法相会見(2021年12月3日)出入国在留管理行政に関する質疑について

法務大臣閣議後記者会見の概要「出入国在留管理行政に関する質疑について」(2021年12月3日)(外部リンク:法務省ウェブ

冒頭説明 

2件目は,11月30日から12月1日にかけて,愛知県・三重県への出張を行いましたので,その概要について御報告します。
 まず,11月30日,名古屋出入国在留管理局を視察し,局長を始め職員との意見交換を行いました。
 職員からは,名古屋局における非常勤医師の増員などの医療体制の強化,被収容者の健康状態等について,幹部職員と現場職員及び医療従事者との情報共有体制の構築などについて説明があり,先般の死亡事案を重く受け止め,しっかりと改革・改善に取り組んでいることを確認できました。
 名古屋局における死亡事案は,あってはならない悲しい事案であり,出入国在留管理庁の全ての職員が,調査結果を重く受け止め,改革・改善を着実に実現していくことが重要と考えています。

出入国在留管理行政に関する質疑について 

【記者】
 今週火曜日の記者会見において,11月30日の一部新聞報道を巡る質問の中で,大臣が,不法滞在者の中には,殺人や強盗,性犯罪などの重大な犯罪を含め,前科がありながら退去強制に応じず,送還忌避している外国人もいるとの報告を受けていらっしゃるというような御発言がありました。
 確かに犯罪を犯して服役後に入管収容されている外国人もいますし,私も牛久入管等でそういう方に何人も面会したことがあります。日系外国人や元インドシナ難民の方などで,元々定住者や永住者の資格を持っている方たちでした。
 彼らは日本での生活が長いということもあり,生活基盤も家族も日本にあるということで,社会復帰は日本社会でするしかないということで,入管側も仮放免したり,在留特別許可を出したりという柔軟な対応をしています。
 一方で,裁判所などで,行き場を失って,在留期限が切れて,不法就労のアルバイトや偽造在留カードを入手したりということで,逮捕,起訴される元技能実習生や留学生の刑事裁判も行われているのも事実です。ただ,そのほとんどは最初の公判で結審し,執行猶予付きの判決で,裁判終了後に入管職員に引き渡されるというケースがほとんどです。
 こういった状況で,送還忌避者の中に前科がある人が多いと,ひとくくりにして言うのは,明らかに来年度以降の入管法改正に向けた印象操作が先んじて報道されているのではないかと思います。
 その一方で,日本で退去強制令書が出てから難民申請したがために,在留資格を得ることも,帰国することもできず,20年,30年にわたって,入管収容と仮放免状態を繰り返している難民申請者とその家族もいます。そういう方も生活基盤が日本にあるわけですから,以前でしたら,定住者としての在留特別許可も出ていたのですが,この数年はそれが非常に厳しい状態です。
 そういうことで,今在留ミャンマー人への緊急避難措置として半年の特定活動という形でビザが出ている状況もあるのですが,人道的配慮に基づく在留特別許可の在り方というのは非常に混乱している状況だと思います。
 コロナ禍の中で生活困窮している仮放免者も多いので,やはり在留特別許可の柔軟な運用の見直しが必要だと思います。今後,臨時国会,そして通常国会に向けて入管法改正案がまた提出されると思うのですが,当事者や支援団体と面談したり,国連からもこの間,いろいろと勧告が日本政府,入管難民行政に対して出されていますが,それに配慮した有識者懇談会のようなものを設置するお考えはないでしょうか。
 臨時国会が始まるということもありまして,是非大臣の考えを聞かせてください。

【大臣】
 我が国において,日本人と外国人がお互いに尊重し合いながら生きていく共生社会を実現するためには,外国人の人権に配慮しながら,ルールにのっとって外国人を受け入れ,適切な支援を行っていくこと,ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことが,まず大原則,前提です。
 在留特別許可の許否の判断については,いつも申し上げていますとおり,仮放免中であるかどうかにかかわらず,飽くまで,法令にのっとり,個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して適切に判断すべきものだと考えています。
 入管行政については,御指摘の在留特別許可の在り方についてのものを含め,様々な御意見があり,検討・改善をしていくべき様々な課題もあると考えています。
 入管行政は,我が国の在り方に関わる重要な任務ですから,これからも多様な関係者の御意見にしっかり耳を傾けながら,実情をしっかりと踏まえた政策の立案・施策の実施に努めていきたいと考えています。
 廃案になった入管法改正法案においては,在留特別許可の申請手続を創設し,その判断に当たっての考慮事情を明確化することも盛り込んでいました。いつも申し上げますように,制度をより良いものにしていくために,不断の努力は続けていかなければなりません。

【記者】
 前回産経さんが書いている報道で,来年の通常国会で再び入管法改正法案を提出する構えだと報じられました。
 前回の法案で非常に反対の意見が強かったのが,日本の難民認定率が諸外国に比べでかなり低い中で,難民申請に2回の上限を設け,退去処分に従わない場合,刑事罰を新設するという,3回目以降は相当な事由がなければ,申請に対して刑事罰が適用されるということで,非常に反対意見が強かったものです。
 次の通常国会で再び同じものを出すつもりなのかという点をまずお伺いします。

【大臣】
 いつも申し上げていますとおり,送還忌避・長期収容の問題は,入管行政上解消すべき喫緊の課題であり,必要な法整備は進めていかなければならないという強い考えを,私は持っています。
 具体的な内容については,精査,検討中です。

【記者】
 関連してですが,前回の改正では,判断に当たっての考慮事由等を明らかにするようにすると,これまで,かなりの裁量行政で,この人は大丈夫だけどこの人は駄目だとか,入管が拘束するときの判断が明確でないという点への批判がいろいろとありました。そこを変えていこうというおつもりだと思うのですけれど,一方で,やはり司法判断のような明確な判断が必要ではないかということと,それから海外からは,延々と収容というのではなく,6か月とか1年半等の上限期間を設定すべきだということが,国連等々からも指摘されています。この点を今後どうするのか。
 野党側は,そもそも強制送還を前提とする入管と,難民の保護や認定を進める機関というのは別々に作るべきではないか,入管は強制送還を前提とした対応をするけれども,もう一つ独立した難民認定の機関を作るべきではないかという提案を出しています。
 この点も踏まえて,政府としてこういった方向を今後検討するのかという点もお答えいただければと思います。

【大臣】
 具体的な検討の内容について,今の段階で詳細なお答えは御遠慮しておこうと思います。
 いずれにしても,様々な論点がありますので,様々な御意見をしっかりと聞いて,実情も踏まえながら改めていくべきは改めていかなければならないし,不断の努力をしていくという考え方の下に,今,検討しているところです。

【記者】
 大臣の冒頭の発言で,名古屋入管も視察に行かれたというお話でしたが,スリランカ人女性の死亡事件について,その後の対応についても意見交換されたという話ですが,今までも支援団体が何回も名古屋入管に行って意見交換の場を設けるようにということで申入れをしているのですが,なかなか具体的な話合いの場ができないという状況があるようです。
 それと大臣,常々スリランカ人女性の遺族や代理人と会うことも検討しているというお話でしたけれども,今回の視察を受け,面会をするお考えがあるのかどうか,もう一度確認させてください。

【大臣】
 お会いするかどうかということは,今後適切に判断していきたいと思っています。

【記者】
 面会をずっと続けてこられた支援団体の方と意見交換の場を設けることについては,どのようにお考えでしょうか。再三,申入れをしているようなのですが,なかなか受け入れられないという状況のようですが。

【大臣】
 それは具体的に考えていません。

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