法務省入国管理局「平成17年における難民認定者数等について」(2006年2月24日) ※リンク切れ
平成18年2月24日
担当:法務省入国管理局
平成17年に我が国において難民認定申請を行った者は384人であり,前年に比べ42人減少した。また,同年に難民として認定した者は46人で,前年と比較して31人増加した(約3倍)。これは,同年中に難民認定処分及び不認定処分を受けた者295人のうち約15.6パーセントを占めており,また,我が国に難民認定制度が発足した昭和57年以降,3番目の数である。 また,申請者の国籍別では,申請の多い順に,ミャンマー,トルコ,バングラデシュとなっているが,特にミャンマー国籍を有する者の申請が急増している。難民と認定した者の国籍も,その9割以上がミャンマーであった。 なお,難民と認定しなかったものの,人道的な理由等から特に在留を認めた者は97人で,難民として認定した者を合わせた数(庇護数)は143人となる。これは,昭和57年以降最高の数である。 |
第1 |
平成17年における難民認定申請・異議の申立及び処理の状況 |
(1) |
難民認定申請数 難民認定申請を行った者(以下「申請者」という。)は384人であり,前年に比べ42人(約11パーセント)減少した。 主な国籍別申請者数は,多い順に,ミャンマー212人,トルコ40人,バングラデシュ29人となっている。 特徴としては,トルコ人の申請者が前年に比べ91人(約70パーセント)減少した一方で,ミャンマー人の申請者が前年に比べ74人(約54パーセント)増加し,ミャンマー人の申請者が全体の約55パーセントを占めるに至ったことが挙げられる。 |
(2) |
処理数 難民認定申請を処理した数は327人であり,その内訳は,難民と認定した者(以下「認定者」という。)46人,難民と認定しなかった者(以下「不認定者」という。)249人,申請を取り下げた者32人であった。 難民認定処分及び不認定処分を受けた者に占める認定者の割合(難民認定率)は,約15.6パーセントであり,これは前年比10.7ポイント増である。 なお,認定者の国籍を見ると,認定者中43人がミャンマー国籍の者であり,これは全体の約93パーセントに当たる。 |
(3) |
入国時の態様 申請者の我が国への入国時における態様は,合法入国者303人(申請者全体の約79パーセント),不法入国者81人(申請者全体の約21パーセント)となっており,昨年と比較して不法入国者の割合が約11ポイント増加している。 なお,過去5年間における年別・入国時の態様別内訳は別表1のとおりである。 |
(4) |
申請時の在留状況 申請者の申請時における在留態様は,正規在留者109人(申請者全体の約28パーセント),不法滞在者等275人(申請者全体の約72パーセント)となっており,昨年と比較して不法滞在者(不法入国者,不法残留者)の割合が約3ポイント増加している。 なお,過去5年間における年別・在留態様別内訳は別表2のとおりである。 |
(5) |
身柄拘束後の難民認定申請状況 退去強制事由該当者として入国管理局の収容施設に収容された後又は刑罰法令違反者として警察等に逮捕・勾留等された後に難民認定申請した者は,151人(申請者全体の約39パーセント)となっており,昨年と比較して身柄拘束後に難民認定申請した者の割合が約17パーセント増加している。 なお,過去5年間の状況は別表3のとおりである。 |
(1) |
異議申立数 難民の認定をしない処分(以下「不認定処分」という。)に対して異議の申立をした者(平成17年5月に施行された改正法以前に,異議の申出をした者も含み,便宜上,以下「異議申立者」という。)は183人である。 異議申立者の主な国籍別内訳は,ミャンマー102人,トルコ23人となっており,ミャンマー国籍の者のみで約56パーセントを占めた。 |
(2) |
処理数 異議の申立を処理した数は195人で,その内訳は,異議の申立に理由があるとされた者(認定者)は15人,理由がないとされた者(不認定者)は162人,異議の申立を取り下げた者等は18人であった。 異議審における認定者及び不認定者に占める認定者の割合(難民認定率)は,約8.5パーセントであり,これは前年比4.8ポイント増である。 なお,認定者のうち14人がミャンマー国籍の者であり,これは全体の約93パーセントに当たる。 |
(3) |
所在不明等 |
ア |
申立中の所在不明数 異議申立者のなかで,平成17年末の時点で逃亡等により所在不明となっている者は46人にのぼり,所在不明者の主な国籍別内訳は,トルコ人22人,パキスタン人12人となっている。 |
イ |
申立取り下げ数 異議申立者のうち,取り下げ・終止とされた案件は18件であり,取り下げ等をした者の主な国籍別内訳は,トルコ人6人,ミャンマー人4人となっている。 |
3 |
庇護数 難民と認定しなかったものの,人道的な理由を配慮し在留を認めた者(以下「人道配慮」という。(注))は97人であり,うち52人(約54パーセント)はミャンマー国籍を有する者である。 また,上記人道配慮した数に認定者数を加えた143人が,我が国が実質的に庇護を与えた者であり,これは,我が国に難民認定制度が発足した昭和57年以降最高となった。 |
