声明・提言等(2020年10月18日)全難連が参加する恣意的拘禁ネットワークが、自由権規約委員会へNGO報告を提出しました。

第7回 ICCPR 政府報告書審査(日本)に関する List of Issues のうち、恣意的拘禁(刑事施設・精神科病院・入管収容)に関する NGO 報告(政府回答に対する反論を含む)[PDF形式]/原文英語[PDF形式]

日付:2020年9月20日

団体:恣意的拘禁ネットワーク

1 第7回 ICCPR 政府報告書審査(日本)に関する List of Issues のうち、恣意的拘禁(刑事 施設・精神科病院・入管収容)に関する NGO 報告(政府回答に対する反論を含む) NAAD (Network against Arbitrary Detention) 目次 第1 はじめに ………………………………………………………………………………………………………..1 第2 刑事施設における拘禁……………………………………………………………………………………..3 1 長期化する昼夜独居拘禁及び恣意的な保護室収容措置(LOI, para.17)……………….3 2 外部交通に対する妨害:秘密交通に対する執拗な妨害(LOI, para.17)……………….6 3 終身刑化する無期懲役刑 (LOI, para.17) ……………………………………………………………9 第3 精神科医療における拘禁………………………………………………………………………………..12 1 国内人権機構設置の進展(LOI,para.4)………………………………………………………….12 2 措置入院の必要性・比例性とセーフガードの確保(LOI, para.15(a))………………….14 3 虐待の監視・報告制度(LOI15(b)) ………………………………………………………………18 第4 入管施設における拘禁(LOI, Para.21) ………………………………………………………….18 1 退去強制中の不当な扱いを防ぐこと(LOI, Para.21(a)) ………………………………18 2 収容代替措置 (LOI, Para.21(e)) …………………………………………………………………..22 第5 OPCAT の批准と国内禁止メカニズム(NPM)の指定(LOI, para.4) ……………..26 1 はじめに:求められる OPCAT の批准 ……………………………………………………………26 2 日本の拘禁施設と、それに対する視察機能を持つ機関の存否と実情…………………..28 第1 はじめに 1 このレポートを作成した者 日本は、他の文明諸国に比べて、きわめて恣意的な基準に基づいて人の自由が拘束さ れ、また、その自由回復のための公正な手段が欠如した社会である。日本における人身 の自由に対する極めて憂慮すべき状況は、ある特定の分野においてのみ生じているので はなく、刑事施設、精神科病院、入管収容と、分野を横断して生じている。 私たちは、日本において自由を奪われている人々の人権状況を改善するために活動し ている人権団体のネットワークであり、日本における拘禁問題につき横断的に捉えるべ く、本レポートを協力して作成した。Appendix 1 に各団体を紹介している。 2 警察拘禁=ダイヨーカンゴク 日本の警察拘禁はダイヨーカンゴクとして悪名高い。被疑者は一つの逮捕事実に基づ いて 23 日間の警察取り調べを受ける。起訴前の保釈制度はない。事件を細分化すれば、 2 拘禁期間はこの何倍にも及ぶ。カルロスゴーン事件は検察官が逮捕し、拘置所に拘禁さ れた事件であるが、長期間の取り調べが継続された点では共通の問題点を持っている。 3 死刑・無期懲役・有期の最高限は懲役30年 日本の刑罰制度においては、死刑、無期懲役刑、有期刑の最長は 30 年(2004 年に 20 年から 30 年に引き上げられた)となっており、近年犯罪件数は減少しているにもかかわ らず、刑罰の重刑化が進み、無期懲役受刑者 1800 人のうち、仮釈放されるのは年間 10 人足らずで、それ以上の者が受刑中に獄死している。 4 約 13 万人の精神障がい者が精神病院に非同意入院している 精神病院には、自らの意思に基づかない家族による同意入院と行政による措置入院を 合わせると合計 129014 人(2019 年 6 月 30 日時点)の精神障がい者が、その多くは私 立の精神病院に拘禁されている。その社会復帰のための取り組みは貧弱である。また、 各都道府県に設けられた精神医療審査会は、精神障害者の人権に配慮しつつ、その適正 な医療及び保護を確保するため、精神科病院に入院している精神障害者の処遇等につい て専門的かつ独立的に審査を行う機関とされているが、その機能には訪問視察は含まれ ず、また委員の独立性には疑問がある。このような精神障がい者を隔離する政策は、精 神を病んだ者の精神科医療への恐怖の感情を生み出し、彼らが適切な医療にアクセスす るための障害となっている。 5 無期限・長期入管収容に抗議してハンガーストライキが全国化し、餓死者が出ている 入管収容施設には、入管法上の退去強制事由に該当すると入管当局に判断された者ま たは疑われた者が収容されている。これらの者は収容するのが原則であり、必要性・相 当性の要件は不要であるというのが政府見解である。退去強制令書に基づく収容期間は 無制限であるため、収容期間の延長という概念がなく、一度収容が開始された後に一定 期間ごとに収容継続の適法性をチェックする司法審査制度もない。ある程度認められて きた仮放免も近時ほとんど認められなくなり、半年以上の長期収容者が激増し、長期収 容に抗議するハンガーストライキが全国の収容所で実施され、餓死する者まで出る深刻 な事態となっている。ハンガーストライキにより体調不良となった者につき1~2週間 のみ仮放免を認め、その後再収容し、また体調不良となれば1~2週間の仮放免と再収 容を繰り返すという非人道的な運用が行われている。 6 私たちの願い NAAD の切なる願いは、自由権規約委員会が事実に基づいて、日本政府に対して、我 が国の拘禁制度の総体について、恣意的な拘禁の禁止、非人道的で品位を傷つける取り 扱いの禁止という基本に沿った改革案を提起されることである。 3 第2 刑事施設における拘禁 1 長期化する昼夜独居拘禁及び恣意的な保護室収容措置(LOI, para.17) 求める勧告 締約国は、刑事施設に対する抗議行動を行っている場合においても被収容者を保護室へ収 容することができる現行の制度を改正するとともに、受刑者に対する昼夜独居拘禁が最後 の手段として実施されるよう職員研修を徹底するべきである。 (1) 昼夜独居拘禁(Solitary Confinement) 現在においてもなお、法律上の「隔離」の要件を満たさない多くの受刑者が、法律では なく法務省令により創設された4つの制限区分のうちのひとつである第4種制限区分に指 定されている。第4種制限区分と法律上の「隔離」の間にはほとんど違いがなく、第4種 制限区分は法律に基づかない昼夜独居拘禁と言える。2019年10月10日現在、全国 の刑事施設において第4種制限区分に指定されている受刑者は合計894名(2.1%) である。また、このときにおいて法律上の隔離に服している受刑者の人数は、全国の刑事 施設で合計4名であった。1 昼夜独居拘禁の期間が10年を越える受刑者の独居拘禁期間は、次の表の通りである。 1 法務省回答 4 Nov. 10,2000 July 10,2001 Oct. 1,2002 Nov. 1,2005 April 10,2008 April 10,2012 April 10,2016 1 37y00m 37y08m 38y11m 42y00m 52y03m 49y08m 54y00m 2 36y07m 37y03m 38y05m 41y06m 43y00m 47y00m 34y03m 3 35y06m 35y07m 36y07m 39y08m 39y01m 30y06m 32y08m 4 34y11m 35y05m 29y01m 38y07m 35y10m 30y04m 31y03y 5 34y09m 27y10m 24y00m 27y01m 26y06m 27y10m 27y10m 6 27y10m 22y10m 23y07m 26y08m 26y05m 27y04m 24y05m 7 22y06m 22y04m 22y10m 26y00m 25y06m 23y10m 24y03m 8 22y02m 21y07m 22y04m 25y05m 23y11m 22y05m 24y00m 9 21y05m 21y01m 22y02m 25y00m 23y05m 21y11m 23y09m 10 20y11m 21y00m 21y01m 24y10m 20y05m 20y05m 23y09m ≧30y 11 20y05m 19y10m 21y00m 23y11m 20y01m 20y01m 19y11m 20y-29y11m 12 20y04m 19y09m 21y00m 23y11m 16y05m 19y11m 19y00m 10y-19y11m 13 19y04m 19y09m 20y10m 23y06m 16y02m 16y07m 16y06m 14 19y03m 19y07m 20y09m 21y07m 16y00m 15y09m 16y00m 15 19y01m 19y06m 18y10m 20y03m 15y11m 15y02m 15y01m 16 18y11m 17y07m 18y06m 19y08m 15y09m 13y03m 14y04m 17 18y10m 17y03m 16y01m 18y05m 13y01m 12y07m 13y08m 18 17y00m 15y10m 15y09m 17y01m 12y08m 11y07m 13y07m 19 16y07m 14y10m 13y10m 16y01m 12y06m 11y02m 12y10m 20 15y02m 14y07m 13y10m 15y09m 11y11m 10y05m 12y09m 21 14y05m 12y10m 13y00m 15y03m 11y09m 10y03m 12y07m 22 14y02m 12y07m 12y02m 15y02m 11y03m 12y05m 23 13y11m 11y09m 12y01m 14y01m 12y04m 24 12y02m 11y00m 11y06m 13y07m 12y03m 25 11y11m 10y10m 11y00m 13y05m 12y01m 26 11y01m 10y05m 10y06m 13y04m 11y11m 27 10y04m 10y04m 13y04m 11y08m 28 10y02m 10y04m 13y01m 11y04m 29 10y03m 10y06m 11y01m 30 10y00m 10y00m 10y07m 31 10y02m 32 10y01m 28 26 30 30 22 21 32 These data are based on surveys conducted by Diet member on seven different occasions between 2000 and 2020 Prisoners in Solitary Confinement for more than 10 years Date of Research Period of Isolation y=year m=month NO.of Prisoners 5 (2) 濫用的な保護室収容措置 刑事収容施設法は被収容者が刑務官の制止に従 わず大声または騒音を発する場合、「特に必要 があるとき」に限り保護室収容を認めている (刑事収容施設法79条1項2号)2。 