声明・提言等(2026年8月2日)全難連「手数料大幅引上げ政令案及び在留許可手数料の減額対象者のガイドライン(案)に対するパブリックコメントについて」

手数料大幅引上げ政令案及び在留許可手数料の減額対象者のガイドライン(案)に対するパブリックコメントについて[PDF・290KB]

日付:2026年8月2日

発出:全国難民弁護団連絡会議

<パブコメ全文>

手数料大幅引上げ政令案及び在留許可手数料の減額対象者のガイドライン(案)に対するパブリックコメントについて

◯  はじめに

政府は、通常国会で在留許可手数料(以下単に「手数料」という。)を大幅に引き上げることを可能とする内容の入管法の改定が成立したことを受け、2026年7月3日、入管法施行令の改定案(以下「本政令案」という。)とともに、減額対象者のガイドライン案(以下「ガイドライン案」といい、本政令案と併せて本政令案等)という。)を公表し、パブリックコメントを募集している。

 当連絡会議は、入管法改定の国会での審議中に公表した意見書(以下「意見書」という。)において、手数料の大幅な引上げが、①継続的に日本で生活を営む外国籍住民に対する過度の不利益変更に当たること、②難民申請手続中の者については手続の継続を著しく困難にすること、③実質的に租税に当たるもので租税法律主義に反する可能性があることといった問題点を指摘し、これに反対してきた[1]

本政令案等は入管法が改定されたことを受けて具体的に手数料の額を定めたものであるが、本政令案等には、①手数料の引上げの幅が著しく大きい一方、減額対象者の範囲が狭きに失するものであり、外国籍住民の日本での生活を困難にするおそれがあること、②外国人の在留許可による受益者の考え方を根本的に誤り、平等原則に反するものであって、租税法律主義に反すること、③難民認定者に自国民にはない租税を実質的に課すもので難民条約29条1項に反すること、④難民認定申請者の日本で庇護を受ける機会を実質的に奪うことになること等の重大な問題点がある。

以下、それぞれについて当連絡会議の意見を述べることとする。

◯ 手数料の引上げの幅が著しく大きい一方、減額対象者の範囲が狭きに失するものであり、外国籍住民の日本での生活をいたずらに困難にすることについて

 本政令案は、手数料の額の改定に当たり、従前は6000円(申請方法が窓口の場合。以下も同じ)とされていた在留資格変更許可・在留期間更新許可の手数料について、許可期間が3か月の場合は1万円、6か月の場合は1万8000円、1年の場合は3万3000円、3年の場合は6万4000円、5年の場合は7万5000円と大幅な引上げを行っている。また、永住許可の手数料については、1万円から20万円という著しい増額となっている。

 一方、改定された入管法では、「経済的困難その他特別の理由」がある者を減額対象者とすると定められていたが、ガイドライン案では、①生活保護法に規定する要保護者に準ずる程度に生活に困窮していると認められ、かつ、②人道上の配慮をする必要がある者に該当する場合に限るとして、著しく狭く規定されている。また、①・②に該当する場合においても、変更許可・更新許可の場合は1万円、永住許可の場合は2万円の手数料は支払われなければならないとされている。

 しかし、当連絡会議が意見書で述べたとおり、外国籍住民にとって在留手続は必要不可欠なものであって、日本で生活していくための義務的な手続である。そして、日本で生活する外国籍住民には、単身者だけではなく子どもを含めた家族で生活する者も多く、例えば、4人家族で3年の許可を受けたとすれば、合計で25万を超える手数料の負担を課せられることになるものであって、このような手数料の大幅な引上げは日本での生活を経済的に著しく厳しくし、最悪の場合、日本に在留を続けることを断念させ得ることになる。

 また、「経済的困難」等の場合の減額等を認める規定についても、ガイドライン案によれば、①生活保護法上の要保護者に準ずる程度の生活の困窮と②人道上の配慮の必要の双方を要件としている上、これらが著しく限定的に規定されているため、例えば、DV被害者で子どもを連れて別居したものの、生活保護を受けられていない外国人配偶者も減額の対象外となることになる。

 このように、本政令案には、手数料の大幅に引き上げる一方、減額対象者の規定を著しく狭く規定しているものであり、外国籍住民の日本での生活をいたずらに困難にするという根本的な問題点があるものと言わざるを得ない。

◯ 外国人の在留許可による受益者の考え方を根本的に誤り、平等原則に反するものであって、租税法律主義に反することについて

 本政令案による手数料の引上げの額については、参考資料としてその前提となる積算の方法が公表されている。これによれば、変更許可・更新許可においては、審査に要する実費は1万円程度とされているほか、応益的要素として以下のとおり算出されており、これらのほかに政策的要素を考慮して手数料の額を積算したとされている。

A 外国人の出入国及び在留の公正な管理に要する費用の額(入管庁の予算の一部、外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策関連経費等)→572億円程度

B 中長期在留外国人(永住者及び特別永住者を除く)→約291万円

 A/B=2万円程度(1年間当たり)

