声明・提言等(2024年6月10日)全難連より「 法律事務所への訪問等を制限する一時旅行許可の運用に対する抗議申入書 」を提出しました

法律事務所への訪問等を制限する一時旅行許可の運用に対する抗議申入書[PDF・184KB]

日付:2024年6月7日

団体:全国難民弁護団連絡会議

<抗議申入れ全文> 

法律事務所への訪問等を制限する一時旅行許可の運用に対する抗議申入書

2024年6月7日
全国難民弁護団連絡会議

東京出入国在留管理局違反審査部門 御中
出入国在留管理庁出入国管理部警備課 御中

 当連絡会議が把握したところによると、今年4月頃から、東京出入国管理局における被仮放免者に対する一時旅行許可について、従前と異なる制限的な運用がなされているとのことである。具体的には、被仮放免者が、指定住居のある都道府県外の法律事務所や親族宅等を訪問するための一時旅行許可申請をした際、弁護士との面談の予約の有無を尋ねたり、あるいは、週何回に限るなどの制限を付したりしているということである。

 しかしながら、被仮放免者に対して、そもそも行動範囲を都道府県内に限定すること自体、逃亡の防止を図るという仮放免の目的において不必要・不合理な制限であることに加え、法律事務所への訪問や、親族宅への訪問等を制限することは、被仮放免者の基本的人権を不当に制約するものであり、許されない。

 弁護士依頼権はすべての者に対して認められたものであり、いつでも法的助言を受けられなければならないのでから、原則として自由でなければならず、予め入管の許可を得ることはその権利の性質に反するものである。この点、すべての者は「公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利」が保障されており(自由権規約14条1項)、そのような裁判を受ける権利を実質化するためにも、代理人弁護士による援助が不可欠である。第8回国連犯罪防止及び犯罪者処遇会議第8回国際犯罪防止刑事司法会議(1990年)で採択された「弁護士の役割に関する基本原則」においても、「経済的、社会的、文化的なものであれ、市民的、政治的なものであれ、すべての者が有する人権と基本的自由を十分に保護するためには、すべての者が独立した法律専門家によって提供される法的サービスを効果的に利用できることが必要である」として、原則22において「政府は、弁護士と依頼者の専門関係に基づく通信及び相談は全て秘密とされることを承認し、尊重するものとする」としている。このような権利・原則に照らせば、法律事務所への訪問を入管が制限したり、予約の有無や日程を明らかにするよう求めることは、上記権利を侵害するのみならず、弁護士業務に対する干渉・妨害にあたり、到底看過できない。 また、親族訪問についても、家族が恣意的に干渉されないことは基本的な人権であり、入管において制限すべき性質のものではない。本来、家族として助け合うべき配偶者や子、親の訪問を制限すべき理由は全くなく、社会通念上も理解を得られないであろう。

 この点、出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治による2021年8月23日付け「一時旅行許可申請等の適切な審査について(指示)」は、一時旅行許可不許可決定が違法と判断された仮処分決定を受けて発出されたものであるが、一時旅行許可申請の審査においては、「申請内容の意義や目的、必要性等を十分に評価し、社会通念に照らした上で、許可又は不許可の判断を行うこと」「当該外国人が既に仮放免許可を受けていることを踏まえて、逃亡のおそれ、その他就労禁止など仮放免に付された条件に違反するおそれの有無 ・程度を適切に判断するものとし、その際、申請人の権利利益にも配慮すること」としており、今般の運用は同指示にも反するものである。

 さらに、難民申請者については、難民条約31条2項が領域内の移動について、必要な制限以外の制限を科してはならないと定めており、不必要な制限は条約上許されないことは明白である。

 以上の理由により、当連絡会議は、東京入管における今般の一時旅行許可の運用について抗議を申し入れ、撤回改善を求めるとともに、行動範囲を都道府県内に制限するなどの不必要・不合理な制限についても見直すよう求める。

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