声明・提言等(2026年5月18日)全難連「在留期間更新等の手数料の大幅値上げ及びJESTAの導入を内容とする入管法改定案に反対する意見書」

在留期間更新等の手数料の大幅値上げ及びJESTAの導入を内容とする入管法改定案に反対する意見書[PDF・235KB]

日付:2026年5月18日

発出:全国難民弁護団連絡会議

<意見書全文> 

在留期間更新等の手数料の大幅値上げ及びJESTAの導入を内容とする
入管法改定案に反対する意見書

2026年5月18日
全国難民弁護団連絡会議

2026年3月10日、日本に現在居住している外国籍者の在留期間更新や在留資格変更、永住許可等の在留関係諸申請の許可の際の手数料の値上げ等を可能とする出入国管理及び難民認定法の改定案(以下「本法案」という。)が国会に提出され、現在、参議院で審議中である。当連絡会議は以下の理由により本法案の問題点を指摘し、反対するものである。

第1 在留資格に関する手数料の大幅値上げについて

 現行法は在留資格に関する許可の手数料の上限を1万円と定めており、同法を受けて政令は在留期間更新や在留資格変更の手数料を6000円(電子申請の場合は5500円)、永住許可の手数料を1万円と定めている。これに対し本法案は、前者については上限を10万円、永住許可については30万円を上限とする内容となっており、10倍~30倍という暴挙ともいうべき値上げを可能としている。

 在留期間更新及び在留資格変更の手数料は、物価や人件費の上昇を理由に、2025年4月1日に4000円から6000円に値上げされたばかりであり、手数料の値上げであればその程度が相当であることが示されていたはずである。本法案はそれから1年と経たずに10倍~30倍もの値上げを可能とするものであり、次のとおりその正当性及び根拠に極めて大きな疑問がある。

1 継続的に生活を営む現居住者に対する過度の不利益変更に当たること

 在留資格は、日本に在留するために不可欠な地位であり、在留資格に関する許可の手数料は在留する者全員に課されることになる。その中には、単身労働者の世帯だけではなく、子どもや高齢者を含む家族で滞在する世帯もいるが、そのような世帯に対しては、多ければ年に10万を超える負担を求めることとなってしまい、生活の質の低下や、ひいては手数料を払えないことによる非正規滞在化を招きかねない。

 そもそも在留(許可)は、本人に対する恩恵と単純化して語られるべきではなく、人間の根源的行動である移動の自由や居住の自由という権利の実現の見地から十分な尊重を要することに加え、日本社会の活性化や人的交流による文化の発展、労働力の増加など、日本社会に利益をもたらすものでもある。

 既に日本社会において生活の基盤を築き、地域コミュニティの一員として生活している者に対して、外国人であるという理由だけで生活の質の低下や、ひいては在留自体を諦めざるを得なくなる可能性のある不利益を課すのは、著しく妥当性を欠く。

 また、外国人であるという属性のみをもって、一律に高負担を強いるのも合理性を欠く。在留する者の中には幼少期から日本で生活し、日本語を第一言語とし、特別な支援を要することなく地域で暮らしている者もいる。そのような者に対しても外国人受け入れに要する特別なコストを負担させようというのは合理性を欠くと言わざるを得ない。

2 難民申請手続の継続を著しく困難にすること

 特に、難民申請手続中の特定活動の在留資格で生活する者に対する手数料の著しい値上げは、難民申請手続の継続を困難にする。

 難民が他国に庇護を求める権利は、世界人権宣言14条に謳われ、ノン・ルフールマン原則を定めた難民条約や、自由権規約からも認められる権利である。

現在、難民申請手続中の者に対しては、特定活動の在留資格を認める運用がなされているが、その中には就労が許可されていない者もいる。わずかな資産から3か月や6か月毎に在留期間更新にかかる手数料を払い続けるのは困難であり、払えない者は更新できずに非正規滞在になってしまうか、非正規滞在になるのを回避するために難民申請自体を諦めざるを得ない状態に陥ってしまいかねない。

