法相会見(2021年2月16日)入管法の改正に関する質疑について;仮放免に関する質疑について

法務大臣閣議後記者会見の概要「入管法の改正に関する質疑について;仮放免に関する質疑について」(2021年2月16日)(外部リンク:法務省ウェブ

入管法改正法案等に関する質疑について

【記者】
 入管法改正について質問させていただきます。一部報道で伝えられている内容や,あるいは「収容・送還に関する専門部会」の提言などを見ていますと,先日,国連人権理事会の恣意的拘禁ワーキンググループで指摘された問題はクリアされていません。つまり,国際人権規約に反するとかなり厳しい指摘をされたわけですが,収容できる期間の期限を定めること,収容の是非について裁判所等の判断によるものというような部分が現在の案や提言には含まれていないのですが,これについて大臣はいかがお考えでしょうか。

【大臣】
 出入国在留管理行政におきましては,退去強制令書の発付を受けた外国人による送還忌避や,これに伴う収容長期化の問題が生じているところでございます。
 そのため,「収容・送還に関する専門部会」において御検討をしていただき,昨年7月にその提言を頂いたところでございます。
 現在,出入国在留管理庁におきまして,この提言を踏まえ,様々な御意見,御指摘にもしっかりと耳を傾けながら,入管法改正法案につきまして,今国会に提出できるよう,検討を行っているところでございます。
 検討の方向性として申し上げますが,在留が認められない外国人を迅速に本国に送還するということのみならず,在留を認めるべき外国人を適切に保護する,直ちに送還することができないときに収容の長期化を防止するための措置を講じる,収容中の適正な処遇を実施するというコンセプトの下で,様々な方策を組み合わせ,パッケージで問題を解決していこうというものでございます。
 また,御指摘いただきました恣意的拘禁作業部会の意見書につきましては,現在,出入国在留管理庁におきまして,その内容の精査・検討を行っているところでございまして,その精査の上で,関係省庁と連携しながら適切に対応してまいりたいと考えております。
 法案の具体的内容についての御質問もございましたが,今,検討を進めているという段階でございまして,内容につきまして,この場でお答えすることはなかなか難しいということについては御理解いただきたいと思っております。

【記者】
 今,大臣もおっしゃったように,特にナイジェリア人の大村収容所での餓死事件があって以来,送還忌避という言葉が入管行政の中で独り歩きをしている感じなのですが,いわゆる難民申請者や,あるいは在留特別許可の実態についてどこまできちっと精査されたのでしょうか。送還のみならずというお話でしたが,99パーセント以上が不認定の難民認定制度ですとか,この10数年間で10分の1に減った在留特別許可について,どのように再検討するのかといったようなメッセージが全然伝わってこないのですが,そのことについてどの程度検討し,それを受け止めていらっしゃるのか,そのことについてお願いいたします。

【大臣】
 一連の制度というのは,今の法律の体系に基づきまして,現場の中で,それを適正に運用するというのが基本でございます。
 難民認定手続につきましては,申請内容を個別にしっかりと審査した上で,難民条約の定義に基づきまして,難民と認定すべき者を難民と認定しているということでございます。
 また,条約上の難民とは認定できない場合であっても,本国情勢などを踏まえまして,人道上の配慮が必要と認められる場合には,我が国への在留庇護を認めているというものでございます。
 その上で,先ほど申し上げたように,様々な課題や問題がございましたので,こうした様々な課題に対して,「収容・送還に関する専門部会」におきまして検討を行っていただき,昨年7月に報告書が提出されたところでございます。
 報告書では,庇護を要する者が確実に保護されるよう,難民認定制度に関する専門部会の提言に基づいて,それぞれの内容について政策を実施することも提言しているところと承知しています。
 現在,重ねて申し上げるところではございますが,出入国在留管理庁におきまして,「収容・送還に関する専門部会」の提言を踏まえた入管法の改正について,検討を更に深めているという状況でございます。この間,様々な御意見をいただきましたことにつきましても,しっかりと耳を傾けながら,これからの我が国にふさわしい出入国在留管理制度の実現に向けて,しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

【記者】
 国連人権理事会のワーキンググループの指摘にもあったのですが,過去10年にわたって,様々な国連の人権関係の委員会から日本の活動の難民認定や収容に関して度重なる是正勧告を受けているわけです。そのことについて,どれほど危機感があるのかということと,もう一つ,先ほどから送還忌避というような話が出ていますが,そもそも難民認定制度の濫用事例として,例えば最近で言うとミャンマーの方々も濫用事例にかなり含まれている。入管の資料などを見ていますと,ロヒンギャの方も含めてです。濫用と決めつけてきたことが果たして正しかったのかどうか,その点は検証する必要があるかと思いますが,それはどうでしょうか。