(注 |
)「人道的な理由を配慮し在留を認めた者」とは,難民不認定処分を受けた者について,引き続き本邦での在留を認める決定を行った者を指す。なお,昨年中庇護を与えた者の中には,平成16年以前に難民不認定処分を受けていたものの,その後の事情の変化を踏まえて,改めて庇護を与えることとしたものを含んでいる。したがって,平成17年中に難民認定処分及び不認定処分を受けた295人のうち庇護を与えた者が143人いるというわけではない。 |
第2 |
難民条約加入以降における難民認定申請及び異議の申立の処理状況(最近5か年の特徴を含む。)【別表4及び5】 |
(1) |
難民認定申請数 難民認定制度が発足した昭和57年1月から平成17年12月末までの申請者数は3,928人であり,申請者の多い国籍についてみると,ミャンマー709人(約18パーセント),トルコ654人(約17パーセント),パキスタン417人(約11パーセント)となっている。 なお,平成13年から同17年までの過去5年間(以下「過去5年間」という。)における年別にみた主な国籍別申請者数は次のとおりである。 |
【過去5年間における年別・主な国籍別申請者数(上位3か国)】
年 |
国籍 |
申請者数 |
平成13年 |
トルコ |
123 |
アフガニスタン |
78 |
パキスタン |
47 |
平成14年 |
トルコ |
52 |
ミャンマー |
38 |
パキスタン |
26 |
平成15年 |
ミャンマー |
111 |
トルコ |
77 |
イラン |
25 |
平成16年 |
ミャンマー |
138 |
トルコ |
131 |
バングラデシュ |
33 |
平成17年 |
ミャンマー |
212 |
トルコ |
40 |
バングラデシュ |
29 |
|
(2) |
難民認定申請の処理数 昭和57年1月から平成17年12月末までの間に難民認定申請を処理した数は3,624人であり,その内訳は認定者376人,不認定者2,773人,申請を取下げた者等475人となっている。 難民認定処分及び不認定処分を受けた者に占める認定者の割合(難民認定率)は,約11.9パーセントである。 主な国籍別認定者数はミャンマー90人,ベトナム59人,イラン54人となっており,このうちミャンマー国籍を有する者については,難民認定処分及び不認定処分を受けた者の合計は482人であり,このうち約18.7パーセントが難民認定されている。 なお,過去5年間における年別にみた主な国籍別認定者及び不認定者数は次のとおりである。 |
【過去5年間における年別・主な国籍別認定者数】
年 |
国籍 |
認定者数 |
平成13年 |
ミャンマー |
12 |
平成14年 |
アフガニスタン |
6 |
平成15年 |
ミャンマー |
5 |
平成16年 |
ミャンマー |
9 |
平成17年 |
ミャンマー |
29 |
【過去5年間における年別・主な国籍別不認定者数(上位3か国)】
年 |
国籍 |
不認定者数 |
平成13年 |
トルコ |
165 |
アフガニスタン |
39 |
ミャンマー |
35 |
平成14年 |
アフガニスタン |
40 |
パキスタン |
38 |
トルコ |
30 |
平成15年 |
ミャンマー |
73 |
トルコ |
65 |
中国 |
32 |
平成16年 |
トルコ |
136 |
ミャンマー |
46 |
イラン |
13 |
平成17年 |
ミャンマー |
118 |
バングラデシュ |
28 |
トルコ |
27 |
(1) |
難民異議申立数 昭和57年1月から平成17年12月末までの間における不認定処分に対する異議申立者は1,862人である。 また,過去5年間における年別にみた主な国籍別異議申立者数は次のとおりである。 |
【過去5年間における年別・主な国籍別異議申立者数(上位3か国)】
年 |
国籍 |
異議申立者数 |
平成13年 |
トルコ |
82 |
アフガニスタン |
28 |
ミャンマー |
23 |
平成14年 |
トルコ |
57 |
アフガニスタン |
45 |
パキスタン |
37 |
平成15年 |
ミャンマー |
65 |
トルコ |
45 |
中国 |
30 |
平成16年 |
トルコ |
78 |
ミャンマー |
38 |
イラン |
11 |
平成17年 |
ミャンマー |
102 |
トルコ |
23 |
バングラデシュ |
14 |
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(注 |
)難民認定申請が不認定処分となり,その告知を受けて異議の申立をした者 |
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|
|
なお,過去5年間における不認定処分に対する異議申立の占める割合は約78パーセントであり,各年別にみた割合は次のとおりである。 |
○ |
平成13年 約71パーセント |
○ |
平成14年 約85パーセント |
○ |
平成15年 約76パーセント |
○ |
平成16年 約84パーセント |
○ |
平成17年 約76パーセント |
(2) |