しかしながら、このような制限にもかかわらず、 現在でも濫用的な保護室収容が頻発しており、 施設内の処遇について不服を訴える被収容者を 保護室へ収容する例も見られる。 たとえば、2017年3月に新宿警察署におい て、路上で拾った他人名義のクレジットカー ドを所持していたことを理由に占有離脱物横 領罪で逮捕されたネパール人男性が、日本語 を解さないため、布団を自分で倉庫に戻すよ うに等の留置係員の指示が理解できず、留置 室から出ようとし、留置係員との間で押し問答となった結果(留置係員に対して暴力は振 るっていない)、4人の留置係員が、「馬鹿にしてんだろ!」又は「馬鹿にしてるだろ!」 などと発言した上で、反抗的態度であるとして同男性を保護室に午前6時52分頃に強制 的に収容した。更に、保護室に収容後、15人程度の係員で同男性を取り囲み、同男性に 戒具を使用(腰手錠、膝、足首の3点に同時使用)した。男性はその後約2時間、戒具を 付けたまま保護室で寝転がされて過ごし、同日午前9時18分になって腰手錠のみ外され、 護送用の手錠に付け替えられ、検察庁に移送された。しかし検察庁で取調べ中、片手錠を 外したところ、筋挫滅症候群等による外傷性ショックで死亡した。3 この例に限らず、最高裁判所は濫用的な保護室収容を容認するかのような姿勢を示してい る。最高裁判所平成30年10月25日判決において池上政幸裁判官は、次のような補足 意見を述べている。 2 刑事収容施設法第79条1項 刑務官は、被収容者が次の各号のいずれかに該当する場 合には、刑事施設の長の命令により、その者を保護室に収容することができる。 1 自身を傷つけるおそれがあるとき。 2 次のイからハまでのいずれかに該当する場合において、刑事施設の規律及び秩序を維 持するため特に必要があるとき。 イ 刑務官の制止に従わず、大声又は騒音を発するとき。 ロ 他人に危害を加えるおそれがあるとき。 ハ 刑事施設の設備、器具その他の物を損壊し、又は汚損するおそれがあるとき。 3 この事案は警察の留置施設で発生したものであるが、留置施設においても刑事施設と同 様の保護室に関する規定が設けられている(刑事収容施設法214条)。 写真は左のネパール人男性が留置施設 の保護室内において拘束されている様 子。刑事施設の保護室も同様の構造と なっている。 6 「特に必要があるとき」とは,被収容者が著しく不安定な精神状態にある場合に限られ るものではなく,被収容者が意図的に抗議行動として大声等を発するなどしており,状況 に応じてその行動を自制することができる場合であっても,現に同号イからハまでのいず れかに該当し,刑事施設の規律及び秩序を維持するため上記高度の必要性があるときは、 保護室に収容する措置を執ることができるものと解するのが相当である。 かかる補足意見に従えば、処遇について不服を訴えるためシュプレッヒコールをあげる 被収容者であっても保護室へ収容されることとなる。このような保護室収容措置が「例外 的な事案において最後の手段として」(マンデラ・ルールズ規則45・1)実施されてい るとは到底いえない。 2 外部交通に対する妨害:秘密交通に対する執拗な妨害(LOI, para.17) 求める勧告 (i) 締約国は、あらゆる法律問題について、弁護士・受刑者間の信書の発受に対する検閲・ 妨害を禁止するよう制度を改めるべきである。 締約国は、保護室収容中の受刑者であっても、弁護士との面会や信書の発受が認められるよ う制度を改めるべきである。 (1)日本政府の回答 この点について日本政府は、次の通り回答している。 「被収容者と,同人が受けた処遇に関して事件を受任した弁護士との面会については, 原則として面会に職員が立ち会わず(刑事収容施設法第112条,11 6条),また,同 弁護士からの信書の受信については,これらの信書に該当することを確認するために必要 な限度において行うこととされている(刑事収容施設法第 127条,135条)。」4 4 刑事収容施設法第127条 刑事施設の長は、刑事施設の規律及び秩序の維持、受刑者 の矯正処遇の適切な実施その他の理由により必要があると認める場合には、その指名する 職員に、受刑者が発受する信書について、検査を行わせることができる。 2 次に掲げる信書については、前項の検査は、これらの信書に該当することを確認する ために必要な限度において行うものとする。ただし、第三号に掲げる信書について、刑事 施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場 合は、この限りでない。 一 受刑者が国又は地方公共団体の機関から受ける信書 二 受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し調査を行う 国又は地方公共団体の機関に対して発する信書 三 受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法第 7 しかしながら、以下の事例が示すとおり、実際には、刑事施設はいかなる状況において も信書を開封して内容を閲読する運用を続けている。このため弁護士・受刑者間の信書の 発受についてコミュニケーションの秘密はまったく保障されていない。加えて、受刑者が 保護室に収容されている場合は、処遇について依頼を受けた代理人弁護士や刑事事件の弁 護人であっても面会や信書の発受が禁止されている。 (2)信書に対する検閲 ある受刑者から刑事施設の処遇に関して国家賠償請求訴 訟の依頼を受けた弁護士が、当該受刑者に対して事件に関 する信書を送付したところ、封筒が開封され内容が閲読さ れた。 このとき送付された信書は、左の写真の通りカバーで包ま れており、封筒を開けるとカバーで包まれた信書が現れる ようになっていた。そしてカバーには「秋田刑務所に対す る国家賠償請求訴訟に関する信書(刑事収容施設法127 条2項3号該当信書)開封厳禁」と記載されていた。封筒 の中に差入禁止物品が含まれていないことは、カバーの隙 間を除けば容易に確認できるうえ、カバーの記載を見れば 当該信書が処遇に関して事件を受任した弁護士と発受する 信書(刑事収容施設法127条3号該当信書)であること を確認できた。 ところが、刑事施設の職員はこの信書を開封し、内容を閲読した。受刑者は当該信書に対 する検査の違法性を主張して、国家賠償請求訴訟を提起した。 この事案において秋田地方裁判所は、カバーを外し内容にわたる検査を実施した秋田刑 務所長の措置を違法と判断したが、控訴審である仙台高等裁判所秋田支部は検査を適法と し、内容を閲読した刑事施設の措置を容認した。5仙台高等裁判所秋田支部は信書のカバー に当該信書が刑事収容施設法127条2項3号に該当することが明記されていたとしても それが真実であることを確認する必要はなくならない、当該訴訟と無関係な事項を内容と する信書がやり取りされる可能性も考えられる、として刑事施設による閲読を適法として いる。同裁判所はこの事案の以前にも同様の判断をして、信書の開封および閲読を適法と 三条第一項に規定する職務を遂行する弁護士(弁護士法人を含む。以下この款において同 じ。)との間で発受する信書 5 平成31年3月1日秋田地方裁判所判決(事件番号:平成29年(ワ)第140号)、 令和2年5月27日仙台高等裁判所秋田支部判決(事件番号:平成31年(ネ)第16 号・令和元年(ネ)第44号) 8 判断している。6 しかしながら、このような判断が通用するのであれば、いかなる工夫を施しても常に刑事 施設職員による信書の閲読が許容されることとなる。 (3)保護室収容中の受刑者に対する外部交通規制 刑事収容施設法は、被収容者が大声・騒音を発し刑事施設の規律維持のために特に必要 がある場合などにおいて、被収容者を保護室に収容することができると定めている。もっ とも、同法は保護室に収容されている被収容者と弁護人等との面会など、面会に対する規 制については特に規定を置いていない。 この点について最高裁判所は、「保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁 護人等からあったとしても,その許否を判断する時点において未決拘禁者が同条1項2号 に該当する場合には,刑事施設の長が,刑事施設の規律及び秩序を維持するため,面会を 許さない措置をとることができる。」と判示する。7 このような最高裁判決からすると、保護室収容中は弁護人であっても被収容者との面会が 制限されうることとなる。そしてすでに述べたとおり、この最高裁判決の補足意見におい て池上政幸裁判官は「被収容者が意図的に抗議行動として大声等を発するなどしている」 場合であっても保護室収容が適法とされることがあると述べている。このような見解によ ると被収容者が刑事施設の処遇に抗議している場合、被収容者は保護室に収容されるだけ ではなく刑事弁護人や処遇に関する不服申立の代理人弁護士とも面会が許されなくなる。 以下の事例から分かるとおり、このような懸念はすでに現実のものとなっている。 a) 栃木刑務所事件 栃木刑務所で受刑する無期懲役受刑者が刑事施設の処遇に関して民事訴訟を提起し、同訴 訟について代理人弁護士を選任した。その後、この無期懲役受刑者は保護室に収容され、 2018年12月20日の面会を最後に、代理人弁護士との面会が許されなくなった。