空港における庇護申請者の不当な扱いに対する抗議声明[PDF・296KB]
日付:2026年2月10日
発出:全国難民弁護団連絡会議
<提言全文> 空港における庇護申請者の不当な扱いに対する抗議声明
2026年2月10日
全国難民弁護団連絡会議
代表 弁護士 渡邉彰悟
全国難民弁護団連絡会議(以下当会議という)は、今年1月、ミャンマー出身の庇護希望者2名が、成田空港にて、庇護を求めたにもかかわらず難民認定申請をさせてもらえず、送還される危機に直面する事態が発生したことに対して抗議するとともに、空港における庇護希望者の難民認定手続へのアクセスが保障されるよう強く求めます。
経緯
1 これまでの2021年2月クーデター後のミャンマー人保護についての日本の姿勢
出入国在留管理庁は、ミャンマーにおける2021年2月1日の国軍によるクーデターを踏まえて、同年5月から「ミャンマーにおける情勢不安を理由に本邦への在留を希望するミャンマー人については、緊急避難措置として、在留や就労を認めています。また、難民認定申請者については、審査を迅速に行い、難民該当性が認められる場合には適切に難民認定し、難民該当性が認められない場合でも、上記と同様に緊急避難措置として、在留や就労を認めています。」としてきました。この措置によって、多くのミャンマー人が救済され、その命と安全が守られてきました。
今年1月、ミャンマーでは総選挙が実施されましたが、これに対して、外務大臣は、1月30日付けで談話を発表し、「我が国を含む国際社会は、現「政権」に対し、アウン・サン・スー・チー氏を含む被拘束者の解放や当事者間の真摯な対話を始めとする政治的進展に取り組むよう繰り返し求めてきましたが、こうした取組が選挙実施に至るまでに実現しなかったことは遺憾です」と述べ、「我が国は、今後も、政治的進展に向けた動きや、それに続く民主的体制の回復に向けたプロセスを注視していくと共に、引き続き、空爆を含む暴力の停止や、被拘束者の解放など情勢改善に向けた働きかけを強化していきます」「同時に、苦難に直面するミャンマー国民を支えるとの一貫した方針の下、人道支援や国民生活の向上のための支援については、引き続き、ミャンマーの人々に直接裨益する形で積極的に行っていきます」と述べています。
2 日本に来日し保護を求めるミャンマー人について
他方、同月17日、ミャンマー出身の男女2名が、成田空港から上陸しようとし、東京出入国在留管理局成田空港支局に対して、日本での保護を求めました。ミャンマー出身者が空港にて庇護を希望しているにも関わらず、経由国であるA国行きの航空便に乗るよう言われ続けているとの日本の支援者からの急報を受け、翌18日、当会議代表の渡邉彰悟は、成田空港支局に対し、FAXおよび電話にて、2人を送還せずに適切な対応をするよう求めました。しかし2人は難民認定申請をさせてもらえず、ようやく提出できた一時庇護上陸許可申請が不許可とされてしまった後は、強く出国を迫られ続けたとのことです。
2人は、自身の携帯電話にて支援者に助けを求めようとしましたが、空港にいる職員に電話を取り上げられてしまい、難民認定申請ができたのは入管収容場に移送された後のことでした。現在、本人らは、入管施設に収容され続けています。このように、空港における上陸が非常に困難となっている案件は2025年から成田空港や関西国際空港で把握しております。
問題点:政府の緊急避難措置の趣旨およびミャンマー国民支援の方針に反すること
ミャンマーは、2021年の軍事クーデター後、反政府組織がその支配地域において行政機関や公共サービスを確立してきているという状況もあり、この動きに抗して軍事政権側が空爆や砲撃を行い、その被害は主に民間人が住む地域に及んでいるという情勢があります。こうした爆撃や戦闘により、多くの国内避難民が発生していることも周知のとおりです。そして、軍事政権当局はミャンマーへの出入国者を厳しく監視しており、軍政への批判者、「西側諸国とのつながり」が疑われる人物には深刻な結果がもたらされる可能性があるとも言われています。貴庁がウェブサイトで訳文を公表しているオーストラリア外務貿易省(DFAT)の報告は、ミャンマーの出入国に対する高い監視レベルからすると、亡命を拒否された帰国者は、ミャンマーからの当初の出国理由にかかわらず、軍事政権当局による嫌がらせ、恣意的な拘束、暴力の高い危険にさらされていると評価しています 。特に兵役年齢にある男女は、帰国した場合に強制的に入隊させられ、非人道的な行為に加担させられる可能性があります。兵役についての強制徴用の実態も大きな問題です。
