声明・提言等(2021年12月20日)全難連を含む3団体より抗議申入れを提出しました。

仮放免を受けた者の逃亡の原因を検証しない記事に対する抗議申入書[PDF]

日付:2021年12月20日

団体:全国難民弁護団連絡会議、入管を変える!弁護士ネットワーク、全件収容主義と闘う弁護士の会ハマースミスの誓い

提出先:産経新聞社、法務省出入国在留管理庁

ニュース/記事(2021年12月16日・産経新聞)「(独自)仮放免外国人195人が逃亡 保証人に偏り」

抗議申入書(テキスト) 

仮放免を受けた者の逃亡の原因を検証しない記事に対する抗議申入書

産経新聞社 御中
法務省出入国在留管理庁 御中

 産経新聞社は、2021年12月16日付けのインターネット掲載記事「<独自>仮放免外国人195人が逃亡 保証人に偏り」において、「特定の弁護士や支援者5人がそれぞれ身元保証人となった外国人787人のうち、195人が行方をくらましていた」「このうち弁護士1人は、・・・19人について逃亡を許していたという」などと報道した[1]

 しかし、「許していた」との表現は、あたかも弁護士らが仮放免を受けた者の逃亡を“許可”したと誤解させ、またそれが逃亡の要因であると誤解させる不適切な表現である。

 また、当該記事は、根拠を「出入国在留管理庁による今年3月までの過去8年間の集計」と記載するだけで、仮放免を受けた者が所在不明になった原因を検証した様子がない。

 そもそも、同記事が言及する8年間は、入管が恣意に収容を長期化させ、不当・違法な処遇や、違憲の方法による強制送還を繰り返していた時期である。

 2021年9月の東京高裁判決(確定) [2]は、難民の異議申立棄却の通知と同時に収容し、裁判する猶予を与えずに翌日本国へ送還した行為を違憲としたが、このような例は、2014年から2016年までの間に少なくとも48件あったことが判明している[3]

 また、2019年6月の大村入国管理センターにおけるナイジェリア国籍男性の餓死事件[4]、2020年3月の名古屋入国管理局内におけるウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件[5]など、命に関わる不当・違法な処遇が露わになっている。

 さらに、2019年以降多数行われた、被収容者に対してわずか2週間のみの仮放免を認め、再び収容するという運用に対しては、2020年9月、国連恣意的拘禁作業部会が、必要性と合理性を欠く「恣意的な収容」に当たり国際人権法に違反するという意見を出している[6]

 このように、入管庁による違法な収容、処遇及び送還が、被仮放免者に恐怖を与え、出頭しなくなる可能性こそ、検証されるべきである。

 また、同記事は、「身元保証人が逃亡を許した場合」でも法的責任を問われることはないと記述した上、「監理措置」の新設を盛り込んだ入管難民法改正案の、来年の国会再提出に言及している。この記述も入管庁による示唆に基づくとすれば、「監理措置」導入の目的が、「監理人」となった支援者や弁護士らに被仮放免者の逃亡について責任を負わせることにあることを示している。これは、前述の入管庁自身の違法行為の問題を責任転嫁し隠蔽することにつながる。

 以上のとおり、被仮放免者の置かれた状況について検証せず、身元保証人となっている弁護士らに対する誤解を招く同記事を掲載した産経新聞社に抗議する。また、入管庁が「監理措置」導入に利用する意図で同記事に書かれた情報を流しているのであれば、法案についての国民の議論と国会審議を歪めかねない不公正な情報リークとして、入管庁に厳重に抗議する。

以上

<申入れ団体>
全国難民弁護団連絡会議
入管を変える!弁護士ネットワーク
全件収容主義と闘う弁護士の会ハマースミスの誓い

《本件に関する連絡先》
全国難民弁護団連絡会議事務局
東京都新宿区四谷1-18-6 四谷プラザビル4階
いずみ橋法律事務所内
電話:03-5312-4827 FAX:03-5312-4543
Eメール:jlnr@izumibashi-law.net

[1] https://www.sankei.com/article/20211216-QVPYTYPZINPNLFOFZLD2MEAX5Q/

[2] 東京高等裁判所令和3年9月22日判決https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/694/090694_hanrei.pdf

[3] 参議院第190回国会「難民申請者の強制送還に関する質問主意書」に対する答弁書https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/190/meisai/m190157.htm
東京弁護士会「スリランカへの集団強制送還に対する会長声明」https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-449.html

[4] 日本弁護士連合会「入国管理センターにおける被収容者の死亡事件及び再収容に関する会長声明」https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2019/190808.html

[5] 日本弁護士連合会「名古屋出入国在留管理局における被収容者の死亡事件に関する会長声明」https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210330.html

[6] 国連恣意的拘禁作業部会意見https://undocs.org/en/A/HRC/WGAD/2020/58(恣意的拘禁ネットワークによる日本語訳https://naad.info/wp-content/uploads/2021/03/WGAD_Opinion_JPN_final.pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。