2 019年7月2日、代理人弁護士は、受刑者との外部交通が6か月以上にわたり遮断され ているなどとして、栃木弁護士会に対して人権救済の申し立てをおこなった。8現在、栃木 弁護士会が調査を進めている。 b) 保護室収容中の受刑者が弁護人との接見が認められなかった例 保護室収容中の受刑者と面会するため、同受刑者の刑事弁護人が3回にわたり面会の申 し入れをしたがいずれも許可されなかった事案において、秋田地方裁判所は、刑事弁護人 が面会申し入れをしたときはいずれも保護室収容の要件を満たしていたことから、保護室 6 平成31年2月4日仙台高等裁判所秋田支部判決(事件番号:平成30年(ネ)第34 号) 7 平成30年10月25日最高裁判所第1小法廷判決・民集72巻5号940頁 8 朝日新聞「女性受刑者巡り人権救済申立書『半年間面会許されず』」(2019年7月 2日) 9 収容を中断して刑事弁護人と面会させなかったことは違法ではないと判断した。9 3 終身刑化する無期懲役刑 (LOI, para.17) 求める勧告 (i)仮釈放の要件を客観化し、「社会の感情」や「悔悟の情」などの主観的要件を削除 すべきである。 (ii)定期的に仮釈放の審査を行うことを定めるべきである。 (iii)仮釈放の判断を適正かつ公平に行うものとするため,地方更生保護委員会の独立性 を強化して構成を見直すべきである。 (ⅳ)①仮釈放を不許可とする判断は決定によるものとし,②その決定は理由とともに受 刑者本人に対して書面により告知すべきものとし、③仮釈放不許可決定に対する不服申立 てを認めるべきである。 (1)仮釈放の基準について a) 無期懲役が科された受刑者の仮釈放の基準については、刑法の規定上は、刑の執行開 始後10年が経過することと、当該受刑者に「改悛の状」があることの2つの要件を満た すことが必要とされている(刑法第28条)。そして、この「改悛の状」があると言える のかについては、社会内処遇規則第28条に基準があり、「悔悟の情及び改善更生の意欲 があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために 相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認め られないときはこの限りではない。」とされている。 b) まず、このように、更生が充分に進んでおり、再犯のおそれがなくなっていたとして も、「社会の感情」を理由に仮釈放を却下することが可能となっている点が、問題である。 罪の重大さに見合った十分な期間服役したことに加えて,「社会の感情」を考慮すること は相当ではない。 c) また、上記の「悔悟の情」は有罪の自認が前提とされており,刑事裁判において公訴 事実を否認し,かつ,それを維持して判決確定後も再審請求をしている場合などは「改悛 の状なし」と認定される傾向にある点も、問題である。国際基準によって求められている のは,当該受刑者が安全に社会復帰できる状態となっているか否かである。そのためには, 本人が罪を認め悔い改めることを内容とする「悔悟の情」は不要である。 d) 仮釈放の要件を客観化することが必要である。 あわせて、仮釈放の判断を適正かつ公平に行うものとするため,地方更生保護委員会 の独立性を強化して構成を見直すことも必要である。 9 令和2年1月24日秋田地方裁判所判決(事件番号:平成30年(ワ)第10号) 10 e) また、仮釈放に関する手続きにも問題がある。特に、更生保護法第92条は、地方更 生保護委員会が決定をもってした処分に対して行政不服審査法による不服申立てを認めて いるが,仮釈放を許可しない判断は決定によるものとされていない。そのため,受刑者は、 仮釈放不許可に対して審査請求をすることができない。不許可の理由も告知されない。 この点について,東京ルールでは不服申立手続きの導入が最低基準として示された。そこ で、更生保護法を改正し,①仮釈放を不許可とする判断は決定によるものとし,②その決 定は理由とともに受刑者本人に対して書面により告知すべきものとし、③仮釈放不許可決 定に対する不服申立てを認めるべきである。 (2)2014年以降の仮釈放数について a) 無期懲役が科された受刑者で、仮釈放を許された者の数は、2014年で7人、20 15年は11人、2016年は9人、2017年は11人、2018年は10人である。 毎年、10人前後しか仮釈放となっていないのであって、これはあまりにも少ない。なお、 仮釈放者から「仮釈放取消し後、再度、仮釈放を許された者」を除いた数(日本政府回答 はこの数を挙げている)は、2014年で6人、2015年で9人、2016年で7人、 2017年で8人、2018年で7人である10。 以下、法務省が2019年12月に公表した資料「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に 係る仮釈放の運用状況について」から、無期刑受刑者数の推移等の表を引用する。 10 法務省が公表した資料 http://www.moj.go.jp/content/001274998.pdf「無期刑の執行状 況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」(2019年12月)1頁。 11 2014年~2018年において、それぞれの年末に在所する無期刑受刑者の数は、1 842名~1789名で、おおむね横ばいとなっている。それにもかかわらず、仮釈放者 数は、年間で各10名前後しかいないのである。そして、無期刑新仮釈放者の平均受刑期 間は、31~33年となっており、仮釈放が認められるまでの受刑期間が長期に渡ってい ることは明らかである。 さらに、死亡した無期刑受刑者は、2014年で23人、2015年で22人、2016 年で27人、2017年で30人、2018年で24人となっている。仮釈放となる者の 数の2倍以上の者が、刑務所内で死亡しているのである。 b) また、2018年末時点における無期刑受刑者の年齢別の在所者数を見ると、70歳 代の受刑者が358人(20.0%)、80歳代以上の受刑者が97人(5.4%)おり、 高齢の無期刑受刑者が相当多く在所している11。 無期刑受刑者の仮釈放数があまりに少ないことにより、無期刑受刑者の高齢化は深刻 11法務省が公表した資料 http://www.moj.go.jp/content/001274998.pdf「無期刑の執行状況 及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」(2019年12月)3頁。 12 な問題となっている。このような問題を解決するためにも、上記(1)エオなどで述べた ような改革が必要である。 (3)不透明な仮釈放手続:星野文昭氏の例12 日本の仮釈放手続が極めて不透明であるということは、徳島刑務所で受刑していた無期 懲役受刑者・星野文昭氏の例により示されている。 星野氏は殺人、現住建造物等放火、公務執行妨害、傷害、凶器準備集合被告事件で無期懲 役を言い渡され、1987年10月30日に徳島刑務所へ移監された。星野氏はその後3 0年余り徳島刑務所で受刑したが、2019年3月25日、四国地方更生保護委員会は、 星野氏について仮釈放を認めないと判断した。そして同年4月18日、星野氏は東日本矯 正医療センターへ移監となり、同年5月30日、肝臓癌のため死亡した。 弁護団は2018年より星野氏の体調悪化を把握し、徳島刑務所に対して検査の実施を 求めていた。しかしながら、徳島刑務所はこれに一切応じなかった。そして2019年3 月20日には、適切な医療を受けられるようにするため星野氏を仮釈放とすべきとの意見 書を四国地方更生保護委員会に提出したが、同委員会は仮釈放を認めなかった。同年4月 15日、弁護団は、四国地方更生保護委員会に対し仮釈放を認めない理由を明らかにする よう求めた。しかしながら同委員会はこの要望にも応じなかった。 星野氏に対する仮釈放手続の問題は、仮釈放を認めない理由が開示されない点だけでは ない。そもそも星野氏の行刑態度は極めて良好であり、32年に及ぶ受刑生活の中で星野 氏が懲罰を受けたのはわずか7回だけであった。懲罰を受けた行為と懲罰の内容は Appendix2に記載したとおりであり、いずれも刑務所の規律・秩序に影響を与えるもので はなく、日常生活の中で、ひとびとが当然にようにしているささいな行為にすぎない。と りわけ2018年5月の7回目の懲罰は8年ぶりの懲罰であり、仮釈放審理が開始する直 前のことであった。支援団体はこのときの懲罰について、仮釈放審理にマイナスの影響を 与えるため課されたものであると批判している。仮釈放を認めない理由が明らかにされな い現状では、このような批判を払拭する根拠も認められない。 第3 精神科医療における拘禁 1 国内人権機構設置の進展(LOI,para.4) 求める勧告 政府は、国内機構の地位に関する原則(パリ原則)に即した国内人権機構を設置すべき である。 (1) はじめに 12 事実関係はすべて「星野文昭さんをとり戻そう!全国再審連絡会議」 http://fhoshino.u.cnet-ta.ne.jp/に基づいている。 13 後述の第5においては、拷問禁止条約選択議定書批准の必要性と国際基準に照らしたあ るべき国内人権救済制度を指摘する。ここでは、人権救済制度に関して、日本政府が、国 際社会においてこれまで抗弁としてきた法務省の人権擁護機関の法的根拠の薄弱性と精神 科医療に関する具体的事案を通した同制度の機能不全を論じる。 政府は、委員会に対しては「人権救済制度の在り方については,これまでなされてきた 議論の状況も踏まえ,検討しているところである。」と事実上の無回答である。他方で、 政府は、国連人権理事会における定期的普遍的レビュー第二回日本審査フォローアップに おいて、勧告 34.勧告 60.勧告 62.勧告 63.勧告 66.勧告 79.勧告 84.勧告 87.勧告 89.勧告 92.勧告 114.勧告 115.勧告 139.勧告 142.勧告 149.勧告 161.勧告 162. 勧告 163.勧告 164.勧告 166.に対して、「法務省の人権擁護機関では,人権相談所を設 けるなどして差別を受けた方々からの相談に応じているほか,人権侵害の疑いのある事案 を認知した場合には,速やかに調査し,事案に応じた適切な措置を講じている。」など、 法務省の人権擁護機関が国内人権機構の代替制度であるかの如く説明をする13。