法相会見(2023年9月19日)国内人権機関の創設等;改正入管法施行に向けての課題

法務大臣閣議後記者会見の概要 令和5年9月19日(火)(外部リンク:法務省ウェブ


国内人権機関の創設等に関する質疑について 

【記者】
 就任の記者会見で、大臣は人権問題における包括的な差別禁止法の制定について、既に1、2回大きな議論があり、不断に検討はしているが結果的に個別法で対応することになったというふうにお答えになりました。おそらく、今まで2回国会提出されて廃案になった人権擁護法案や、その後成立した障害者差別解消法、それからヘイトスピーチ解消法、部落差別解消法のことなどを指していらっしゃるだろうと思います。先の通常国会でもLGBT理解増進法が成立しましたけれども、いずれの法律も国連機関が日本政府に対して求めてきた差別禁止法ではない理念法で、当事者団体や弁護士会などからも繰り返し包括的差別禁止法の制定や、差別実態の調査や人権救済のために独立した国内人権機関の創設を求めてきました。今年、日本政府が議長国のG7の中で、包括的差別禁止法も国内人権機関も存在しないのは日本だけだというふうに言われております。大臣は、自民党の二階派に所属していらっしゃると思うんですが、部落差別解消法成立の議論にも関わっていらっしゃったんじゃないかなというふうに思うんですけれども、なぜ包括的差別禁止法ではなく個別の理念法しか成立しないで、独立した専門機関として国内人権機関が日本には今現在存在しないというふうにお考えでしょうか。

【大臣】
 この間も同趣旨の御質問をいただき、また質問の中でもおっしゃったようなお答えをさせていただきました。大変重要な問題であり、また大きな問題でありますので、これまで国会という場も含めて国全体で議論がなされてきまして、その積み重ねの上に今の制度があるわけですね。でもこれはやはり不断の検討、不断の議論をこれからも続けていく必要があると思っています。日本の社会全体が国際化の中で、多様性を重んずる、お互いに尊厳、人間としての尊厳、人権を尊重していく。そういった大きな流れがありますから、そういったものも踏まえながら、様々な議論をこれから更に深めていく。それをやがてまた集約していく。そういう大きな流れの中に我々は今いると思っております。これまでの積み重ねの中では、個別法によるきめ細かな実践的な取組をしていこう、積み重ねよう、こういう流れが一つあるわけでございまして、その中で更に人権救済というものを深めていけるような日々の努力、これもまた大事な点だと思います。大きな議論と目の前にあるものの積み重ねという両方を重視しながら不断の検討を進めていきたいと思っています。

【記者】
 同様に、前回も質問させていただいたんですが、大臣の地元で100年前に起きた朝鮮人虐殺の真相究明、これ(埼玉県)本庄市ですとか、それから上里町、それから熊谷市、それから今年は寄居町でも初めて追悼集会が行われたんですけれども、こういった関東大震災の朝鮮人虐殺、あるいは中国人虐殺といったことについて、真相究明や公式謝罪の在り方についても、大臣、どのようにお考えでしょうか。前回、つまびらかではないというふうにお答えだったんですけれども、地元でそういうことがあったということもあり、国際的な関心もありますので、是非基本的な考えをよろしくお願いします。

【大臣】
 政府の見解として、過去の質問主意書、国会答弁等では、事実関係を把握することのできる記録は見当たらない。こういうふうに答弁をさせていただいていると承知しております。その点を御理解いただきたいと思います。


改正入管法施行に向けての課題に関する質疑について 

【記者】
 先の通常国会で、改正入管法が成立しましたけれども、2年前に国内外で批判の声が高まって廃案になった法案とほぼ同じ骨子でした。国会審議の中でも、難民審査の在り方や難民参与員制度の在り方、それから難民申請の回数の制限、それから入管収容施設の医療体制の実態、それから司法審査が収容に関して介入しないということも含め、色々な側面から色々な議論がされました。法律施行に向けて、どのような課題があると現時点で大臣はお考えでしょうか。もし齋藤(前)大臣からの申し送りの事項等がございましたら、それもよろしくお願いします。

【大臣】
 入管法改正は、もう既に御存じのことかと思いますが、国民全体の安心、安全を守るための枠組みをしっかりと作る、また維持をする。その中で外国人の方々の人権を最大限に尊重していく。こういう二つの命題のバランスを保ちながら、パッケージとして法律案を作って御議論いただいて、修正もあったと思いますが、法律が成立しまして、施行の準備に入っています。ですから、まず私がやるべきことは、法案の成立過程をしっかりともう一度、その議事録も読ませていただいて、立法者の趣旨を、これは齋藤(前)大臣を始め、当局の皆さんが頑張ってこられたわけで、皆さん方も議論に参加されたのだと思いますが、まずしっかりと把握して、これを速やかにスムーズに適切に施行できるように、政省令などの準備をしっかりやっていくというのがまず一番の課題だというふうに思います。
 二番目の課題は、これは先ほどの話ともつながりますけれども、やはりこれ、実務的に非常に複雑な手続、多様なニーズ、国民のニーズ、外国人からのニーズがありますから、これこそ不断の見直し、検討、常に現場から上がってくるものを見て、また皆さんの御意見も踏まえて、常に検討していくと。これも大きな課題だというふうに思っています。制度の趣旨等については、話すと長くなりますから、また機会があれば、意思疎通をしたいと思います。


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