 このような応益的要素の考え方は、外国人の変更許可・更新許可といった在留許可による受益者が当該外国人のみであることを前提としているが、在留許可は当該外国人が利益を受けるものと単純化できるものでないことはいうまでもなく、イノベーションや人的交流による文化の発展、労働力の確保や産業の維持、税や社会保険料を納付することによる社会保障制度の維持など、日本社会に多大な利益をもたらすものである。

 にもかかわらず、外国人の在留許可に関する手数料の積算の場面においてのみ、外国人の受入れによって利益を受ける者が外国人のみであるとして、これを手数料の引上げの根拠とすることは、外国人の在留許可による受益者の考え方を根本的に誤り、平等原則に反するものである。

 したがって、審査に要する実費の範囲を超えて、入管庁の予算の一部や総合的対応策関連経費等まで積算の要素として考慮することは、役務の反対給付という性質を超えており、手数料ではなく租税に転化していることにほかならないものであって、当連絡会議が意見書で述べたとおり、具体的な手数料を本政令で定めることは租税法律主義に反するものと言わざるを得ない。

◯  難民に自国民にはない租税を実質的に課すもので難民条約29条1項に反することについて

 こうした本政令案等の問題点がもっとも明らかになる場面が、難民の場合である。

前記のとおり、減額対象者の範囲を定めるガイドライン案は、①生活保護法上の要保護者に準ずる程度の生活の困窮と②人道上の配慮の必要の双方を要件としているが、難民等の認定に伴う在留資格の変更や難民等の認定を受けた者の在留期間の更新については、②には該当するものの、保護費または生活保護の支給を受けていない限り、①には該当しないとして、減額の対象外となると考えられる。減額の対象外となれば、難民等の認定を受けた者については、定住者5年の在留資格が与えられるから、単身でも6万5千円または7万5千円、家族4人であれば、26万円または30万円を支払わない限り、在留資格の変更や更新を受けられないことになる。

今般の手数料の大幅引上げは、高額の手数料が払えなければ日本での在留をあきらめて帰国すればよいとの考え方に立つものと考えられ、その考え方自体、既に述べたとおり到底適切さを欠くものであるが、そもそも、難民とは、本国から迫害を受けるおそれのある者であり、自発的に帰国するという選択肢がない。したがって、仮に高額な手数料を支払えなければその者は非正規滞在者となって著しく人道に反する状態に陥り、また、そのような状態に耐え切れずに帰国に追い込まれることになれば、実質的に日本が難民条約締約国として負うノンルフールマンの義務に反する。かかる事態は断じて容認できない。

加えて、難民条約29条1項は、締約国は、難民に対し、同様の状態にある自国民に対する租税その他の公課以外の公課を課してはならず、また、租税その他の公課につき同様の状態にある自国民に対する額よりも高額のものを課してはならないと定めている。

そうとすれば、前記のとおり、実質的に租税となるような在留許可に関する高額の手数料を難民等の認定を受けた者に課すことは、難民条約29条1項に反することになる。

以上より、難民等の認定を受けた者については、経済的困難の有無にかかわらず、そもそも手数料を免除すべきであり、少なくとも一律に減額の対象とすべきである。

◯  難民認定申請者の日本での庇護を受ける機会を奪うことになることについて

 また、難民認定申請中の者については、原則として②には該当するとされているが(ただし、いわゆるB案件及びC案件に該当するものは除くとされている)、公的な支援である保護費の対象となっていない限り、①には該当しないとして、減額の対象外となっている。

しかし、難民条約上、難民は、政府による難民認定を受けることによって難民となるものではなく、同条約の要件を満たしていることによって直ちに難民となるものであって(UNHCR難民基準ハンドブック28項)、難民認定申請中の者であっても、同条約の要件を満たしている場合には難民として取り扱われなければならない。

実際に、パブリックコメントの参考資料中の「諸外国における難民認定申請者に係る滞在許可等について」においても、出入国在留管理庁が調査したところによれば、英国、カナダ、フランス及びドイツのいずれにおいても、難民認定申請中の者は手数料を納付する必要はないとされている。

しかるに、難民認定申請者に在留許可に関する高額の手数料を課すことは、手数料を支払えないことによって難民認定申請者の在留資格を失わせ、日本における生活を継続することを困難にさせる結果、本国で迫害を受けるおそれがあるのに帰国を選択することを強いることになりかねない。

このことは、難民認定申請者の日本での庇護を受ける機会を奪うことになるものであって、難民認定申請者についても、難民条約29条1項に照らし、保護費の対象になっているかどうかにかかわらず、そもそも手数料を免除すべきであり、少なくとも一律に減額の対象とすべきである。

以 上


[1] 全国難民弁護団連絡会議「在留期間更新等の手数料の大幅値上げ及びJESTAの導入を内容とする入管法改定案に反対する意見書」(2026年5月18日)(http://www.jlnr.jp/jlnr/archives/9535

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