しかし、 法務省の人権擁護機関は、制度として国内人権機構でないことはもとより、代替制度とし ても機能していない。 (2) 法務省の人権擁護機関の法的根拠 法務省・法務局が行う人権擁護活動の法的根拠は、法務省設置法により法務省の所掌事 務として、①人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関すること、②人権啓 発及び民間における人権擁護運動の助長に関すること、③人権擁護委員に関すること、④ 人権相談に関すること、と規定されていることにある。 ここでもっとも重要なのは、①人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済であるが、根 拠は、人権侵犯事件調査処理規程、人権侵犯事件調査処理細則なる行政通達でしかなく、 人権侵犯救済の申立があっても調査の権限がなく、人権侵害の相手方の協力がなければ調 査することもできない。 また、法律による所掌は、通達や運用により縮小解釈されており、人権侵犯は、国内法 上の違法を要件とされており、かつ人権侵犯行為の日から 1 年の経過をもって調査開始し ないことを原則とするなど、とても人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済が可能な制 度ではない。 (3)精神科医療に関する具体的事案を通した同制度の機能不全 そのため 2019 年度の新規救済手続開始件数が 15,420 件であるのに対して、相手方の反 省を促す「説示」が 99 件(0.6%)、関係者地域に対して人権尊重に対する理解を深める 「啓発」が 34 件(0.2%)しかなく、事実上機能していないことが数値上からもあきらか 13 The Government of Japan Mid-term Report on the progress made in the implementation of the recommendations issued at the second cycle of the Universal Periodic Review January 2017. 14 となっている14。 医療扶助・人権ネットワークが関与した、特に精神医療に関する人権侵犯救済申告にお いても、後述のNさん、Hさんのケースは、国連恣意的拘禁作業部会は、恣意的拘禁にあ たると認定しているにも関わらず、法務局は、ともに「調査の結果、人権侵犯の事実があ ったとまでは判断することができませんでした。」と、侵犯事実不明確の決定をしている。 また、2017 年 10 月に行った、医療保護入院(精神保健福祉法 33 条)について、家族等 の同意者がいるにも関わらず、家族がいない等例外的に認められる行政府の長の同意によ る強制入院が人権侵犯にあたるという申立は、未だに何の結論もだされていない。同様に、 全く同旨の 2019 年 7 月の申立に対しては、「人権侵犯の事実があったとまでは判断するこ とができませんでした。」と侵犯事実不明確の決定がなされている。 2019 年 5 月に申立をした、法務省人権擁護部等への電話連絡を禁じる旨の行動制限は人権 侵犯行為にあたるという申立は、侵犯事実不明確と判断された。 後述の T さんに関する 2019 年 7 月に申立をした、強制入院となった 2015 年から一切治療 を受けておらずその間も自傷他害の事実がないのに措置解除せずに強制入院を継続するこ とが人権侵犯行為にあたるという申立は、本日まで何らの決定もなく強制入院が継続して いる。 2019 年 8 月に申し立てた、法令根拠なく民間移送会社を利用して、強制的に精神科病院に 移送したこと、その移送費を捻出するために申告人の名義を冒用してなした生活保護実施 機関による生活保護申請書類の偽造等は人権侵犯にあたるという申立は、細則第 7 条第 1 項第 5 号(行為のときから 1 年を経過した)ことを理由として手続き開始しないことの決 定がなされている。 2 措置入院の必要性・比例性とセーフガードの確保(LOI, para.15(a)) 14 15420 件中、処理された件数は 15404 件であった。「援助」:13823 件(89.7%)、 「要請」:508 件(3.3%)、「説示」:99 件(0.6%)、「調整」:41 件(0.3%)、 「措置猶予」:17 件(0.1%)、「侵犯事実不存在」:5 件(0.03%)、「侵犯事実不明 確」:694 件(4.5%)、「啓発」:34 件(0.2%)。「援助」とは法律上の助言を行った り、関係行政機関や関係ある公私の団体等を紹介したりすること。「要請」とは被害の救 済又は予防について実効的な対応ができる者に対し必要な措置を執るよう求めること。 「措置猶予」とは事案の軽重や反省の程度、懲戒の有無等を考慮して措置を講じないこ と。 15 求める勧告 (i) 政府は、非常に広範な要件の下で、精神障害を持つ者の措置入院が数多くなされてい る実態を認識し、措置入院の必要性及び比例性判断が厳格なものとなるよう法改正また は運用方法の改善を行うべきである。 (ii) 政府は、入院の開始及び継続に際して権利救済を受けられるよう手段拡充に努める べきである。 (iii) 政府は、措置入院を行う場合には、患者の権利擁護に努める弁護人に対して、強制 入院を要する理由を明らかにするよう法改正または運用方法を改善すべきである。 (1)はじめに 政府回答は、「措置入院については、入院時の手続や入院中の審査が法律上厳格に定めら れている。」と指摘する。しかしながら、明らかに不必要と見られる強制入院が未だに多 く行われている。前回の委員会による勧告15にも拘わらず状況が改善したとは言えない。 不必要な強制入院が数多くなされている原因は、政府が説明する法制度やその運用に問題 があること及び精神病患者に関する社会制度拡充が極めて不十分であることにある。 以下では、(2)において、精神医療制度の問題点を指摘し、(3)においてそれら問題点が 顕出している具体的事案を例示する。 (2) 問題点 a) 広範な要件 法 29 条 1 項が精神障害による自傷他害の「おそれ」を要件とする措置入院は、都道府県知 事の決定に基づき開始され、その要件は極めて広範に解釈運用されている。他害は、「他 の者の生命、身体、貞操、名誉、財産等又は社会的法益等に害を及ぼす行為」をいう(昭 和63年4月8日厚生省告示第125号「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第2 8条の2の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」)。例えば、後述の体調不良により 下痢をしてホテルのベッドを汚した行為(Hさんの事案)も、他人の財産を害するので、 他害に該当する。そもそも自傷他害の「おそれ」の存在に関して、どの程度先の将来につ いてまで予測するのか不明確であり、また精神医療によってこのような予測が可能なのか 相当な疑問がある。要件自体が、恣意的に用いられやすいものであり、実際に恣意的に用 いられている。 b) 必要性・比例性判断の厳格さの欠如 閉鎖病棟に隔離されるという重大な人権制約が行われるにもかかわらず、これに見合った 必要性についての緻密な判断がなされていない16。例えば、後述のように、コーラ1本の 15 CCPR/C/JPN/CO/6, para. 17. 16 Cf. A/HRC/30/37, United Nations Basic Principles and Guidelines on Remedies and Procedures on the Right of Anyone Deprived of Their Liberty to Bring Proceedings 16 万引き(Nさんの事案)やホテルのベッドの汚損(Hさんの事案)など、軽微な他害行為 が行われた場合であっても約3か月間にわたり措置入院が行われた。また、家族に暴力行 為をおこなった事案では、約5年半にわたり、措置入院が行われ、現在も継続中である (Tさんの事案)。指定医の判断は、より緩やかな代替手段の検討や比例性に関する検討 を経ているとは言い難い。そもそも、措置入院ではその強制入院の必要性の判断を行政機 関が行っており、司法判断を経ていない問題がある。刑事手続では刑罰として意に反する 拘禁を行う場合裁判所の判断を介し、そこでは検察官が各種証拠をそろえ、かつ弁護人が 被告人の権利擁護に努める。そして、身体拘束について被告人の行為に照らし比例性を重 視して判断が行われる。措置入院の必要性・比例性判断はより厳格なものとなるよう改善 されなければならない。 c) 権利救済手続の不備 現行制度では、拘禁開始に至るまで、また、拘禁直後に弁護人が関与し権利擁護に務める 機会がない。強制入院後、行政機関や裁判所に対する不服申し立てを含め救済方法は形式 的にはいくつか存在する。しかしながら、これら救済手段の実効性はない。なぜなら、法 29 条 1 項の要件が非常に広く解釈され、かつ、診察をした指定医の裁量も非常に広く認め られているため、違法とした例はほとんどないからである。すなわち、行政機関の判断や 裁判所の判断は、指定医が措置入院相当と認めた判断を尊重しすぎる。しかしながら、そ の指定医の判断は、繰り返しになるが、より緩やかな代替手段の検討や比例性に関する検 討を十分に経たものではない。現行制度は、このように本来自由の剥奪まで必要のない者 まで強制入院をさせるものとなっている。これらの問題は拷問等禁止条約委員会からも改 善すべき点として繰り返し指摘されている17。 d) 理由の不提示 精神保健福祉法は、行政機関が、被拘禁者に自傷他害の恐れがある理由を示すことを求め ない。同法の施行規則や厚生労働省が作成したガイドラインも同様に理由の提示を求めな い。被拘禁者本人や弁護人が、病院や行政機関に対して、文書開示請求をしても開示され る文書では、強制入院を正当化するための重要な理由部分は黒塗りになる。したがって、 本人や弁護人は強制入院の理由を知り得ない。理由提示を徹底させることは、入院の必要 性の判断に慎重さをもたらし、その判断の恣意性を排除する効果がある。また、これは本 人が不必要な強制入院から解放されるための救済につながる。本来であれば、行政機関は、 当該人に存在する危険性を具体的事実に基づき示し、強制入院という移動の自由を制限す る人権制約が必要であることを示さなければならない18。 