従前から、収入がない難民申請者の在留資格の更新のための手数料は支援団体等が肩代わりしてきたのが実態であり、手数料が値上げされれば、結局のところ支援団体をはじめとする民間の負担に転嫁されることとなってしまい、手数料の性質・目的になんら合致しない事態が生じてしまう。難民支援団体の財源には限界があり、手数料支出が増えた場合は他の衣食住の支出に回せなくなってしまうことは、上記1と同様である。

さらに、今年5月12日になって入管庁が提出した資料によると、少なくともイギリス、カナダ、フランス、ドイツでは難民認定申請者が納付すべき在留にかかる手数料はないということであり、諸外国の手数料を参考にしたという理由は成り立たないことが明らかになった。

難民申請者に対する手数料値上げについては、日本が負う難民保護の義務との関係で、やはり大きな問題があると言わざるを得ない。

3 実質的租税に当たり租税法律主義に反する可能性があること

 在留期間更新等の手数料は、従来、在留期間の更新・在留資格の変更手続きという役務に対する反対給付であったと考えられる

 他方、手数料という名目であっても、国が課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、租税(税金)である。

今回値上げされる在留期間更新等の手数料は、その手続きの実費弁償に充てられるだけでなく、JESTAの手数料と合わせて、日本語教育など広く「外国人政策の財源」とされ、さらには、高校無償化やガソリン税の旧暫定税率廃止の財源の一部に充てられるとしている。これらを使途とするのであれば、もはや役務に対する反対給付としての性格を喪失しており、租税と言わざるをない。

租税であれば、憲法84条の「租税法律主義」により、課税標準や税率などの課税要件を法律で明確に定めなければならない。しかし、本法案には手数料の上限のみが規定されるため、憲法84条に反する。

また、租税であれば、憲法14条による「租税公平主義」により、担税力(各人の税を支払うことができる能力)に応じた課税でなければならないが、一部の減免措置を除いて、在留資格によって一律に金額が決まっており、担税力は考慮されず、憲法14条に反する。

 在留期間更新等の手数料があくまで手数料であるためには、実費弁償を超えた大幅値上げは許されない。すなわち、在留期間更新等の手続以外の外国人政策や、ましてや物価高などを背景にした国民負担を減らす施策の穴埋めの財源確保のために大幅値上げをすることは許されない。

第2 JESTA導入によって庇護希望者が排除される可能性があること

本法案に含まれるJESTA(電子渡航認証制度)は、オンラインで事前に提供された情報をもとにスクリーニングを行い、同認証を得ていない場合は上陸を許可しないとする制度である。JESTA導入の目的は、不法残留(超過滞在)等を意図する者の来日を未然に防止したり、増加している来日観光客の審査手続を円滑にしたりすることにあると説明されている。しかし、入国前の質問によって超過滞在する目的かどうかを判別できるとは思えず、何かしらの属性に着目して、恣意的に入国を認めない運用がなされることが懸念される。特に、難民申請者が多い国の出身者については、日本における難民認定率が諸国に比べて極めて低いことと相まって、超過滞在等を意図していると見做されかねない。

そもそも難民申請者に対しては、これまで上陸時に在留資格を認めなかったり、申請後に在留資格の変更を認めないなどの方法で、あえて非正規滞在に置いて出国を促す手法がとられていることは、当連絡会議が「空港における庇護希望者に対し適切な保護の機会と 適正な手続を提供するよう求める提言」(2025年8月8日)で指摘したとおりである。

 JESTAを開始した場合、いかなる点に着目して認証の可否を決めるのか現時点において公表される見通しはなく、庇護希望者を事前に排除するのに用いられる可能性が否定できない。上記のとおり、難民が庇護を求める権利は、世界人権宣言14条を始め国際法において認められた権利であり、これを制限することがあってはならない。

第3 結語

 以上の理由により、在留資格に関する手数料の大幅値上げとJESTA導入を内容とする本法案に反対する。上記のとおり、国を越えた人的往来は、移動の自由や居住の自由という普遍的な権利が根底にあり、日本社会の活性化や文化の発展など、日本社会に利益をもたらすものであることを念頭に、排除ではなく包摂を志向した法制度の構築を求める。

以上

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