【大臣】
 出入国在留管理行政に当たりましては,退去強制令書の発付を受けた外国人による送還忌避の問題がありますし,また収容につきましては,大変長い期間収容されているという現実もございまして,いろいろな課題や問題が生じているということは十分認識しております。
 そこで,「収容・送還に関する専門部会」におきまして,様々な御意見をいただきまして,昨年7月に提言を頂いたところでございます。
 検討の方向性として,在留が認められない外国人を迅速に本国に送還するということのみならず,在留を認めるべき外国人をいかに適切に保護するか,直ちに送還することができない場合,収容が長期化するということは避けなければいけないということでございますので,それを防止するためにどのような措置を講じるのか,収容中の適正な処遇をどう実施するのかというコンセプトをしっかりと位置付けながら,様々な方策を組み合わせて,パッケージで問題を解決していこうと,こういう方向で今,検討を進めてきたところでございます。
 これから法案を御審議いただくべく検討しているということでありますので,コロナ禍のこうした事態も含めまして,しっかりと法案にまとめ上げていきたいと考えております。

【記者】
 質問の後半の部分で,濫用事例に本来保護すべき難民ではないかと疑われる人々がかなり入ってしまっているのではないかと私としては思いますし,また,国内の人権団体及び弁護士の方々,NGOの方々も似たような意見を言っているわけなのですが,その濫用ということに対して,これまでの判断が正しかったのか検証することはないのでしょうか。

【大臣】
 制度は絶えず検証しながら適正な運用を図らなければいけないということであります。個別の事案に即して調査を重ねて,1人ずつの案件について丁寧に審査しております。
 したがいまして,いろいろなところで問題,課題になっていることにつきましても,ペーパーワークのみをしているわけではございませんので,1人ずつの申請の背景でありますとか,置かれている状況等を調査した上で対応していくということが大変大事だというベースで動いているということは,御理解いただきたいと思います。ひとくくりで濫用というようなことで,御指摘の濫用事例ということで,あれもこれもという形でのくくり方はしておりません。1ケースずつ丁寧に対応していくということであります。

仮放免に関する質疑について

【記者】
 緊急事態宣言が10都府県で3月7日まで延長されたということを受けて,自民党の国会議員70数人が,一律10万円の特別定額給付金の再支給を求める要請書を1週間前に下村政調会長に提出されました。
 昨年の特別定額給付金に関しては,総務省が都道府県に対して事務連絡を出して,住民基本台帳に登録されていない仮放免者は一律に排除されました。昨年春以降,入管収容されずに仮放免許可される非正規滞在外国人とその家族は増加したのですが,就労も,行政支援を受けることもできず生活困窮が深刻化している状況です。
 長年日本で生活し,難民申請中の仮放免世帯でも定額給付金の受給ができなかったのみならず,児童手当ですとか住宅確保給付金,国民健康保険などの通常の行政サービスを受けることもできず,地方自治体に相談しても,住民基本台帳に登録されていないという理由で一律に適用除外されています。
 仮放免でも外国籍住民の居住情報を入管庁と地方自治体はある程度共有できると大臣の記者会見でのお答えもありましたが,そういう状況であれば,仮放免世帯への行政支援も可能だと思います。仮放免世帯の生活困窮問題は非常に深刻だと大臣も受け止めているというお話でしたが,今後,特別定額給付金の再支給ですとか,現在のやり方次第で仮放免世帯でも受給できる行政サービスについて,総務省や厚生労働省,内閣府などの関係省庁と再検討する考えがあるのかどうか,そもそも在留資格の有無で命や最低限の暮らしを線引きするのは,行政差別ではないかという声もありますが,大臣はどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
 まず,仮放免中の外国人の方々は,退去強制処分を受けてということでございまして,基本的には処分に従って早期に帰国していただくことが何よりも重要であると考えております。
 コロナ禍ということもございまして,なかなか帰国が難しいということでございましたので,出入国在留管理庁におきまして,関係省庁とも連携しながら,関係国と調整した上で,国費による送還を積極的に実施するなど,こうした外国人の方々の速やかな帰国のために,この間力を尽くしてまいりましたし,これからもそうした方向でございます。
 御質問の自治体との関係ということでございますが,仮放免中の外国人につきましては,入管当局が仮放免を許可するときに,その外国人に自らの居住地等の情報を市町村に提供することの可否につきまして意向を確認しております。そして,その意向確認の上で,その外国人の希望に基づきまして,入管当局からその外国人の居住地等を当該市町村に通知しているということであります。
 そして,各市町村等におきまして,提供可能な行政サービスについては適切に対応しているものと承知しております。行政サービスが提供可能であるかどうかにつきましては,所管省庁がそれぞれございまして,そこから市町村等に通知されているものと承知しております。
 加えて,是非相談していただきたいということにつきましても,出入国在留管理庁の方で体制を整えているところであります。特に仮放免中の外国人の方々が生活に困窮している場合につきましては,所轄の地方入管等に連絡・相談いただき,そして帰国の支援も含めまして,個別にきめ細やかな対応を行うこととしているところでございます。御相談に応じるということにつきましては,しっかりと対応してまいりたいと思っております。

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