Before a Court, Principle 13 and Guideline 14. 17 CAT/C/JPN/CO/1, para. 26 and CAT/C/JPN/CO/2, para. 22. 18 自由権規約委員会は、一般的意見 35 号において、自由の剥奪開始に際した理由提示の 重要性を指摘した。また精神医療制度について時代遅れの法律を改正すべきことも指摘し ている。CCPR/C/GC/35, paras. 24-28 and para. 19. Cf. A/HRC/30/37, United Nations 17 (3)具体的事案 上記各問題が顕出する 3 つの具体的事案を指摘する。我々は、これらが氷山の一角にすぎ ないことを最大限強調する。 a) N さんの事案 2017 年 7 月、N さんはコーラ 1 本の窃盗未遂をきっかけとして約 2 か月間強制入院とな り、その後も直ちに退院できなかった。N さんは、窃盗未遂を行った当時、統合失調症に ついて通院治療を受けていた。しかし、犯罪行為に及んだ原因はその精神病ではない。N さんは、「ばれないだろう。」と軽く考え、店からコーラを盗もうとした。N さんには犯 罪歴がなく、本件はコーラ 1 本を対象とする窃盗未遂であり、その財産的被害は極めて低 廉であった。したがって本件は、仮に刑事手続き上処理されていれば身柄拘束が継続する に至る重大な事案ではなく、また仮に身柄が拘束されたとしても、早期に解放されるべき 事案だった。日本の制度は、このような N さんについても精神病を患っていることそして 窃盗未遂事件をきっかけにして、強制入院を開始し長期的に移動の自由を奪うことを可能 とする。この事案は、恣意的拘禁作業部会に通報し、2018 年、同部会は入院開始及び継続 が恣意的拘禁にあたるとの意見を採択した19。 b) H さんの事案 2016 年 8 月、H さんは、体調不良の下痢により宿泊中のホテルのベッドを汚損したことが きっかけで約3か月間措置入院となった。日本の刑法上、過失による器物損壊は処罰の対 象となっていないためHさんの行為は、犯罪ではない。この事案についても、恣意的拘禁 作業部会に通報し、2018 年同部会は、その入院開始及び継続が恣意的拘禁にあたるとの意 見を採択した20。 c) T さんの事案 T さんは、2015 年 3 月、家族への暴力行為を伴った喧嘩をきっかけに措置入院となった。 その後、現在まで措置入院となっている。しかし、T さんは、入院後現在に至るまで約 5 年半、病院内では、一切暴力的行為には及ばず平穏に生活を続けている。T さんは入院当 初から自身の精神疾患に対して疑いを持ち、医師からの質問に答えるのみで、他のすべて の治療や検査を拒否しているので、約5年半にわたり治療や検査は実質的に行われていな い。現在の状況では、T さんが治療や検査を拒否し続ける限り、T さんが退院できる見込 みはない。なお、新型コロナウィルスの蔓延を受けても、退院には至っていない21。 Basic Principles and Guidelines on Remedies and Procedures on the Right of Anyone Deprived of Their Liberty to Bring Proceedings Before a Court, Principle 7 and Guideline 5. 19 A/HRC/WGAD/2018/8 20 A/HRC/WGAD/2018/70 21 新型コロナウィルスの蔓延を受けて、各国際機関から拘禁に関する意見やガイドライン が出されている。それらガイドラインは、公衆衛生の緊急状況において拘禁を行う者によ 18 3 虐待の監視・報告制度(LOI15(b)) 求める勧告 政府は、現行制度が虐待に対する実効的な調査及び制裁のためには不十分なものであ ることを認識し、精神病棟に対する実効的かつ独立した監視及び報告制度を確保せ よ。 政府は、精神医療審査会を含めた既存制度の説明をする。しかし、精神科病院における 拘禁については、刑事や入管分野では存在する「視察委員会」のような制度が存在しない。 これらの制度の独立性についても問題があることは後記第 5 に記載するとおりであるが、 精神科病院の分野ではそもそもこのような制度が存在しない。精神医療審査会も、虐待に 対する実効的な調査及び制裁を行う目的をもった機関ではない。精神医療審査会の活動実 態についても 2018 年 4 月から 2019 年 3 月の 1 年間で各都道府県の精神医療審査会が審査 を完了した退院請求の数は、2551 件であったが、そのうち、「入院の継続が適当ではない」 すなわち退院が適当であると判断したものは僅か2.0%であった。その他は、「引き続き現 在の形態での入院が適当である」が 91.8%、「他の入院形態への移行が適当である」が 3.3%という割合である22。また同じ期間中、審査が完了した処遇改善請求の数は、577 件 であり、そのうち「処遇は適当である」が 88%、「処遇は適当でない」が 6.3%、「不明」 が5.7%という割合である。例えば、小脳の小奇形、何らかの発達異常、知的能力の不十分 さにより1年近く精神科病院に強制入院していた事案(Sさんのケース)について、精神 医療審査会は、入院治療の実効性が疑われる事案にもかかわらず、「引き続き現在の形態 での入院が適当である」と判断した。精神医療審査会の判断は、退院を認める割合や処遇 不適当とする判断の割合が極めて低く、広範な要件の下、司法機関の判断を経ずに開始さ れた入院をほぼ追認するだけである。拷問禁止委員会からも、繰り返し拘束手続に対する 司法による効果的かつ徹底した監督を確保するためのすべての必要な措置をとるべきだと 勧告されている23。 第4 入管施設における拘禁(LOI, Para.21) 1 退去強制中の不当な扱いを防ぐこと(LOI, Para.21(a)) るその必要性及び比例性判断は通常以上に厳格なものでなければならないと指摘する。 OHCHR and WHO, Interim Guidance on COVID-19: Focus on Persons Deprived of Their Liberty, March 2020; WGAD, Deliberation No. 11 on prevention of arbitrary deprivation of liberty in the context of public health emergencies, May 2020. 22 厚生労働省「精神保健医療福祉に関する資料-630 調査 2019 年度」 23 CAT/C/JPN/CO/1, para. 26 and CAT/C/JPN/CO/2, para. 22. 19 求める勧告 政府は移民が強制送還中に不当な扱いを受けることがないよう保証するため、あらゆる適 切な手段を講じるべきである。特に、(i)被収容者に対して一般社会と同水準の医療を提供 すべきである。(ii)被収容者に対する暴行を防止する対策を取るべきである。 (1)政府回答について a) 政府は 179「在留資格を持たない者が難民認定した場合は、逃亡のおそれがある等、 一定の除外事由に該当する場合を除き、仮滞在許可がなされ、収容されることはない」と 回答した。しかし、実際は空港に到着した者が直ちに難民申請をした場合、「逃亡のおそ れがある」などの理由でほとんど仮滞在許可はなされない。実際、2017 年の仮滞在許可は わずか 38 人24(不許可は 939 人)で、空港で難民申請をした 133 人のうち仮滞在許可を受 けたのは 0 人であった25。このように、仮滞在許可制度は機能しておらず、在留資格を持 たない者が難民申請をした場合は、ほとんどが収容されている。 b) 政府は 180「難民認定手続中は送還は停止され、・・・人道上の配慮が必要な者に ついては、仮放免を弾力的に運用することで最大限配慮している」と回答した。しかし、 2020 年 8 月現在、政府は難民手続中の者であっても送還を可能にするという、ノン・ルフ ールマンの原則に反する入管法の改正をしようとしている。また、「仮放免を弾力的に運 用」というのは全く事実ではない。実際は仮放免を大幅に制限する通知を 2018 年 2 月 28 日に出したため、仮放免は減り、収容期間が長期化した。 (2)重要な事実 前回勧告以降、退去強制手続による収容中の不当な扱いとして以下のものがあった a) 2017 年 3 月ベトナム人男性の死亡 2017 年 3 月 25 日、東日本入国管理センターにおいて、ベトナム国籍の 40 代の男性 (Nguyen The Hung)がくも膜下出血で死亡した。彼は、2017 年 3 月 15 日から同センタ ーに収容されていたが、同月 17 日から体調不良を訴え、21 日からは強い頭痛、胸痛を訴 え、動けなくなった。ところが、入管職員は彼を病院に搬送することなく、25 日に居室内 で亡くなっているのが発見された26。 b) 2018 年 7 月トルコ人男性骨折 2018 年 7 月 12 日、大阪入国管理局において、トルコ人男性(ムラット・オルハン)が 服薬状況を確認に来た職員の態度にいら立ち、本を壁に投げつけた。すると入管職員は彼 を独房に連行し、職員 7,8 人が彼を床に押さえつけて後ろ手に手錠をし、無抵抗の彼を押 24 http://www.moj.go.jp/content/001317678.pdf 25 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/196/toup/t196140.pdf 26 “Vietnamese died of stroke at Japanese detention center” https://www.reuters.com/article/us-japan-detention-death/vietnamese-died-of-stroke-atjapanese-detention-center-official-idUSKBN1750F8 20 さえ続けた。この暴行により、彼は右腕を骨折した27。 c) 2018 年 10 月ブラジル人男性負傷 2018 年 10 月 9 日、東京入国管理局において、ブラジル人男性(クスノキ・アンドレ) は東日本入国管理センターへの移送を拒否してトイレに閉じこもった。職員数名は彼をト イレから連れ出してうつぶせに押さえつけ、手錠を掛けた。