このような現状に鑑みれば、本国ミャンマーに送還される危機にさらすことは、生命の危険においやる行為であり、難民条約の締約国として、許されるものではありません。しかも、ミャンマー出身者に対する一時庇護上陸を許可しないのは、緊急避難措置の趣旨にも反するものと言わざるを得ません。
貴庁は、空港で庇護を求めた者に対し、一時庇護上陸許可申請をさせ、事務取扱要領別紙のチャートにて手続きの説明をするとし、同チャートにおいては、難民認定申請についても、いつでもできる旨が記載されています。しかしながら、実際の運用では、必ずしも一時庇護上陸申請をすることができず、たとえ一時庇護上陸申請ができた場合であっても、難民認定申請を自由に行えない実態が浮かび上がっています。
今回のケースのみならず、支援者/支援団体には庇護の意思が伝わっているにも関わらず、日本での庇護の意思が確認できなかったとして、難民認定申請をさせてもらえずに送還されてしまうケースも見受けられます。庇護希望者は、日本の難民認定制度や補完的保護対象者認定制度を知らないことがありうるほか、仮に知っていたとしても上陸審査という緊張した場面において恐怖のため庇護希望を言い出せないこともありえます。したがって、「日本で難民申請をしたい」「庇護申請をしたい」などと申請意思を明示的にした場合に限らず、「本国で迫害を受けた」「帰国したら身の危険がある」「助けてほしい」などの趣旨のことを述べた場合も、庇護希望を有する可能性があることから、丁寧に難民・補完的保護対象者認定制度の説明と一時庇護上陸許可制度の説明を行い、これらの申請の機会を提供するべきです。上記のような申出が上陸審査のどの段階で出た場合であっても、同様の対応を求めます。中には、上陸許可が認められず、出国が迫った段階になって初めて、帰国が困難な事情を述べる方もいます。そのような場合であっても、出国の手続を直ちに止め、本人が分かる言語で難民認定手続に関する説明を行うべきです。出国を強要することがあってはなりません。入国審査官のみならず、空港職員や委託の警備員も含め、当事者と接する可能性のあるすべての関係者が、このような緊急事態の発生を念頭に置く必要があります。
本書ではミャンマー出身者を取り上げましたが、ミャンマー出身者ですら前記のような取扱いを受けていることからすると、他の出身国の庇護希望者が空港で適切にされているのかどうか大きな懸念があるのはもちろんです。空港における庇護希望者の受け入れは、難民条約締約国として義務を果たすべき重要な場面であるにもかかわらず、庇護希望者を帰国させたり収容したりするのは、難民の受け入れ数を減らそうとする水際作戦とも受け取れるものであり、決してあってはなりません。
結語
難民を迫害国へ送還することは、迫害国による迫害に加担するに等しい行為です。ましてや、ミャンマー出身者を送還することは、現在の政治情勢に鑑みるとき、彼らを死に追いやるものになりかねず、到底看過できません。
当会議は、庇護希望者に対して上陸を許可し、収容することなく難民・補完的保護対象者認定手続が受けられるようにすること、上陸時に庇護希望が確認された場合は、一時庇護上陸許可申請のみならず難民認定申請手続を必ず説明・案内すること、弁護士や支援者、支援NGOとの連絡手段の確保を繰り返し求めてきました(2025年8月8月付け当会議提言)。
当会議は、今回のミャンマー出身者2名への取扱いについて強く抗議するとともに、空港における庇護希望者の難民認定手続へのアクセスが保障されるようあらためて強く求めます。
以上
<参考資料>