難民異議申立の処理数 昭和57年1月から平成17年12月末までの間に異議の申立を処理した数は1,752人であり,その内訳は異議の申立に理由があるとされた者(認定者)が32人,理由がないとされた者が1,425人,異議の申立を取下げた者等が295人となっている。 なお,平成16年及び同17年において,異議の申立に理由があるとされた者(認定者)の主な国籍は次のとおりである。 |
【年別・主な国籍別異議申立における認定者数】
年 |
国 籍 |
認定者数 |
平成16年 |
ミャンマー |
5 |
平成17年 |
ミャンマー |
14 |
1 |
難民認定関係訴訟件数 平成17年中に提起された難民不認定処分取消請求訴訟は52件であり,昨年(25件)より増加した。 同訴訟提起に係る主な国籍別件数は,ミャンマー34件,イラン及びスリランカ各4件となっている。 なお,過去5年間に提起された同訴訟件数は190件で,同訴訟の年別・国籍別提起件数の推移は別表6のとおり。 |
2 |
訴訟係属等の状況 平成17年末現在における難民不認定処分取消請求訴訟の係属件数は117件であり,主な国籍別係属件数は,ミャンマー51件,トルコ20件,アフガニスタン13件,イラン12件となっており,この4か国で全体の同訴訟係属件数の約82パーセントを占めている。 また,同訴訟の裁判所別係属件数は,地方裁判所91件,高等裁判所20件,最高裁判所6件となっている。 なお,難民不認定処分取消請求訴訟について,訴訟の取下げ等判決以外の事由により当該訴訟が終了した件数は,ミャンマー13件,イラン3件,アフガニスタン及びソマリア各2件等計25件である。 |
3 |
判決等の状況 平成17年中に判決が下された難民不認定処分等取消請求訴訟は62件であり,そのうち国側が勝訴したのは52件である。難民関係訴訟全体において国側が勝訴した件数が占める割合は,約84パーセントとなっている。 |
第4 |
平成17年5月16日に施行された改正法の運用状況 |
1 |
仮滞在許可 不法滞在者である難民認定申請中の者の法的地位の安定化を速やかに図るべく,在留資格未取得外国人から難民認定申請があった場合,一定の要件に該当する場合を除き,その者に仮に本邦に滞在することを許可するものとされ(法61条の2の4第1項),ここにいう許可を仮滞在許可という。 仮滞在の処理人数は326人であり,そのうち許可となった者は50人,不許可となった者は276人であった。 主な不許可理由は,
○ |
本邦に上陸した日(本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあっては,その事実を知った日)から6か月を経過した後に難民認定申請をしたこと…166人 |
○ |
既に退去強制令書の発付を受けていたこと…91人 |
○ |
迫害のおそれのあった領域から直接本邦に入ったものでないこと…58人 |
である。(注)
(注 |
)1人の申請者について不許可理由が複数ある場合は,そのすべてを計上しているため,不許可理由の合計は不許可者数と一致しない。 |
|
2 |
難民審査参与員制度 |
(1 |
) 難民異議申立手続については,その公正性,透明性を図るべく,法務大臣は,異議申立てに対する決定に当たっては,難民審査参与員の意見を聴かなければならないものとされた(法61条の2の9第3項)。 |
(2 |
) 法務大臣は,異議申立てを受けたすべての案件について,3名の難民審査参与員の意見を聴くこととしているが,これに先立ち,異議申立人等がその意見を述べる口頭意見陳述や,難民調査官や難民審査参与員が異議申立人に対して質問する審尋を行っている。 平成17年における口頭意見陳述・審尋期日の開催回数はのべ55回である。このうち,当該案件に関する2回目以降の期日(いわゆる続行期日)は5回である。 難民審査参与員は,口頭意見陳述・審尋期日の実施後,他の難民審査参与員と意見を交換した上,意見書を作成して法務大臣に提出する。意見書の書式は自由であり,難民該当性の有無のみならず在留配慮に関する意見が付される例も見受けられる。 |
(3 |
) 平成17年に参与員から意見書が提出された案件は48件であるが,このうち,難民該当性を認めるものが5件,難民該当性は認められないものの在留配慮の要ありとするものが10件となっている。 その国籍別内訳を見ると,難民該当性を認める5件のうち4件はミャンマー,1件はアフリカ諸国のものであり,在留配慮の要ありとするものはいずれもミャンマー国籍を有する者の案件である。 なお,これまでのところ,法務大臣において,難民審査参与員の意見(意見が分かれたものについては多数意見)と異なる処理をした例はない。 |
添付資料
1 別表1「難民認定申請者の本邦入国時の状況」[PDF]
2 別表2「難民認定申請者の申請時の在留状況」[PDF]
3 別表3「身柄拘束後の難民認定申請状況」[PDF]
4 別表4「難民認定申請及び処理数の推移」[PDF]
5 別表5「難民不認定に係る異議申立受理及び処理数の推移」[PDF]
6 別表6「難民認定関係訴訟提起件数の推移」[PDF]
7 別紙1「難民と認定した事例」[PDF]
8 別紙2「難民不認定処分関係訴訟事例」[PDF]
9 別紙3「難民審査参与員一覧[PDF]