この時の過剰な暴行により、 彼は指から出血し、左腱板損傷を負った28。 d) 2019 年 1 月クルド人男性暴行 2019 年 1 月 19 日、東日本入国管理センターにおいて、クルド人男性(Deniz)が薬の交 付をしない入管職員に対して抗議をした。すると10~15人の職員が居室に入ってきて、彼 に対して馬乗りになって後ろ手に手錠をかけ、腕を後ろに捻り上げたり、喉元を指で強く 押すなどの暴行を行った29。彼は暴行を受けた後、懲罰房に 5 日間、閉じ込められた。入 管は、彼の不服申出に対し、不当な行為であったことを認めたが、裁判では違法ではなか ったと主張している。 e) 2019 年 6 月ナイジェリア人男性の餓死 2019 年 6 月 24 日、東日本入国管理センターにおいて、40 代のナイジェリア人男性が 餓死した30。同男性は2015年11月から収容されていたが、日本に日本人の子がいたため、 帰国をせずにいた。彼は 4 回仮放免申請を行ったが、許可されずにいた。 法務省の報告書31によると、職員は彼が 1 週間ほど拒食をしているのを 2019 年 5 月 30 日 に把握した。彼は同日、「仮放免でも強制送還でもいいので、ここから出してください」 と職員に訴えた。6 月 1 日から 4 日まで職員は外部病院で彼に点滴を受けさせたが、病院 は、点滴は施設内でできるので、再診察は不要と伝えた。施設内の医師は6 月 5 日、7日、 17 日に彼を診察し、彼に食事や点滴を勧めたが、彼は断った。彼は 6 月 18 日からは居室 内でほぼ寝たきりの状態になった。職員は彼に食事や点滴を勧めたが、彼は 6 月 24 日に死 亡した。体重は 2019 年 10 月に 71kg あったのが、46.6kg になっていた。 27 “Turkish man sues Japanese gov’t, says immigration officials broke his arm” https://mainichi.jp/english/articles/20180529/p2a/00m/0na/043000c 28 “Brazilian man sues Japanese gov’t for injuries at immigration center” https://english.kyodonews.net/news/2019/11/8fc08ce08c58-brazilian-man-sues-japanesegovt-for-injuries-at-immigration-center.html 29 “Footage of Kurdish man’s detainment submitted to Tokyo court” https://english.kyodonews.net/news/2019/12/307487cd8037-footage-of-kurdish-mansdetainment-submitted-to-tokyo-court.html 30 “Nigerian man died on hunger strike at Japan detention center: agency” https://english.kyodonews.net/news/2019/10/974a20bc637c-nigerian-man-died-onhunger-strike-at-japan-detention-center-agency.html 31 http://www.moj.go.jp/content/001306650.pdf 21 法務省は報告書で、彼に前科があり、拒食者の健康回復のために仮放免は必要ではな いとして、仮放免するべきではなかったと説明した。拒食者に対しては強制的な治療が可 能という入管の内部通達が2001年に出されていたが、同通達は医師に伝えられず、治療は 行われなかった。 結局、入管は彼に対して、治療をすることも仮放免または送還をすることもなく、効 果的な対策を取らないまま、彼を死なせてしまった。 f) 2020 年 4 月東京入管女性被収容者集団制圧事件 2020 年 4 月 25 日、東京入管において、被収容者の女性数名が COVID-19 の流行にもか かわらず仮放免が認められないことに抗議し、「Give us freedom」などのメッセージを掲 げていた。すると、ヘルメットや盾を装備した男性を含む大勢の警備官らが、彼女らに飛 びかかり、床に押さえつけたり、首を絞めたりするなどして、彼女らを制圧し、居室に閉 じ込めた32。その間、下着姿でいるところをビデオ撮影されたり、わいせつな言葉をかけ られた女性もいた。 女性らはおとなしく立っていただけなのに、突然武装した男性職員らに制圧され、恐 怖とトラウマに苦しんだ。 (3)入国者収容所視察委員について 入管処遇については、入国者収容所視察委員がいるが、制度として不十分である。同委員 は 2010 年から導入された。入管法は、東日本と西日本にそれぞれ 10 人以内の委員を選任 し、委員は入管収容施設を視察して、収容所の運営に関して意見を述べる、と定めている。 しかしながら、視察委員は入管からの独立性が担保されておらず、入管によって権限も大 幅に制約されている。具体的には、委員の任命を入管の上級省である法務大臣が行ってお り、入管収容に対して批判的な人物を選任しないことが可能である。また、入管が委員会 の事務を担っており、視察する日時やエリアを委員が自由に選ぶことは事実上できない。 活動の範囲も、入管の解釈によって「入管施設の処遇」に制限され、収容の可否や仮放免 について言及することはできないとされている。 入国者収容所視察委員の独立性を高めるには、委員会を入管の管理下から独立させること が必要である。 (4)結論 退去強制手続中の不当な扱いは改善しておらず、前回審査の後、むしろ入管収容の長 期化、人権尊重意識の欠如によって状況は悪化している33。特に、必要な医療を提供せず に放置することによる死亡事故は、2014 年以降も続いている。そこで、前回勧告と同様に 「退去強制手続の過程において、外国人が不当な取扱いの対象とされないこと」を保障す 32 “2 foreign female detainees fearing COVID-19 file suit seeking release” http://www.asahi.com/ajw/articles/13410625 33 “Japan’s hidden darkness: Deaths, inhumane treatment rife at immigration centers” https://mainichi.jp/english/articles/20190709/p2a/00m/0fe/012000c 22 るために,あらゆる適切な措置を講じること。を求めると共に、特に、被収容者に対して 一般社会と同水準の医療を提供すること、被収容者に対する暴行を防止する対策を取るこ と、入国者収容所視察委員の入管からの独立性を確保するべきである。 2 収容代替措置 (LOI, Para.21(e)) 求める勧告 政府は、原則収容主義を改め、入管収容を例外とし、最終的な手段としてのみ行うようにす るべきである。収容期間の上限を法律で定めると共に、収容について迅速な司法審査を導入 するべきである。 (1)政府回答について a) 政府は回答 193 において、「不服があれば行政訴訟を提起する権利を有する」として いる。しかし、収容には「収容の必要性」が法律上の要件とされていないため、収容の必 要性に対する司法審査は存在しない。収容の前提となる退去強制事由を争う訴訟は可能で あるが、通常の行政訴訟であるため、結論まで1,2年かかるのが通常である。 難民申請者の収容については、現時点において難民申請中の者の送還が法律上禁止さ れている。しかしながら、2020 年 7 月、法務省は難民申請者の送還禁止を一部除外する法 改正をする私的懇談会の意見を公表した。政府は、難民申請者の送還禁止を一部除外する 法改正を意図しており、ノン・ルフールマンに反する結果を招く可能性がある。 b) 政府は回答 194 において、収容期間が長期化しないよう速やかな送還をするか、仮放 免を弾力的に活用していると述べる。しかしながら、2018 年 2 月 28 日に仮放免の基準を 厳格化したため、仮放免数は COVID-19 が流行し始めた 2020 年初頭まで減少し、収容期 間は長期化した(COVID-19 流行後は感染防止のため仮放免が増え、被収容者は約半数に なった。しかし、COVID-19 収束後は再収容すべきという声もある)。 c) 政府は回答 195 において、難民認定を適正にしていると述べる。しかしながら、難民 認定率はここ 5 年間 1%を大きく下回っており、適正に認定しているとは考えられない。 難民と認定されなかった者が再申請を行い、長期の入管収容という不利益を受けるに至っ ている。 日本における難民認定申請者/認定率 年 申請者数 処理数 難民認定 数 人道保護数 保護合計 難民認定 率 全保護率 2015 7586 5202 27 79 106 0.52% 2.04% 2016 10901 9632 28 97 125 0.29% 1.30% 2017 19629 12846 20 45 65 0.16% 0.51% 2018 10493 16596 42 40 82 0.25% 0.49% 23 2019 10375 11001 44 37 81 0.40% 0.74% *単位=人 *「処理数」は、一次審査及び異議手続において何かしらの結果(認定または不認定)を受けた 人数の合計 * 参考資料:法務省「令和元年における難民認定者数等について」 (http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri03_00004.html) d) 政府回答 198 について、医療ケアの不備については改善が不十分であり、2019 年には 餓死者が発生した。そもそも、6 ヶ月を超える長期収容が常態化し、長期収容によるスト レスや運動不足が健康状態を悪化させているため、医療ケアによる改善には限界がある。 健康を維持するためには長期収容自体をやめるしかない。 (2)入管法による原則収容主義 入管収容については入管法が定めており、前回報告書審査時から収容部分は変更され ていない。退去強制事由に該当する疑いのある容疑者は、収容令書によって最長 60 日間収 容される。