田空港支局においては、日本語による案内文の掲示をしているところ、早急に外国語による案内文を掲示し又は冊子として備え置くこととしているところである。

被収容者処遇規則第41条の2に規定する不服申出制度については、各収容施設の実情に応じて、英語、中国語、韓国語、タイ語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、ロシア語、フランス語、トルコ語、ペルシャ語、ミャンマー語又はタガログ語で不服申出制度に関する必要な事項を記載した案内文を収容施設内に掲示したり、居室内に冊子として備え置いたり、被収容者から問い合わせがあった場合は不服申出制度に係る説明を行うなどして、被収容者に対する周知を図っている。

収容施設別に見ると、その実情に応じて、大村入国管理センターでは2か国語、広島入国管理局及び高松入国管理局では3か国語、仙台入国管理局では8か国語、東京入国管理局成田空港支局では10か国語、西日本入国管理センター、東京入国管理局、大阪入国管理局及び大阪入国管理局神戸支局では11か国語、東日本入国管理センター、東京入国管理局横浜支局、名古屋入国管理局、福岡入国管理局、大阪入国管理局関西空港支局、名古屋入国管理局中部空港支局、福岡入国管理局那覇支局及び福岡入国管理局鹿児島出張所では12か国語の案内文によりそれぞれ被収容者に周知している。

なお、広島入国管理局下関出張所においては、案内文を掲示したり冊子として備え置いたりせず、収容手続を行う際に当該被収容者が使用する言語に応じた案内文を記載した文書を配布しているところである。

3 処遇規則第八条(健康診断)に関し、2006年に東京入国管理局に収容された者へ入所時に健康状態についての質問はなされていないとも聞く。各収容施設ごとに、入所時の被収容者の健康状態の把握方法をそれぞれ明らかにされたい。

四の3について

入国管理局の収容施設に新たに収容される者については、収容手続の際、その全員に対して健康状態に関する質問をしてその健康状態を把握しており、診療が必要と認められる者に対しては、収容施設又は外部の病院の医師による診療を実施することとしている。

また、東日本入国管理センターにおいては、被収容者について、身長、体重、体温、血圧及び脈拍測定を行うとともに、看護師等によるアレルギーの有無や既往症等を聴取する健康相談を実施し、その結果、医師が必要と認めた場合には診察を実施している。西日本入国管理センターにおいては、被収容者について、体重、体温並びに40歳以上の者及び高血圧罹患者に対する血圧測定を行った上で、医師が必要と認めた場合には診察を実施している。大村入国管理センターにおいては、被収容者について、身長、体重、医師の問診並びに四十歳以上の者に対する血圧測定及び胸部レントゲン検査を行い、その結果に応じて必要な診察を実施している。

4 2006年に東京入国管理局に収容されたある女性被収容者によれば、「外部の病院に行くときは腰縄と手錠付きだった。どこにも逃げない、手錠を外してほしい、と頼んでも、外してくれなかった。診察中はおろか、病院でトイレに入っているときも手錠と腰縄が付いたままで、さらにはトイレの個室の中に警備官が一人付いて入ってきた。これでは用が足せないので、出て行ってほしいとお願いしても、30分かかってようやく用が足せるまで、そのままの状態だった」という。このような戒具の使用は人道上問題があると考えるが、政府の認識を示されたい。

四の4について

戒具は、被収容者が逃走するおそれ等があり、かつ、ほかにこれを防止する方法がないと認められる場合に必要最小限度の範囲で使用しており、一般的には、診察中や用便中等、戒具を使用する必要がないと認めたときは、その使用を解除することとしており、そのほかにも、戒具が使用されている被収容者を公衆の目に触れさせないよう心掛けるとともに、手錠カバーを施すなど人権上の配慮に努めているところである。

また、護送中は、逃走等を未然に防止する観点から、被収容者の行動を監視する必要があるところ、その方法等についても、人権に配慮しているところである。

なお、東京入国管理局における御指摘のような事案については、現時点において、法務省として承知していない。

5 2003年に入管施設で使用されていた皮手錠が廃止され、「第二種捕じょう」が導入されている。この形状等を写真や図画などで明らかにするとともに、使用目的、使用方法を示されたい。また、「第二種捕じょう」が刑務所や拘置所では使用されず、入国管理局だけで使われている理由を示されたい。

四の5について

入国管理局が使用している「第二種捕じょう」は、被収容者処遇規則第20条及び別表に定められているとおり、その構造、材質及び形状は、おおむね直径3ミリメートル以上15ミリメートル以下、長さ6メートル以下の麻又は化学繊維製の縄で、かつ、縄の中芯に金属製ワイヤーを通し、縄の一端に長さ10センチメートル以下の開閉式金具を設けたものであり、護送時に被退去強制者の逃走を防止するなどのために用いられる。

なお、刑務所、拘置所等の刑事施設においては、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(平成18年法務省令第57号)第38条及び別表第一において、第一種及び第二種の捕縄の制式が定められ、使用されている。

右質問する。

[了]

 

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