退去強制令書が出された後の収容は送還されるまで無期限である。どちらも行 政機関が決定し、司法審査を経ない。これらの収容に「逃亡のおそれがある時」などの要 件は法律に定められておらず、無条件に収容が可能である。保証金を預けて解放する「仮 放免」があるが、判断は入国者収容所長等が行い、裁判所ではない。仮放免をするかどう かは入国者収容所長等の広い裁量によるとされ、不許可になってもその理由は示されない。 仮放免の申請から結果まで通常でも2,3ヵ月、長い場合には半年を超えることもあり、 迅速な判断はされない。仮放免不許可処分に対して、通常の訴訟を提起できるが、判決ま で 1 年から 2 年かかる。収容を継続するかどうか入管による定期的なレビューはなされな い。 (3)重要な事実 a) 被収容者の増加、収容期間の長期化 法務省発表によると、2014 年から 2019 年の各年末における 6 ヵ月以上の被収容者数、 収容期間は以下の通りである。2017 年以降、6 ヵ月以上の長期収容者数が大幅に増えてい る。 また、2019 年末の退去強制令書による被収容者 942 人のうち、難民申請を行ったことのあ る者は 438 人であった34。この間の収容に関する入管の運用は b)~f)のとおりである。 34 http://www.moj.go.jp/content/001314665.pdf 24 ※出入国在留管理庁発表データから作成 http://www.moj.go.jp/content/001313446.pdf ※単位:人 b) 伊勢志摩サミットを理由とする仮放免の制限 2016 年 4 月から 9 月にかけて、日本で G7 サミット及び関連会議が開催された。2016 年 4 月 1 日、法務省入国管理局長は、仮放免を受けた外国人は社会に不安を与えるという理 由で、サミット前後の仮放免を制限するよう通達を出した。 続いて入国管理局長は 2016 年 4 月 7 日、2020 年東京オリンピック・パラリンピック に向けて、安全・安心な社会を実現するため、不法滞在者及び強制送還を拒否する者など “社会に不安を与える外国人”を効率的・効果的に排除するよう通達を出した。この通達に は仮放免の制限は明示的に書かれてはいないが、サミット時に仮放免を制限したのと同様、 オリンピックという国際行事に向けて仮放免を制限する方向に働いたことが推測される。 c)2018 年 1 月 12 日発表の難民申請者の在留資格打ち切りと収容 既に述べたとおり、日本では難民申請者のほとんど全員が難民と認められない結果、 迫害のおそれから帰国できない者は再申請を行わざるを得ない。しかしながら、日本政府 は、以下のとおり、このような難民認定実務を抜本的に見直すことなく、以下のとおり再 申請者の在留を制限し、または原則として仮放免のない収容を行うようになった。 日本は2010年以降、難民申請者の生活安定を図るため、在留資格を持つ者が難民申請 をした場合は特定活動の在留資格を与え、6 か月後から就労を許可していた。 ところが入国管理局は、それが理由で難民申請者が急増し、日本での在留や就労目的 の濫用者がいるという理由で、2015 年 9 月から、正当な理由なく前回と同じ主張を繰り返 す 3 回目以上の難民申請者については在留資格を打ち切ることとした。 199 207 214 282 190 148 67 63 63 144 178 138 12 14 29 97 146 142 6 1 3 32 76 113 2 2 1 16 65 63 4 3 3 5 26 76 0 100 200 300 400 500 600 700 31/12/2014 31/12/2015 31/12/2016 31/12/2017 31/12/2018 31/12/2019 入管収容施設における収容期間 6か月~1年未満 1年~1年6か月未満 1年6か月~2年未満 2年~2年6か月未満 2年6か月~3年未満 3年以上 25 入国管理局は、さらにこの方針を進めるため、2017 年には、「難民認定制度の濫用・ 誤用的な再申請者の帰国促進に係る措置の試行について(指示)」を出し、一部の再難民 申請者について在留資格を打ち切ると同時に収容し、仮放免を許可せずに手続を行うとい う試行を行った。 そして、入国管理局は 2018 年 1 月 12 日、2 回目以上の難民申請者等に対しては原則 として在留資格を打ち切るという方針を発表した。これによって、2 回目以上の難民申請 者は、在留資格を失って収容されるか、収容されなかった場合でも就労を禁じられた。 d) 2018 年 2 月 28 日指示による仮放免制限 法務省入国管理局長は 2018 年 2 月 28 日、入管に対して仮放免を制限するよう指示す る文書を出した35。 同指示は、「仮放免を許可することが適当とは認められない者は、送還の見込みが立 たない者であっても収容に耐え難い傷病者でない限り、原則、送還が可能となるまで収容 を継続し送還に努める」とし、「仮放免を許可することが適当とは認められない者」の具 体例として、8 項目を挙げた。これには仮放免中に就労をした者や、入管への事前の届出 をせずに転居した者、2 回目以上の難民申請者などが含まれる。 e) ハンガーストライキに対する 2 週間仮放免と再収容 これら一連の収容方針により、仮放免数が著しく減少し、収容が長期化した。その結 果、2019 年 5 月頃から、長期収容に抗議をしてハンガーストライキをする被収容者が増え た。2019 年 6 月に大村入国者収容所で餓死者が出た後は、さらにハンガーストライキの参 加者が増加した。これに対し、入管は被収容者がハンガーストライキをやめることを条件 に仮放免を許可し始めたが、2 週間のみ仮放免を行い、その後は延長せずに再収容する、 という扱いをした36。再収容された者は、精神的に傷つき、うつ病に罹患したり、自傷行 為に至る者もいた。 f) 今後の政府の方針 政府は長期収容を防止する抜本的な方策を取らないまま、難民申請者を含めて送還を 強力に推進するという方針を採ろうとしている。 ナイジェリア人男性の餓死事件の後、政府は 2019 年 10 月に「収容・送還に関する専 門部会」を設置し、長期収容問題を検討すると言及した。しかしながら、2020 年 6 月 15 日に作成し、7 月 14 日に公表された同部会の報告書は、入管収容期間の上限設定や、司法 審査の導入は否定する一方、難民申請者の送還停止効の一部例外を設けたり、退去強制令 書が発布された後も帰国を拒否する者に罰則を導入するよう法改正を提案するものであっ 35 被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の 更なる徹底について(指示)(2018 年 2 月 28 日) 36 “Re-detention of asylum seekers in Japan, hunger strikes show strained immigration system” https://mainichi.jp/english/articles/20190902/p2a/00m/0fe/009000c 26 た37。 また、政府は 2019 年 10 月 1 日、仮放免中の者による犯罪事例(それは事実でないものま で含まれていた)を集めて公表するなど、仮放免が社会に与える不利益を強調した38。 (4)結論 このように政府は、原則収容主義を改めないまま、社会の安全・安心を実現するとい う漠然とした目的や、難民申請を抑制する目的、退去強制令書が発付された人が自ら出国 するよう強要する目的で、入管収容を恣意的に用いている。 政府は、国連機関に対しては「逃亡のおそれがある場合などに収容している」と、収 容が例外的であるかのような説明をするが、これは事実ではない。政府は国内では、「原 則収容主義」を掲げ、収容の目的を「国内での活動を禁止するため」と主張している39。 そして 2018 年 2 月 28 日指示のとおり、逃亡のおそれがない者も広く収容し、かつ、収容 に耐え難い傷病者でない限り収容をし続けるとしている。 ハンガーストライキへの対応として、そもそも収容をする必要のない者を、わずか 2 週間だけ仮放免を許可して、その後理由なく収容を再開することは、恣意的な拘禁に当た り、人の尊厳を弄ぶ行為であり許されない。 結論として、入管収容は最終的な手段としてのみ行うよう収容の条件、収容期間の上 限を法律で定めると共に、収容について迅速な司法審査を導入するよう委員会は政府に勧 告するべきである。 第5 OPCAT の批准と国内禁止メカニズム(NPM)の指定(LOI, para.4) 求める勧告 OPCAT の批准を見据え、以下をセットで勧告していただきたい。 (i)国内人権機関の設立と不服審査機能の充実、 (ii)法務省管轄の拘禁施設に設置された各視察委員会の独立性の強化、 (iii)厚生労働省管轄の精神医療機関及び児童自立支援施設における強制的措置に 関する視察委員会の設立 1 はじめに:求められる OPCAT の批准 第3の1で述べたとおり、またおそらく多くの報告書が指摘するとおり、日本では未 だ独立した国内人権機構が設置されていない。加えて、ここでは、恣意的拘禁の防止と いう観点から、拷問禁止条約選択議定書(OPCAT)と国内防止メカニズム(NPM)の 37 “Ministry panel proposes new penalties for refusing deportation” http://www.asahi.com/ajw/articles/13462363 38 削除された出入国在留管理庁作成ウェブサイト 39 国提出の準備書面の一例 27 必要性について述べる。 拷問禁止委員会は、その第 50 会期(2013 年5月6日~31 日)において採択された日 本の第2回定期報告についての総括所見 26 項にて、UPR 手続へのコミットメントに留 意し、国内における議論を加速し、 OPCAT をできる限り速やかに批准することを勧告 した。 2017 年の第三回 UPR 手続においても、スロベニア、グアテマラ、グルジア、チリ、 カボベルデ、ウクライナ、ウルグアイ、ガーナ、デンマークスペイン、トルコ、イエメ ンの合計 12 か国から OPCAT の批准を勧告され、日本政府はこの勧告を受諾している。 OPCAT は、国際機関と国内機関の「二本柱」によって成り立っている。すなわち、 国際機関としては委員会の下に設置された拷問防止小委員会(Subcommittee on the Prevention of Torture、 略称 SPT)があり、締約国の拘禁場所を定期的に訪問し、その 拘禁状態や拷問等の防止について勧告を行う。他方で、締約国は、拘禁場所を訪問する 一つ以上の機関を設置・指定又は維持するものとされており、これが国内防止メカニズ ム (National Preventive Mechanism、略称 NPM)である40。 40 NPM(国内防止メカニズム)に求められる機能と独立性 NPM には政府からの独立性が求められ、独立性を確保するために締約国には、①機能上 及び人員の独立性を保障すること、②NPM 専門家に要求される能力と専門知識を確保す るための必要な措置をとること、③ジェンダーバランス・国内の民族的集団・少数者集団 が代表されること、④NPM に必要な資源を利用可能とすること、⑤人権の促進及び擁護 のための国内機構(国内人権機関) の地位に関する原則(パリ原則・1993 年 12 月 20 日 国連総会決議 48/134 により採択)に十分な考慮を払うこと、が義務付けられている。 NPM は、その権限として、①拘禁場所において自由を奪われている人の取扱いを定期的 に検討し、②被拘禁者の取扱い及び状態を改善し、拷問等を防止するために、国連の関連 規範を考慮に入れて関係当局に勧告し、③既存の立法又は立法案に関して提案・所見を提 出する。そのために NPM は、被拘禁者・拘禁場所とその位置、被拘禁者の取り扱いや拘 禁状態に関するあらゆる情報へのアクセスの権利、あらゆる拘禁場所・施設・設備へのア クセスの権利を持つ。また、被拘禁者や情報提供者との秘密面会の権利や、訪問する場 所・面会する相手を自由に選択する権利、さらには拷問防止小委員会との接触を持つ権利 を保障される。 国内防止メカニズムに対して情報(その真偽を問わない)を提供したことを理由として、 個人又は組織に対して制裁が加えられ、あるいは侵害がなされることは許されない。ま た、NPM から勧告を受けた関係当局は、その勧告を検討し、可能な実施措置に関して NPM と対話に入る。さらに締約国は、NPM の年次報告書を公表し、普及するものとされ ている。 NPM は原則として議定書の批准から1年以内に指定することが求められているが、批准 を促進する趣旨から、その期間は最大で5年まで延長可能である。 28 2 日本の拘禁施設と、それに対する視察機能を持つ機関の存否と実情 (1)日本が OPCAT を批准した場合には、どういった機関 が NPM として想定可能だろ うか。 前提として、選択議定書の対象となる拘禁場所としては、刑事施設(刑務所・拘置 所)、警察留置場、入管収容施設、精神科病院(措置入院・医療保護入院の医療機 関)、医療観察制度における指定入院医療機関、少年院・少年鑑別所、家庭裁判所の 許可を受けて強制的措置を実施することができる児童自立支援施設が考えられる。 (2)このうち、刑事施設に関しては刑事施設視察委員会又は刑事施設の被収容者の不服 審査に関する調査検討会(不服検討会)、警察留置場については留置施設視察委員会、 入管収容施設については入管収容施設視察委員会、少年院と少年鑑別所の視察委員会 がある。 もっとも、視察委員会は、当局からの独立性が極めて不十分である。第三回の拷問 禁止委員会の日本政府に対する審査の中で、イタリアの BRUNE 委員が「刑事施設視察 委員会が視察に事前の予告なしに訪問するのが認められているのか」と質問し、日本 政府が、「事前に予告することは法律上義務付けられていない。実効性のある視察の ためには事前に打ち合わせることが多い。」と答えた。弁護士会推薦の委員が刑事施 設・少年刑事施設の視察委員には、必ず選任されているが、入管と留置施設の視察委 員には例外的に弁護士会の推薦を認めない例がみられる。弁護士と医師以外の委員に ついては、選任は施設当局に委ねられており、専門性や熱意に欠ける委員が選任され る可能性がある。 他方、不服検討会は、学者(刑事法)・弁護士・医師・ 篤志面接委員経験者から成 っており、視察委員会に比べると専門性は高いが、そもそも、国内人権機関が設置さ れるまでの事実上かつ暫定的機関として設置され 発足した経緯から明らかなように、 法的基盤がない。また、全国に1つしかなく、独自の事務局を持たず自ら調査を実施 することのできる態勢もなく、検討会の庶務は法務大臣官房秘書課が行っている。 (3)さらに、精神科病院については、精神医療審査会が都道府県ごとに設置されている が、第3の精神医療のパートで述べたように、この審査会は、拘禁及び拘禁中の処遇 の適切性審査に際して関係者から意見聴取を行うため病院を訪問することはあるが、 それはあくまでも拘禁場所・施設管理者の任意の同意に基づくものであり、強制的な アクセス権限は保障されていない。医療観察制度における指定入院医療機関について 先例を見ると、オンブズパーソン(不服申立機関)や国内人権機関(NHRI)を NPM と して指定する例が多く、また NPM は複数指定することも可能なため、実際に複合型の NPM もみられる。例えばニュージーランドでは、 中心的・調整的機関として国内人権機 関があり、具体的な訪問機関として 4 つの機関が指定されている。イギリスも同様であ る。 29 は、訪問や審査の機能を持つ外部機関はなく、児童自立支援施設については、福祉サ ービスであることに着目した第三者評価制度はあるが、拘禁に着目した外部チェック の制度は存在しない。 (4)いずれの組織を NPM として想定するにしても,乗り越えなければならない困難は 決して小さくない。拘禁施設によっては、そもそも視察機関が存在しない。しかし, このことは同時に,各拘禁施設の視察機関が NPM と指定されれば、各施設に設けら れた視察委員会や不服検討会のような既存の機関の質を,真に当局から独立し,国連 規範に則って活動する高水準の人権機関へと,格段に引き上げるチャンスともなり得 ることを意味する。 例えば,全国の視察委員会が,国内法ではなく国際人権法を基準に勧告を行い,日 本国内津々浦々の拘禁場所で国際人権基準の実施を求めることができる。もはや国際 水準からかけ離れた国内法の細かい解釈などは意味を持たなくなり,これが国内の法 制度と人権状況の改善に与える効果は非常に大きい。 30 Appendix 1 構成団体 Human Rights Now(ヒューマンライツナウ)https://hrn.or.jp/eng/ ヒューマンライツ・ナウ(HumanRightsNow、HRN)は、日本を本拠とする、日本で初めて の国際人権 NGO。世界で今も続く深刻な人権侵害をなくすため、法律家、研究者、ジャ ーナリスト、市民など、人権分野のプロフェッショナルたちが中心となり、2006 年に発足。 Center for Prisoners’ Rights(監獄人権センター)http://cpr.jca.apc.org/about/outline_en 1995 年から刑事拘禁施設における人権状況を国際人権基準に沿って改善することを目的と して活動してきた。 Japanese Lawyers and Citizens Network for the Medical Aid of Welfare and Human Rights (医療扶助・人権ネットワーク)https://www.facebook.com/iryofujo 2012 年から精神科医療における人権状況改善のため、当事者の訴えをもとに事実を調査し、 関係機関への適切な措置の実施を求めてきた。 Japan Lawyers Network for Refugees(全国難民弁護団連絡会議)http://www.jlnr.jp/ 1997 に設立された弁護士のネットワーク団体であり、適正かつ迅速な難民認定、申請者の 地位の保障並びに難民認定者及び人道配慮者の地位の保障のため、個別の難民支援及び政 策に対する提言等の必要な諸活動を行うことを目的とする。 Solidarity Network with Migrants Japan ( 移 住 者 と 連 帯 す る 全 国 ネ ッ ト ワ ー ク ) https://migrants.jp/english.html 1997 年設立(2015 年に NPO 法人化)。「特定非営利活動法人 移住者と連帯するネット ワーク(移住連)」は、日本に暮らす移民・移民ルーツをもつ人びとの権利と尊厳が保障 される法制度の確立を目指して、全国レベルのアドボカシー活動を中心に活動している。 31 Appendix 2 刑事:32年の受刑期間において星野氏に対し課された懲罰等 ①1989年2月 1週間の「軽屏禁」 造花をつくる作業をしていたところ、寒くて材料が折れにくくなったので、その材料を布 団の中でヤカンで温めたことを理由として、「軽屏禁」の懲罰を受けた。 ②1990年8月 8月15日から23日まで「軽屏禁」 運動の時間に靴下なしで運動をし、汚れた足をふいたタオルを洗ったことを理由として、 「軽屏禁」の懲罰を受けた。 ③1996年11月 20日間の「軽閉禁」 居房でゴキブリを踏み、その足を洗ったことを理由に、「軽屏禁」の懲罰を受けた。 ④2010年3月 「戒告」処分 2010年2月26日に鈴木達夫再審弁護人と接見し、東京高裁から同年3月31日まで に意見書を出すようにと連絡があったことに踏まえ、再審に関する意見を2月28日(日 曜日)に丸1日かけて書き、いったん書き上げた手紙を消灯時間後に1行訂正した。これ を理由に、「戒告」処分を受けた。 ⑤2010年3月 1週間の「閉居罰」 昼食に出たぜんざいを入歯用の容器に移して冷ましたことを理由に、「閉居罰」の処分を 受けた。 ⑥2011年4月 優遇区分が3類から4類へ降格 ・作業時間に他の受刑者が星野に話かけてきたので、「許可はもらっているの」と聞いた。 それを「不正交談」とされた。 ・転房した部屋が汚れていたので、掃除のために机にのった。 ⑦2018年5月8日に以下の懲罰等 ・報奨金500円返納 ・3年間無事故バッジ1個(星野は4個持っていた)を戻す ・2類から3類へ降格 5月3日に、祝祭日のお菓子(キャラメルコーン)を、夕食までに食べるという「告知」 を見落とし、夕食後1時間後にお菓子を食べたことを「不正喫食」とされた。 ※「軽屏禁」は監獄法、「閉居罰」は、監獄法を改正した刑事収容施設及び被収容者等の 処遇に関する法律における懲罰の名称で、どちらも内容は同じである。

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